「長距離走者の孤独」、「土曜の夜と日曜の朝」、「華麗なる門出」etc……。英労働者階級の真情を代弁したアラン・シリトーが亡くなった。学生時代に読み漁った作家の冥福を心から祈りたい。
シリトーが示した反骨と怒り、皮肉と冷笑、諦念とユーモアは、モッズからパンク、ブリットポップにも息づいている。訃報を知った当日(26日)、DUO MUSIC EXCHANGE(渋谷)で見たステレオフォニックスも、シリトーの精神を受け継いでいるはずだ。
開演20分ほど前に入場した途端、「?」となった。太い柱が3本並び、ステージが実に見づらい。仕方なく後方の階段を上ると、椅子が2列に並んでいるではないか。水がたまった膝は完治していないので、最高齢の客(恐らく)はこれ幸いと腰を下ろす。そこはメンバー5人(サポート1人を含む)の動きを視界に捉える〝奇跡のシルバーシート〟だった。
ステフォとはフジロック'98(豊洲)以来、12年ぶりの再会になる。当時の彼らはとっぽいアンちゃんだったが、齢を重ねて研ぎ澄まされた印象を受けた。ケリー・ジョーンズの豊かでハスキーな声に、「ロックはこうでなくっちゃ」と実感する。最新作「キープ・カーム・アンド・キャリー・オン」から多めにピックアップされていたが、以前の6作からも満遍なくセットリストに加えていた。
ファンと声を大にするつもりはないが、アルバムを全部持っている〟……。このステフォへのスタンスは、パール・ジャムとも共通する。ともに<ロックスタンダード>を体現する骨太の速球派で、両バンドのフロントマン、ケリーとエディ・ヴェダーはフーの信奉者だ。<日本で売れない音の系譜>が何となくわかる気がする。
佳境に差し掛かり、ケリーの声がリアム・ギャラガーに重なった。ステフォもまた、<オアシス不在>を埋めたバンドだったのか。オアシスが3rd以降、ステフォに匹敵する高クオリティーのアルバムを1枚でも発表していれば、神話が褪せることはなかっただろう。
後半は1st、2ndからのオンパレードで、フロアは大いに盛り上がる。陰翳に富んだ愛聴盤の5rh「ランゲージ・セックス・ヴァイオレンス・アザー?」からの「ダコダ」で中身の濃いライブを締めくくった。メロディーとビートが程よく混ざり合った音の奔流に熱く揺さぶられ、年甲斐もなく高揚感を覚えた夜だった。
「こんな小さいとこ(キャパ1000人)でステフォを見れるなんて、ウソみたい」
「5枚のアルバムが全英1位に輝いた国民的バンドなんだよな」
出口へ向かう途中、耳にした若者たちの会話である。不況が若者を直撃する現在、ロックを取り巻く環境は悪化しているようで、年明けのカサビアンから来日キャンセルや公演延期が相次いでいる。表向きの理由は「アーティスト側の事情」だが、恐らくチケットが売れなかったのだろう。
ステフォだけでなく、海外での人気と評価が動員に結び付かないケースが多い。別稿(21日)に記したMGMTも〝売れるNY派〟らしく、新作がビルボードで2位にチャートインしているが、日本での単独公演ならリキッドルームあたりが精いっぱいだろう。
〝日本は客が集まらないからパス〟というバンドが続出したら、遠からずフジロックもサマーソニックも成立しなくなる。老ファンの杞憂であることを願うばかりだ。
シリトーが示した反骨と怒り、皮肉と冷笑、諦念とユーモアは、モッズからパンク、ブリットポップにも息づいている。訃報を知った当日(26日)、DUO MUSIC EXCHANGE(渋谷)で見たステレオフォニックスも、シリトーの精神を受け継いでいるはずだ。
開演20分ほど前に入場した途端、「?」となった。太い柱が3本並び、ステージが実に見づらい。仕方なく後方の階段を上ると、椅子が2列に並んでいるではないか。水がたまった膝は完治していないので、最高齢の客(恐らく)はこれ幸いと腰を下ろす。そこはメンバー5人(サポート1人を含む)の動きを視界に捉える〝奇跡のシルバーシート〟だった。
ステフォとはフジロック'98(豊洲)以来、12年ぶりの再会になる。当時の彼らはとっぽいアンちゃんだったが、齢を重ねて研ぎ澄まされた印象を受けた。ケリー・ジョーンズの豊かでハスキーな声に、「ロックはこうでなくっちゃ」と実感する。最新作「キープ・カーム・アンド・キャリー・オン」から多めにピックアップされていたが、以前の6作からも満遍なくセットリストに加えていた。
ファンと声を大にするつもりはないが、アルバムを全部持っている〟……。このステフォへのスタンスは、パール・ジャムとも共通する。ともに<ロックスタンダード>を体現する骨太の速球派で、両バンドのフロントマン、ケリーとエディ・ヴェダーはフーの信奉者だ。<日本で売れない音の系譜>が何となくわかる気がする。
佳境に差し掛かり、ケリーの声がリアム・ギャラガーに重なった。ステフォもまた、<オアシス不在>を埋めたバンドだったのか。オアシスが3rd以降、ステフォに匹敵する高クオリティーのアルバムを1枚でも発表していれば、神話が褪せることはなかっただろう。
後半は1st、2ndからのオンパレードで、フロアは大いに盛り上がる。陰翳に富んだ愛聴盤の5rh「ランゲージ・セックス・ヴァイオレンス・アザー?」からの「ダコダ」で中身の濃いライブを締めくくった。メロディーとビートが程よく混ざり合った音の奔流に熱く揺さぶられ、年甲斐もなく高揚感を覚えた夜だった。
「こんな小さいとこ(キャパ1000人)でステフォを見れるなんて、ウソみたい」
「5枚のアルバムが全英1位に輝いた国民的バンドなんだよな」
出口へ向かう途中、耳にした若者たちの会話である。不況が若者を直撃する現在、ロックを取り巻く環境は悪化しているようで、年明けのカサビアンから来日キャンセルや公演延期が相次いでいる。表向きの理由は「アーティスト側の事情」だが、恐らくチケットが売れなかったのだろう。
ステフォだけでなく、海外での人気と評価が動員に結び付かないケースが多い。別稿(21日)に記したMGMTも〝売れるNY派〟らしく、新作がビルボードで2位にチャートインしているが、日本での単独公演ならリキッドルームあたりが精いっぱいだろう。
〝日本は客が集まらないからパス〟というバンドが続出したら、遠からずフジロックもサマーソニックも成立しなくなる。老ファンの杞憂であることを願うばかりだ。