酔生夢死浪人日記

 日々、思いついたさまざまなことを気ままに綴っていく

梅雨時の雑感~立花隆氏追悼、グリーンリカバリー、都議選

2021-06-27 14:21:38 | 社会、政治
 立花隆氏の死が公表された。〝知の巨人〟の死を心から悼みたい。著書を当ブログで紹介したのは「天皇と東大」だけだが、世紀が変わる前は熱心な読者だった。とりわけ印象に残っているのは「中核VS革マル」、「脳死」、「同時代を撃つ 情報ウオッチング」、「サル学の現在」、「臨死体験」辺りか。文系と理系、ジャーナリズムとアカデミズムの境界を行き来する希有な存在だった。

 「田中角栄研究」発表時、大手紙の関係者は「あんなことは誰でも知っている」と吐き捨てた。現在に至る日本メディアの限界(権力との馴れ合い)を象徴するエピソードといえる。インターネットについて<個人と世界が繋がるためのツール>と希望を抱いていたが、同じ考えを持つ者が閉鎖的なタコ壺を形成するケースが蔓延し、<AI独裁>が進行している。

 30年以上前、NHKが放映したドキュメンタリーが記憶に残っている。環境と共生をテーマに据えた「立花隆の南米紀行」だ。<トマス・モアは差別や搾取のない南米の共同体に心を揺さぶられ、「ユートピア」を著した。同書に記された理想社会が社会主義や共産主義の基礎になった>と立花氏は分析していた。1998年にベネズエラでチャベスが大統領に就任して以来、次々に左派政権が誕生する南米と符合するものを感じる。

 先日、グリーンズジャパン(緑の党)主催のオンラインセミナー「EUグリーンリカバリーとドイツのチャレンジ」に参加した。講師のジャミラ・シェーファー氏はドイツ緑の党の連邦委員会の若き女性メンバーで国際政治を担当している。セミナーは英語で進行し、逐次通訳される。英語と日本語を交えたパワーポイントで最低限、内容は理解出来た。

 9月の連邦議会選挙に向けた世論調査で、ドイツ緑の党はメルケル首相のキリスト教民主・社会同盟と接戦になっている。アイスランド(グリーンレフト)に続き緑の首相誕生の可能性も囁かれているが、党首を巡る資金スキャンダルが報じられ、支持率は20%を切った。

 今回のセミナーでドイツの政治状況を知ることが出来た。メルケル首相は原発廃止を宣言し、ドイツは再生可能エネルギー推進国で知られている。コロナ禍でメルケル首相の発した哲学的なメッセージが世界の称賛を浴びた。真実は果たしてどうなのか。シェーファー氏は現政権をヘッドライン政治と断罪していた。

 ドイツ政府は環境税導入に消極的で、自動車産業や運送業に肩入れしている。環境に害を及ぼす補助金(ディーゼル関連)は廃止すべきと強調していた。コロナ危機の勝者といえるアマゾンなどIT企業は税金を払っていない。緑の党はデジタル税導入を目指している。

 ドイツだけでなく欧州緑の党はグリーンリカバリーを推進している。ポスト・コロナを見据え、持続可能かつグリーンでデジタルな社会の移行を志向している。具体的には「復興レリジエンス・ファシリティー」で、6725億ユーロを財政支出する公的投資、金融支援で、半分は返済不要だ。欧州共同プロジェクトのために更なる基金が必要だが、ドイツ政府の対応は不十分という。

 ドイツ政府の方針を〝グレーリカバリー〟と批判するシェーファー氏は、地域レベル、自治体レベルにおける運動を積み重ね、ステークホルダーを巻き込むことが必要と語る。フランスの自治体選挙では<グリーン・レッド連合>が勢力を伸ばすなど、緑の党を軸に地殻変動が起きている。翻って日本はどうか。

 25日に告示された都議選では、小金井選挙区で漢人あきこ氏(緑の党東京共同代表)が立候補した。前回は都民ファーストの勢いに僅差で敗れたが、今回は野党統一候補で当選のチャンスは大きい。<人に寄りそうグリーンな東京>を掲げ、セーフティーネットの拡充、ジェンダー平等、緑と環境最優先などを政策に挙げている。一方で、小池都知事の静養が物議を醸している。都ファ完敗の予測に自民党への接近を画策中とみるむきもある。

 夫婦別姓問題、原発再稼働、公文書偽造など日本政府は腐臭を放っている。立花氏はあの世で惨憺たる現状をいかに見ているだろう。漢人さんの当選が、日本社会を変える一歩になることを期待する。俺も時間を見て応援に駆けつけたい。
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1 コメント

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Unknown (ハセベ ケンイチ)
2021-07-01 01:30:30
立花隆氏の逝去は、残念です。個人的に、ありがとうございました、です!
でも、悲観はしておりません。寿命を迎える方がたくさんおりますが、少子化とかゆっても今もこれからも生まれてくるひとがたくさんたくさんおりますゆえ。

立花隆氏の仕事で印象に残るのはなんといっても「宇宙からの帰還」であり、「脳死」であり、「日本共産党の研究」であり「中核vs革マル」です。
それらの本ににんげんの可能性と愚かしさを学びました。

立花隆さんが蒔いた好奇心という種を受け取りました。
ぼくはぼくの生をなるべく全うしよう! 実際に会ったことはないですし、たぶんひとの役には立たないだろうけど、ぼくには立花隆さんから学んだことが幾多あります。
そうして、歴史は作られていくのだとおもいます。たくさんの死者に支えられて、現在のにんげんの生があります。

ありがとう。ごめんなさい。

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