1031ビジネス・コンサルティング

経営コンサルタントの目で、日々の出来事から、参考になるキーワードを取り上げて、解説したり、情報発信をします。

【4】スマート・アグリ(農業)とICTについて   ****コラム有り****

2022-03-26 09:58:43 | 独り言
近年統計学が見直され、ビッグデータの活用などデータ・サイエンティストの存在がクローズアップされています。
 最近はITよりもICTという言葉が使われるようになっていますが、ITを「総合的な情報技術」ととらえ、ICTは「情報伝達技術」ととらえると、情報は伝達するだけではなく、蓄積された情報の分析も必要と考え、むしろそちらへの重きを置いてICTとここでは触れていきます。
 小生もある漬物屋さんの支援を行うとき、当時健康志向の強い消費者がどのような言葉を検索用語としてみているのか調べたことがあります。ヨーグルト、ポリフェノール、乳酸菌など健康志向の消費者が毎月どのようなキーワードで検索しているのか研究し、トマト農家が摘果したミニトマトを漬物にして販売したことがあります。農家と漬物屋さんがコラボし、新たな商品づくりを行った例でもあります。漬物屋さんは別の商品ではありますが、漬物大賞を受賞された経験をお持ちです。最近はデータ・サイエンティストという職業にスポットが当たっていますが、興味ある方はぜひ勉強して、農業分野にも生かしてほしいものです。
 これからの農業において、オランダなどの農業先進国に追いつき追い越すためには、ICTの技術を農業にも生かす必要があります。

*****************************コラム********************************
 実は製造業の方を中心にデザイン・シンキング(思考)のセミナーを開きワークショップなども担当いたしましたが、ふとある怖さに気が付きました。
 ある時のワークショップで受講生に課題を出した際、参加した皆さんが一斉に作業を開始します。その際にパソコンやモバイル端末など自由に使うことを許可していました。作業開始にあたっての最初の動きはまず「検索」から始まります。驚いたのはその時の参加者の画面です。同じキーワードの入力、同じ画面での情報収集、個性のある検索画面を見ている人は全く見当たりませんでした。「知識のコモディティ化」という言葉が頭をよぎりました。
 デジタル社会になって、韓国がとりわけサムソンなどが日本の電機メーカーを凌駕していった「失われた20年」を振り返らざるを得ません。
すでに彼ら韓国企業はアメリカのIDEO社やfrog(フロッグ・デザイン)社などのデザイン会社というよりも「デザイン・シンキング(デザイン思考)」をツールとして事業戦略を構築するデザイン・コンサル企業と連携し、ものづくりを行い、事業戦略においても、そのデザインにおいても日本企業を凌駕していったのではと思われます。実際IDEO社はスタンフォード大学で、frog(フロッグ・デザイン)社はハーバード・ビジネススクールで授業を持っています。デザインを教える芸術系大学ではない大学で授業を持ち、ツールとしての「デザイン・シンキング」を教えているわけです。遅まきながら気が付いた電通や博報堂などの日本企業も彼らと連携し、今では出資や業務提携等をしているやに聞いていますが、その後の彼らの海外HPも昔の情報発信内容が制限され、つまらなくなっていました。以前はどのような考えに基づいてクライアント企業の商品づくりを行ってきたのか、それぞれの事例が非常に面白く拝見できたものです。デザイン・シンキングをツールとして教えても活用方法がまずい日本の企業で、これがその結果という成功事例にはまだお目に掛かっていません。商品的にアップル社のiphoneのような成功事例が生まれているでしょうか。ある企業の若手デザイナーに聞いた話ですが、デザイン系の大学では10年以上前から「デザイン思考」の授業はあったようです。しかし先輩デザイナーは勉強しておらず、言えなかったり使えなかったりしたと話していました。最近は「アート思考」といって問題解決型ではなく、デザイナーの発想を重視した商品開発方法なども注目されています。
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話を戻しますが、デジタル化社会におけるデータの活用方法、コミュニケーション能力は非常に求められているはずなのに、まだまだ活用されているとは言えないのが日本の現状ではないでしょうか。これから農業や製造業等に就職される若い方達には、いかにそうしたツールやデータを活用するか、また活用しながら学びを深くしてほしいと切に願わざるを得ません。
 実は、自動車に興味があり、次に買い替えるときは安心・安全にこだわった車にしようといろいろと勉強していると、ドイツのdSPACE社のTargetlinkというソフトウエアの存在を知りました。実はこのソフトはドイツの農機具メーカーであるCLAAS社のコンバイン収穫機などに採用されているのですが、機械が収穫の最適な状況を判断して人間よりも的確に自動で行うというものです。航空宇宙産業向けなどにも開発されているこのソフトは、いろいろな分野に応用されているようで、自動車における「サービス・デザイン」の進化同様、いろいろな分野に影響をもたらすかもしれません。頼もしくもあり、日本のメーカーには頑張ってほしいとしか言わざるを得ません。最近、こうした海外の先進事例に良くぶつかるケースが増えてきました。気のせいなのか、歳のせいなのでしょうか。しかし最近HPを見ると日本のトヨタや日産、日立、三菱電機などのユーザー名が出てくるようになりました。
 こうしたドイツのソフトウエアだけではなく、オランダやイスラエル等の環境に合ったものづくり技術にも追いつきぜひ追い越して、食料自給率を上げ、安心・安全でおいしい野菜や果物などを生産し、輸出するまでにもっていっていただきたいものです。
 またそうした生産の際に、筋力ではなく知力を使う努力をしてほしいものです。女性の農業への進出、若年層の農業への進出、そのためには農業も働きやすい環境の下での仕事場に変える必要があります。ICTの活用だけではなく、最新のロボットやAI、ドローンなどの活用が必要になってきます。自動化できる部分やロボットの着用や活用による軽作業化など、農業実務の課題解決に関してまだまだ課題も多いと言わざるを得ない状況です。オランダのハウス栽培の現場を見て、その大きさや天井高に驚くのではなく、なぜヨーロッパへの食品工場になっているのか、生産効率が高くなぜ輸出国になっているのか、根本的な部分を学び違いを理解しながら超えていってほしいものです。オランダの栽培方法と日本の大きな違いは、データを活かした病害虫対策だと思っています。日本では病害虫の発生後の対策に優れていますが、オランダではむしろ予防対策が進んでいるといわれています。リスクを最小限に抑えるデータの活用方法は日本でも学びたいものではないでしょうか。

■コラム*******************************
自動車に関連して
➀サービスデザイン
ベンツやBMWのヘッドライトが対向車や追い抜きの際に相手のまぶしさを減少させ、運転者側に対しては遠目に明かりが行くような機能が工夫されています。こうした安心・安全に対する機能開発が海外の自動車に行われ始め、日本の企業もオプションだけではなく機能として追加しだしています。
こうしたサービスデザインも「デザイン思考」からくる発想なのかもしれません。ベンツにはドイツのコンサル企業SASが色々な支援を行っています。今後安心・安全をテーマにより機能の充実が図られてくると思われます。
➁IT(VR)の活用
カナダには国産の自動車がなく、海外の自動車メーカーがしのぎを削っています。アメリカのフォードも大きな規模での販売拠点を設けていますが、100台近くにもなる試乗車をどのように顧客に提供しているか、興味が沸きます。
 店舗に行くとヘッドセットの眼鏡をかけて試乗体験をまず行い、気に入った試乗車を選択して試乗するなど、いろいろな工夫が行われています。気になったのはそのサービス機能をどこが開発しているのか。フォードの提携先はサムソンでした。海外に出るとこうしたIT技術を活用したサービス機能がどんどん活用されています。農業に関しても同様、さて日本のメーカーはどこまで進んでいるのでしょうか。
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事業復活支援金について 個人事業主の方へ

2022-03-24 22:35:18 | 独り言
本日事業復活支援金の事前確認をいたしましたが、その方(個人事業主)はなんと小生にたどり着くまで30回も支援機関の方に電話をされたようです。
よそではコロナの影響で困っている方にそれなりの費用(5,000円~3万円くらい?)を要求されるのだそうです。
手数料が安いからなのか断られる方もいたとお聞きしました。
小生は地域限定ながらこの事業復活支援金は無料で行っています。
セミナーなどでは事前確認をすれば国から、2,000円の手数料が支援機関には入るので値切るようにお話ししているのですが、人それぞれの考えがあり何とも言えません。
国のHPなどを読まれても基準月と各年度の決められた期間をどのように比較したらよいのか、理解されていない方が非常に多いのに驚かされます。
今までちゃんとできていた方にお目にかかったことがありません。
地域限定ながら、少しでも地元の方のお役に立てればと申請準備の説明などの支援活動を行い、事前確認は無料で行っています。
コロナの影響、ロシアのとんでもない蛮行、北朝鮮や中国の気味悪い動き等、嫌な世の中にあっても少しでも前を向いて経済(事業)の復活を目指す支援金。
補助金ではないのですから、厳しい状況の方には満額出るわけで、該当される方は是非申し込みしましょう。
支援金がいくらになるのか試算しますし、事前確認は書類さえ揃えていただければ無料で行います。
締め切りはまだまだ余裕がありますので、3月の状況を見てからでも遅くはありません。
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【3】植物工場とスマートアグリ(農業)について  (ちょっと長いです)

2022-03-20 15:37:25 | 独り言
ここでどうしても触れておきたいのが植物工場についてです。植物工場での生産が始まってずいぶん時間が経ちますが、日本ではどれほど成果を上げているでしょうか。簡単なハウス栽培とは違って、今はやりのICTを使った栽培方法ですが、ハウス内外の環境・温度湿度や水、肥料、栽培状況などいろいろなデータ管理が行われているようです。しかし投資のし過ぎで失敗するケースも見られます。単価幾らの野菜をどれだけの投資で回収するというのか、素人が判断してもできそうな事業なのに過大投資をし、失敗するケースも見られます。
■オランダ・イスラエルと植物工場
 大手企業が植物工場に進出、と言っても仕組みを売る企業もあれば、実際に葉物野菜などを生産し販売する企業などいろいろ存在します。「みらい(現MIRAI㈱)」の動向に注目していましたが、投資額と栽培する葉物野菜の金額、数量を考えると、巨額投資の経営に疑問符が付くのは当初から思われていたことではないでしょうか。その後のリカバリー状況が気になります。しかし最近は成功事例も見られるようになってきました。何事も身の丈経営から始め、しっかり利益を計算しながら進めていくことが大切です。確実な販路を持ちながら栽培量を増やしていかなければ、投資に見合う回収はなかなか進みません。損益分岐点の把握も重要ですが、実は植物工場で危惧していることは他にもあります。
 農家の中にもオランダのハウス栽培を見学した方が増えてきましたが、天井高の高いハウスの中で、ICTを使った非常に高度な栽培を行って、ヨーロッパの食材を賄っています。実際オランダの食料輸出量は世界2位と言われる食糧輸出国ですが、国土面積は日本の50分の1、ほぼ九州と同じ面積で、耕地面積は日本の4分の1(185万ha)です。農業者の総人口に占める割合は2.5%と日本と同じですが、日本の農業人口は305万人、オランダは43万人と日本の7分の1、しかし輸出金額は農水省の2021年度分発表のデータによると1407億ユーロと過去最高額でコロナ禍をものともしていませんでした。なぜここまで収穫量が高く、輸出ができているのでしょうか。ICTテクノロジーによる高度な栽培ノウハウの蓄積が日本の比ではないということ、アプリケーションの数が一説には1,000項目近くあるとか。日本の栽培現場でどれくらいの項目数、管理が行われているでしょうか。
 ただこうした技術的に優れたオランダのノウハウですが、そのシステムを導入すると発生したデータはそのままオランダにも流れます。世界中のデータが集まり、さらなるビッグデータの分析や研究がされるのはよいのですが、日本が技術的に追いつくのはいつになることやら、心配になってきます。
 またオランダ農業でもう一つ注目しているのは、高効率高収益率のある栽培方法ですが、品種ごとに栽培方法が決まっており、品種による付加価値生産の差が見られないという点です。日本の農業とはその点が違うのではと思います。
現在ほとんどの日本の植物工場でも、ハウス内で栽培している野菜等の生育環境(光、温度、湿度、二酸化炭素濃度、養分、水分等)をパソコンなどのシステムで制御し、生育状況のモニタリングを行っています。日本はオランダなどと比較して日当たりの良い環境にあるので、LEDや蛍光灯などの光に頼るよりも、自然光を利用した太陽光利用型の施設園芸のほうが、コスト的にも野菜の味の面などでも適しているのではと思われます。実際オランダでも太陽光利用型が多いようです。こうして日本でも、野菜等の栽培において比較的高度な環境制御と生育予測を並行して行い、周年・計画生産を可能にするような栽培を行っているところが増えてきたと思います。そうした経験を活かし、日本でも早くいろいろなノウハウを蓄積し活用する体制に持って行ってほしいものですが、なかでもデータ管理とその応用についての栽培技術ノウハウは、オランダやイスラエルなどの先進国に早く追いつき追い越してほしいものです。
滋賀県で農業経営塾を担当しましたが、コメンテーターの「浅恋トマト」で有名な浅小井農園の松村社長(現会長)から話を聞きました。現在は滋賀県の少量土壌培地耕作システムでの栽培に独自性を加え、土壌の改良や害虫対策などを行っていますが、実はオランダのコンサルタントに来てもらっていたとのこと。さらにおいしいトマトの栽培を目指しておられますが、ハウスでの栽培状況を公開されており、これからのハウス栽培に挑戦する方や、現状でいろいろな悩みを抱えている方には非常に良い相談役だと思います。
 ところで花卉の世界への輸出国はオランダがダントツだと思っていました。実際世界シェア60%以上といわれています。しかしイスラエルの花卉のヨーロッパへの輸出が多いことにも最近気が付きました。イスラエルは軍需産業が盛んでその技術を応用したデジタル印刷機などの開発に関して、デザイン会社を運営した経験から知っていましたが、6次産業化プランナーとして農業の知識を学んでいると、イスラエルの新たな面を知ることになりました。砂漠の中で水資源の少ない国のはずなのに野菜や果物の自給率は95%とか。驚くほかありません。ハウス内での点滴潅水技術は、水利用の効率で世界1ともいわれています。イスラエルのデジタル印刷機はアメリカのヒューレットパッカード社が導入していましたが、インクをパイプで送り込む方式で10年ほど前はとても色鮮やかだったことを覚えています。ただ当時、機構的に各インクパイプの制御の難しさやメンテナンスが頻繁に発生するため導入をあきらめた記憶があります。ハウス栽培の現場ではどのようになっているのか、農水省発表のイスラエル農業のデータを見るまでもなく、砂漠における施設栽培の現状を実際に目で確かめたいものですが、興味を覚えながら現状ではイスラエルとなると見学などちょっと難しいかもしれません。
 また、栽培で気になるのが、熟成度を色で判断しようとする試みです。カメラで写したRGB(光の色の3原色)による色のモニター上への再現は、個々のモニターのカラーマネジメントに優れていない中で、非常に難しいやり方です。自分自身印刷会社を経営していた時、スタジオの現場で撮影したモデルの顔や服の色を印刷のCMYK(4色)に変換することのむつかしさは、ジャパンカラーの範囲では目視して色の違いが分かるくらいであり、色の再現がいかに難しいか実感しています。そのためカメラの目だけで、野菜や果物の生育状況を判断するシステムがどれほど実務に応用できていくのか勉強したいとは思っています。
 ところでオランダのスマートアグリに関する技術は学ぶとしても、栽培品種においてどのように考えていけばよいか、日本ではむしろ異なる考え方を採用するべきだと思っています。理由は前述しましたが農水省の2020年度更新、「オランダの農林水産業の概況」でも書かれているように、オランダの施設野菜の栽培面積の8割をトマト、パプリカ、キュウリの3品目が占めています。これらは世界的に見て輸出平均価格が高い品目、つまり需要が大きい品目に絞られていることが分かります。オランダの選択と集中における輸出方式は確かに付加価値生産、加工貿易として見習う点もありますが、そのまま日本が導入する必要はないと思われます。日本では全国いろいろな地域で多品種少量ながらいろいろな農産物がそれぞれ付加価値生産に近い方式で栽培されているわけですから、一部コモディティ化する商品があるとしても、消費者ニーズを考えると、オランダのようにそこまでの選択と集中が必要なのかは疑問です。国内需要に応じながら、輸出できるものと輸入で対応するべきものを区別する必要はあると思いますが、安心・安全だけではなく、「味」にもうるさい舌の肥えた日本の消費者に対応しながら、アジア地域の市場開発等に工夫を凝らしてほしいと思います。最近では東南アジアの国々の現地市場のスーパー等を見て回ると、多種類の野菜が並んでおり、果物なども生食を好む地域として、今後の市場開拓先としての輸出戦略はもっと工夫を凝らしてほしいと思います。
 そうした中、いかにハウスの中で効率よく安心・安全でおいしい農産物を栽培し、販売することができるのか、AIやITが進んできた日本の農業でその活用にもっと取り組んでほしい課題の一つではと思っています。台風や地震など自然災害や天変地異などいろいろな自然現象のリスクが増加してきている中で、露地栽培と比較してハウス内栽培は今後非常に重要になってきます。そうした中、いかに消費者のニーズに応えた、また現状の課題に応えた農産物を提供していくか、食糧の自給自足問題にも関係することでもあり、「工場」とは言わずに簡易型であってもいろいろな栽培技術を高めて、生産に見合った販売や数量にもっていってほしいものです。
 滋賀県の少量土壌培地耕システムを農業技術振興センターで拝見したことがあります。いかにハウス内で農産物を栽培するか非常によく考えられたシステムではありましたが、よりおいしい「味」を追求し、より高度な収穫を目指して、完成度を高めてほしいシステムの一つでした。ハウス内栽培が可能になった段階で研究が終わっているようでしたが残念でなりません。さらなる「味」への追求など、消費者目線での研究を加えてほしいと思ったものです。
東北の震災後、こうした栽培システムが採用されると、トマトなどはすぐにでも栽培が可能と思われたのですが、最近のニュースで、農業生産法人「やまもとファームみらい野」が東日本大震災の津波被害を受けた宮城県山元町高瀬に建設されたトマトの「水耕栽培ハウス」で出荷式を迎えたニュースが流れほっとしました。(平成29年5月12日河北新報)遅かったとはいえ、非常に喜ばしいニュースでした。
実は水産資源保護協会から東北の漁業者の方の販路開拓の支援を依頼され、2016年、ちょうど天皇陛下(現上皇陛下)が岩手県の上閉伊郡大槌町吉里吉里にある『三陸花ホテルはまぎく』に宿泊され、そのホテルから出てこられる時間に遭遇いたしました。なぜ、このホテルなのか、支援先訪問の際東北大学の方にお聞きしました。1997年、ちょうど20年ほど前にこのホテルの前身「浪板観光ホテル」にお泊りになられ、部屋から眺めた窓の外の「はまぎく」に目をお留になられたのがきっかけで、亡くなられた経営者の山崎龍太郎さんが宮内庁にその花を届けられたことがあったそうです。山崎龍太郎さんは今でも行方が分からないそうですが、宿泊された方を避難誘導し津波に巻き込まれたそうです。宮内庁の思いやりなのか、天皇陛下(現上皇陛下)のお考えなのかはわかりませんが、そのお話を聞いた瞬間涙がこぼれ出たのを覚えています。
現場を離れながら、海岸沿いにそびえたつ防波堤、万里の長城ほど長くはありませんが、海が見えない景観、隙間から見る港に船がいない風景、住宅があったであろう内陸は何もない状況、加工場は港から離れた遠い山の中、働き手がいないとの悩みは申し訳ないのですが当たり前に思えました。一律平等公平な東北の港の再開発の姿を見て、現場を見ることの大切さを実感し、ショックを受けました。ただ、元に戻すのが支援ではなく、今後の日本の漁業をどうすればよいか、再考する機会ではないかと思われたからです。
ある大きな冷凍庫を持つ工場では、細々と加工品づくりを行っていました。その横には配達する軽自動車がそのまま置いてあり、ほこりや虫対策など全くできていない状況の再開でした。食の安心・安全を考えるとそこは工場ではなく、広い「体育館」の片隅で作業を行っている状況でした。何とかしてあげたい。でもこのままでは商品を、首都圏や関西圏の消費者に届けることはできない。そんな板挟みの中で、プレハブとは言わなくても蚊帳でもよいから二重にして虫などが来ない安心・安全な衛生管理に努めた状況つくりを提案したのを覚えています。しかし、天井には昔のハエ取り紙が無数にぶら下がっており、それには虫だらけの状況、軽自動車が作業場の横にあるわけですから、外部の埃もそのまま入ってきます。蚊帳では埃除けにはなりません。国や県の支援で、せっかくおいしい食品づくりのノウハウを持った企業の支援をしてほしいと切に願ったものです。こうした「工場」の課題や問題点を持ったまま「再開」している企業が多いのにも驚きました。衛生管理をそれぞれの企業に依頼したのは言うまでもありませんが、個々の企業に対する身の丈支援がまずは必要だと思った次第です。
2022年の3月、再び地震が起き東北新幹線が大きな影響を受け脱線しています。ちょうど東北支援に行く予定で宿泊や新幹線の切符を買ったばかりで驚いています。コロナ禍で緊急事態宣言が解除になると予測した時でもあり、重ねて残念な状況です。ウクライナの惨状と比較してはいけないかもしれませんが、被害を受けた当事者の気持ちは神戸での震災経験があるため人ごととは思えません。
 話を戻しますが、小生の地元奈良市に「あずま―植物工場株式会社」があります。一部上場企業である株式会社バイテックホールディングスとともに石川県に植物工場を稼働させています。石川県は植物工場の集積地のようになっていますが、電力コストが安いというメリットを生かした進出です。ここ数年福井県の産業振興センターで福井県内の企業のモノづくりや販路開拓の支援を行って参りましたが、福井県でも原発立地地域などでは電気料金の大幅な優遇制度があります。こうした植物工場にかかる経費のうち、電気代などでコストダウンにつながる優遇制度のある地域では、こうした活動が活発になるかもしれません。そうした優遇制度が薄れたときでも、首都圏や関西圏に近い立地での運営が販路の近さなどから有利になると思われます。いずれにしても、植物工場を成功させるためには、運営にかかる総額のコストダウンと経費に見合う量の生産、そのための販路確保が重要です。最近、上述した石川県に進出の2社は配送面で連携し運送コストの削減などを図っているようです。
6次産業化がうたわれて久しくなりますが、そうした事業を成功させるためにも、基である農産物の栽培から国としての研究を進めて、技術の確立を図っていただきたいものです。全国で環境が違うとはいえ、ハウス栽培なら、一定条件を保持しながら、安定供給ができる仕組み作りができるはずです。都道府県や企業、農家それぞれの個別研究ではなく、国としてより高みに技術を持っていく仕組みができないものでしょうか。県別にまた農家別に栽培技術などの知識が暗黙知となっている気がします。暗黙知の形式知化こそが、これからの日本の農業に求められていることではないでしょうか。そのノウハウがアジアをはじめ発展途上の国々で求められてもいるだと思われます。
長々と書いてきましたが、この項の最後にコロナ禍でアメリカのyoutubeの映像や記事が気になりました。2022年の2月に紹介された「垂直農法」についてです。
「How an Indoor Farm Uses Technology to Grow 80,000 Pounds of Produce per Week — Dan Does」(Youtubeのタイトル)
2014年アメリカのニューヨークを拠点に生まれたスマート屋内農場を展開する米国最大の垂直農業テクノロジー企業Bowery Farming社のことです。従来の屋外農園に比べて水の使用量を95%削減し、農薬や化学薬品を使用せずに、美味しい農作物を栽培、垂直型農場を運営する農業テクノロジー企業といわれその映像は今後都会でもビルの中で直接野菜の栽培を行い、新鮮なままサラダなどにして食べる時代が来ることを予感させます。単価の安い野菜を運搬する費用を考えずに栽培し、即食卓に届ける時代が来ます。工場の建築費用等はまだ掛かると思われますが、コスト面での問題を解決するとラストワンマイル競争による物流戦争も、こうした技術の進歩で、食材を地方に依存しなくても済むようになるかもしれません。イスラエルのように自給自足型農業に日本も変化していけないでしょうか。植物工場の形態についても、栽培品目の工夫などを行いながら、実験と研究を重ねて日本の農業技術を発展させてほしいものです。
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【2】農業で儲ける・成功する  つづき

2022-03-17 10:20:17 | 独り言
⑤決算書をどう見るか 数字は簡単に把握し活用したいもの
事業を行う以上決算書の提出が義務付けられていますが、税理士さんに頼むだけで、いくら今季利益があり税金はどれくらい収めたのか、もしくはどれくらい返ってくるのか、皆さんは興味をまずどこに持たれるでしょうか。
コンサルタントが事業経営を見る場合にどこに目を付けるのか少し考えてみたいのですが、大手コンサル会社のように細かく細部にわたって検討していくのではなく、瞬間的にどの項目を見て、状況把握をしているかを考えてみたいと思います。
我々が知りたいのは農家の皆さんが現在どのような状況になっているのか、それはどのような流れからきているのか、せめて3期分の内容把握を行い比較します。
損益計算書の売上高、売上原価、販売管理費の内容、減価償却費、人件費、営業利益、それに貸借対照表では短期・長期の借入金などの項目を見ます。
 つまり、いくら経費を掛けてその事業を行い、どれくらいの売上を上げ、いくら儲けているのか、その事業を行う上でいくら借金をしているのか、そこのところを知りたいわけです。それをだいたい3期分、決算ごとの流れを見ていくことで、どこに良い理由、悪い理由があるのかを判断していきます。流れを読むことは必ず行ってほしい作業の一つです。そのうえで、毎期ごとに売上総利益率など自らパーセントで把握すべき項目を出して比較してほしいと思います。
その比較を行うことが絶対額を見るよりも大切かもしれません。つまり粗利益率とも言いますが、売上総利益率がどのように変化しているのか、増減を見ながら取引相手との交渉、経費率の変化を見ることによる、経費削減項目の見直しなど、経営者としての目も養ってほしいと思います。大切なのはポイントを押さえて経営判断を行うことです。
本来なら月次決算を行いながら、事業にいそしんでいただきたいのですが、農業に関しては月中での数字把握はむつかしいと思います。しかし営業するということは月半ばで、その月の終わりの結果がどのようになるのか、売上動向を把握しながら次の手を考える必要があるのです。近隣スーパーなどでの催事販売などに参加したり、軽トラ市に参加するなど自ら売りに出るなど工夫が必要です。せっかく努力し栽培した農産物を残さず、売り切るためには栽培の途中途中で、つまりは月の半ば半ばで販売の状況を把握しながらいろいろな手段を講じる必要があるということです。観光農園などの支援でも、期間が短い場合などでも期中管理をすることで、追加の集客対策を練ることなどを提案しています。
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【2】農業で儲ける・成功する つづき

2022-03-17 10:13:40 | 独り言
③生産・販売数量について
 限られた圃場での生産数量は限られています。だからといって勝手に価格を上げても売上は上がりません。販売の現場には競争相手がいます。ではどうすれば価格を維持したり、上げながら、生産数量を増やすことができるでしょうか。
 最近では植物工場でも、例えばほうれん草の収穫が年19回ほどになっているなどとの報道があります。長野県のH園芸はオリックスとの合弁で平成26年10月から出荷を開始しており、その成果に期待しています。豪雪被害など再度受けないことを祈っています。
面積を広げたり収穫量の拡大を目指したり、収穫効率を上げる方法はそれなりにありますが、身の丈に合った運営をしないと、人手不足で苦労したり、人件費倒れになったりします。そのうえで、生産数量=販売数量に近づけるためには、売れ残りをなくし、B級品を抑える必要があります。B級品を少なくして販売に持っていけるか、また「もったいない」からB級品をいかに活用するかも課題になります。すぐに6次産業化を頭に浮かべ、B級品を加工品にしようとするのは問題です。これに関しては後述します。

■販売数量を上げる
販売数量を上げるためには、面積を増やして収穫数量を上げるか、収穫効率を高めるしかありません。売上公式はシンプルですが、自らの事業をどのように維持し、拡大していくのか、事業推進の基本となるものです。
最近は販売数量を上げるために海外に進出している企業も少なくありません。
事例を挙げると、銀座農園、ジャパン・ファーム・プロダクツ等シンガポールやカンボジアなどに進出し、地元のスーパーやイオンなどの日系スーパーに販売、さらにはまたそうした地域で現地の方に農業を教える人たちが出てきています。地元で栽培したものを地元のスーパーや日系スーパーなどで販売するだけでなく、日本からも農産物や果物を輸出しています。東南アジアでは日本の商品は好評で、日本の倍くらいの価格でも販売されています。加工品においてもしかり、現地に対応した独自の加工品ブランドで販売を行う企業もあれば、世界中同じブランドで販売している日本企業があります。ビジネスモデルとしてどのような形態で販売するか、進出するかは、それぞれの企業などの事情にもよると思われますが、大いに農業の事業化を推進していただきたいものです。
 また後述しますが、ICTなどを活用した「スマート農業」などへの挑戦も行い、オランダに負けない生産効率の高いおいしい農産物作りによる収量の拡大などにもトライしていただきたいものです。

④損益分岐点の必要性を知る
 農業生産や販売・販路開拓などいろいろなセミナーを担当する機会がありますが、農家の皆さんが課題とされるなかで価格設定の問題があります。
 よく言われるのが、「こだわりの農業を進めるたびに経費が掛かり儲からない。」「人材も不足している。」「積み上げ方式の価格設定では、競争相手に勝てない。」「取引先からはコストダウンを要求される。」などの言葉です。
あるコンサルタントの「農業で成功するためのセミナー」では固定費と変動費について学び、損益分岐点の把握の必要性について教えています。しかし農家の皆さんが、経営に関してどこまでいろいろな数値の把握をされているでしょうか。そもそも固定費や変動費をわざわざ算出して経営を見る時間はあるのでしょうか。少なくとも掛った経費は把握していると思いますから、売上からその経費を引けば、いくら儲けたかくらいは把握できます。そうすればザックリとしたご自身の売上に対する利益と儲けた利益率の把握ができます。ご自身の生活費をどれくらいほしいか目標を立てれば、それも経費に含み、その利益率で割れば、必要な年間売上が算出できます。
 仮に売上が500万円あり、掛けた経費が350万円とすれば、粗利益は150万円あったわけですが、生活費はそれで足りるでしょうか。兼業農家の多い地域では、別途収入がありますが、専業農家の皆さんは、その利益金額が年収ですから、それで生活する必要があります。売上がいくら多くても経費がそれ以上なら赤字で生活できません。倒産企業の多くが赤字補てんの借金をし、払えなくなり事業をたたむケースが見られます。計数はシンプルに把握する必要があります。
どれくらい儲けたいから、いくら販売する必要があるか、そのためには年間何をどれくらい栽培し、販売しなければならないか、それをどこで販売するか、しっかりと計画し、販路を持つことが求められます。さらにはリスク管理が求められます。最近のように自然災害が多発すると、大きな負担を強いられることになります。手元準備金も必要です。こうしたことに、先ずは計画を立て、着実に実行していく姿勢が必要です。毎日の苦労をその努力に見合う収益とするためにも、基本公式を理解し、そのために目標設定を行い、どのように事業を進めていくか、後述する農業経営におけるマーケティングの基礎知識だけは持つようにしたいものです。しかし日々の忙しさを考えると、経営に必要な数字だけでも把握する必要があります。経営をむつかしくしないことが重要です。
 
 農家の支援を行っていると、最近は県によっては普及員の方が「農業簿記」を教えるところも出てきています。ほとんどの農家が仕分けや記帳などの煩わしいことを嫌い、税理士さん任せにされています。それはそれで自分の事業を把握していただいておればよいのですが、自分が時給いくらで働いたことになるのか、儲けはいくらくらいになるのかなど、あいまいな方や把握していない方が多いのに驚きます。
 トラクター1台は幾らとか、米1表は何キロでいくらくらいかは、把握されていますが、事業の結果いくら儲けたのか、なかなか把握していないのに驚きます。
農業にはいろいろな支援制度があり活用することで、逆に真の利益がどれくらいになるのか、把握できない状況なのかもしれません。
 最低限自分の事業のコストがどれくらい掛っており、年間売上からそれを引くといくらになり、自分の時給は幾らと計算できるのか。生活するためには本来幾らの原価でいくら最低限儲ける必要があるのかなど把握したうえで、だからどのように自らのビジネスモデルを構築していくのか、工夫をしてもらいたいものです。
 農家の支援を行う際、農産物別に月別の生産から収穫までのガントチャート(表)を作ってもらい、それぞれの農産物ごとに販売先を数量や売上ごとに記述し、それぞれの合計から年間売上や目標設定を行うよう提案をしています。
 参考に簡単な表を載せておきますので、自らの目標設定などに自らの表の制作を行い、事業推進の参考にしてください。その際作物別の合計、販売先別の合計なども忘れないようにすることです。
 作物別の季節別生産チャートは商談会等で役に立ちます。バイヤーに年間を通じてどれほどの量が供給できるのか一目瞭然で理解してもらえます。仲間を募って、地域としての出展の際などにも役に立ちます。この表こそご自身のビジネスモデルを表しています。青色申告をされている方は、その記帳にも連動していることがお分かりになると思います。できることなら各月別・品目別に労働時間を集計しておくと、雇用やアルバイト・パートの方をどのように採用する必要があるかも把握できます。

 また忘れないでほしいことは、資金繰りについてです。税理士の方に資金繰り表の作成まで依頼するとなると別途料金を要求されるかもしれませんので、ほとんどの農家の方はそこまでされる方はいません。兼業農家が多い地域などでは、裕福な方が多く、そうした資金繰りの必要はないのかもしれません。しかしいろいろな農家を訪問していると、親の代から過剰な投資で大きな負債を抱え、生活に四苦八苦されている方もいます。非常に高い料率のカードローンの支払いや多額の借入金の返済、農協のリボ払いのような借り入れ等々、料率変更や支払いの減額交渉すらできずに、寝ることもままならない日々の業務に追われ、支援の時間すらハウスの中での立ち話のような方もいました。
税理士の皆さんや普及員の方にお願いしたいのは、帳簿を付けたり栽培の支援を行うだけではなく、農家が期待している生活全般のコンサルティングをお願いしたいということです。現状で何に気を付けなければならないのか、農業を通して豊かな生活を送るための方法を、訪問の都度支援してほしいものです。6次産業化プランナーのように訪問回数が制限されているよりは、毎月のように訪問できる税理士や普及員の方などのほうが、より身近で相談相手になれるのではないでしょうか。
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【2】農業で儲ける・成功する

2022-03-16 11:33:53 | 独り言
①売上公式の深さを知る
 いろいろなセミナーや農家での支援を行う際、売上公式を必ず説明することにしています。農業で成功するためにはこの公式を忘れては、ご自身の事業を考えることができません。
売上公式とは、
売上=販売価格×販売数量
のことです。
いつ頃学んだ公式でしょうか。しかし、この基本公式をしっかり頭に入れて商売を行っている方のなんと少ないことでしょう。
商品を販売することによって売上が上がり、初めて利益を生むわけですが、商品の一つ一つにつけた値段が販売価格であり、その売上が利益に結び付き、そこに農家の儲けが含まれていること、そして数量は販売した数量であり、生産した数量ではないということ、当たり前のことですが、この関係をつい忘れて農家の皆さんはものづくりにのみこだわりがちです。結果、値付けが分からない、ロスが多いなどと悩む方が多く存在します。
お蔭で小生のような者でも仕事がいただけるわけですが、儲けるためにはこの基本を押さえていただきたいと思います。
 納品先が道の駅であろうとスーパーであろうと、顧客に買ってもらうためには、良い品質の商品を「お値段以上」の価値があると判断して買ってもらう必要があります。
 しかし、値段を勝手に上げるだけでは販売につながりません。そこに付加価値、「ストーリー」が無いと顧客の買おうという共感を得ることはできません。
 次の項で詳しく述べますが、価格設定で、直接生産に掛かった経費しか計算しないで値段設定をする方がいます。ご自身の時間給はいくらに設定しているのでしょうか。儲けることが悪いことではないといつもお話ししています。
「儲」の字を分解すると「信者」となります。事業を成功させるためには自らのフアンを作らないと売上は上がらず、利益にはつながらないわけですから、儲けることが悪いことではありません。年齢の高い方や女性の経営者の中には儲けることに対する罪悪感を持つ方がおられますが、そうした説明を行い理解してもらうことにしています。
では皆さんが努力して生産した商品を、どのように販売すればよいのでしょうか。
②価格設定について
競争が激しい中で勝手に値段を上げるわけにはいきませんが、最近は道の駅でもそれなりの価格設定でしっかりと新鮮な商品を販売して、利益を上げているところが増えてきました。むしろ安い価格では売っていないところが多いのではないでしょうか。生産者の名前を明示しながら、POPなどで、新鮮さやおいしさを訴求しています。
朝採りであったり、水のおいしい環境であったり、無農薬(特別栽培の表示)であったり、有機栽培であったり、いろいろな情報を提供しながら販売していることに気が付きます。生産への努力をそうした情報発信で付加価値を顧客が感じる価値つまり「顧客価値」として考えて販売しているのです。
値付けをする場合に積み上げ方式もあれば、競合農家への同調価格の設定もあります。儲けるためには、努力に見合う価格設定をしなければ利益を生み出すことはできません。そのためにはその努力を販売する商品を見れば分かるようにし、情報発信のツールなどを活用し説明する必要があります。多くの消費者・顧客にフアンを作ることで自然に販売数量が増え、売上が上がります。そのための努力をどのように商品や情報提供で行うか、それがものづくりの課題です。
ではどのように値付けをしていけばよいのでしょうか。
■販売価格を上げる
販売価格の設定について農家の方の多くが悩みを持っておられます。自ら直接小売業を営む方は少なく、道の駅に出品したり農協や仲介業者を通じて販売したりするやり方が多いと思います。農協では集荷した農産物に対して一定の金額を支払う方法を採っていますが、取り扱い量も多いため、農産物の等級など一定の基準で一律に価格を決め支払いを起こします。そのため、優良農家などは流通業者が直接取引を行い、囲い込むことで少々高めに仕入れを行うケースが見られます。
 店頭で農家の固有名詞(名前)を使いながら販売し、農家の名前がブランドになっている事例があります。コメの販売では近年、直接農家から購入する個人客が増加しています。郵送料を支払って購入しても、生産者が分かるおいしくて安全なお米が直接手元に届くから非常に便利で、わざわざスーパーなどで買う必要がなくなります。この方式に対抗するために、流通業の店頭では小分けにしたりパッケージを変えたり、涙ぐましい努力が行われています。百貨店やスーパーなどの食品売場だけではなく、インテリアショップなど思わぬ店舗での販売がお米だけではなく、最近はいろいろな加工食品にもみられるようになってきました。
売上公式で分かるのは、みずからの栽培面積が決まっているわけですから、収量が実は決まっているということ。したがって面積を見れば栽培している品種などで、年間売上はある程度決まってしまうということです。販売数量が決まっているのなら、売上を上げ利益を確保するためには、付加価値のある商品を作り、販売しなければ、毎年同じ売上か、むしろ少なくなりかねません。価格設定で今よりも高く販売したければ、いかに商品に付加価値をつけるか、工夫やそのための努力が求められます。
 徳島のいちご農家では大阪の中央卸市場で一粒1,000円のいちごを販売しています。「幻のいちご」として数量は少なくとも、付加価値生産をうまく生かした販売を行っているわけです。さらには少数の農家でその上を行くイチゴを栽培、その名は「さくらももいちご」です。いちごに関しては日本国内のいろいろな場所で本当に多種多数のおいしいいちごの栽培がおこなわれていますが、岐阜県羽島市の奥田農園では「美人姫」という一粒5万円もするいちごを開発販売しています。
 すべての農産物にこだわりを持って付加価値生産を行うのは、実は体力的にも費用的にも負担やコストがかかるものです。一つの畝、ある部分の果樹、努力できる範囲での付加価値生産をお勧めしています。その部分の収穫した商品に対しては、それなりの価格設定を行い、商品構成の価格帯を「松・竹・梅」などのランク付けをして販売するわけです。いわゆる「松竹梅の法則」の活用です。
 工夫し努力した分、付加価値を乗せた価格での販売を目指す一つの方法ではないでしょうか。そのランクに応じて販売先を変えることも可能ですし、一つの売場で少し高額なものから比較的価格のこなれた商品まで、いろいろな顧客を集客し販売することもできます。
(つづく)

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【1】農業の基本

2022-03-14 09:28:16 | 独り言
【1】農業の基本
①食へのこだわり 
 農業に携わる皆さんは生産者であり、また消費者でもあります。私も歳を取るにつれ食に対するこだわりが増し、コロナ禍だからこそおいしい食を探し求めていろいろなお店で自慢のメニューを味わって楽しんでいます。若い方たちのようにインスタでの情報発信はしていませんが・・・。
皆さんがちょっとこだわった食事を楽しもうと思い、レストランに行ったとします。その店のシェフやオーナーは、どのようなこだわりを持って、その店のメニューを提供しているでしょうか。
 お店のメニューやHPなどで、どのような言葉でそのこだわりを表現しているのか、そして写真やパンフレットなどで、どのようにその「味」を表現しているのか。一流のお店になると、丁寧にそのこだわりを表現してくれていますし、最近の「食べログ」などの情報提供ネットのグルメサイトなどで店舗検索すると、メニューだけでなく部屋の内部やトイレの様子まで店舗内情報を細かく教えてくれます。
 ミシュランで三ッ星を受けているレストランのHPなどを見ると、地元産の食材、生産者の紹介、おかれた環境の中でのものづくりへのこだわり、農薬や肥料、水に対してまでも、提供する「味」に対してのこだわりを表現しています。   皆さんは客としてどのような部分に共鳴しその店を利用しているでしょうか。提供されたお店の調理法、メニューの味付け、食材に対するおいしさはもちろん、その食材の栽培環境、加工の安心・安全、提供される器や盛り付け、部屋の雰囲気などいろいろな部分にこだわりを持って訪問していないでしょうか。
 若い方たちは、ネット検索し、その店を探すことを楽しみ、お店での食事の時間や空間、そして味、会話等を楽しみます。さらには食後の感想や写真をインスタグラムにあげSNSなどでシェアするなど、多種多様な食事の楽しみ方があり、その楽しみ方も時代とともに変化しています。「インスタ映え」がキーワードにさえなっています。そうした変化に気づいて、食や情報を提供しているお店こそ、多くのフアンを集めているのです。
②どこで食べる
 辻調理師学校の先生に教えていただきましたが、ミシュランのフランスでの星の数と日本の数は実は総数で日本の数が多いとのこと。
 それだけおいしいレストランに恵まれている日本、それならそうした店でどのような食材がどのようなこだわりで使われ、どのように提供されているのか、
学ばない手はありません。そこに多くのヒントが隠されている気がします。
地元○○さんの旬野菜、水がおいしい、農薬不使用、それこそシェフが消費者に訴えるキーワードが並んでいます。消費者がその言葉に共感し、おいしさにリピーターとなってその店を有名にしていきます。そうした連鎖を生むキーワードは何か、それを理解し実現することが生産現場に最も必要なことではないでしょうか。コロナ禍で野菜の旬ギフトが相変わらず売れているようですが、パッキンに購入者への感謝の言葉を書いたり、野菜の彩に工夫を加えインスタ映えを狙ったり、今一段と工夫がされています。
 展示会や商談会などでFCP商談会シートを拝見する機会が非常に多いのですが、展示会会場でほとんどの農家はただおいしいから食べてほしい、買ってほしいとバイヤーに話し、ご自身が努力して生産したモノづくりの「ストーリー」についての話はほとんどありません。
 農家の皆さんは農業生産やものづくりの現場でどのようなこだわりを持って、日々の生産にいそしんでいるでしょうか。
 消費者目線で生産する必要性をどこまで感じているかによって、販売の店頭での売上に差が出ます。生鮮品でも加工品でも、そこに「顧客価値」を意識した「ものづくりのストーリー」が無ければ、消費者に受け入れてもらうことができません。後述しますが、この本では一貫して「顧客価値」への認識と、「ものづくりのストーリー」の重要性を説明して参ります。
 しかし結果として農業も経営ですから利益を生む必要があります。過剰な投資や出資が首を絞めてはせっかくの努力が水の泡となります。
6次産業化への挑戦に際し、コンサルから販路を約束してもらい700万円という費用を請求された農家があります。商品のブランド化、チラシ、パッケージなどデザイン的には優れた提案であっても、商品の価格が1,000円未満の商材で、資金の回収だけで何年かかるというのでしょうか。
 身の丈投資の必要があります。かっこいい提案に金額の多寡も忘れ飛びついて苦労をする農家が小生だけでなく、知り合いのプランナーの支援先にもありました。
 農業マーケティングとういう言葉があるのか分かりませんが、難しいことは分からずとも、商売の基本は押さえておきたいものです。
 では、どのようにして農業で儲けることができるのか、先ずはそのあたりから話を進めていこうと思います。
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AMAZONのホールフーズ

2022-03-12 09:19:45 | 独り言
コロナ禍の現在でもセミナーで一番話題に取り上げていることからお話ししたいと思います。それは消費者の購買行動の変化についてです。2021年年末から今年の年始にかけて首都圏をはじめ関西圏から九州までいろいろな市場、中でも百貨店、地元スーパー、道の駅や直売所を見て回りました。巣ごもり状況の中で消費者はどのような食生活を送っているのか、食品の買い物や食事はどのように行っているのか興味があったからでもあります。強制貯蓄やリベンジ消費という言葉が日経新聞などで取り上げられましたが、年末年始緊急事態宣言が繰り返される中、解除後の消費者の動きはまさにリベンジ消費といわれるそのままで、有名外食店舗では集客もすごく予約が取れない店もありました。銀座のあるビルの9階にある「Bills」などはこんな場所なのにと思われるのですが、予約で朝食時間?の10時にはすぐに客席がいっぱいになる状況でした。コロナ禍でも集客できる店があることにまず驚かされました。工夫すれば窮地も乗り越えることができるのだと感じた次第です。それは全国のいたるところで見ることができました。単にリベンジ消費の動きではなく、消費者が本当においしいものを、今の生活を心から満足するための消費行動として楽しんでいるのだと感じました。消費者はこれでいいやというのではなく「これでなければ」という消費行動をとっているということです。インスタ映えという言葉がありますが、情報発信している人たちの声はまさに、苦しい時期をいかに乗り越え、自分なりの生活や消費を楽しむのか多くのヒントがもらえます。したたかに生きる消費行動を目の当たりにし、逆に心強く感じたものです。
ところで話は変わりますが、皆さんはアマゾンがなぜアメリカの自然食品スーパーマーケット「ホールフーズ」を買収したと思われますか。ネットの企業がなぜリアルな店舗を買収したのか。セミナーではいつもこの話題から始めます。本文の中でホールフーズの内部の写真などもご紹介しますが、アマゾンの怖さを知る必要があるというより、アマゾンの事業戦略を見続けることがこれからの流通の変化に対応できる手段になると考えられます。すでに多くのアマゾンについて語られた本が出版されており、小生のような素人が話すべきものではありませんが、流通の変化、アマゾン効果(エフェクト)などの影響を見聞きするにつれ、これからのいろいろな変化にどのように対応していくべきかを知る手掛かりになるのではと思うからです。ニューヨークやハワイ、ロスアンゼルス、サンフランシスコ、さらにはカナダのバンクーバーなどでホールフーズだけでなく有名百貨店をはじめウォルマート、コストコ、セーフウエイ、シアーズなどのスーパーを見てきましたが、世界一の小売業ウォルマートでさえ、ストアーズの名前を消し、店舗だけでなくネットでの販売で対抗せざるを得なくなった「アマゾン・エフェクト」。
日本では物流量の多さ等からクロネコヤマトの値上げをアマゾンが飲まざるを得ないような言われ方をしていますが、海外の動きを見ていると日本の物流もいつかまた変化していくのだと思わずにはいられません。アマゾンがジャンボ輸送機を何機保有しているか。ドイツなどの空港入札で空港自身を手に入れようとしていたか、実際には中国企業に入札で負けたりもしていますが、世界「地図」をにらんだ戦略は日本の物流をあっという間に変えていくと思われます。ドローンや倉庫の中などでのロボットの活用、2018年10月には関西の茨木市に大型センターが開設され、2019年4月から本格的な稼働が始まりました。そうした表面的な部分の変化だけではなく、アマゾンフレッシュの動き、今後の生鮮品などの販売など、特に注目しているのは日本で業績の良いスーパーのライフやクックパッドなどとの連携の仕方、ネットで販売するためにプライム会員は月額4,900円の手数料で可能にするなどいろいろな生鮮品などの販売に力を入れようとしている点です。
ホールフーズは売上1兆円以上の自然食品取り扱いの大型スーパーですでにネット販売のノウハウを持ち、しかもMBAのケーススタディなどにも使用される話題の豊富な企業ですが、日本のスーパーでも行われているように、店頭を倉庫代わりとして販売できるようにし、受注商品を直接店頭から新鮮なまま配達するシステムはどこでも考えていること。配達内容というより、購買内容のビッグデータをアマゾンでは蓄積し分析、個人のライフスタイルを分析することで、リコメンド(お勧め)商品を提案したり、事前に届けたりいろいろなシステム上の特許を取得していることの怖さを知る必要があります。カナダのホールフーズで初めてアマゾンの「アレクサAIスピーカー」の販売されているのを見て気が付きました。アマゾンは顧客の囲い込みを目指している。そのために生鮮食品スーパーでAIスピーカーを販売、顧客のすべてのライフスタイルを把握し利便性を訴えチャーンレート(解約率)を低め、顧客の囲い込みを目指しているのだと。消費者としてうまく活用するのか、ライバルとしてどのようにそうしたアマゾンの戦略に対応していくのか、アマゾンのいろいろな「サ-ビス」を知る必要があります。プライム会員になって、サービスを活用しながら、いつの間にか彼らの「思うツボ」顧客になってしまう「怖さ」。アマゾンと組んでそのシステムを活用する農家も今後はたくさん出てくると思われます。お互いにデータをうまく活用し、どのようなWIN-WINの関係を作っていくか。アマゾンの怖さを知りその「プラットフォーム」をいかに使ってビジネスとして成功していくか。どのようにアマゾンというネット企業と、リアルな店舗を生活の中で利用していくか、我々の生活自体にも課題を投げかけられていると思われます。
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新・農業読本

2022-03-11 09:49:50 | 独り言
このBLOGは過去にセミナー等でお話しした内容を集め直して整理し、農家の方だけでなく、普及指導員の方をはじめ、広く農業に携わる多くの方に読んでいただこうと、読みやすく易しく書き直したものです。タイトルを新・農業読本とした理由は、コロナ禍で活動ができない中、少しでも農閑期などにお役に立てないかと思い過去の原稿を加筆修正いたしました。農家の方たちと接する機会が少ない中、農業に携わる皆様の日々の活動の少しでもお役に立てることを願って読み物風にまとめてみました。コロナ禍でいろいろな著者の農業関係の本を読みましたが、農業マーケティングについて具体的に何が必要なのか意外と書かれていないことに気が付き、再度最近の新たな消費の変化などを書き加えて公開してまいります。
 小生のそもそも6次産業化プランナーとして活動するきっかけは、1993年の「平成の米騒動」に始まります。当時首都圏の大型店舗の経営を任され、不足する米をどのようにお客様に提供すればよいのか、お米を仕入れて供給する方法だけでなく販売価格の設定、お客様への告知方法、集客、抱き合わせタイ米の処理などいろいろな面で悩みました。特にライバルは同じ駅前の大手総合スーパーでした。ライバルはいつ入荷するかわからない売場にお客様を並ばせたままで、地元のお年寄りなどは相当なご負担に感じたことと思われます。仕入れ先の米問屋を訪問し、タイ米と抱き合わせでも何とか販売できる数量を確保した時には非常にうれしく感じ、これで少しでも地元のお客様に喜んでもらえると思ったものです。しかし、どのように販売すれば混乱しないでお客様の手に公平にお渡しすることができるのか、それはそれで課題が生まれました。週数回の入荷予定日を店頭に張り出し、開店前に抽選券を取りに来ていただき、開店と同時に当選番号を店頭に掲示、並ばなくても抽選に当たっていれば当日の配布予定分は確実にお客様の手に渡るようにしました。お年寄りから涙を流して喜んでいただいたのが忘れられません。従業員の皆さんには苦労を掛けました。タイ米を従業員食堂でカレーやピラフにして食べてもらうわけです。売場で提供する米は従業員には一切購入させず、我慢してもらいました。従業員食堂のシェフがそれでも味付けには非常に凝ってもらい、試食会を開いて従業員の皆さんに味を決めてもらったりしたものです。そのことがきっかけで、日本における農業生産や自給率の低さに興味を持ち、農業に従事する方たちの実際の現場の苦労などを体験し見学するようになりました。バイヤー任せにすればよいのですが、実体験をすることで苦労して栽培された商品をどのように販売していけばよいのか、学ぶためまた自分自身で納得するためでもありました。食料品に取り組んだのはその時が初めてです。それまでは輸入特選品と言って海外のラグジュアリーブランド商品の仕入れ販売を担当し、管理職として首都圏の店舗を見ることになり、食品に関しては全くの素人でした。現在、中小企業診断士としてまた6次産業化プランナーとして、多くの企業や農業法人、農家の支援を行っているのはこうした経験と現在の家で栽培するかんきつ類(文旦、甘夏、柚子、ミカンなど)や、柿、イチジク(ザ・キング)などの栽培経験によるものです。販売経験と栽培の実体験等を踏まえ、今、「ストーリーのあるものづくり」を広く企業や農家の皆様にお伝えしています。実は入社してすぐ、この「ストーリー」の重要性を学びましたが、当時はマーケティングやマーチャンダイジングを知識として学ぶことが主で、お客様に対して作られた商品の良さをどのように伝えたらよいのかまでは、商品のディスプレイやPOPくらいでしか表現しなかったものです。販売経験を通じて、商品を売るためにはその商品のすばらしさをどのように消費者に分かってもらえばよいのか、世界の一流品をまずは販売しながら悩むことになります。当然直輸入品ですから買取り商品ばかりです。残したら自分でリスクを負う必要があります。現在ではグッチ・グループ・ジャパンやフェラガモ・ジャパン等直接的にそうしたラグジュアリー・ブランド企業が日本に進出していますが、当時は商社や我々が直接工場などから仕入れをすることも可能でした。工場に行き、一品一品顧客を想定しながら仕入れをし、売場ではその仕入れた商品の良さを説明しながら自らの手で販売をする。昔はそうした仕組みになっており、現在とは全く違う商店的な、いわばセレクトショップ的な仕入れと販売方法でした。今考えるとこれが非常に役に立っているわけです。商品を売れ残さないためにどのように販売をしなければならないか必死に考え、顧客の家を訪問しながら販売などもしました。「あなたのために仕入れてきました。」そうした口説き文句で、世界の一流品を昔は販売したものです。トラベルバッグに40~50枚の服を入れ、お客様の家で広げながら販売をするわけです。今の百貨店外商のようなことをやりました。お客様のサイズや好みなど頭に叩き込んで好みと思われる商品を集めて訪問するわけです。自分にとっての1to1マーケティングの始まりでした。海外に仕入れに行くときや国内での仕入れの際、各売場のバイヤー兼販売担当者と顧客データを基に仕入れに行ったものです。また、ヨーロッパのラグジュアリー・ブランドの工場がどのような運営をされているのか、設置されている機械類や実際の仕入れの手続きなども学ぶことができました。現在、国内外の展示会を見に行き、販路開拓などの支援活動も行っていますが、この時の経験が非常に役に立っています。
 そうした経験を活かし中小企業診断士として、現在中小企業のものづくりの支援をもう一つのテーマにしています。ものづくりは農業や製造業においても商品は違えども、ものを作る精神は同じで、丹精込めて作った商品を消費者に届ける物流の流れも共通したところがあります。だからこそ、素材を活かしたものづくりから加工、販路開拓に至る一連のプロセスを理解し事業の成功に結びつけていただけるよう、農業の活性化と中小企業のものづくりの支援を2つのテーマに活動を行っています。そうした製造業などでの「デザイン思考」によるものづくりのエピソードは別の機会にし、農業で儲けるための「ストーリー」とは何か、栽培から加工、販売に至る一連の流れについて、それぞれの生産から流通の現場における重要な「ストーリー」とは何かについてお話ししようと思います。
時々ですが、過去の内容を加筆し連載する予定です。
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AMAZON  STYLE

2022-03-04 10:10:13 | 独り言
AMAZONの動向がコロナ禍でも気になっていますが、AMAZONの出現で多くの書店が倒産したアメリカの過去を振り返り、AMAZONの代わりに開いた店舗に注目していました。
しかしAMAZONも結局彼らのAMAZON BOOKSや4STARの店舗等68店の閉鎖を公表しました。
ネットとリアルの融合を目指していた彼らも、消費者の購買行動の変化についていけなかったのでしょうか。
それとも、個々の店舗運営に問題があったのでしょうか。
そうした斬新と思われた店舗を閉める代わりに、計画通りAMAZONのアパレル実店舗はオープン予定のようです。
AMAZONのフルフィルメントセンターの在庫管理方式を活用し、スタッフがレコメンデーションにも応じるとのこと。
アフターコロナでの販売方法はより「個客」に沿った販売が求められるとも言われており、従来の実店舗でのスタッフによる販売サービスにも新しさが要求されています。
年末年始に見た国内のリベンジ消費もいつも間にか一段落、なかなかコロナは収束に向かいません。
蔓延防止策が解除になったとき、新たにどのような消費が進むのか、消費は戻るのか、消費者の買い物行動を注視していく必要があります。
変化に対応できる体力や能力をどのように身につけておくか、我慢を強いられているときにも、ライバルは研究しています。
デジタルの活用をどのように活かして、「楽をしながら」、接客サービスの工夫ができるのか、顧客との接点をどのように重視したらよいのか、求められるサービスの変化にいち早く対応する必要があります。
人とのつながりが一層重視されている今、ネットとリアルでの人とのつながり方の工夫を一層考える時期に来ています。
今後の商品開発はそうした消費者・生活者の変化を見ながら、顧客を明確にし狙いを定めて、商品提供する必要があります。
補助金や支援金に挑戦する企業の皆さんは、困っているからでもありますが、次へのステップに向けて挑戦しようとする大切な気持ちを持っているからでもあります。
変化への対応が必要とは誰でも言えますが、具体的にどのような消費者の変化にどのように対応していくかが求められています。
AMAZONでも試行錯誤の連続、彼らの狙いや動きは継続して追いかける必要があります。
下記のHPやyoutube、ニュース等を参考に、これからを工夫しましょう。

https://www.cnbc.com/2022/03/02/amazon-closing-68-stores-ending-amazon-books-4-star-pop-up-shops.html

https://www.youtube.com/watch?v=IpyMAqBostY&t=12s
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