OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

私の好きなジョー・ゴードン

2009-02-21 11:35:46 | Jazz

Introducing Joe Gordon (EmArcy)

特にジャズを聴き始めると、妙に偏愛してしまうミュージシャンに出会ってしまうと思うのですが、私にとってはジョー・ゴードンが、そうしたひとりです。

きっかけはホレス・シルバーの名盤「Silver's Blue (Epic)」を聴いたことで、この溌剌としてビバップ正統派の黒人トランペッターを好きになってしまったのですが、これは中学生の恋愛に似ていたと今は思っています。つまり、かなりのイノセント♪♪~♪

ちなみにジョー・ゴードンは小型ガレスピーと言われたほどの名手ですが、決して多くの録音は残していません。

そして本日ご紹介のアルバムは、数少ないリーダー盤です。

録音は1954年9月3&8日、メンバーはジョー・ゴードン(tp)、チャーリー・ラウズ(ts)、ジュニア・マンス(p)、Jimmy Schenck(b)、アート・ブレイキー(ds) という、実に味わい深いクインテットです。

A-1 Toll Bridge
 いきなりビンビンにブッ飛ばす真正ハードバップの名演ですが、この曲って、実はコールマン・ホーキンス(ts) が歴史的な名演とされる元祖ビバップの「Rifftide」と同じでは!?
 それゆえにワクワクするようなイントロのリフから痛快なテーマ合奏、さらに勢いに乗じて突進するジョー・ゴードンのトランペットが火の玉です。リズム隊の猛烈な後押しも凄い!
 さらに大運動会のようなチャーリー・ラウズ、手加減しないジュニア・マンス、熱いドラングで盛り上げていくアート・ブレイキー、野太いペースワークを響かせる Jimmy Schenck も頼もしいと思います。

A-2 Lady Bob
 クインシー・ジョーンズが書いた最高にカッコ良いファンキー曲で、粘っこいジュニア・マンスのピアノにゴスペルムードのドラムス&ベースがグルーヴィ♪♪~♪ もちろんフロントの2人による、絶妙の思わせぶりを入れたテーマ吹奏が、たまりません。
 そして強いバックピートに煽られたジョー・ゴードンのアドリブの熱さには、純粋な黒人ジャズの喜びが爆発しているようで、全くドキドキさせられます。続くチャーリー・ラウズの落ち着いた黒いムードも良いですねぇ~~♪ あぁ、ぶる~す!
 と、くれば、ジュニア・マンスにとっては十八番の展開ですから、短いながらも絶品のアドリブが冴えまくりですよっ♪ 本当に良い雰囲気が横溢しています。

A-3 Grasshopper
 これもクインシー・ジョーンズが書いたハードバップ曲で、その爽やかに躍動するテーマリフの楽しさがヤミツキになります。う~ん、このあたりは西海岸派の味わいもありますねぇ。
 しかしアドリブパートの熱気は、間違いなく黒人だけの強いピートに裏打ちされたものでしょう。とにかく勢い満点のジョー・ゴードンのトランペットからして、エキセントリックなビバップの鋭さと尚更に黒っぽい感性が上手く融合しています。
 またチャーリー・ラウズも幾分生硬なノリが逆に好ましく、何時も同じようなフレーズしか吹かないと酷評されることもある逆説的な名手の証明も、ここでは「逆もまた真なり」だと思います。
 さらにリズム隊のハードな感覚も素晴らしく、ズバリと核心を突いたジュニア・マンスは、やっぱり好きです。そしてアート・ブレイキーの奮闘にも熱くさせられますから、クライマックスのソロチェンジは、まさに「手に汗」ですし、続くラストテーマも爽快の極みです。

B-1 Flash Gordon
 おぉ、これはジャズメッセンジャーズのテーマ曲じゃないですかっ!?
 そして既に皆様がご推察のとおり、このセッションはプレ・メッセンジャーズなんですねぇ~♪ そう思えば、テーマリフにホレス・シルバー調のアレンジが入ってしまったのも納得です。
 ジョー・ゴードンのトランペットは不安定な部分をスリルに変換するという、禁断の裏ワザを使っていますが、それも結果オーライでしょう。私はそこが好きだったりするのです。
 またジュニア・マンスのピアノが意外にも正統派ビバップに偏っていながら、さらに温故知新の隠し味♪♪~♪ それゆえにチャーリー・ラウズのテナーサックスが苦笑いして登場する感じも、好ましいと思います。う~ん、またまた同じようなフレーズばっかり吹いてますよ。ニンマリするしかありませんねぇ~♪
 そしてクライマックスで激突するジョー・ゴードン対アート・ブレイキー! 時間切れの引き分けという感じが勿体なくも痛快です。

B-2 Bous Bier
 ラテン風味のファンキーメロディという、実にハードバップの美味しいところを凝縮した名曲です。ミディアムテンポのグルーヴィなムードも、このバンドならではの魅力が良く出ていると思います。
 それはジョー・ゴードンの秘められた歌心が上手く引き出されたことでも証明されるように、実はこれまたクインシー・ジョーンズの作曲というミソがあるのですねぇ~♪ おそらくはこのセッションの仕切りは、この若き天才ではなかったでしょうか?
 ジュニア・マンスも「A Night In Tunisia」のリフまでも使わされる快演ですし、熱い胸の内を吐露したようなチャーリー・ラウズのジワジワした迫り方には、グッと惹きつけられます。
 つまりこれは、前述した「A Night In Tunisia」の改作というのがタネ明かしかもしれませんね。しかし憎めないと思います。演奏か熱いですから♪♪~♪
 
B-3 Xochimilco
 これまた曲タイルのアナグラムからして、メキシコ調の陽気なビートとメロディが楽しいです。ライトタッチのフロント陣とずっしり重みも感じさせるリズム隊のバランスも秀逸でしょう。
 ジョー・ゴードンのアドリブには、悪いクセみたいなヒキツリも出てしまいますが、それも私にとってはアバタもなんとやら♪♪~♪ 全く微熱な恋愛模様ですし、チャーリー・ラウズの纏まりの悪いソロ展開にしても、その懸命さが好きだったりします。
 その点、リズム隊の安定感は抜群で、逆に面白くないほどですが、それは贅沢というもんでしょうね。

ということで、典型的なハードバップの名盤だと思います。

ちなみにこれは最初、前半の4曲だけが10インチ盤で発売され、後に後半の2曲を追加した12インチ盤として再発されたのが、ご紹介のLPです。全体の音作りは、エマーシー特有の明るくてパンチの効いたもので、これも多いに魅力ですが、実は10インチ盤と12インチ盤を比較すると、明らかに前者に軍配が上がるというのが、サイケおやじの素直な気持ちです。なんというか、音そのものが、尚更に強いんですねぇ。

ですから、それは忽ち「幻の名盤」と認定されています。そして私には高嶺=高値の花となりました。それでもこの再発盤を手にした時は、嬉しかったですよ。少なくとも「聴く」という基本的な行為を楽しめましたから! これは決して、負け惜しみではありません。

もうひとつ、贅沢を言わせてもらえば、このセッションには残り2曲の演奏が実在し、その「Evening Lights」と「Body And Soul」は、「The Jazz School」というアルバムに収録されています。これも欲しいなぁ……。

もしかしたらCD化されて、このセッションが全て纏められているかもしれませんね。

有名ではありませんが、機会があれば、ぜひともお楽しみ下さいませ。決して後悔しない、ハードバップに愛のある名盤だと思います。

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