将棋の名人戦第2局は先手の藤井聡太6冠が渡辺明名人を破り、2連勝と好スタートを切った。中盤はねじり合いが続いたが、終盤は藤井が怒濤の寄せを見せる。叡王戦では完敗したが、短期間でショックを払拭していた。若い王者の心身のタフネスさは驚嘆に値する。
他者や社会といかに繋がっていくべきか……。この問いの前提にある<繋がっていくことに意味がある>という価値観は間違ってはいないが、受け止め方に個人差はある。亡き妹は父系の商売人の気質を受け継いでおり、多くの人と繋がっていた。葬儀には普通の主婦では考えられない数の人か参列し、涙の洪水状態になる。母系はというと、名を成した祖父だけでなく祖母、母、母の2人の姉も晩年は繋がりから遠ざかった。
俺は母系のDNAが濃いが、それでも社会の扉を叩くことがある。グリーンズジャパン(緑の党)での活動に加え、自殺防止のボランティアに関心を持っている。何の資格もなく、経験といえば数え切れない失敗だけだから無理筋だが、万が一ビフレンター(相談員)に採用されたら、「あなたは誰かに必要とされている。しっかり繋がってますよ」と電話の向こうの人に話すかもしれない。
2023年現在の繋がり方について考えさせられる映画「サーチ2」(23年、アニーシュ・チャガンティ監督)を新宿で見た。「サーチ」(18年)の続編で、原題は“Missing”(行方不明)だ。<全画面伏線アリ。デジタルプラットホーム上で展開する第一級のサスペンスホラー>の謳い文句に偽りなく、アナログ人間の俺はハイテンポについていくのが精いっぱいだった。
前作監督のチャガンティは原案と製作に回り、編集を担当したウィル・メリックとニック・ジョンソンが共同監督を務めている。主要キャストも前作同様、マイノリティーが占めていた。主人公ジューン(ストーム・リード)はアフリカ系の女子高生で、あれこれ干渉してくる母グレイス(ニア・ロング)と折り合いが悪い。グレイスはアジア系の恋人ケヴィン(ケン・レオン)とコロンビアに旅行に出掛ける。
ジューンは帰国した2人を空港に迎えにいくが、姿が見当たらない。パソコンとスマホを駆使し、サイバー空間を疾走する。出した答えは<行方不明>だ。ジューンの協力者は親友でインド系のヴィーナ(ミーガン・スリ)、アジア系のパーク捜査官(ダニエル・へニー)、そしてコロンビア在住の便利屋ハビ(ヨアキム・デ・アルメイダ)だ。
本題から逸れるが、80億人の一挙手一投足がチェックされている。マルクス・ガブリエルは<SNSをツールにした消費資本主義が蔓延し、自らの意志はコントロールされている>と警鐘を鳴らしていた。岸博幸慶大教授(小泉政権で安全保障担当)は「仮面の下に〝皆殺しの発想〟を隠しながらアメリカの一元化に寄与している」とグーグルと情報機関との癒着を批判していた。
閑話休題。ジューンは瞬間の判断力と分析によって母の痕跡に迫っていく。人間にとって普遍かつ不変の母娘の絆が、サイバー空間で新たな形を見せる。謳い文句の<全画面伏線アリ>の意味が冒頭とラストでショートし、グレイスの、そしてジューンの人生を上書きする。ベースにあるのは身を賭すに相応しい愛だ。
ぜひ映画館で、それが無理ならDVDかテレビでご覧になってほしい。前もって前作をチェックするのもお勧めだ。刺激的でエキサイティングな時間を過ごせること請け合いだ。
他者や社会といかに繋がっていくべきか……。この問いの前提にある<繋がっていくことに意味がある>という価値観は間違ってはいないが、受け止め方に個人差はある。亡き妹は父系の商売人の気質を受け継いでおり、多くの人と繋がっていた。葬儀には普通の主婦では考えられない数の人か参列し、涙の洪水状態になる。母系はというと、名を成した祖父だけでなく祖母、母、母の2人の姉も晩年は繋がりから遠ざかった。
俺は母系のDNAが濃いが、それでも社会の扉を叩くことがある。グリーンズジャパン(緑の党)での活動に加え、自殺防止のボランティアに関心を持っている。何の資格もなく、経験といえば数え切れない失敗だけだから無理筋だが、万が一ビフレンター(相談員)に採用されたら、「あなたは誰かに必要とされている。しっかり繋がってますよ」と電話の向こうの人に話すかもしれない。
2023年現在の繋がり方について考えさせられる映画「サーチ2」(23年、アニーシュ・チャガンティ監督)を新宿で見た。「サーチ」(18年)の続編で、原題は“Missing”(行方不明)だ。<全画面伏線アリ。デジタルプラットホーム上で展開する第一級のサスペンスホラー>の謳い文句に偽りなく、アナログ人間の俺はハイテンポについていくのが精いっぱいだった。
前作監督のチャガンティは原案と製作に回り、編集を担当したウィル・メリックとニック・ジョンソンが共同監督を務めている。主要キャストも前作同様、マイノリティーが占めていた。主人公ジューン(ストーム・リード)はアフリカ系の女子高生で、あれこれ干渉してくる母グレイス(ニア・ロング)と折り合いが悪い。グレイスはアジア系の恋人ケヴィン(ケン・レオン)とコロンビアに旅行に出掛ける。
ジューンは帰国した2人を空港に迎えにいくが、姿が見当たらない。パソコンとスマホを駆使し、サイバー空間を疾走する。出した答えは<行方不明>だ。ジューンの協力者は親友でインド系のヴィーナ(ミーガン・スリ)、アジア系のパーク捜査官(ダニエル・へニー)、そしてコロンビア在住の便利屋ハビ(ヨアキム・デ・アルメイダ)だ。
本題から逸れるが、80億人の一挙手一投足がチェックされている。マルクス・ガブリエルは<SNSをツールにした消費資本主義が蔓延し、自らの意志はコントロールされている>と警鐘を鳴らしていた。岸博幸慶大教授(小泉政権で安全保障担当)は「仮面の下に〝皆殺しの発想〟を隠しながらアメリカの一元化に寄与している」とグーグルと情報機関との癒着を批判していた。
閑話休題。ジューンは瞬間の判断力と分析によって母の痕跡に迫っていく。人間にとって普遍かつ不変の母娘の絆が、サイバー空間で新たな形を見せる。謳い文句の<全画面伏線アリ>の意味が冒頭とラストでショートし、グレイスの、そしてジューンの人生を上書きする。ベースにあるのは身を賭すに相応しい愛だ。
ぜひ映画館で、それが無理ならDVDかテレビでご覧になってほしい。前もって前作をチェックするのもお勧めだ。刺激的でエキサイティングな時間を過ごせること請け合いだ。