OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

ジョン・コルトレーンの最初の黙想

2017-07-17 15:26:41 | Jazz
First Meditations (For Quartet) / John Coltrane (Impuise / ABC)

 A-1 Love
 A-2 Compassion
 B-1 Joy
 B-2 Consequences
 B-3 Serenity
 
本日はジョン・コルトレーン没後50年目の命日……、にしては巷でそれほどの追善供養が行われているような気がしないのは、既にサイケおやじがジャズを真っ向勝負で聴く生活から遠退いている所為でしょうか……。

そこで原点回帰として、朝一発目から故人のレコードをあれやこれやと取り出し、まずは針を落としたのが本日掲載のLPなんですが、この凡そ「らしくない」ジャケットデザインは、発売されたのが1977年という所謂フュージョン全盛期だった時代背景を考慮しても、なんだか煮え切らない気持ちは今も昔も変わりません。

しかし、現実としてのリアルタイムじゃ~、まさかの嬉しさに大歓迎されたんですよっ!

なんたって演奏メンバーがジョン・コルトレーン(ts) 以下、マッコイ・タイナー(p)、ジミー・ギャリソン(b)、エルビン・ジョーンズ(ds) という黄金のカルテットで、しかも収めらていたのが1966年に世に出た、あの混濁と静謐の名盤「メディテーションズ」と同じ曲目だったんですから、これはもう、聴く前からドキドキさせられるのがジャズ者の宿業でありましょう。

とにかく「ファースト・メディテイションズ」というアルバムタイトルに偽り無し!

それは、説明不要かとは思いますが、件のLP「メディテーションズ」がお馴染みのカルテットにファラオ・サンダース(ts) とラシッド・アリ(ds) を加えての得体の知れなさというか、1965年の問題作「アセンション」以降、ますますフリージャズに傾倒していった故人の音楽性を肯定するが如き新旧世代の対立の構図は、そのまんま、リスナーを戸惑わせるものになっていたはずで、リアルタイムのコルトレーン信者はもちろんでしょうが、後追いでジャズを聴く楽しみを知ったサイケおやじを含む一般のファンにしても、聴く前から腰が引けてしまっていたのが、この時期のジョン・コルトレーンのレコードだったように思います。

しかし、ジョン・コルトレーンがそれでも愛想を尽かされなかったのは、フリージャズと言っても、決して出鱈目の垂れ流しでは無く、独自の文法らしきものを打ち立てる、その前向きな(?)姿勢がどうにかリスナーに伝わってきたからだとすれば、前述のアルバム「メディテーションズ」が激情と狂乱を演じるファラオ・サンダースに対し、静謐な衝動で威厳を示すジョン・コルトレーンの有様こそが、混濁しながらも爆発力を失わないリズム隊共々に、ひとつのジャズ的精神宇宙を成り立たせ、スピーカーの前のファンをそこに引き込むブラックホール!?

ですから、聴いていて、どうにも疲れるし、それが心地良さに転化する瞬間のエクスタシーだったとしても、余程の気持が入っていなければ、自室では気楽に針を落とせないのが「メディテーションズ」という傑作LPだと、そんなふうにサイケおやじが決め込んでいたところに、この「ファースト・メディテイションズ」の発売は、故人没後10年目の1977年でありました。

そして、そこには正統派ストロングスタイルのジャズが大好きなファンならば、聴く前から演奏メンバーのクレジットを確認して歓喜悶絶!

さらにレコードを聴きながら、シビレが止まらないほど昇天させられる桃源郷に連れて行かれるわけですが、しかし不肖サイケおやじも、そのひとりだったとはいえ、生来の天邪鬼の身としては、なんだか妙な物足りなさを覚えたのも、また正直なところ……。

それは結論から述べさせていただければ、まずジョン・コルトレーン本人の出来がイマイチ、調子が出ていないんじゃ~なかろうか?

という非常に不遜な気持ちであり、カルテットとしての纏まりも、所々で迷いや模索が滲んでいる感じあるような、う~ん……、こんな事を書いてしまうと、皆様からのお叱りは必至だと思いますが、そんなこんなの収録演目に対する正直な感想は――

まずA面ド頭「Love」は、暑苦しい曲調のスローな演奏で、巷間云われるところのスピリチュアルなムードが横溢しているあたりは、如何にもの人気があって、なにしろ前述のLP「メディテーションズ」の中にあっても、グッと惹きつけられる魅力は否定し難いものでしたからねぇ~~。

ちなみに、このアルバムに収録の全曲は1965年9月2日、「メディテーションズ」は同年11月23日のセッションから作られたという歴史を鑑みれば、その2ヶ月足らずの短期間に何がどのように変化し、進化したのかは興味深いところだと思いますし、その意味で続くミディアムテンポの「Compassion」におけるジョン・コルトレーンが痙攣シビレ節で咆哮すれば、ドスドスに敲きまくって物分かりの悪さを露わにするエルビン・ジョーンズの対峙こそが、黄金のカルテット全盛期を論証しているのでしょうか……。

そしてレコードをひっくり返してB面に針を落とせば、いきなりアップテンポの「Joy」が始まりますが、最初っからエルビン・ジョーンズのタイミングが合わないようなドラミングが耳触りですし、リズム隊も隙間だらけの伴奏というか、これはサイケおやじの独断と偏見なんでしょうが、だからこそアドリブパートに入ってからの猛烈なノリで突進する演奏は流石、黄金のカルテットの面目躍如!

しかし、逆に言えば、だからこそこの「Joy」は6人組で作られた本篇アルバム「メディテーションズ」では不採用で演奏されず、実はここでのセッションから間もない同年9月22日に再演レコーディングされたバージョンが、なんとっ!

1972年、つまりジョン・コルトレーンの没後に未亡人となったアリス・コルトレーンが様々に意味不明なオーバーダビングを施して仕立て上げた「インフィニティ」というLPに流用されるという、これまたなんともな仕打ちが……。

だからでしょう、現在では故人の遺作がCD復刻された際、この「Joy」のオリジナル再レコーディングバージョンがオーバーダビング抜きで聴けるようになり、その安心印が尚更に強くなった演奏は素晴らしいかぎりなんですが、そ~ゆ~保守性が感じられるところに、賛否両論があるのも、また事実だと思います。
 
閑話休題。

で、いよいよこのアルバム「ファースト・メディテイションズ」の佳境に入るのが「Consequences」で、実は思いっきりフリーな演奏でありながら、エルビン・ジョーンズはきっちり4ビートを感じさせるドラミングをやっていますし、マッコイ・タイナーは本領発揮の大爆発ですから、後半でのジョン・コルトレーンの大噴火は、全てのジャズ者を納得させる伝家の宝刀でありましょう。

そして間断無く入ってしまう「Serenity」は、厳かで勿体ぶった雰囲気に溢れていて、これが終局を演出するには最良のやり方だったのかもしれませんが、安らぎよりは微妙に悪い予感が滲んで来るような……。

う~ん、ジョン・コルトレーン……、何も途中で無理やりっぽく咆哮することはないだろうに……。

という、またまた不遜の極みを吐露してしまったサイケおやじではありますが、やっぱりこの「ファースト・メディテイションズ」はリアルタイムでゲットさせられたわけですし、当時のジャズ喫茶では、ほとんどの店でリクエストが絶えなかった人気盤でありました。

以下は全くのサイケおやじの独断と偏見、そして妄想ではありますが、「ファースト・メディテイションズ」の魅力は、まずは黄金のカルテット最末期の演奏が聴ける事が一番なのは言わずもがな、決して絶好調とは言い難いジョン・コルトレーン自身のプレイから伝わって来る前向きな姿勢とそれに対する迷いが、後年神様に祀り上げられる偉人の素顔の一面を感じさせるからかもしれません。

告白すれば、サイケおやじは、この「ファースト・メディテイションズ」を聴き込んで後、本篇「メディテーションズ」が好きになったのであって、それもまたサイケおやじの OLD WAVE な体質を証明する事象に他なりません。
 

さあ、今夜は「メディテイションズ」をしっかり聴いて、故人を偲びましょうか。

合掌。
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