1031ビジネス・コンサルティング

経営コンサルタントの目で、日々の出来事から、参考になるキーワードを取り上げて、解説したり、情報発信をします。

小規模事業者持続化補助金第9回の公募開始

2022-06-26 16:22:36 | 独り言
小規模事業者持続化補助金(=持続化補助金)とは、小規模事業者の皆さんが自社の経営を見直し、自らが持続的な経営に向けた経営計画を作成した上で行う販路開拓や生産性向上の取組を支援する制度です。
まずは、商工会議所のHP(下記アドレス)をご覧ください。

https://r3.jizokukahojokin.info/

この補助金の対象者は、法人、個人事業、特定非営利活動法人です。
商業・サービス業(宿泊業・娯楽業除く)で 常時使用する従業員数 が5人以下。
宿泊業・娯楽業で 常時使用する従業員数が 20人以下。
製造業その他の事業者で 常時使用する従業員数が 20人以下。

補助率は申請される類型によって異なります。類型は次の通りです。
①通常枠 :小規模事業者自らが作成した経営計画に基づき、商工会・商工会議所の支援を受けながら行う販路開拓等の取組を支援。
②賃金引上げ枠:販路開拓の取り組みに加え、事業場内最低賃金が地域別最低賃金より+30円以上である小規模事業者 ※赤字事業者は、補助率 3/4に引上げるとともに加点を実施。
③卒業枠: 販路開拓の取り組みに加え、雇用を増やし小規模事業者の従業員数を超えて事業規模を拡大する小規模事業者
④後継者支援枠: 販路開拓の取り組みに加え、アトツギ甲子園においてファイナリストに選ばれた小規模事業者
⑤創業枠: 産業競争力強化法に基づく「特定創業支援等事業の支援」を受け、販路開拓に取り組む創業した小規模事業者
⑥インボイス枠: 免税事業者であった事業者が、新たにインボイス発行事業者として登録し、販路開拓に取り組む小規模事業者

①通常枠の補助率は3分の2で補助上限額は50万円、
②賃金引上げ枠の補助率は3分の2ですが赤字の場合4分の3になります。補助上限額は200万円です。
③卒業枠、④後継者支援枠、⑤創業枠の補助率は3分の2で、補助上限は200万円です。
⑥インボイス枠の補助率は3分の2ですが、補助上限は100万円です。

重要なのは補助対象の経費ですが、以下の通りです。

経費科目        活用事例
①機械装置等費      補助事業の遂行に必要な製造装置の購入等
②広報費         新サービスを紹介するチラシ作成・配布、看板の設置等
③ウェブサイト関連費   ウェブサイトやECサイト等の構築、更新、改修、運用に係る経費
④展示会等出展費     展示会・商談会の出展料等
⑤旅費          販路開拓(展示会等の会場との往復を含む)等を行うための旅費
⑥開発費         新商品の試作品開発等に伴う経費
⑦資料購入費       補助事業に関連する資料・図書等
⑧雑役務費        補助事業のために臨時的に雇用したアルバイト・派遣社員費用
⑨借料          機器・設備のリース・レンタル料(所有権移転を伴わないもの)
⑩設備処分費       新サービスを行うためのスペース確保を目的とした設備処分等
⑪委託・外注費      店舗改装など自社では実施困難な業務を第3者に依頼(契約必須)

ただし、ウェブサイト関連費は、補助金交付申請額及び交付すべき補助金の額の確定時に認められる補助金総額の1/4を上限とします。またウェブサイト関連費のみによる申請はできません。
※設備処分費は、補助対象経費総額及び交付すべき補助金の額の確定時に認められる補助対象経費の総額の1/2を上限とします。

申請時に注意する必要があるのは、他の補助金でも同じですが、汎用性が高く目的外使用になりえるもの(車・オートバイ・自転車・文房具等・パソコン等)は補助対象外となります。
また経費の支払いは「銀行振込」となります。特に10万円を超える支払い(一括、分割問わず)については、現金支払いの場合、補助対象外となります。
重ねて注意したいのは、クレジットカード払い等で、口座から引き落とされた日が、補助事業実施期限を過ぎている支払いについては、補助対象外となりますので、ご注意ください。
なお、100万円(税込)を超える支払いは、2社以上の見積もりが必要です。中古品の購入(50万円(税抜き)未満のものであること)については、金額に関わらず、すべて、2社以上からの見積が必須となります。

まずはガイドブックをご覧ください。
https://r3.jizokukahojokin.info/doc/r3i_gaidobook.pdf

そのうえで、公募要領をしっかり読み込んで申請をお願いします。
https://r3.jizokukahojokin.info/doc/r3i_koubo.pdf

再度書いておきますが以上の内容等は下記商工会議所HPで検索できます。
https://r3.jizokukahojokin.info/

申請書の記入例を参考に、抜け漏れない申請に注意してください。
締め切りは9月20日ですが、まだ継続して募集はあります。
ぜひ活用してください。

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農林水産省 「外食産業向け業態転換等補助金」の公募開始

2022-06-23 10:20:08 | 独り言
新型コロナウイルスの影響により経営環境が悪化した飲食店の皆さんが、業態転換の取組をした際の費用を幅広く支援する補助金です。
事業者の要件として:新型コロナウイルス感染症拡大以前(令和元年12月31日)から現在(申請時点)まで飲食店としての事業活動を営んでおり、飲食店事業における令和元年度と令和3年度の売上高を比較したときに、5%以上売上高が減少していることが求められています。(※飲食店事業以外の事業も営んでいる場合には、飲食店事業を区分経理していることが必要です。)

以下のいずれかの要件を満たしている必要があります。
ア:資本金5千万円以下又は従業員数が50人以下であること。
イ:資本金の額又は出資の総額が10億円未満(資本金の額又は出資の総額が定められていない場合は、従業員数が2,000人以下)の法人(アに該当する者を除く。)であること。

対象となる業態転換
(1) 現在扱っている商品・サービスの内容を変えることが求められます
例)
感染症対策に留意して、お一人様向け業態に変える
テイクアウト・デリバリー用のメニューを開発する
店舗内食材の在庫を有効活用するために、通販向け商品を開発する  など

または
(2) 商品・サービスの提供方法を変えることが求められます
例)
イートインからテイクアウトに商品の提供方法を変えるため、受渡窓口を設置する
自動販売機(冷蔵/冷凍)を導入し、従来の営業時間外にも商品を販売する
店舗での人気商品をECサイトで全国に販売する  など

補助額は次の通りです。
補助率: 1/2以内
上限:1,000万円
下限:100万円

補助対象経費については以下の通りです。
●建物費
補助事業のために使用される事務所、生産施設、加工施設、販売施設、検査施設、共同作業場、倉庫など建物の建設・改修に要する経費  など

●機械装置・システム構築費
専ら補助事業のために使用される機械装置、工具・器具(測定工具・検査工具等)の購入、製作、借用に要する経費  など

●技術導入費
本事業遂行のために必要な知的財産権等の導入に要する経費  など

●専門家派遣費
本事業遂行のために依頼した専門家に支払われる経費  など

●運搬費
運搬料、宅配・郵送料等に要する経費  など

●外注費
本事業遂行のために必要な加工や設計(デザイン)・検査等の一部を外注する場合の経費  など

●広告宣伝・販売促進費
本事業で開発又は提供する製品・サービスに係る広告(パンフレット、動画、写真等)の作成及び媒体掲載、展示会出展(海外展示会を含む)、セミナー開催、市場調査、営業代行利用、マーケティングツール活用等に係る経費  など

●研修費
本事業の遂行のために必要な教育訓練や講座受講等に係る経費  など

●その他の経費
本事業を行うために必要と認められる、上記に含まれない経費

●委託費
本事業を遂行する上で、特殊な知識・技術等を必要とする場合に、事業の一部を、能力を有する第三者に委託する経費 など

「飲食店向け事業再構築補助金」といわれるのは、建物費が補助される点で、申請期間は2022年6月15日(水)~8月1日(月)となっています。
飲食店の皆さんの中で要件に該当される方は挑戦されてみてはいかがでしょうか。

事業概要等について詳しくは農水省の下記HPをご覧ください。なお担当事務局は日本能率協会(JMAC)です。合わせてHPをご覧ください。
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/gaisyoku/gyotaitennkan.html

事務局HP
https://jmac-foods.com/adopted/813/
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【10】ストーリーを語る 

2022-06-17 10:14:20 | 独り言
一貫してモノづくりの「ストーリー」の大切さをお話していますが、そのストーリーの伝え方も大切です。努力して栽培し、加工し作り上げた商品をどのようにして販売するか、FCP商談会シートによるバイヤーとの商談会(マッチング)でのトークをどのように進めていくか、事前に準備して対応してほしいものです。
バイヤーや消費者が何を望んでいるのか、自園の強みは何か、それがバイヤーや消費者の要望にマッチしているのか、どのようにバイヤーを口説けばよいのか、そこには工夫が必要です。
商談会で「おいしいからまず試食してください」とほとんどの農家の方がバイヤーに語り掛けます。絶対食感ではないですが、バイヤーは全国のおいしい商品をすでに試食し自分の担当する売場で販売をしています。ライバル商品を試食し商談会に臨まれる農家の方もいますが、ライバルよりもおいしいと言いながらその味に疑問符が付く商品もなんと多いことでしょうか。
 バイヤーを「洗脳」するためにもまず試食前に、せっかくの日ごろの努力をうまく伝える必要があります。例えばどのような環境でどのような水を使い、どのような栽培方法でここまで育ててきたのか、簡単に伝えることができるでしょうか。その中でバイヤーがどのようなキーワードに食らいついてきているのか、農家の方で一方的にしゃべる方がいますが、相手は何を知りどこに興味を持ってくれそうなのか、話すよりも質問形式で相手のニーズを知る必要があります。
 「棚田の山の上のほうで水はよいし薬も使う必要はありませんが、栽培が大変です」などと投げかけながら、相手の反応を見るわけです。栽培の苦労にどのような反応を見せてくれるのか、むしろそうしたストーリーに乗ってくれるバイヤーほど脈があると思われます。
 商談会での対応だけでなく、終わってからバイヤーは農家の方がどのようなモノづくりを実際に行われているのかHPやチラシ、パンフレットなどをしっかり見たり見直したりします。仕入れをしたければ、圃場を訪問もするでしょう。商談会の際気を付けてほしいのは、バイヤーや消費者目線でモノづくりの努力がうたわれているかということです。商品説明だけで、それまでの努力のストーリーが語られていないチラシやHPのなんと多いことでしょうか。
 特に企業の方に重要なのは、「ストーリー」を語るとき、企業努力のデータや実験結果などを示すとさらに「ストーリー」に重みが付くということです。農商工連携などで産学官連携なども重視されるのは、開発などのプロセスで、いろいろな実験を行いそのデータを生かして次の栽培などに活かし、おいしく新鮮な農産物の栽培に努力されている姿が非常に分かりやすく、説得力につながるからです。
 FCPシートの書き方の項でお話ししますが、情報発信のためのいろいろなツールがあります。それらFCPシート、チラシ、パンフレットなどの紙媒体など全ての中で一貫した「ストーリー」が語られているか、またHPやフェースブック、ブログなどで同様に語られているか、特に現在はインスタの写真で今をうまく伝えているか見直していただきたいと思います。
 実は、バイヤーにとって苦手なのはブログやフェースブックです。なぜでしょうか。農家の方はその時その時の思いを書きたくなり、また話したくなって出来事を書き綴っていくわけですが、バイヤーはその過程を読み探していくよりも、瞬時に農家の思いを知りたいのです。どのような考えに基づいて、どのような環境でどのような野菜や果物など、どのような栽培をされているのか。いわゆる5W1Hをすぐに知りたいのです。知りたいことがどこにあるのか悠長に探す時間はありません。HP上で的確に「ストーリー」を語っていただきたいもの、その「ストーリー」がそれぞれ伝えたいこととして、ページネーションと言いますが、各ページの組み立てにできているかにつながるのです。HPがなぜビジネスには必要なのか、再度理解を深めていただき、見直しをしてほしいものです。
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第6回事業再構築補助金の変更点など

2022-06-10 11:15:45 | 独り言
第6回事業再構築補助金の募集が開始されました。
前回と変更になったところを簡単に解説します。

🔳補助対象要件の変更点
2020年4月以降の連続する6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高が、コロナ以前(2019年1月~2020年3月)と比較して10%以上減少していること。(付加価値額の場合は15%以上)
(付加価値額=営業利益+人件費+減価償却費)

🔳5つの申請枠:通常枠、回復・再生応援枠、最低賃金枠、大規模賃金引上枠、グリーン成長枠(以下のように申請枠が増えています)

🔳回復・再生応援枠の新設
引き続き業況が厳しい事業者(※1)や、事業再生に取り組む事業者(※2)を対象とした申請類型が新設され、最大1,500万円(※3)まで、補助率を3/4に引上げて(通常枠は2/3)支援されます。
(※1)2021年10月以降のいずれかの月の売上高が対2020年または2019年同月比で30%減少していること
(※2)再生支援協議会スキームによって再生計画を策定すること
(※3)従業員規模に応じ、500万円、1,000万円または1,500万円が支援されます

🔳グリーン成長枠の新設
グリーン分野での事業再構築を通じて高い成長を目指す事業者を対象(※)として、補助上限額を最大1.5億円まで引き上げ(従来は1億円)、新たな申請類型が創設されています。
グリーン成長枠については売上高10%減少要件が課されていません。
(※)事業再構築の内容が、グリーン成長戦略における「実行計画」14分野に掲げられた課題の解決に資する取組として記載があり、研究開発・技術開発または人材育成をあわせて行うことで、付加価値額年率5.0%以上(通常枠は3.0%以上)の増加を目指す場合に適用されます。

🔳通常枠の補助上限額の見直し
通常枠の要件については下記のとおりです。
① 2020年4月以降の連続する6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高が、コロナ以前(2019また又は2020年1~3月)の同3か月の合計売上高と比較して10%以上減少していること
② 事業再構築指針に沿った事業計画を認定経営革新等支援機関と策定すること(補助額3,000万円超は金融機関も必須)
③ 補助事業終了後3~5年で付加価値額の年率平均3.0%以上増加又は従業員一人当たり付加価値額の年率平均3.0%以上増加の達成を見込む事業計画を策定すること

🔳補助上限額
従業員規模       今回(第6回)の公募
20人以下       100~2,000万円
20人~50人     100~4,000万円
51人~100人     100~6,000万円
101人以上       100~8,000万円

🔳補助率
中小企業:2/3(6,000万円超は1/2)
中堅企業:1/2(4,000万円超は1/3)

🔳補助対象経費の見直し(建物費・研修費)
建物費:原則として改修の場合に限ることとされ、新築の場合には、一定の制限が設けられました。
(建物の新築に要する経費は、補助事業の実施に真に必要不可欠であること及び代替手段が存在しない場合に限られています。「新築の必要性に関する説明書」の提出が必要です。)
説明書の内容によっては認められない場合も出てくる可能性がありますので注意を要します。
研修費:補助対象経費総額の1/3が上限です。

🔳事前着手の対象期間の見直し
事前着手の対象期間が、2021年12月21日以降へと見直しされています。
(注)既に事前着手を開始している事業者の方は、第6回公募以降は対象経費として認められなくなる場合があるため、ここも注意が必要です。
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【9】ストーリーとは

2022-06-08 15:52:51 | 独り言
 今まで「ストーリー」の重要性についてお話してきましたが、漠然とストーリーといっても、受け取り方には個人差があると思います。
 個々の圃場や栽培の思い、加工品づくりの思いに違いがある以上、「ストーリー」は個々の農家で作っていただきたい内容なのですが、セミナーでお話しする際は4段階に分けて提案を行っています。
■第1段階 作ればよいか
 コロナ前は消費者にとって飽食の時代(呆食などという方もいます)といわれ、我々は好きな時に好きなものを食べることができました。しかしコロナの影響で消費者の価値観に変化が見られ、そうした変化に対応しながらものづくりも工夫する必要があります。
 まずは、農家の皆さんにとって第1次産品を栽培する必要がありますが、どのような環境で栽培されているでしょうか。栽培する農産物によって、必要な環境も違います。日当たりはどうでしょうか。水は湧水、井戸水、水道水、単なる川の水、それぞれで農産物の味が異なります。
 水は特に重要です。東京、京都、沖縄で全く同じ材料で豆腐を作る場合、水の違いで木綿豆腐、絹ごし豆腐から腰の強い堅豆腐に変わります。コメも同様です。逆に水をあまり必要としない農産物もあります。むしろ寒暖の差が求められるお茶、寒さで甘みが増す野菜、種や苗はサカタやタキイのタネではなく、自園で栽培した優良な種を継続して、より良いものに改良しているとか、土壌改良を研究しながら行い、農産物を栽培しているとか、農薬は使わないとか、特別栽培であるとか、有機肥料による栽培とか、ハウス栽培での栽培方法の工夫など、すでに第1段階で多くの「ストーリー」があります。
 あるセミナーで水の話をしたとき、受講者の方からI社のバイヤーは日本全国水と空気は同じだと話していたと反論されたことがあります。有名な百貨店のバイヤーの話なので、むげに否定せず豆腐の話や滋賀県のトマト農家の事例を挙げて環境、中でも水の重要性について説明したことがあります。顧客の評判がファッション関係ほど食にはあまりないのは、ひょっとしたらそうした考えが影響しているのではなどとうがった見方をしています。
■第2段階 どのようにおいしいのか?
 消費者にとっておいしいは当たり前になっています。おいしさをどのように表現されているでしょうか。いちごや果樹などの果物に対して糖度に基準を設けてブランド化を図る動きが出ていますが、意外と糖度を計らずに出荷している農家が未だに多いのに驚きます。せっかく努力して栽培した商品を少しでも付加価値を高めて販売するための努力を怠っているとしか思えません。
 寒冷地でのキャベツの保存など寒冷地野菜や雪下野菜、味に風味、食味などをおいしさ表現のために工夫しているでしょうか。
さらには鮮度や商品の見てくれはどうでしょうか。
商談会で試食を進めるのは、こうしたストーリーを実際に感じてもらうために必要です。商談会開催時期の工夫も本当は重要ですが、農繁期は避けてほしいため、つい商談の時期を失う結果にもなりかねないのです。農閑期こそ何をしておく必要があるのか、工夫する時期かもしれません。
大阪府の環境農林水産総合研究所には味覚認識装置などいろいろな装置が供えられ、食品分析機器が整備されています。味覚認識装置では食品などの先味(旨味、塩味、渋味、苦味、酸味、甘味)と後味(旨味、渋味、苦味)を客観的に測定し、「味」が比較できるようになっています。
味の測定などできないというある地方行政の方がいましたが、隣の都道府県の情報を勉強してほしいと、農家の皆さんのためにも強く思った次第です。
■第3段階 機能?
 最近は機能性表示食品が話題になっています。栄養機能食品や特定保健用食品との違いはご存知でしょうか。株式会社サラダコスモは「大豆イソフラボン子大豆もやし」で第1次産品として初めての機能性表示食品を開発しました。消費者の健康志向が強い現在、こうした栄養素や安心・安全に対する意識を強く持つ必要があります。
 鮮度維持や安心安全の中で、高品質な鮮度保持、味の維持のため急速冷凍機の活用などいろいろな工夫がされています。
 また、加工場等における安心・安全対策は十分されているでしょうか。
●GAPについて
東京オリンピック開催前後からGAPの取得が話題になりました。GAPは「品質」「安全性」「環境への配慮」など一定基準を満たした農作物に認められる「適正農業規範」と言われるもので、適正な農業管理の遂行のためには結構手続きが煩わしい部分もあり、対応が悩ましい部分もあります。しかしイタリアのミラノ万博の食の博覧会を視察した際、欧米におけるこうした農産物の品質保証としての管理制度に対する重要性は嫌というほど感じさせられました。
日本館での食材提供などに規制がかかり、出汁など大使館枠での商品輸出が行われ提供されたなどの話を聞くと、オリンピックの際に提供できる商材が少ないのではと心配したものです。
様々な主体が、それぞれのいろいろな実情に合わせ、独自に「農業生産工程管理 (GAP)」あるいは「適正農業規範(GAP)」などの呼称でその導入を推進してきました。いろいろな認証制度があり、認定機関の利益になるような仕組みや制度が見受けられますが、継続的に安心・安全な食材の提供ができる費用の掛からない制度の実行が望まれます。
GAPは「圃場での農作業や、収穫してから保管・選別・調製・洗浄・包装といった一連の工程において発生しうるリスクを特定し、そのリスクを減らすためのルールや手順を確立し、かつ実施している農場に対して認証が与えられる」というもので農業版ISOといわれるものです。印刷会社を設立した際ISO9001に挑戦しましたが、認証機関ごとの費用の差、継続費用の差など、また認証にかかわる提出書類の差、書類作成上のサービスの差など、いろいろな疑問を持ったものです。世界に通用する認証制度は何か、それに対する費用はどのようなものか、それが認証を受ける際の判断基準ではないでしょうか。
認証を受けたから付加価値が上がるのではなく、一貫して申し上げている「ストーリー」の、自園でのあり方を明確にする手段と考え、事業戦略の中でどう対処していくかを工夫する必要があります。どこで誰に販売したいのか、つまりどこと取引したいのか、輸出したい国はどこかなど今後の事業戦略を工夫する中で対応を考える必要があります。農水省は令和4年3月8日に「我が国における国際水準GAPの推進方策」を策定、国際水準GAPの取得を推進しており、取得は世界的なSDGsへの貢献メリットなどもありますが、取得や更新に、また1品ごとに費用が掛かるので取得された方などから情報収集されるのもよいかもしれません。
フランスのメゾンエオブジェの展示会に参加していた時、パリでのオリンピック開催が決定し、パリっ子が大喜びする姿を目のあたりにしました。通訳していただいた方のご主人がパリの三つ星レストランのシェフで、世界大会で日本人なのにフランスを代表して2位になられた方がいます。現在日本の商材をいろいろ紹介して少量ながらネットワークでの紹介を依頼しています。東京の次はパリ、そこに新たな市場があるのです。GAPの取得もそうした長期的な事業戦略の中で挑戦されてはいかがでしょうか。HACCPもしかり、身の丈に合った挑戦を提案しています。
HACCPについては長くなりますので、別の項で触れたいと思います。

■第4段階 マーケティング
 せっかく栽培し、加工し、工夫した商品を無名で販売されていないでしょうか。
道の駅ではセロハンなどでラップされた上にバーコードがついているだけ、生産者の名前は分かるのですが、販売されている商品の価格はほとんど同じで差が分かりません。加工品についても、〇〇地域のジュースやジャムという表示で、裏の表示を見ないとどこで生産され販売されているのかわからない商品が結構あります。それでは顧客は価格を見て買うことになります。
 ブランド化を図り、知名度を高め、売上につながる努力が必要です。そのためにはシールやパッケージのデザインにも工夫を凝らし、販売ツールや情報発信のためのHP、チラシ制作にも工夫が必要です。
 滋賀県の朝宮地区で30年以上、無農薬で日本茶を製造している茶園があります。地域資源活用事業で、2番茶を紅茶にして販売するお手伝いをしました。
ブランド化を図る際、地域名称はむつかしいのですが、香というロゴを加えその下に紫香楽とネーミング、パッケージにも工夫を凝らし、滋賀県の「ココクール賞」をいただきました。弁理士さんの助けを得ましたが、ネーミングも非常に重要です。
 湧水でトマトを作っていた滋賀県のハウストマトの栽培農家は、「湧水」をネーミングにしようと思いましたが、九州で既に使われていることが分かり、自園の地域名(浅小井)をうまくアレンジし「浅恋トマト」として販売、成功されている会社もあります。
 商標登録に関しては、弁理士さんに相談する必要がありますが、いろいろな補助金の中にはそうした費用も負担してもらえるものがあります。実際、紅茶の申請に関しては、地元の弁理士の方に相談し、本来難しい地域名称をうまく利用しながらの申請を認めてもらえたわけです。
 ブランド化を図り、商品のネーミングの工夫をしたら、商品のシールやパッケージの工夫が必要となります。どこで売るかを考えてそうしたデザインを考えないと、いくらおいしい商品ができたとしても、その市場には受け入れられないことがあります。最後まで商品化とはどうあるべきか、認識する必要があります。
 さらには、そうした商品をどのように販売促進していくか、販路開拓していくか、HPやフェースブック、ブログ、インスタなど情報発信のためにいろいろな方法がありますが、バイヤーや消費者とコミュニケーションを図るためには工夫が必要です。HPでの農作物の栽培の思い、栽培した野菜などのおいしい食べ方、レシピ、調理法等々、各プロセスの「ストーリー」と合わせて、情報発信ができているでしょうか。
 そうしたストーリーをHPなどの各ページで表現することがSEO対策にもつながるのです。SEOとは検索エンジンのことで日ごろ皆さんが、調べたいことやモノなどに対して、検索をかける際、1ページ目のしかも初めのほうに出てくるようにすることです。

 こうした一つ一つの段階において、自園の「ストーリー」を語る必要がありますが、それらをまとめて商談会でマッチングを行うためにも、FCP商談会シートの整備が必要となります。
 FCPシートの各項目に対してすべて埋めることができるように、日ごろから準備をし、モノづくりを行う必要があります。
 商談会での成功はすべてこうした日ごろの努力と、その努力をいかにうまく情報発信できるかに掛かっているといっても過言ではありません。
 FCP商談会シートの書き方については別項で詳しく解説する予定です。
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【8】農業マーケティング  その2 販売促進、販売場所・販売経路

2022-06-05 16:37:30 | 独り言
資金的に限りのある場合に、どのような情報発信を行い、売上につなげていけばよいかよく相談を受けます。フェースブックやブログなど最近ではインスタによる情報発信に熱心な方もいれば、未だにHPも作らず、何もしていない農家の方もいます。
 百貨店やスーパーのバイヤーは商談会の後、必ずと言っていいほどHPを見に来ます。フェースブックやブログだと、モノづくりの思いや記事をすぐに見出すことができません。知りたい内容をすぐに見つけるのが難しいほど、書かれた内容が多岐に渡っているからです。HPでモノづくりへの思いやこだわり、自園の環境、努力などをしっかり伝える必要があります。まして消費者への直接販売を目指すのなら、商品ごとの提示や価格、生産へのこだわりなどを説明する必要があります。単に商品の写真や絵だけ掲載し、価格別に同じ商品写真を繰り返し載せて提示している方がいます。それは生産者側の都合であり、受注するために仕方なく並べたのか、作成したHPのページ構成やテンプレート、フォーマットのためかもしれませんが、それぞれの商品ごとに工夫を凝らして違いを説明して欲しいものです。消費者の立場に立ったページネーション(HPの構成)、商品提示の工夫、理念やビジョン、そうした内容がしっかりと情報発信できているでしょうか。そこに「真実の瞬間」が存在するのです。
 また6次産業化などで新商品を開発したときなど、パブリシティの活用を考える必要があります。資金的に余裕がないのにチラシなどの印刷やいろいろな雑誌・紹介本への広告など、成果もわからないままでの出費はリスクを伴います。まずは、うまく情報発信に工夫をすること、それはパブリシティの活用です。それにはいろいろな方法があります。JRや旅行関連の情報誌、タウン誌、食に関するいろいろな情報誌など、「ストーリー」があれば喜んで掲載してもらえます。
 大手企業になると、TV局への売り込みやマスコミの活用など、いろいろと仕掛けています。情報を欲しがる彼らに対して、どのようにアピールすれば成果に結びつけることができるか、そのためにも付加価値生産を心掛ける必要があります。マスコミはバイヤー同様情報発信のための「ストーリー」を欲しがります。視聴者の興味がどこにあるかを考えてみれば分かることではないでしょうか。
 [7]消費者の変化と顧客価値の項でカスタマージャーニー(Customer Journey)という言葉に触れましたが、消費者はいろいろな生活シーンの中でいろいろな情報との接点を持っています。皆さんの商品やブランドとどういった場面で接点を持つでしょうか。SNSでの検索、店舗のチラシや情報誌、偶然見つけた店舗の棚に置いてある商品、TV広告などお金のかかる接点以外でも多くの消費者の目線に触れる機会は多くあります。広告ではよく「オウンドメディア(owned media)」と言われ、「Paid Media(従来の広告メディア)」「Earned media(ソーシャルメディアなど、広告費で掲載をコントロールできないメディア)」に加えトリプルメディアなどと言われることがありますが、小生は勝手にオウンドメディアとは、自園が持つすべての消費者との接点のことと解釈しています。HPやブログなどのネット関連だけでなくWebサイトに加えて会報誌やカタログ、パンフレットなどメディアの形態にかかわらず、商品のシールやパッケージに至るすべての自社関連のものはすべてオウンドメディアという広義の解釈です。消費者は「真実の瞬間」で自身の購買を決定します。消費者とのいろいろな接点においてその「真実の瞬間」と出会うわけです。つまりどこで消費者の「真実の瞬間」に出会っても、消費者の琴線に触れる商品化を行っていないと、せっかくの出会いの場でもよい結果につながらないことになります。
 農商工連携のセミナーに参加した際、情報発信のツールとしてインスタグラムの活用が推奨されていました。ハッシュタグ(#)をつけて写真とコメントを投稿することで、情報の発散が同じような興味を抱く人たちに広がります。忙しい農作業の合間を見ながら日々の努力や成果をうまく発信することも重要です。それがフェースブックとは異なるフアンづくりにつながるかもしれません。

■販売場所・販売経路
 農産物に限らず商品別に消費者がどこで購買しているか、いろいろなデータがありますが、野菜に関してはスーパーでの購買客が多いのも事実です。しかし道の駅での購買もばかにできない状況になってきています。セブンイレブンのコンビニよりも多くなっているといわれる道の駅、しかしどこで販売したいのか目標をしっかり持ってモノづくりをしないと、売れることはないし、取引さえもかなわない場合があります。すでに全国の百貨店やスーパーなどの売場は商品で年中埋まっています。棚を空けることは許されないからです。そのため、バイヤーは全国の供給力のある優良企業をほとんど把握しています。よほど何かのミスをしない限り、従来の取引先の変更は行わないのが現状です。それでも売場が良く変わっているのはなぜでしょうか。消費者の趣向の変化についていけない企業が撤退を余儀なくされ、そのあとに新たな企業が進出しています。しかしその立場になれる、つまり場所を埋めるだけの力を持った企業レベルになっているでしょうか。バイヤーは1軒1軒の農家との取引は嫌がります。トレーサビリティを考えると取引先カルテを作成する手間が非常にかかり、面倒だからです。そのため、年間を通じて売場を守ってくれるサプライチェーンは、非常にありがたい存在となっています。「農家の直売所」を経営する株式会社農業総合研究所や「のら産直システム」などの存在はバイヤーにとって非常にありがたい存在になっています。FOODEXやスーパーマーケットショーなどでも、福島県と奈良県の企業の土壌改良での連携体や、岐阜県の土壌改良研究企業などが新たなサプライチェーンを構築したり、全国にいろいろな事例が見られるようになってきました。
 同じ栽培方法や土壌改良方法など考えを同じにする仲間や企業が連携し、栽培した作物を販売するシステム作りを行っているわけです。
これらは売場の一定の面積を占め、年間を通じて集配した商品の販売を行うシステムですが、プロパー売場と言って百貨店やスーパーなどの基売場を借りて販売するシステムです。年間を通じての供給をシステマチックに行い、売上を上げ、取引先とのウイン・ウインの関係を築く方法です。規模的に小さな農家や農業法人がマッチングに成功しても、年間を通じて売場を埋めることは不可能に近く、バイヤーは季節ごとに取引先を探し売場を埋める必要があります。一定の面積をバイヤー代行、販売代行してもらえるシステムがなんと便利なことか、お分かりいただけると思います。
 では小規模農家はまず何を目指せばよいのでしょうか。
それは、「催事」などへの出展です。北海道展や九州物産展などになると,これらの催事は売上追及をされるほど大きなイベントになっており、参加するのは並大抵の努力ではかないません。しかし、地域物産展のなかでもたとえば東北支援の物産展であったり、府県別の物産展や催事であれば、復興のためであったり、地域活性化のため、それぞれに応じた規模が主催側の企画で工夫されます。そうした大規模とは言えず中・小規模な催事から知名度を上げブランド化を図り、基売場への進出を工夫すべきです。(東北支援の催事規模は店舗によりむしろ大きい場合があります。)
 その際に、バイヤーが求めるのが「ストーリー」です。基売場に出ている農家や農業法人、企業と比較して、どのような面で優れているのか、必ず比較されます。6次産業化で開発した商品では加工品など、既存商品との比較になります。どこまで強みを発揮できるでしょうか。安心・安全、おいしいは当たり前です。
栽培する環境や種・苗の工夫、農薬や肥料に関して、加工品に至ってはシールやパッケージ等包装資材の形状、ブランド等、洗練されたものになっているか否かが問われます。
 以上のような一連の活動を農業におけるマーケティング活動といい、バイヤーや消費者が求める「ストーリー」の基となるものです。広い圃場でこだわりを持ってすべての農産物の栽培に気を遣うのは並大抵の努力ではできません。体力や能力に合わせた畝を絞ったり、限られた圃場でよりこだわりを表現したり、「ストーリー」の展開にも方法があります。その工夫を忘れないようにしてほしいものです。
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