1031ビジネス・コンサルティング

経営コンサルタントの目で、日々の出来事から、参考になるキーワードを取り上げて、解説したり、情報発信をします。

6.おわりに 

2021-07-29 13:56:52 | 独り言
6.おわりに 
 スマート・タウン構想はSociety5.0をにらんだうえで,地域に応じた自動搬送車開発からスタート,地域の物流,人の流れを人力を介さずに行うことで,事業運営の最大ともいえる費用を抑え,経済を回し,農業,漁業等地域によっては林業などの一次産業の活性化を図り,2次,3次産業へと新たなイノベーションを生みながら発展を目指すものである。  インフラ整備も将来を見据えた再構築が求められ,規制改革も必要であり,ライフラインや道路・交通網の整備等将来を見据え計画的に行う必要がある。すでに再開発・整備されている地域でも,どこから再度経済循環を回していくのか,地域の事情に応じて対応する必要はあるが,地方からの未来志向の開発こそ,エッジ・イノベーションの具現化につながる。スーパーシティ構想の実現は重要であるが,膨大な開発費用と時間を要するため,早期実現のためには地域創生,それも身近な課題解決から始めることを提案する。人生を楽しく過ごしながら仕事を行い,自分らしい生活を送る社会,都会における生活だけがスマートではないとコロナ禍を経験して分かった今,「スマートシティ」構想の各テーマは地方創生の課題でもあるが,筆者は早期の実現に向けて自動搬送車の開発からエッジ・イノベーションを起こし,「スマート・タウン」の実現を提案する。
 内閣府提案ではスーパーシティやスマートシティ構想の基本は「地域の困った」をAIやビッグデータなどを活用した世界最先端の街づくりである。しかし今何より求められているのは地域住民の安心・安全とゆとりのある暮らしを守ることである。ローカル5Gを活かした基地局の充実,自動運搬車のプラットフォームづくり,地域環境の保全,SDGsなどの課題解決,未来を見越した規制改革をまず地方から始め,順次都市へと広げていくことを提案する。
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5.日本におけるイノベーションのジレンマ

2021-07-22 17:46:40 | 独り言
5.日本におけるイノベーションのジレンマ
 翻って1979年,社会学者エズラ・ヴォ―ゲルは日本の高度経済成長を分析,日本特有の社会・経済を美化しアメリカに対して学ぶべき点を示唆するなど,日本が世界でも優れた国であると言われた時があった。デジタル化社会(情報化社会)は1981年にIBMのパソコンが市場に出てソフトウェア開発が開始されてから始まり,インターネットのWorld Wide Web(WWWワールド・ワイド・ウェブ)の発明は1989年なのだが,いつしか日本はその後失われた30年とも言われるようにアメリカのGAFAMや中国のBATH等海外の巨大企業の著しい発展の中で,後塵を拝するようになってしまった。
 2020年1月亡くなったハーバード・ビジネススクールのクレイトン・クリステンセン教授の言う「イノベーションのジレンマ」が日本の技術革新を遅らせてしまったのであろうか。
 筆者は現在中小企業診断士として「経営革新等支援機関」の認定を受け活動を行っているが,経営革新という言葉が最近よく聞かれるようになってきた。実はシュンペーターのイノベーションと類似した考え方で国は中小企業基本法(中小企業白書2009年版)の中で「経営革新」について,次のように定義している。
①新商品の開発または生産,②新役務の開発または提供,③商品の新たな生産または販売の方式の導入,
④役務の新たな提供の方式導入,⑤新たな経営管理方法の導入,その他の新たな事業活動を行うことにより,その経営の相当程度の向上を図ることをいう。
 そうしたイノベーションや経営革新が求められながらなぜ日本では生まれなかったのか,韓国のサムソンなど海外企業が頭角を現してきたのであろうか。
 イントレプレナーとして,デザイン会社を創業し経営する中で「デザイン思考」という言葉に出会いその当時国内における情報不足に衝撃を受けたものである。若いデザイナーなどからいろいろと学ぶと,海外企業のイノベーションに対する取り組みなど日本が遅れてきた理由の一端を知ることができた。それは,アメリカのスタンフォード大学で「デザイン・シンキング(デザイン思考)」の授業を持っているIDEO社やハーバード大学のビジネススクールで講義を持っているfrog社等デザイン系ではない大学が授業を行っているイノベーションを生む手法であるが,サムソンは1990年ごろにはIDEO社と連携し,中でもアナログからデジタルに変化する時代(ブラウン管が液晶パネルなどに変化)に商品の機能だけでなくデザインを含めた商品戦略で日本製品を駆逐していった過程が分かってきた。初めはソニーにパネルの提供をしながら,サムソンはアメリカのIDEO社の近くに事務所を構えあの薄型TVの開発を行い,一躍TVの世界市場のシェアを日本から奪っていった。韓国サムスングループ中興の祖,李健熙(イ・ゴンヒ)会長は2020年10月に亡くなったが,1987年から会長職に就き,半導体メモリーなどにおいても,日本を凌駕していった。1990年には地域専門職制度を設け入社2~3年の優秀な社員を世界各国に派遣,現地化することでその国の社会やユーザーについてリサーチ,その情報をフィードバックし,帰国すれば国内でのネットワーク構築を行った。コロナで海外旅行ができなくなったが,筆者はこれまで年4~5回海外に出向いており,どの国に行っても近年は韓国のサムソンやLG電子などの看板が目立つところに掲げられ,日本企業のあたかも隅に追いやられたような広告に歯がゆい思いをしたものである。
日本では今でもデザインと言えばグラフィックデザインやプロダクトデザインなど狭義のデザインを意識するのではと思われるが,デザインは企業の戦略にもつながる点を理解していないからである。若手のデザイナーは役員デザイナーや高齢のデザイナーが大学でデザイン思考を学んでおらず,意見を聞いてくれないと面談の際に語っていたのが忘れられない。
 首相の所信表明の中で,②デジタル社会の実現,サプライチェーンの話が出たが,どちらかと言えばコロナ禍での行政のサービスや民間のデジタル化の遅れについての内容であった。テレワークやワーケーションの実現が働く人の地方への移住や移動で地方の活性化につながるとも言われ,観光や農業改革により地方の所得を増やし,地方の活性化を目指すとされている。そのためにも自動搬送車の活用が求められている。
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4.6新配送システムによる地方創生

2021-07-18 18:21:28 | 独り言
4.6新配送システムによる地方創生
地方創生のために活用する自動搬送車は,初めから多機能とするのではなく,できる範囲から開発をスタートさせ,改良を加え,将来につなげ,早期地方への導入を目的としたい。
 点在する住宅,居住する高齢者,そうした買物難民,人口減少社会における配送を受け持つ人材不足,こうした諸々の課題をどのように解決し地方の新たな創生を図るのか,それはひとえに経済循環であり,物流の円滑化である。そこには単にモノを運べばよいのではなく,ITを活用した自動搬送車の活用が基本となる。モノの流れ,人の交流をスムーズに行うことが経済を回し,生活を豊かにする。GO TO TRAVELやGO TO EATキャンペーンは都市における経済循環に効果があるが,一部の観光地には恩恵があっても,大半の地方の景勝地もしくは知名度の低い場所ではその恩恵は少ないのが現状である。
 では地方創生,中でも過疎地などや政府の恩恵を受けていない場所での活性化はどうすればよいのであろうか。
 自動搬送車を利用していかに道の駅,地方のスーパーやコンビニ,その地域の食料品店などから生活者に向けて商品等を運ぶのか,またB to B,B to Cの商品移動をスムーズに行うのか,それによる経済循環の活発化をどのようにもたらせばよいのか。行政でも民間でもよいが,自動搬送車(仕様は,物や時として人も運べるものとする)のプラットフォームを創ること,オンデマンドや定期的な運航など地域の現状によって運営を行い,当面電動車とし,バッテリーは各プラットフォームで交換し,充電を行い,直ぐに稼働できるシステムを採用,食材などは個人ニーズに基づいて配送するのも良いし,巡回での販売でもよい。地域の事情に合わせたフレキシブルな運用こそ,それぞれの地域の活性化につながる。単に消費のためだけではなく,農家から個人宅への宅配でもJAへの野菜の納品でも,小規模零細企業の納品用でもよい。必要な時に必要な台数必要な場所に物や人を届けるフレキシブルなシステム,ローカル5Gを活かし地方から基地局の設置を行うことで,物流や商流の頻度を上げ,経済を回していくことこそ,地方の活性化につなげる方法である。自動搬送車のプラットフォームづくり,その担当企業や行政などとの仕組みづくり,ITを活用したそれらに対応する仕組みづくりこそ,それぞれの地域の事情に合わせた活性化ではないだろうか。
 現状では自動運転車の規格が開発企業や組織によって異なると思われるが,自動搬送車ではそうした規格の違いを押さえ,現在の自動車のように全国同じような規格で大型から小型まで安心・安全に人やモノの搬送を可能とすべきである。
 スーパーシティ構想の中で都心などでの実験も重要であるが,地方創生の近道は身近な経済循環,そのための物流改革である。その基本に,ローカル5Gを活用した自動搬送車の開発がある。そのプラットフォーム周辺には現状の環境に加えITを活用したビジネスの場づくり,その人達のための食材や弁当,食事などの配送,必要物資やビジネス関連の商品・製品等の運送など,自在に活用することができる社会が生まれる。都市における大がかりな仕組みづくりの前に,まずは地方から実験することで,地方創生,ひいてはスマートシティ構想の実現の近道につながるのである。
中国のIT技術の進展をリープフロッグ現象ととらえるのではなく,アフターデジタルの時代こそ再び今までとは違ったJAPAN AS NO.1の時代を呼び戻すきっかけになるのである。アナログ時代に充実した社会資本,デジタル時代に遅れたITの活用,仕組みづくり,GAFAM『Google(グーグル),Apple(アップル),Facebook(フェイスブック),Amazon(アマゾン),Microsoft(マイクロソフト)』やBATHに対抗できる新たなプラットフォームづくりによる地方の活性化,その都市版としてのスマートシティの早期完成,国内消費の増,地方の活性化,再度のインバウンドへの対応等をその地方の生産物だけではなく観光地としての掘り起こしなど,将来像を考えたブランド化を自動搬送車のプラットフォームづくりから広げていく,そのための道交法等行政の規制緩和など並行して解決すべき課題もあるが,ローカル5Gや6Gなどの技術を先ずは地方から進めることも都市における規制緩和につなげていく1方法である。
埼玉県秩父市の中山間地におけるスマートモビリティによる生活交通・物流融合事業の事例などでは、筆者の提案と類似している点はスマートモビリティの活用であるが,公共交通網の利活用で無人の少人数の移動用と考えられる。全国自治体のスマートシティ構想を見ても,「自動搬送車」の活用は現状では見ることができない。 秩父市の案の中にドローンによる物流のイメージがあるが,関西のある地域で農業の支援活動を行っている際,薬剤等の散布等ドローンが飛ばせないなどの規制があり,「安心・安全」に対する気配りは重要であるものの,人に対する危険を回避しながら,早く実験を進め実務段階に持っていくことが求められる。すでに開発されつつある技術を,どのように実用化していくか,それがマイクロ・イノベーションであっても,直接現状の地域創生につながり,スーパーシティ構想への足掛かりとなるなら,「エッジ・イノベーション」として,再度日本が海外に経済発展をけん引する原動力としての位置を確立できると思われる。地方からイノベーションを起こす提案の理由の一つは,規制緩和に都市ほど手間暇・時間が掛らないこと,既存のインフラなどをそのまま使いながら都市と比較して資金需要も少なくて済み,実験が行いやすく早期実現が可能なことである。(なお、現在国土交通省から無人搬送車に対して60Kgから90Kgに重量は上げているが、移動スーパーなどを考えるとまだまだ規制が厳しくイノベーションを阻害している気がする。)
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4.5スマート・タウン構想と自動搬送車

2021-07-14 10:23:56 | 独り言
4.5スマート・タウン構想と自動搬送車
3.2項で中国深圳市の成功事例を見たが,中国では「スマートシティ構想」の下,多くの国が参加して大型プロジェクトを進めている。それは海外の技術を取り入れ新たな産業を育成する目的があるからである。「スマートシティ構想」は,様々な産業への波及効果が考えられる。その実現はなぜ中国において他国に先駆けた建設が進むのか,中国での実証実験を参加国に遡及させるのであれば,それも「エッジ・イノベーション」かもしれない。もはやIT先進国となっている中国に対して,日本はコロナ禍後どのようにキャッチアップしていくのか。地方創生のための経済循環の立て直しから始める必要がある。
筆者のスマート・タウン構想案はシンプルである。自動搬送車の多用途開発,そのプラットフォームづくり,地域に応じた運用方法を提案する。そのためには,現状の町や村の単位がよいのか,新たなコミュニティによる地域をまたぐ運用方法がよいのかなど地域に応じた工夫が必要である。更には東北の被災地や九州などの災害を受けた地域,中山間地などいろいろなニーズを地方ごとに整理し,整備する必要がある。都市から地方への移住支援のため,地域林業の見直しと,未来型木造住居づくり,できれば新たに生まれるタウンを,「スマート・タウン」構想計画として作成し,点を小さな面に広げ,最終的にはスマートシティに持っていく。その集合体がスマート・ジャパンになれば,住みよい環境や社会が,人の幸せ感を膨らませ,生活の安定を生み,人口減少社会や高齢社会,少子化問題などの解決の一助につながるのではないだろうか。
 筆者の考えるスマート・タウン構想案を,整理すると次のようになる。
①移動・物流に対する自動搬送車の活用
人も物も自動輸送を行えるコンパクトな搬送車で,無人自動運転自動車(EV,FCV動力)等と人の移動に関して将来併用して活用する。動力源として充電時間の短い水素も考えられるが,電池ならカセット式ですぐに交換を可能とし,充電等は専用プラットフォームで行う。プラットフォームはスーパーシティ構想と連動させ,設置場所は地域のネットワークを考えて配置,将来のセンター機能と連動できるようにソフトを開発,充電機能や自動搬送車のガレージを準備,物流倉庫などと将来はネットワーク化を図り,ロボットなどによる自動積載システム等の拡張性を持たすことが必要である。将来スーパーシティとなると都道府県,市町村の行政区域が変化する可能性もあるが,プラットフォームはむしろ現状の住民の居住地を中心にネットワーク化を考え,業際に関係のない配置などの工夫も必要である。
②防災・防犯に対する自動搬送車の活用
対人,対車対策でカメラやセンサーを搭載する自動搬送車のカメラ及びセンサーを活用,搬送中や自動巡回で活用することで,地域住民の安心・安全を守り,アナウンス機能なども持たせ,非常時には避難誘導などにも使用する。
③流通・サービスに対する自動搬送車の活用
過疎地や中山間地,「買物難民」と言われる住民が多い地方や地域では食料や日用品の補充,必要な買物に苦労する。ラスト・マイルを自動搬送車で必要な時間,必要な場所へ,また好きな時間,好きな場所に必要なものを届けるシステムで,経済循環を図る。
④スマートアグリ等に対する自動搬送車の活用
農業に限らず漁業においても,地域特産物の搬送は小ロットほど費用が掛かる。集配システムを確立させ,1次産業における3Kを軽減し,生産に努力するだけでその日の生産ロットに合った販路につながるシステム構築を図り,集配送のネットワーク化を図る。
 スマートアグリはここでは過疎地や中山間地など個人農家等の労力軽減策としてのロボット,IT活用などを意味する。オランダなどビッグデータによるハウス内害虫予防予測管理等は,現状の日本のシステムではまだデータ不足でもあり,まず地方のおいしい特産物を全国に配送できるシステム構築を目指す。
⑤個人データ活用への対応
日本人は個人データについて強い関心を持ちオプトイン方式でデータ活用に際し,許可を取る必要があるが,自動搬送車のシステムには,分散型ネットワーク技術を活用,ブロックチェーンを使うことで個人データは個人のものとし,実際の運用時にアクセスは管理・把握される方式を採用,地方だからこそ逆に機動的に安心・安全に活用できるシステム構築を行う。

次回は新配送システムによる地方創生について述べてみたい。


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4.4自動搬送車

2021-07-13 10:38:18 | 独り言
4.4自動搬送車

アメリカのアマゾンが2019年1月より宅配用搬送車「Amazon Scout」の実証実験を開始した。なお,本稿では無人自動搬送ロボットを自動搬送車(AGV:Automatic Guided Vehicle)とする。無人搬送車は,特に物流業界を中心に,世界中で開発や導入が進んでいる。自動搬送車はすでに1980年ごろには工場の中で使われ始めていたが,現在の自動搬送車との違いは下記表の通りである。
筆者は10年以上前にパナソニックなどと無人お掃除ロボットや無人お買い物付き添いロボットなどの開発に挑戦したが,当時は決められた軌道の上を動く自動追従の従来型AGVのため導入を断念した。しかし現在新たなSLAM(Simultaneous Localization and Mapping,スラム)と呼ばれる技術が開発され,不定形のルートを進むことができる。SLAMはソフトウェアに加え,ジャイロセンサーやカメラ等の装置と組み合わせて初めて自律走行が実現できる技術であり、屋外での走行がやっと実現可能になった。
中国では、アリババが本社を置く浙江省杭州市の浙江大学に投入された配送ロボット「XiaomanLV」がある。クラウドを利用した経路の最適化,エッジAIコンピューティング,画像認識などの技術を使い,浙江大学キャンパス内での配送を自動化する取り組みで,1度の充電で100キロ走行でき,1日に500個を配達できるという。各車独自でも隊列でも動くことができる。日本では規制が厳しくまず地方から導入し改良し「エッジ・イノベーション」として都市へ広げていくべきである。なお,同様な実験は日本でもローソンと慶應大学が行っている。
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4.3ラスト・ワンマイル競争

2021-07-13 10:36:07 | 独り言
4.3ラスト・ワンマイル競争
 コロナウイルスの広がりは世界中に大きな経済停滞を招き,都市封鎖などによる国内に限らず国をまたぐ交流に大きな影響を与え,生活者の価値観は変化し,購買行動などに大きな影響を与えている。リアルな店舗の経営の厳しさに代わってネット事業の好業績は今後の流通の変化を示すものである。すでにネット通販のリアルな店舗に与える影響についてはアマゾン・エフェクトにみられるようにコロナ禍以前から知ることができた。その影響が外出禁止,行動の幅の制限によっていっそう顕著になった。一方それはECチャネルの拡大でありチャネルシフトが起こっている原因でもある。しかし反面,在宅勤務によって,仕事場が従来の会社の中だけでなく,ワーケーション等地方やリゾート地などの従来とは異なる空間でも可能なことが分かってきた。 
 コロナ禍で様々な影響を分析する中,アメリカや中国のIT企業の動き,中でもラスト・マイル競争の動きなどから新たな生活様式が生まれ,実はそれこそが地方創生につながる暗示を示しているのである。
 ラスト・ワンマイル競争とは,「最後の1マイル」というような距離的な意味ではなく,店舗など最終拠点から顧客へ商品を届ける物流の最後の区間のことを意味する。アメリカではアマゾンやウォルマートなどが顧客の囲い込みのために商品配送時間の短縮や受取のためのサービス競争を展開している。中国でもアリババのスーパー・マーケット「フーマー・フレッシュ(盒馬鮮生)」などにおける店内から顧客への配達サービス競争に見ることができる。顧客にとって,買いたい時,欲しい時は「今」であり,そのわがままな欲求にどれだけ応えることができるかが,ネットであれ,リアルな店舗であれ求められている。そのためアマゾンはアメリカ国内をはじめ世界中に175のフルフィルメント・センターを設け,独自のロジスティクスで仕分け可能なセンター等にトレーラートラックなどによるスピードと量の配送を競っている。

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4.2地方創生はサプライチェーンの構築から

2021-07-07 22:40:11 | 独り言
4.2地方創生はサプライチェーンの構築から
 ではどのようにして,地方から「エッジ・イノベーション」を起こし国としてのレベルで再度世界でのポジションを上げていくことができるのであろうか。
具体的に地方創生をどのように進めて行けば,国家レベルの発展につなげることができるのであろうか。
1919年オーストリア共和国大蔵大臣を務め1932年ハーバード大学教授になったシュンペーターは彼の著書「経済発展の理論」の中でイノベーションの起きるパターンについて次の5つを上げているが,まさに今,コロナ禍における時代の変化に応じて求められるものではないだろうか。
それは,
①新製品・サービスの開発,
②新生産方法の導入,
③新マーケットの開拓,
④新資源の開発・獲得,
⑤新組織の設計・実現
の5つである。
またマネジメントの父と言われた経営学者ドラッカーは著書「イノベーションと企業家精神」の中でイノベーションを生み出す変化として以下の7点を指摘している。
①予期せぬことの生起(予期せぬ成功,予期せぬ失敗,予期せぬ出来事),
②ギャップの存在(現実にあるものと,かくあるべきものとのギャップ),
③ニーズの存在(実需),
④産業構造の変化,
⑤人口構造の変化,
⑥認識の変化(ものの見方,感じ方,考えの変化),
⑦新しい知識の出現,
である。
 コロナの流行は経済や社会に大きな影響を与えているが,停滞をそのままに見過ごすのではなく,シュンペーターやドラッカーが述べたイノベーションを起こすチャンスは今だととらえ,今こそ掲げた目標に向け英知を集め,イノベーションを起こし,遅れていたIT活用や技術のリープフロッグ現象を起こすチャンスである。
そこには前述したアメリカのアマゾンや対抗するウォルマート,中国のアリババ集団のスーパー・マーケット「フーマー・フレッシュ(盒馬鮮生)」のラスト・マイル競争(次項4.3参照)にヒントがある。
 それらの事例が地方創生のなぜヒントになるのか。それはスーパーシティでの実験を待つまでもなく,過疎地や被災地でこそ求められる新たな配送システム,サプライチェーンの構築だからである。

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4.活力ある地方創生について

2021-07-05 11:24:13 | 独り言
4.活力ある地方創生について
4.1スマート・タウン構想とエッジ・イノベーション
スーパーシティの実現に向けて,住民の個人データの提供や運用に対し,どうしても日本の場合はオプトイン方式で住民の許可を得る必要がある。住民から個々のデータ提供に対する同意,許諾の意思を前提とするため,中国などと違って実際の運用などに時間を要する。そのためオプトイン方式にこだわりすぎると,せっかく考案された新サービスなどに対して抑止力が働き,革新的なアイデアも採用されないことになりかねない。中国とは事情が異なるものの,メリット面を見るなら,中国のカメラによる監視社会も,タクシーのサービス向上やモラル意識の変化などにつながる事例があり,利用者に役立つデータ活用を理念に開発を行い,住民納得の上での速やかな活用を図る必要がある。
マイナンバーカードにみられるように,個人情報の取扱いについて非常に慎重な国民性を考えると,多少の時間はかかるものの事前に承諾を受けて個人に関わるいろいろなデータを取得・運用する必要があるが,生活者のメリットに沿う形でデータを活かす方策をオープンにし活用しなければならない。
そのため改ざんが不可能と言われるブロックチェーンを使った住民情報の漏洩を防ぐ,安心安全な個々の住民生活を守る「スマート・タウン構想(4.5項参照)」を提案したい。
2020年10月22日の日経新聞朝刊で岡山大学の中村良平特認教授は,地方創生に取り組む戦略課題について次の3点を挙げている。
①潜在的な稼ぐ力を持った基盤産業を見い出せていない点,②移出先の偏在と固定化,③B to B(企業向け)取引でも不十分な循環,である。
中村は「草の根的な経済循環を構築する取り組み,それはキャッシュレス関連の技術進歩がマネー循環型の地域経済を構築する取り組みを成功させている」とし,広島県庄原市の例で,消費の域外流出の抑制による経済活動の維持を紹介している。ただ経済規模の小さい自治体ほど産業や人材の多様性に限界があり,循環の維持,継続には困難が生じるとしている。
中村が述べた地方の課題解決のためには,地方の運営システムの中核を担うローカル5Gを活用したITテクノロジーやロボットの活用等が考えられる。スーパーシティ構想など大掛かりなプロジェクトには,最先端のテクノロジーを活用した国をあげての総合的な協力体制を構築する必要があるが,逆に地方から課題解決の輪を広げることでプロトタイプを作成し,それぞれの課題を解決しながら都市に広げていく,いわゆる「エッジ・イノベーション」と呼ぶ方式の推進を提案したい。それを地方発の「スマート・タウン構想」と呼ぶことにする。
「エッジ・イノベーション」とはアメリカデロイト社のDeloitte Center for the Edge共同所長であるJohn Hagel氏が「エッジ(辺境)こそエッジ(独自性)が立ちやすい」としイノベーションは本社や本業から起こるのではなく,海外子会社や傍流から立ち上がるものとして社名にまでEdge(エッジ)をつけ,ITを活用したビジネス戦略の再構築による企業支援やイノベーション研究を行う中で出てきた言葉である。
 スーパーシティ構想では「完全自律運転車ありき」の様相であるが,都市空間における規制は非常に多く存在し,実験すらままならない状況でもある。
 内閣府の示したスーパーシティにおいて,図4のように高齢者の通院対策等ボランティアドライバーをイメージしている。人口減少社会における課題解決はボランティアではない。自動搬送車による無人での人や物の移動である。そうした実験は地方それも過疎の地域からスタートを切り,都市に拡大する方法,それが「エッジ・イノベーション」である。東北復興支援や九州の災害支援活動を見る中で,特に東北の各港における復興支援は,防潮堤や港湾復興等多岐に渡っているものの,場所によって復興への歩みの違いがみられ,地域ごとの実情を考慮した支援が必要なことを実感させられた。自動搬送車を活用したサプライチェーンの見直しこそが,課題解決につながるのである。
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3.3スーパーシティで街はどう変わるか

2021-07-02 09:10:18 | 独り言
3.3スーパーシティで街はどう変わるか
日本でスーパーシティが完成した場合どのように街は変わるのであろうか。筆者も担当する大学授業をコロナ禍で遠隔授業にするか対面授業にするか悩んだが,スーパーシティでは大学や学校の授業は教授も学生も授業内容によって対面か遠隔か自由に選択ができ,さらには遠隔教育が導入され,海外にいる同年代の学生や教授達との交流を可能とし,英語や諸外国語を学び,MBAの授業さえ誰もが自由に学べ,身に付けることが可能となる。
流通においてはアマゾンや中国のアリババ集団のスーパー盒馬鮮生などで導入及び実験されているように,決済は現金も可能ではあるがキャッシュレス化が進み,アマゾンの「アレクサ」等スマートスピーカーやAIの働きに似て米・飲料・トイレットペーパーなどの生活必需品は,各家庭の購入履歴・使用頻度が分析され自動配送される日が来ると思われる。ニーズに基づいた簡単な認証の基に配達され,実験中の宅配ドローン等による好きな時間,希望の場所に必要な荷物を届けることが可能となる。
スーパーシティ化した新たな町や都市空間では,開発が進んでいる自動運転アプリは自動車だけでなく,バスなどの都市交通に導入され働く人に合わせて予定時刻に自動運転車が配車され,通勤がフレキシブルな時間に可能となる。センサーやカメラの搭載に加え中国ほどではないにしても地域の監視システムと連動させることで子供たちの学校への登下校を安全に行うことも可能となる。高齢者にとっても,遠出や旅行がままならなくなっていた人が自分時間を人の手を借りずに自由に活動できるようになる。
こうして見るとスーパーシティ構想は技術的にはほぼ実現可能な内容であるが,従来の規制緩和,さらには住民に対する個人情報などの活用,そのメリットなど周知徹底を図り理解を得ていく必要があり,実現には時間が掛る。スーパーシティ構想は理想的な都市開発であるが,一方で地方にその恩恵はいつ伝わるのであろうか。
 2011年,三陸沖を震源とするマグニチュード9.0の巨大な東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)が発生,その後も継続的に地震や台風の発生など日本列島は毎年のように大きな被害を受けるようになった。そうした災害だけではなく,少子高齢社会,人口減少社会は地方の一層の過疎を生み,国の主要課題として地方創生の動きは継続され,地方行政にとっても必然の対応施策としていろいろな動きを見せている。ただ,中国等のスマートシティに追いつき追い越せるのか,訪問して初めて日本の遅れに気が付き,いつの間に逆転現象が起こったのか,考えざるを得ない状況にある。
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