1031ビジネス・コンサルティング

経営コンサルタントの目で、日々の出来事から、参考になるキーワードを取り上げて、解説したり、情報発信をします。

【8】農業マーケティング  その1商品、価格

2022-05-30 09:27:35 | 独り言
中小企業診断士(経営革新等認定支援機関)や6次産業化プランナーとしていろいろな企業の支援を行う際、よくマーケティングの4Pという言葉を使います。
①商品(PRODUCT)
②価格(PRICE)
③販売促進(PROMOTION)
④販売場所や流通ルート(PLACE)
のことを、英語の頭文字を使って4Pと言います。
しかしすぐにマーケティング=4Pというお話はしません。
なぜならその前に自社や自園の事業の組み立てをしっかり行う必要があるからです。つまり事業戦略の構築、策定を行って初めて、その事業の推進のためにマーケティングの力が必要となるからです。では、具体的にどのように自園の事業戦略を策定すればよいのでしょうか。
大切なのはご自身がどのような農業を事業として進めたいかということです。ビジョンとか理念とか言われますが、企業ではクレドなどという言葉を使って、企業理念を言葉にして日々の仕事に役立てています。
どこでどのような商品を誰に食べてほしいのか、そのために何をどのような栽培方法で作るのか、そうした思いを明確にする必要があります。
そうでないと売れないときにいろいろと事業を進める中で迷いが出てきます。信念をもって自ら決めた道を進むことが、継続して事業を推進していく上での力となるのです。その思いをFCPシートやHP、最近ではインスタグラム等で語ることによって、バイヤーや消費者はその思いに共感し、商品の購買に結びつけてくれるのです。
資金や人材・組織面で潤沢な裏付けのない場合、その限られた資源を有効活用するためにも、思いを明確にしながら、どこでどのような場所で、誰に、もしくはどのような消費者に対して商品を販売したいのか、現在の市場環境や消費者の変化を理解し、企業規模によっては市場調査を行ったうえで、S・T・P(セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニング)を明確にすることが重要です。そのうえで、売りたい顧客に向けてマーケティング戦略を採る必要があります。
■商品面
 農産物である1次産品として、商品面ではまずどのようなことが考えられるでしょうか。
 消費者の趣向は常に変化します。その変化に対応しなければ売れる商品を作ることはできません。前の項で述べたように、消費者の変化に対応した商品とはどのようなものでしょうか。
 東北の震災後、首都圏の味の好みが変わったといわれました。やや薄味になりながら3年たつと元に戻りつつあると日経新聞には書かれていました。日能研の調査などでも、「焼きそば・ソース味」は全国で差がないのに、ラーメンでは首都圏はしょうゆ味が比較的好みなのに北に行くほどみそ味になり、九州では豚骨になるなど食べるものでまだ味の違いがあります。
 したがって食材に関して、販売したい地域での味の好みにはまだ注意する必要があります。味付けがそのまま他の地域で好まれるとは限らないのです。
ジュースの味をどうするか考えるときでも、どのような味付けにするかは、売りたい顧客を考える際、気を付ける必要があります。例えばスポーツの後のドリンクでも味の濃さに注意が必要です。毎週テニスを行っていますが、その後で飲む100%果汁のジュースはのど越しが却ってよくなく、少し薄めのものであったり、スポーツドリンクに頼ったりします。でも、旅行先でのホテルや旅館での食事時にはジュースや牛乳などその濃さにむしろこだわりたいものです。
 よく相談される内容で、コメの場合の袋の大きさやジャム、ジュースでの販売する適量、瓶などの大きさを聞かれます。
 顧客のニーズはいろいろで、小生のようにジャムが好みの人間は大瓶150g以上のものを探しますが、現在の売れ筋は30gほどの小瓶です。毎日同じ味を楽しむのではなく、個人でも家族でもいろいろと味の変化を楽しみたいからだと思われます。
そうした消費者の購買の関心事は味だけではなく、瓶の形状やパッケージ、シールなどいろいろな点に置かれています。
 6次産業化で商品化された後よく相談されるのが、手作りで作成したシールなどの出来栄えについてですが、まずお話しするのがCI(コーポレート・アイデンティティ)についてです。CIについては【13】ブランド化の項で詳しく触れますが、展示会などで商品を展示した際、開発された商品群が統一感のあるデザインでパッケージや商品のシールがデザインされていると、一見して〇〇企業やどこそこ農園の商品と分かるように工夫することが大切です。ブランド化を図り知名度の向上、売上の確保を目指すのなら、自園の取り組んでいる理念やビジョンを明確にするためにも、CIを考え、そこからデザインを起こしていく必要があります。
 全国一の売上を誇る糸島市の道の駅に「伊都物語」という乳製品のCIで成功している例があります。セミナーで必ず触れるのですが、いろいろな農家が同じブランドでいろいろな乳製品を作っているにもかかわらず、統一ブランドで非常に分かりやすく、それぞれの商品の味もおいしく、他府県への進出を目指しています。日本航空のファーストクラスの食事のデザートにも採用されました。
 パッケージや商品のデザインを考えるとき、その商品だけでデザインを考えると、次からの開発商品との整合性や今までの商品との関連性などが弱く、統一感のない、展開の際特色のないイメージ展開となります。デザインを依頼する際忘れないでいただきたいことです。
■価格面
 6次産業化で相談の多いのが価格設定についてです。仲間内の価格や道の駅の価格を見ながら、同調価格にされる方が非常に多いのですが、利益を生むためには、しっかりとした原価計算の上に、ご自身の生活費を乗せる必要があります。努力しないで儲けることはできませんが、せっかく苦労して栽培し育てた農産物です。工夫を凝らし付加価値を高め、その商品に関しては少しでも「リーズナブル」な価格設定を行い販売する工夫が必要です。
 6次産業化では農家の皆さんが直接加工から販売まで行うことが奨励されているように思われますが、決してそうではありません。
「餅は餅屋」、1次、2次、3次それぞれの強みを生かした連携も認められているわけですから、供給の流れつまりサプライチェーンとして、それぞれの役割を担う中間企業の利益を考えた価格設定を行うことも必要です。後述しますが、そこに「ストーリー」の必要性が生まれます。ただ単に栽培した商品を道の駅などで販売するのが、本当の農業といえるのでしょうか。工夫し努力し栽培した商品を必要とする消費者に販売することが重要で、価格コンシャスな消費者に目を向けると、価格競争に陥り、疲弊してしまいます。最近道の駅で成功しているところは、価格は決して安くはありません。新鮮・朝採りなどをうたい文句に「適正価格」で販売されています。スーパーよりも新鮮なら安くする必要もないのです。目玉商品の価格を見て「コモディティ化」した商品価格に目を向けないようにする必要があります。
 コモディティ化とはよく例に出すのですが、ティッシュペーパーの事例で説明しています。現在のティッシュボックス5箱入りを皆さんはいくらなら購買するでしょうか。昔はもう少し大形の箱でしたが、王子製紙の知人である当時徳島工場の工場長が他社に先行して現在の薄さのボックスを開発し、1年間は先行者利得を得たようです。しかし、機能面での紙の柔らかさなどにほぼ差がない現在、あっという間に追いつかれ、ほとんどイベント価格で販売されているのが現状です。つまりそのイベント価格である200円前後の価格が主婦の頭にあるため、それ以上の価格では買わなくなってしまい、価格競争に陥っているわけです。自分の思い描く安値でしか買わなくなってしまうこと、機能性の変化が少なくなると起こってしまう現象です。
野菜だから他のライバルと差別化するのはむつかしいとよく言われます。栽培にどのような努力をされたでしょうか。土壌改良や水へのこだわり、苗や種へのこだわり、農薬や肥料へのこだわり、いろいろな部分で工夫できます。その工夫や努力を情報発信することで付加価値を表現し、消費者の価値観に合わせていき、評価してくれる消費者のいる店舗で販売を目指す必要があります。
 価格設定で気を付けたいのは、中間に誰と連携するのかしないのか、どこで販売するのかをまず考える必要があるということ、さらには、そうした売場で展示面積を取得するためには、価格も「松・竹・梅」などのランクをつける工夫をすることが重要です。それは商品構成面であったり、容器の大きさであったり、販売する商品によって工夫が必要です。例を挙げますと、後輩のバイヤーが北海道展で弁当の販売を計画したとき、消費者が驚く海産物のてんこ盛り弁当を考えました。どうしても1万円近くにまで値段が上がってしまいます。彼はそれでも販売したくて工夫を凝らしました。それは従来の弁当の価格設定に対して1万円を挟む、より高額な商品とそれよりも少し安めの値段設定の弁当を作り、それぞれに工夫を凝らした商品内容で販売をしました。いわば「松・竹・梅」と価格を3段階に分けることで、それぞれの販売数量を予測し完売したとのことです。
 ジャムでも述べましたが、売れ筋の瓶の大きさをよく調べ、それは百貨店やスーパーの店頭を見ればわかりますが、30gから150g入りなど用途別に工夫し1種類で済まさないことも必要です。多様化する消費者のニーズにどのように応えていくか、いろいろな工夫が必要でそれに対応した商品構成、価格設定を行う必要があるということです。「松・竹・梅」とは単に価格の差ではなく、商品構成や、容器の大きさ、構成内容の違いなどで工夫するということです。ただ経営資源(人、もの、金)に限りのある場合は、できれば高みから攻めて、ブランド化、知名度の向上を図る方法を採ることが重要です。力をつけたら商品の幅を広げていきましょう。

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ものづくり補助金

2022-05-18 09:49:04 | 独り言
ものづくり補助金の第11回目が発表されました。
今回の締め切りは8月18日(木)17時です。
最大時の応募に比べ三分の一程度にまで応募が少なくなっているようで、申請のチャンスかもしれません。
事業再構築補助金と同様、ウイズコロナ時代の事業戦略を見直し、将来投資の工夫をされてはいかがでしょうか。
応募に当たって重要なのは、公募要領をよく読み、9.応募申請に掛かる留意点のページと審査項目を再確認して申請書の作成を行うことです。
審査員は審査項目に対応した内容の記述があるかを見ながら採点していきます。
そういえば本日から審査が始まる予定です。
知り合いの審査員から情報を集めて最近の傾向を改めてお知らせします。
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【7】消費者の変化と顧客価値

2022-05-13 11:22:47 | 独り言
 人はみな生活者であり消費者であるのですが、いざ生産現場に立つとそのことを忘れ、生産者の立ち位置でモノづくりに注力してしまいます。
 今消費者が何を考え、どのような購買を行っているのか、自らの消費者の立場をなぜか忘れて生産に没頭してしまいます。
 モノ作りの際に少しでも消費者意識を持っていれば、どのようなストーリーでモノづくりを行えばよいのか、スタートの時点から売れるモノづくりができるのですが、商談会などでお会いする農家の方たちはすでに「完成」した商品で相談されることが多く、最近はまず開催する行政や企業、金融機関の方に商談会前の「モノづくり」相談会を提案しています。
 今、消費者は何に関心を持って購買をしているでしょうか。価格はもちろんですが、商品の安心安全、中でも健康意識としての栄養について、添加物について、品質要件としてのおいしさ、商品の外観や鮮度、賞味期限、その他国産なのか、日本のどこの地域で作られたものか、その地域の環境要件であったり、農薬や肥料などその作り方に関心があります。
 若い方のスマホの活用は目を見張るものがあり、検索しながら、どこで何を食べたいか、その雰囲気や味を楽しみ、そこで過ごす時間全体に喜びを感じようとします。食べ物でも同じで、どこでその食べたい商品を購入するか、その時間を楽しみ、食を楽しみます。食を楽しんだ後のインスタグラムなどでの情報発信の力や影響は言うまでもありません。
「17)真実の瞬間」の項で詳しく述べますが、マーケティング用語で「真実の瞬間(moments of truth)」という言葉があります。ヤン・カールソン(スカンジナビア航空元CEO)が提唱した言葉ですが、人は何かを利用するとき、数秒で自分に合っているのか、好みなのかを判断するというものです。情報を知り、検索する際、検索して店舗を利用する際、購入した後の経験、その経験を友人たちとシェアする際、それぞれの場面でそれは発生します。昔はAIDMA(注意、興味、欲求、記憶、購買行動)などと英語の頭文字をとって消費者行動が説明され、現在はAISAS(注意、興味、検索、行動、シェア)などと言われています。それぞれの瞬間で消費者の価値観に合わなければ購買やリピートにつながらないため、顧客の維持、拡大に結びつきません。商品の提供や情報発信が非常にむつかしくなってきたことを示しています。最近ではよく、カスタマージャーニーという言葉が使われますが、顧客がどのように皆さんの商品と接点を持って認知し、関心を持ち購入に至るのか、そうした購入までのプロセスを旅に例えた言葉で、その行動の途中途中で、皆さんの商品との接点をタッチポイントといい、マーケティング活動の最適化を図る考えです。製造業などではこうしたカスタマージャーニーをマップなどに落とし込み、顧客分析を行いマーケティング活動に活かしています。そこまでしなくても、顧客の行動はある程度読めると思います。顧客との接点がどのようなところにあるのか、それを考え、HPやFBなどの情報発信ツールの活用から、商品そのもののストーリーをどのように発信し、少しでも多く顧客とのタッチポイント(触れ合う場所)を増やしていくかの工夫をすることが重要です。そのためにも商品のブランドやパッケージ、シールに至るまですべてが自社のメディアであると考え、商品づくりを行う必要があるのです。オウンドメディアという言葉がありますが、HPやFBに限らず小生は、チラシやシールまでもがメディアだとお話ししています。
 なお、FCP商談会シートで商談を行った後、必ず農家の皆さんにお話しするのは、facebook(フェイスブック)での情報発信もよいのですが、それはフアンの囲い込みにはよくても、バイヤーが見るには面倒なもので、HPのほうが考え方や商品を知るうえで重要な手段となるということです。顧客カルテをバイヤーは作成する必要があり、商談後これという取引先とは、取引手続きを行う必要があります。FCPシートだけでは分からない部分など、うまくHPで情報発信をしておく必要があります。またHPの写真やご自身の思いをFCPシートと連動させておく必要もあります。農業マーケティングという言葉があるとするなら、モノ作りから加工、販売まで6次産業化を成功させるためにも、販売促進を考えるとそうした知識を学ぶことも必要です。
 コロナ禍で消費者行動に変化が見られます。今までは単にインスタグラムで情報発信をし、情報共有に楽しみを見出していた人たちが一層情報発信する写真そのものにもこだわりを持つようになり、いわゆる「インスタ映え」による情報共有が盛んになっています。商品開発の際、消費者のこうした変化をとらえ、例えば旬の野菜ギフトセットなどにもこうした彩の工夫を凝らした「インスタ映え」する商品構成によるギフトセットの方が売れるようになっています。セミナーでは、ギフトセットのパッキンなどに感謝の気持ちを書き表すだけでなく、商品構成に彩を加えることも提案しています。
■顧客価値
 2011年ですからもう11年前になりますが「100円のコーラを1,000円で売る方法」という本が出版されました。小生が所属したグループ会社の外資系ホテルで実際にメニューに載っており、ルームオーダーするとコーラに氷の入ったアイスペールなどのセットが運ばれてきます。普段100円、現在は150円くらいでしょうか、販売されている商品が、なぜ10倍近くする値段でも売れるのでしょう。おかげでホテルは出版後しばらくの間はお試し客で結構稼働率が良くなったといわれました。栓抜きだけは一流ホテルにしては納得いかないサービスとセミナーではお話ししています。超一流ホテルなのですからもう少し工夫してほしいものです。デザインや機能性に優れると持って帰られるのでしょうか。
 
 セミナーでお話しする中で重点を置いているのは、「顧客価値」についてです。
 他の事例を挙げてお話しもするのですが、閉店した大阪キタ新地の「ノノピアーノ」では食パンが5,800円で販売されていました。価格だけ聞けば買わないかもしれませんが、使われているバターが、英国王室、フランス大統領府、モナコ王室ご愛用のフランス・エシレバターを使用と聞くと、興味が沸いてこないでしょうか。冗談で、モナコ王室で使用ということはあのグレースケリーも食したのではなどと話していました。若い方にはぴんと来ない冗談ですが・・・
「顧客価値」とは、「顧客が相応のコストを負担してでも手に入れたいと感じる価値」のことです。そこには単に顧客が長時間かけてその商品やサービスにお金をかけるだけではなく、ホテルのコーラの例のように、豊かな気分にさせる雰囲気の中で、そのサービスがイケメン男性スタッフや美しい女性スタッフによってもたらされるとしたら一層高いとは感じないのではないでしょうか。商品やサービスのもたらすそのものの価値はさることながら、ブランド価値、旬などの時期やタイミング、困っていることに対する問題解決などいろいろな要素が含まれます。
 セミナーではそのほかに、岐阜の高級イチゴ「美人姫」、一粒5万円の例や、大阪のコーヒーショップ「ザ・ミュンヒ」1杯10万円など全国の高額品の話をして、驚いてもらうのですが、すでにTV放映などで知られてきました。
ともかく、こうした顧客の価値観を理解することが大切です。努力して作り上げた商品を「どこで売るか」「どこで売りたいか」、「どのような人に売りたいか」をしっかりと決めることが、いかに重要かお分かりいただけると思います。


よくマーケティングでマーケットイン、プロダクトアウトという言葉を聞かれると思います。
市場のニーズをつかむことが大切で、消費者目線で消費者の望む商品を作るということ、それをマーケットインと表し、生産者側からの発想で商品開発・生産・販売といった活動を行うことをプロダクトアウトと言われています。
小生は、顧客価値の考えを取り入れるなら、ヴァリューイン、ヴァリューアウトの発想が重要ではないかと考えています。現在は消費者の価値観を把握することでそれに見合う商品開発を行い、開発した商品の価値観を共有できるターゲットに向けて情報発信を行うことが重要と考えているからです。ニーズと価値観の違いは「潜在的な欲求」と「大切にしていること」との違いです。
セミナーでよく例に出すのが、①シーズ、②ニーズ、③ウオンツ、④ディマンドの違いです。
①のシーズは、メーカーなどの所有している技術・材料・アイデアなどと言われますが、セミナーでは「のどが渇いたな」とか「おなかがすいたな」という気持ちと簡単に説明しています。
②のニーズは、「何か飲みたいな」「何か食べたいな」という潜在的な欲求です。
③ウオンツは「コーラが飲みたい」「カレーを食べたい」などという具体的な顕在的欲求を指しています。
「ドリルを売るには穴を売れ」とは、マーケティング業界でよく言われる言葉ですが、「商品を売るには、『顧客価値』から考えよ」ということとセミナーでは説明しています。さらに重要なのは、④のディマンドです。
④ディマンドは、コーラが飲みたいと思い、例えばコンビニに行ったとします。そこであるお茶のキャンペーンが行われており、150円のお茶が88円だったとします。コーラを買おうと思っていたのに、店頭でお茶を買うことに変えてしまった。結局レジを通ったのはお茶です。
のどが渇いてコーラが欲しいと思っていたのに、店頭の販促やひょっとしたら販売するキャンペーンガールについ欲求が変わってしまった。よくあることではないでしょうか。顧客はいろいろな価値観を持って購買決定をします。その価値観に合わせた販売方法を採らないと、売上にはつながりません。モノづくりに技術がいるように、販売にも技術が必要です。マーケットインの考え方では、市場から顧客のニーズやウオンツを知ろうということですが、むしろ「顧客価値」を知らないと、最終結果でどんでん返しを食らうことにもなりかねません。極端な事例でしたが、モノづくりは商品開発だけではなく、販売の現場まで、つまり最後の最後まで、気を緩めることができないのです。
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【6】ベンチマーキング

2022-05-09 10:07:17 | 独り言
6次産業化にかかわらず1次産業に携わる皆さんの支援を行う際、必ず申し上げることがあります。
 それは競合相手を知るということです。マーケティングの中の言葉に3Ⅽ分析という用語があります。
 3C分析とは、外部環境である顧客(customer)とライバルである競合(competitor)の分析から事業を成功させるための要因を見つけ出し、自園・自社(company)の事業戦略に活かす分析を行うフレームワークのことです。
 自分勝手にモノづくりを行い、販路開拓を目指しても、なかなかうまくいきません。すでに多くのライバル(競合)が市場に出ています。新規参入を果たす場合には、必ずこの分析が必要ですし、販路を持っているとしても常にライバルを知ることは重要です。
 簡単にその重要性をお話しします。
①市場分析のポイント
むつかしく考えるのではなく、まずご自身が売りたい取引先をイメージします。商品を売りたいお店でも結構です。これは後述する商談会シート(FCPシート)の作成にも役に立ちます。
まず、どのような顧客に売りたいか、そのためどこで売りたいかを考えるわけですが、自園の商品を、購買する意志のある潜在顧客をイメージしてみます。具体的には、販売したい店が百貨店なのか、高級スーパーなのか、高級食材専門店なのか、道の駅なのかなどです。専門書には市場規模(潜在顧客の数、地域構成など)や市場の成長性、ニーズ、購買決定プロセス、購買決定者といった観点から市場分析を行うなどとむつかしく表現されていますが、まずは売りたい店を自分の目で確かめることが重要です。そこでどのような販売方法がとられているのか、商品はどのような陳列がされ、いくらの価格幅で売られているかなどを確かめます。
製造業などでのモノづくりにおいては、ペルソナ像(ある特定の購買者像)を描きターゲットとして、顧客のライフスタイルを分析し、その生活シーンで開発する商品がどのように使われるのかイメージしながらモノづくりを行いますが、まずはそこまで分析しなくても、「どこで売りたいか」を考えるだけで、商品化に大きなアイデアを生み出すことが可能です。
FCPシートでもやっと第3版でターゲットの欄に「小売り」から変更して百貨店、スーパーの項目を加えていただきました。どこで売りたいかそれをまずは考え、ライバルを知ることです。売場で商品を見れば、自園での栽培から販売までいろいろなヒントを得ることができます。売場ではどのような「こだわり」でその商品を集め販売しているのか、新鮮さの追求なのか、味なのか、はたまた生産者の人柄やモノづくりへのこだわりなのか、栽培された地域の環境なのか、それも水なのか日光なのか、土壌なのか栽培方法なのかなど、季節によっても異なるかもしれません。商品を見れば多くのことを語ってくれます。それも見ないで、試食もしないで、そうしたライバルと競争してもなかなか勝つことはできません。見えない部分でのライバルの強みを知ることはむつかしいからです。
■S・T・P
栽培した商品をどこで販売するか考えるとき、マーケティング用語ではポジショニングの工夫をするといいますが、事業戦略を構築する際、S・T・Pというキーワードが使われます。
Sはセグメンテーション(segmentation)、Tはターゲティング(targeting)、Pはポジショニング(positioning)の頭文字をとったものです。
むつかしく考えないで、どこのどのような市場のどの売場で販売したいのか、まず考えそのために何をしなければならないか工夫をすることを指しているのです。そのためにもまずは「己を知る」ことが重要です。
少し整理してお話しすると、まず市場分析を行う中で、よくお願いするのはSWOT分析です。自園や自社の強み(strengths)をまずは把握してもらい、弱み(weaknesses)もいろいろと考えていただきます。さらには現状での環境を分析、環境といっても社会・経済環境のことで、いろいろな支援制度や税制面でのメリット等の機会(opportunities)及び経営を脅かすような脅威(threats)が何か把握を行います。中小規模の農園や農家では経営資源が豊かにあるわけではありませんから、市場や消費者を何らかの基準で区分しグループ化を図りそのどこを攻めるかをまず考えるのがセグメンテーションです。農業においては、SWOT分析を行った際の強みを生かし、その強みを生かすことのできる有望顧客がだれか、その顧客はどこで商品を買うのかを考えて、むしろ次のターゲティング及び、ポジショニングを工夫するのが良いと思います。
経営塾などではよく使うSWOT分析ですが、個人の農家などを支援する中でSWOT分析などと難しい言葉を使わない場合が多々あります。というより強みと言ってもほとんどの方が、弱みは分かるが強みが何かわからないと話される農家の方が非常に多いのです。そうした場合には、何で儲けているのか、「めしの種」を聞くことにしています。売れているということはそれだけ顧客から支持を受けているわけですから、そこから解きほぐしていくのです。「種=強み」がどんどん出てくるのです。
FCPシートで問われるターゲット顧客はこの売りたい場所、百貨店なのか高級食材販売店なのかスーパーなのかなど、販売したいところを考えることがまず重要です。なぜなら、その考えに基づき、どのような商品をどのような価格で、どの流通や小売業と組んで、消費者に販売促進をかけ売上を確保するか、マーケティング・ミックスを工夫する必要があるからです。

②競合分析のポイント
自園が存在する周囲の環境を見てみると、ライバルでもありまた仲間でもある隣近所の農家がどこと既に取引をしているのか、自然に分かってくるのではと思います。そうした競争状況や競争相手についても把握する必要があります。特に、競争相手からいかに市場を奪うか(守るか)という視点を持ちながら、競合の数、参入障壁、競合の戦略、経営資源や構造上の強みと弱み(営業人員数、生産能力など)、競合のパフォーマンス(売上高、市場シェア、利益、顧客数など)に着目する必要があります。
競合との比較は、自園の相対的な強みや弱みの把握に役立ちます。 新規参入を図った農家の方が、ベテランに何を栽培したらよいかよく聞くことがあります。気を付けなければならないのは、よく売れる商品を教えてくれるのですが、だからこそ価格競争に陥る可能性があります。なぜなら販売されている量も多く、競争も厳しいからです。むしろ市場を見ながら付加価値のある独自の農産物を栽培することが重要です。
大手の流通業のバイヤーは、全国の安全・安心でおいしい農産物を生産される農業法人や農家の情報をよく知っています。その理由はギフトショーのお手伝いをしているとき、大手製造業の担当バイヤーから教えてもらいました。トヨタや東芝など自動車や家電メーカーのバイヤーは、世界中の部品メーカーや中小企業の製造機器類の内容やデータ、技術を常に把握しているのだとか。したがって展示会などのマッチングなどに担当者がわざわざ出ていくことはむしろないのだそうです。彼らは現在何らかの理由で世界のベスト10に入る企業のうちライバルとの競合の中で、何社かの「下請け」企業と独自にまた競合もしながら取引を行っていますが、そうしたベスト10の中にまずは入ることができるほどの力を持っているかどうか、販路開拓を目指す企業の内容を実は相手は知っているのです。よほど既存の取引先企業にミスなどがなければ、新規参入は非常にむつかしいことなのです。しかもそのあとに続くであろう企業の内容もよく知っています。大手企業のバイヤーはそう豪語していました。確かにトヨタ生産方式など「系列の重要性」は、彼らのモノづくりの状況からも判断できます。不良品が1点混じるだけで安心・安全に問題が起こり、リコール対象になるわけですから、手を抜くわけにはいきません。食品の生産でも同様、安心・安全だけでなく、おいしさやそのほかのいろいろな条件を現代の消費者やバイヤーから求められているのが現状です。百貨店であれ、スーパーであれ、そこに陳列されている企業や農家の商品に、何で勝つことができるか、自園の強みをよく把握して、マッチングに挑む必要があります。最初から基売場(プロパー売場)への進出は考えないほうが良いのかもしれません。身の丈に合った販売方法の工夫・挑戦をしたいものです。
 最近はアマゾンや楽天、もしくは自園のHPなどで販売したいと思われる方が増えています。比較的容易に参加できますが、手数料、配送料、包装・梱包の手間、金銭の授受方法等よく検討してほしいものです。SEO対策(検索エンジンの1ページ目にいかに出るか)、リスティング広告等いろいろな情報発信の手段がありますが、それなりに費用も掛かります。どのようにして利益を上げるか、HPなのかフェイスブックやインスタなどでまず情報発信するのか等、一層の工夫が必要です。情報発信で気を付けたいのは、バイヤーは限られた時間で取引先などの情報を早く知りたいため、HPでどのような経営者や従業員の皆さんが、どのような思いで、どのような環境の中、どのようにして農業に勤しんでおられるのかを知ろうとします。ファイスブックなどではどこに何が書いてあるのか分からないため、よほど興味のある取引先候補でないと見てはくれません。情報発信のツールとしての活用方法にも工夫がいるということです。

③自園分析のポイント
 ライバルを知るだけでなく、自園の強みを知り、モノづくりへのこだわりや努力をバイヤーやその先の消費者に知ってもらう必要があります。消費者は極端に言いますと「知ってる・知らない。好き・嫌い。」で購買の判断を行います。農家の皆さんや農業法人の皆さんご自身も消費者です。しかしモノ作りの段階ではそれを忘れて、自園都合の考えをして気を緩めてしまいがちです。もしくは知らない部分でライバルに負けてしまうのです。
そのためにも自園の経営資源や事業活動について、定性的・定量的に把握する必要があります。具体的には、売上高、利益、市場シェア、ブランドイメージ、技術力、組織のスキル、人的資源などを分析し、付加価値を生み出す機能や、間接費にかかる原価もできるだけ正確に計算できるような知識を得、事業としての確立を図る必要があります。
市場シェアなどとお話しすると驚かれる農家の方がいます。道の駅に行かれたら、自園の商品が同じ商品の棚や売場でどれくらいの面積を占めているか、そこからある程度ご自身が作られた商品が市場でどのくらい受け入れられているのかわかります。道の駅でも売上報告を月ごとに配布しているところもありますが、そうしたデータからも分析は可能です。今市場でどのくらい評価されているのか、ただ売れたかどうかの把握ではなく、他園や他社と比較してどのような状況にあるのかを知ることが重要です。基本的な数字の把握を行う癖をつけていただきたいものです。

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再掲載:「大阪農業時報」に投稿した6次産業化についての記事から

2022-05-07 10:04:24 | 独り言
6次産業化の内容は変わらないのですが、国の支援策は時代とともに変化してきています。「農山漁村発イノベーション」というくくりで本年度は支援が行われます。
ふと過去の6次産業化について触れた記事を思い出し、新たな気持ちで農家の皆さんの支援活動に生かそうと思いました。
少し長いですが、ぜひ読んでいただけると幸いです。

「地域に雇用増をもたらす6次産業化について」
(1)少ない成功事例と成功の基準
 農業に真剣に取り組む若者たちの姿を見るにつけ、何とか事業として成功することを祈り、少しでもその役に立てればと私は6次産業化の支援活動を続けています。
 「6次産業化総合化事業」の認定事例は数多く発表されていますが、成功事例がまだまだ少ないのが現実です。
 成功の基準は道の駅や産直市場で販売するのではなく、全国スーパーマーケット(以下SM)、百貨店は究極の販売先であるとしても、少なくとも「地場SM」、「地方SM」の定番商品になることにあります。なぜなら、地場SM、地方SMの売場に定番品として並ぶということは、「品質優×量産化に成功×コストダウンの実現×価格体系の設定×味が良い×原材料の安定確保×企業組織の確立」といったことが確立された証左であるからです。
 6次産業化がなかなか成功という状態にならない理由を、今までの支援の経験から見ていくことにし、事業を成功に導く提案をしたいと思います。
 そもそも6次産業化とは、農家や農業法人が1次産業としての農林水産物の生産、2次産業としての加工、3次産業としての販売までを行う一気通貫の体制を指しています。
 農産物の生産に関してはプロであるのですが、なんといっても課題はその後の加工→販売の工程にあります。すべてを自ら行うのではなく、誰と組むか、どのようなビジネスモデルを選択・構築するかで、結果は大きく異なってくるのが経営というものです。
 上に示したように成功の基準は明確になっています。ここに到達するのは至難のわざですが、これにチャレンジしているのが、6次産業化であるのです。地域にお土産品が一つ増えたという次元で喜ぶ人はいないと思います。雇用が増えてこそ、意義のある6次産業化であるといえるのです

(2)6次産業化への課題
 6次産業化の課題としては次のものがあります。
①安全・安心なモノづくり→品質面において消費者が求める安心・安全な商品になっているか?
②加工場の衛生・工程管理→加工場が安心・安全なモノづくり対策が十分できているか?HACCPの考え方を取り入れた衛生管理を行っているか?
③セグメンテーション→開発する商品が既存の商品に対して、差別化されているか?優れた特性を有しているか?
④流通チャネルの設計・設定→加工した商品を目指す流通チャネルに乗せることができるか、販路開拓ができているか?
⑤商品の出来栄え→ネーミング、パッケージ、ブランドなど流通に乗るレベルの商品になっているのか?
⑥商品の生産量→消費者やバイヤーに的確に商品や情報を届けることができるか?
⑦価格体系→流通に乗るコストであり、かつ価格体系を確立しているか?
⑧マーチャンダイジング→ブランド戦略、ネーミング、原材料の確保など商品づくりの手立てはできているか?
⑨そもそも「経営能力」を有しているのか?経営能力を養成しようとしているのか?

(3)経営課題と、その解決法
1)ものづくりについて
たとえば、農産物の規格外品を「もったいないから」という理由で、ジャムやジュースなどをつくっても、SMや百貨店では売れません。
売れない理由は
・セグメンテーションを行って他の商品と差別化していない
・原価が高く、流通に乗らない
・味・香り・栄養素などを吟味していないから、消費者やバイヤーから支持を得られない
ということになってしまうのです。
食品にとって
・おいしいのは当たり前
・異物混入がないのは当たり前
・食品の材料、添加物、加工方法などが吟味され、安心・安全というのも当たり前
というのが、日本の消費者の現実です。
 このような基本的なことができた上で、既存商品との差別化が必要とされているのです。
 しかし、6次産業化農家のほとんどが、家内手工業的な加工場で細々と手作りで、加工品作りを行っているのです。保健所の許可を一応は得ていたとしても、一連の作業の中で、加工環境に心もとない場面を私は多々見てきました。加工については農業法人といえども例外ではありません。
重要なことは、顧客価値を意識したものづくりであるのです。6次産業化の推進を図るのなら、元の農産物の生産に対するこだわり(環境、土壌、水、農薬など)の上に立ったおいしい農産物、新鮮な農産物から加工品を作り、流通ルートに乗せるべきなのです。
 加工場については、集塵機、無塵衣、エアーシャワーなどは当たり前のことです。密閉による外から虫よけ、常に頭巾やマスク、手洗いの励行、清潔な手ぬぐい、こうした心遣い、気遣いがどこまで行われているか、製造業でいわれる4S(整理、整頓、清潔、清掃)が、躾というよりも「習慣づけ」を加えて、5Sとして守られているでしょうか。そのうえでHACCPの考え方に基づく衛生管理が行われているか、データをきちっと取って生かしているかが重要です。

2)展示会について
 展示会などのマッチング会を開いても
・希望する流通企業と商談が成立しない
・「また連絡します」とバイヤーに言われてただ待っている
という状態が多いのです。
農水省にフード・コミュニケーション・プロジェクト(FCP)という組織があり、そこが「ベーシック16」という考えを打ち出しています。それに基づいて商談会用のシート(FCPシート)が作成されています。しかし、6次産業化農家からすると、経験上当たり前だと思っているのか、このシートが未だに完全に作成されていないのです。自分では普通と思われている生産過程を見直して、しっかり記述をしてほしいものです。そこには実はバイヤーや消費者が知りたい情報が隠れていることがあるのです。
 さらに商談会を開く側にも責任があります。ただ農家や農業法人を集め商談会を開き、いろいろな企業のバイヤーを呼んでも、どれほどのマッチング機会を生み出すことができるのか、流通の事情も分からないまま、展示会を開催するところがあります。やらなければならないからやっているということでいいものなのでしょうか?

3)流通事情
 百貨店とSMのバイヤーの行動は違います。
百貨店のバイヤーは、長年の経験から、いつどこでどのような農産物や加工品等が作られ市場に出てくるかを知っています。このため、旬を売場に反映すること、珍しい商品などに眼目を置いています。一方、SMのバイヤーは、季節ごとに売場基本レイアウト図を変更して、品揃えを刷新し、売上の最大化を図っています。
バイヤーが忙しいのは、限りある自店の棚を最大限に効果的に活用するために、天候・温度・湿度などを想定しながら、超稼ぎ筋、超売れ筋、特売品、新商品などを組み合わせて、売場に表現しているからです。
SMや百貨店では、よく見られる農産物直売所や道の駅のように、午後になると空きスペースが出てくるようなことは許されないのです。年間20億円以上販売する直売所や、それ以上の売上高を獲得しているSM、百貨店などは、常に商品の品出しを行って、売場を維持・充実させています。
 朝商品を納め夕方引き取りに来るような取引では集客や売上には限界があり、運営方法等の見直しが必要なのです。
6次産業化に挑戦する場合、欠品を起こさない、ロスを出さないというものづくりの原点からの意識改革が必要です。
 開発商品はどこでどのような顧客にどのように食べて欲しいのか、しっかり考えたうえで、生鮮品の販売、加工品の販売について工夫し、集客方法についても努力していただきたいところです。

4)6次産業化を成功させるために
 6次産業化事業を成功させるためには、次の対策が必要とされています。
①既存商品に対する差別化点を明確にする
②土、苗や種、農薬、肥料等元となる生産物のものづくりへのこだわりをもつて、「おいしさ」を追求する
③消費者・バイヤーがなるほどと思う展開ストーリーが必要である
④徹底してHACCPの考え方に基づく衛生管理を行い「安心・安全」の加工品を作る
⑤セグメンテーションを行い、既存商品とは異なる特長をもっている
⑥将来の取引拡大を意識した加工場への設備や機器の整備・投資を考慮する
⑦ネットワークを生かす
⑧まず顧客をイメージし、どのような顧客にどこでどのような商品について食べてほしいか、買ってほしいかを考える→使用場面
⑨商品のネーミング、パッケージ、シール、チラシに至るまで、総合的な基本計画を作成したうえで、情報発信を心掛け挑戦していく

5)支援センター(サポートセンター)や行政への提案
支援センターや行政等、事業の認定側も以上述べてきましたように
・商品のセグメンテーション・ストリー性
・異物混入を防ぐ方法の確立、HACCP支援
・材料の安定的な確保
・商品の特長・こだわりの明確化
・販路・販売チャネルの設定
・継続的な取引が可能な安定的な製造
といった点まで支援しながら認定にもっていき、事業を成功させてほしいものです。 
単に「自分で生産し、加工し、販売しなさい」ではなく、どのようなものづくりをし、どのような販路で販売するように工夫するかまで、支援センターがあり6次産業化プランナーがいるのですから、そうした支援の工夫を行った上で認定にもっていっていただきたいものです。
 6次産業化への農家等の挑戦を成功させるためには、いろいろな方法はあると思われますが、行政もいかに日本の農業の活性化を進めるか、支援活動を行っていくか、6次産業化(農商工連携等も含め)の認定方法や推進方法に対してより一層の工夫をしてほしいと思います。
 それは、単に生産者の支援だけではなく、食や観光等との総合的な連携も必要となります。個人や企業等、点で支援を行うだけでなく、今後はもっと面的な支援の必要性もあるのではないでしょうか。地域資源の活用は本当にできているのか、単に認定に終わっていないか、そのまま認定して放置されていないか、いろいろな県や市町村と仕事をするたびに、単なる制度ありきの支援を感じるのは歳を取ったせいでしょうか。
6次産業化は、日本の農業生産に経営そのもののあり方、ビジネスプランの策定、マーケティングなどの知識を据えないと6次産業化は成功しないと思います。

実はこの記事の内容は数年前に書いたものを少し加筆したものです。
コロナの影響で成功事例が少なくなっている現状を、少しでも回復基調に戻していきたいと再度掲載しました。
6次産業化の本質は変わらないのではと思った次第です。
お読みいただいた皆さんのご事業の少しでもお役に立てれば幸いです。
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【5】「農山漁村発イノベーション」と6次産業化・農商工連携  「新・農業読本」の続きです

2022-05-03 11:46:43 | 独り言
今回は「新・農業読本」の続きです。
 国の農林水産業に対する支援策の内容は毎年改善されていきますが、平成4年から6次産業化を発展させて、「農山漁村発イノベーション」としての取り組み支援を推進することになっています。ただ6次産業化の本質に変更はありません。6次産業化総合化事業を推進するにあたり、いつもお話することがあります。事業で成功するためには、まず1次産品の生産に成功する必要があります。成功とは、消費者が求める安心安全でおいしい農産物がまずできていることです。そこに「ストーリー」がないと1次産品は売れません。もったいないからB級品をジュースやジャムにという発想は全国にありますが、一農家でそうした商品を加工しても成功するでしょうか。毎年どれほどB級品のジュースやジャムが生産できるでしょうか。1次産品の生産効率が良い年はどうなるでしょう。そうしたB級品である商品をブランド化するのは至難の業です。消費者が「B級品で作ったジャムですが」とか、「ジュースですがいかがですか」と言われて購入するでしょうか。さらには、家内手工業的な「工場」で衛生管理の行き届いた安心安全の確保は本当にできるのでしょうか。小さな虫や埃など、さらには髪の毛1本混入しない設備になっているのでしょうか。道の駅でオリジナル加工食品をレストランの厨房などで作っているところがあります。ドアは1枚扉、「虫さんいらっしゃい」の状況で、百貨店やスーパーなどのバイヤーがその商品を購入するとは思えません。もし小さな虫が入っていたら、クレームの元、バイヤーはそうした状況は事前に防ぎたくなるものです。
 6次産業化を進めるためには、何度も申し上げますがまず1次産品である農産物をしっかり栽培する必要があります。そこに「ストーリー」があり、「ブランド化」ができれば、2次加工品についても、販路開拓は比較的行いやすくなります。ただし、家内手工業的な環境ではいくら保健所の認可を受けても、簡単ではありません。都道府県やJAの方に提案するのですが、いろいろな農家の味はおいしくても商品化できない1次産品を集め、しっかりと衛生管理等がされた加工場で2次産品への加工を行うことをなぜしないのでしょうか。現在6次産業化では加工を自園でなく安心・安全な加工場に委託することも許されていますが、「餅は餅屋」という言葉があるように、しっかりした管理下で製造することのほうが重要です。しかも、供給量をまとめることで、販路の拡大が見込めます。平成4年度の農水省の農山漁村振興交付金の内容を見ると、「農山漁村発イノベーション対策」として、農林水産物やの農林水産業に関わる多様な地域資源を活用し、新事業や付加価値を創出することによって、農山漁村における所得と雇用機会の確保を図る取り組みを支援する目的で、6次産業化を発展させて、
農林漁業者はもちろん、地元の企業なども含めた多様な主体の参画によって新事業や付加価値を創出していく「農山漁村発イノベーション」としての取組を支援することになっています。ただ、6次産業化の認定を受けさらに施設整備事業へと展開する支援は従来通りです。
6次産業化を推進するため加工品を作りたい場合、
①同じ加工品づくりを近所の農家と連携し共同で行う
②その際、「加工場」としての環境を整備すること、もしくは安心安全管理の行き届いた専門の加工場に委託すること、自身で加工場を管理する場合は、HACCPの考え方を取り入れた衛生管理を実践すること
③連携や共同でできない場合は、単独で委託できる安心安全な衛生管理のできた「加工場」に依頼すること
④資金的にゆとりがある場合には、自園で身の丈に合った、将来の拡張を考慮した「加工場」を設置すること
などが、選択肢として考えられます。
6次産業化に挑戦する場合、最初のハードルはここにあります。消費者目線で、受け入れられる商品づくりになっているのか、よく判断する必要があります。
 2次加工においても、キーワードは「連携」です。それなりの圃場の広さを持たない農家では、自園で残ったB級品や1次産品を処理するのではなく、栽培方法の似通った近隣の農家といかに連携して、売れる2次産品の加工を行うか、そのほうがブランド化を図りやすく、知名度の向上にもつながり、販路開拓も進めやすくなります。自己完結型で行う場合は、1次産品にも優れ、しかもその一定の割合を2次加工に回すくらいでないと成功しません。B級品では供給量も限られ、販路開拓もむつかしくなります。
しかしもったいないのですから、その処分の方法について、工夫が必要となります。自園のみで考えないことが大切です。もちろん資金的にも余裕があり、広い栽培面積を誇り、それなりに2次加工品としての供給量が確保できるのであれば、ぜひ直接加工から販売まで挑戦していただきたいものです。そうした場合に、6次産業化に関わる補助金は、農商工連携も含め大いに活用の仕方があります。では小さな圃場でB級品の取り扱いはどうすればよいでしょうか。それはそれで方法があります。例えば、しっかりとした衛生管理の下、ジャムやジュースに加工して、自園訪問者や取引先に販売したりギフトとして配布したり、道の駅などに出荷するなどの方法があります。その際、出来上がる量で工夫する必要があります。
 ここで注意していただきたいのは、農商工連携といっても、国が支援するものと都道府県で行うものがあるということです。(年度によって異なる場合があるので、注意してください。)国の支援を受ける場合はかなり申請へのハードルが高く、商品は国内で初めて生産されるような新規性が求められます。現状国内初の新規性ある商品開発はむつかしくなっていると思われ、中小機構の担当者に問い合わせをしたところ、最近は新規性についてはあまり問わないとの話ではありました。確かに直近の認定結果を見てみると、新規性のない案件が認定されているケースも見られるようになってきています。それでも平成4年度2月の農水省発表では全国で2件の認定です。
 少し詳しく申し上げますと、農商工連携は6次産業化の一形態ですが、農業者が生産・加工・販売を一体的に行う狭義の6次産業化とは内容が異なります。
 6次産業化の目的は、農業者が生産・加工・販売を一体化し、所得を増やすことにあり、当初農業者と商工業者がお互いの技術やノウハウを持ち寄り、新商品開発などを行う農商工連携は含まれていませんでした。 
農水省の説明によると、『「6次産業化」とは、農業者が生産(1次産業)だけでなく、加工(2次産業)、流通・販売等(3次産業)に主体的、総合的に関わることで、付加価値を得ようとする取り組みのことで、「農商工連携」とは、農林水産業者と商工業者がそれぞれの経営資源を持ち寄り、新商品・新サービスの開発等に取り組み、それぞれの収益拡大、消費者の便益向上、さらには地域経済の活性化や食料自給率の向上を目指す』というものです。
両者の大きな違いは「6次産業化」が農林水産業者を支援対象としていることに対し、「農商工連携」は商工業者と農林水産業者の「連携体」を支援対象としているということです。またハード(設備等)に対する補助金に対しても、「6次産業化」はハードとソフト(試作開発・販路開拓等)の両方を補助金の対象としていますが、「農商工連携」は基本的にはソフトに対する補助金であるということです。
また、農商工連携といっても、都道府県、独立行政法人中小企業基盤整備機構、地元金融機関、農業団体等が出資した「農商工連携応援ファンド」があります。国の支援と比較すると金額的には少なくなりますが、考え方によっては申請のハードルはやや低いといってもよいかもしれません。
さらには地域資源活用事業などを利用してハードにかかわる事業に関しても、国の支援があります。小生はその支援実績で、中小企業診断士として弁護士や税理士と並び経産省の経営革新等支援機関に認定され、事業再生やモノづくり・商業・サービス補助金などの支援活動が可能となっています。
しかし最近、6次産業化総合化事業の申請支援に携わることがありますが、以前に比べ、ハードルが高くなってきた感じがします。農家や農業法人の方でも申請書の記述がむつかしくなってきています。安心・安全に対する要求が高くなり、また申請後の事業の成果を厳しく問われることが原因かもしれません。ハード事業を行う際には当たり前ではありますが、申請前の事前準備にしっかり取り組んでおく必要があります。国や県の少しでも認定しようという気持ちは感じられますが、認定に至るハードルの高さを超える努力が求められるようになっています。ここ数年、年に1件は6次産業化事業への申請のお手伝いをしてきましたが、最近の申請に当たっては農政局の担当の方から非常に丁寧な申請書に対する支援を行っていただいています。申請を受理するためには細かな気が付かない点の指摘などもありますが、何度かやり取りをする中で認定に向けた申請書の「完成」に至り、農家の方に喜んでいただくことが増えてきました。
残念ながらコロナ禍、最近はセミナーが多く、個別の支援は「事業再構築補助金」による申請支援の方が増えています。

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