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ペストを読みました

2020-05-20 13:24:47 | 読書


カミュのペストをやっと読み終えました。
文庫本450ページくらいの力作です。



著者はフランスの、アルベール・カミュ。
カミュという人は1913年~1960年(46歳)
不条理(通常の予測を外れ、人とうまく調和しないこと)の作家と呼ばれていました。

1957年、44歳の時にノーベル文学賞を受賞しています。
これは1907年に、
イギリス人のラドヤード・キップリングが42歳で受賞したのに次いで、
2番目に若い受賞者でした。

「ペスト」はカミュの出身地であるアルジェリアを舞台に描かれています。
アルジェリアは北アフリカの地中海に面した国。
といっても国土の殆どは砂漠地帯の国です。




舞台はオラン市という観光が売りの地中海沿岸の風光明媚な都市です。
現在のオラン市は人口70万人近くですが、
小説の舞台は194〇年という仮定ですから、
当時は第二次世界大戦などありましたから、その半分程度だったのでしょうか。

その都市を、ある日ペストが襲います。
最初はネズミの死骸が多くなった事から始まって行きます。
その内に市街地のあちこちにネズミの死骸が溢れる様になってきます。
人々は「これは変だ、何か恐ろしい事が始まっている」と感じ出します。



その内に人が死に始めました。
死者の身体は黒く変色しています。
ペストは黒死病とも言われ死者の体は黒く変色しています。



西暦1300年代半ばにペストはヨーロッパで大流行を起こし、
ヨーロッパの1/3が死に絶えました。
街中が死屍累々たる死体の山になったのでした。
ペスト菌の発見は1894年ですから、
その当時の人は訳も分からずに次々に人が目の前で死んでいき、
明日は自分が死ぬかもしれないのですから、その恐怖心は大変なものだったでしょうね。

小説の語り手でもある主人公の医者はペストを確信し、
知事に訴えますが、知事は事を荒立てたくないのです。
ネズミや死者の事を、さも、それほど騒ぐ事ではないみたいな、
新聞記事を片隅に少し載せてお茶を濁そうとします。
しかし、それも束の間、
隠し通せる範囲は瞬く間に超え、知事は仕方なく命令を出します。
ロックダウン(都市封鎖)が始まりました。

ロックダウンは9か月間の長期に及びました。
市外から市に入るのは自由ですが、
市内から外に出る事は絶対に出来なくなってしまいました。
ゲートには警官が貼り付いていて、どうにも出られないのです。

人々は自分が正当な理由を持ち、出る権利があると言って市外に出ようとしますが、
個人的な言い訳は絶対に認められないのです。
もう完全に諦めざるを得なくなってしまいました。

そういった特殊な環境、それもいつ終わるか全くわからない、
先の見えない真っ暗闇の中で人々は懸命に生きるのでした。

あれ?それって何処かと同じじゃないの?
そうなんですね、今の我々と同じなんです。
ただ、ペストの致死率は今の日本の比ではありません。
そして、今より医療技術は低いのです。



ペストというと、必ずこういった姿を見るのですが、
これは1619年に作られたペストの治療にあたる人が着る服です。
大量の香辛料をクチバシの部分に詰め、
皮膚接触から身を護る為の一種の医療着です。


果たして人々の運命は・・・それは本に書いてあります。

カミュは小学校の教諭からその才能を見出され、
奨学金を受けながら高等中学に進学する事ができました。
カミュはこの教諭の恩を生涯忘れなかったそうです。

アルジェリア大学・文学部哲学科を卒業しましたが、
それもあって、カミュの文体は哲学色を強く感じます。
ですから、人の心理描写などはどうでもいいから、
話の先を早く知りたいとだけを思う読者にはまどろっこしいかも知れないし、
そういった心理描写こそカミュだという読者はファンになるでしょうね。



1960年、フランス・パリの郊外で、
友人の運転するフランス製、現在は存在しない高級車メーカー。
ファセルベガが超高速で立ち木に激突し、
助手席に乗っていたカミュは即死でした。46歳でした。



この方、きっとテレビで観た事があるとおもうのですが、
名前はセイン・カミュ。
カミュのお兄さんの孫という事です。

「ペスト」は今、売れに売れているという事ですが、
それはきっと日本だけの事ではなく、
恐らく世界中が同じで、
これを機にカミュファンが増えると思います。



コメント
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