中小企業診断士(経営革新等認定支援機関)や6次産業化プランナーとしていろいろな企業の支援を行う際、よくマーケティングの4Pという言葉を使います。
①商品(PRODUCT)
②価格(PRICE)
③販売促進(PROMOTION)
④販売場所や流通ルート(PLACE)
のことを、英語の頭文字を使って4Pと言います。
しかしすぐにマーケティング=4Pというお話はしません。
なぜならその前に自社や自園の事業の組み立てをしっかり行う必要があるからです。つまり事業戦略の構築、策定を行って初めて、その事業の推進のためにマーケティングの力が必要となるからです。では、具体的にどのように自園の事業戦略を策定すればよいのでしょうか。
大切なのはご自身がどのような農業を事業として進めたいかということです。ビジョンとか理念とか言われますが、企業ではクレドなどという言葉を使って、企業理念を言葉にして日々の仕事に役立てています。
どこでどのような商品を誰に食べてほしいのか、そのために何をどのような栽培方法で作るのか、そうした思いを明確にする必要があります。
そうでないと売れないときにいろいろと事業を進める中で迷いが出てきます。信念をもって自ら決めた道を進むことが、継続して事業を推進していく上での力となるのです。その思いをFCPシートやHP、最近ではインスタグラム等で語ることによって、バイヤーや消費者はその思いに共感し、商品の購買に結びつけてくれるのです。
資金や人材・組織面で潤沢な裏付けのない場合、その限られた資源を有効活用するためにも、思いを明確にしながら、どこでどのような場所で、誰に、もしくはどのような消費者に対して商品を販売したいのか、現在の市場環境や消費者の変化を理解し、企業規模によっては市場調査を行ったうえで、S・T・P(セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニング)を明確にすることが重要です。そのうえで、売りたい顧客に向けてマーケティング戦略を採る必要があります。
■商品面
農産物である1次産品として、商品面ではまずどのようなことが考えられるでしょうか。
消費者の趣向は常に変化します。その変化に対応しなければ売れる商品を作ることはできません。前の項で述べたように、消費者の変化に対応した商品とはどのようなものでしょうか。
東北の震災後、首都圏の味の好みが変わったといわれました。やや薄味になりながら3年たつと元に戻りつつあると日経新聞には書かれていました。日能研の調査などでも、「焼きそば・ソース味」は全国で差がないのに、ラーメンでは首都圏はしょうゆ味が比較的好みなのに北に行くほどみそ味になり、九州では豚骨になるなど食べるものでまだ味の違いがあります。
したがって食材に関して、販売したい地域での味の好みにはまだ注意する必要があります。味付けがそのまま他の地域で好まれるとは限らないのです。
ジュースの味をどうするか考えるときでも、どのような味付けにするかは、売りたい顧客を考える際、気を付ける必要があります。例えばスポーツの後のドリンクでも味の濃さに注意が必要です。毎週テニスを行っていますが、その後で飲む100%果汁のジュースはのど越しが却ってよくなく、少し薄めのものであったり、スポーツドリンクに頼ったりします。でも、旅行先でのホテルや旅館での食事時にはジュースや牛乳などその濃さにむしろこだわりたいものです。
よく相談される内容で、コメの場合の袋の大きさやジャム、ジュースでの販売する適量、瓶などの大きさを聞かれます。
顧客のニーズはいろいろで、小生のようにジャムが好みの人間は大瓶150g以上のものを探しますが、現在の売れ筋は30gほどの小瓶です。毎日同じ味を楽しむのではなく、個人でも家族でもいろいろと味の変化を楽しみたいからだと思われます。
そうした消費者の購買の関心事は味だけではなく、瓶の形状やパッケージ、シールなどいろいろな点に置かれています。
6次産業化で商品化された後よく相談されるのが、手作りで作成したシールなどの出来栄えについてですが、まずお話しするのがCI(コーポレート・アイデンティティ)についてです。CIについては【13】ブランド化の項で詳しく触れますが、展示会などで商品を展示した際、開発された商品群が統一感のあるデザインでパッケージや商品のシールがデザインされていると、一見して〇〇企業やどこそこ農園の商品と分かるように工夫することが大切です。ブランド化を図り知名度の向上、売上の確保を目指すのなら、自園の取り組んでいる理念やビジョンを明確にするためにも、CIを考え、そこからデザインを起こしていく必要があります。
全国一の売上を誇る糸島市の道の駅に「伊都物語」という乳製品のCIで成功している例があります。セミナーで必ず触れるのですが、いろいろな農家が同じブランドでいろいろな乳製品を作っているにもかかわらず、統一ブランドで非常に分かりやすく、それぞれの商品の味もおいしく、他府県への進出を目指しています。日本航空のファーストクラスの食事のデザートにも採用されました。
パッケージや商品のデザインを考えるとき、その商品だけでデザインを考えると、次からの開発商品との整合性や今までの商品との関連性などが弱く、統一感のない、展開の際特色のないイメージ展開となります。デザインを依頼する際忘れないでいただきたいことです。
■価格面
6次産業化で相談の多いのが価格設定についてです。仲間内の価格や道の駅の価格を見ながら、同調価格にされる方が非常に多いのですが、利益を生むためには、しっかりとした原価計算の上に、ご自身の生活費を乗せる必要があります。努力しないで儲けることはできませんが、せっかく苦労して栽培し育てた農産物です。工夫を凝らし付加価値を高め、その商品に関しては少しでも「リーズナブル」な価格設定を行い販売する工夫が必要です。
6次産業化では農家の皆さんが直接加工から販売まで行うことが奨励されているように思われますが、決してそうではありません。
「餅は餅屋」、1次、2次、3次それぞれの強みを生かした連携も認められているわけですから、供給の流れつまりサプライチェーンとして、それぞれの役割を担う中間企業の利益を考えた価格設定を行うことも必要です。後述しますが、そこに「ストーリー」の必要性が生まれます。ただ単に栽培した商品を道の駅などで販売するのが、本当の農業といえるのでしょうか。工夫し努力し栽培した商品を必要とする消費者に販売することが重要で、価格コンシャスな消費者に目を向けると、価格競争に陥り、疲弊してしまいます。最近道の駅で成功しているところは、価格は決して安くはありません。新鮮・朝採りなどをうたい文句に「適正価格」で販売されています。スーパーよりも新鮮なら安くする必要もないのです。目玉商品の価格を見て「コモディティ化」した商品価格に目を向けないようにする必要があります。
コモディティ化とはよく例に出すのですが、ティッシュペーパーの事例で説明しています。現在のティッシュボックス5箱入りを皆さんはいくらなら購買するでしょうか。昔はもう少し大形の箱でしたが、王子製紙の知人である当時徳島工場の工場長が他社に先行して現在の薄さのボックスを開発し、1年間は先行者利得を得たようです。しかし、機能面での紙の柔らかさなどにほぼ差がない現在、あっという間に追いつかれ、ほとんどイベント価格で販売されているのが現状です。つまりそのイベント価格である200円前後の価格が主婦の頭にあるため、それ以上の価格では買わなくなってしまい、価格競争に陥っているわけです。自分の思い描く安値でしか買わなくなってしまうこと、機能性の変化が少なくなると起こってしまう現象です。
野菜だから他のライバルと差別化するのはむつかしいとよく言われます。栽培にどのような努力をされたでしょうか。土壌改良や水へのこだわり、苗や種へのこだわり、農薬や肥料へのこだわり、いろいろな部分で工夫できます。その工夫や努力を情報発信することで付加価値を表現し、消費者の価値観に合わせていき、評価してくれる消費者のいる店舗で販売を目指す必要があります。
価格設定で気を付けたいのは、中間に誰と連携するのかしないのか、どこで販売するのかをまず考える必要があるということ、さらには、そうした売場で展示面積を取得するためには、価格も「松・竹・梅」などのランクをつける工夫をすることが重要です。それは商品構成面であったり、容器の大きさであったり、販売する商品によって工夫が必要です。例を挙げますと、後輩のバイヤーが北海道展で弁当の販売を計画したとき、消費者が驚く海産物のてんこ盛り弁当を考えました。どうしても1万円近くにまで値段が上がってしまいます。彼はそれでも販売したくて工夫を凝らしました。それは従来の弁当の価格設定に対して1万円を挟む、より高額な商品とそれよりも少し安めの値段設定の弁当を作り、それぞれに工夫を凝らした商品内容で販売をしました。いわば「松・竹・梅」と価格を3段階に分けることで、それぞれの販売数量を予測し完売したとのことです。
ジャムでも述べましたが、売れ筋の瓶の大きさをよく調べ、それは百貨店やスーパーの店頭を見ればわかりますが、30gから150g入りなど用途別に工夫し1種類で済まさないことも必要です。多様化する消費者のニーズにどのように応えていくか、いろいろな工夫が必要でそれに対応した商品構成、価格設定を行う必要があるということです。「松・竹・梅」とは単に価格の差ではなく、商品構成や、容器の大きさ、構成内容の違いなどで工夫するということです。ただ経営資源(人、もの、金)に限りのある場合は、できれば高みから攻めて、ブランド化、知名度の向上を図る方法を採ることが重要です。力をつけたら商品の幅を広げていきましょう。
①商品(PRODUCT)
②価格(PRICE)
③販売促進(PROMOTION)
④販売場所や流通ルート(PLACE)
のことを、英語の頭文字を使って4Pと言います。
しかしすぐにマーケティング=4Pというお話はしません。
なぜならその前に自社や自園の事業の組み立てをしっかり行う必要があるからです。つまり事業戦略の構築、策定を行って初めて、その事業の推進のためにマーケティングの力が必要となるからです。では、具体的にどのように自園の事業戦略を策定すればよいのでしょうか。
大切なのはご自身がどのような農業を事業として進めたいかということです。ビジョンとか理念とか言われますが、企業ではクレドなどという言葉を使って、企業理念を言葉にして日々の仕事に役立てています。
どこでどのような商品を誰に食べてほしいのか、そのために何をどのような栽培方法で作るのか、そうした思いを明確にする必要があります。
そうでないと売れないときにいろいろと事業を進める中で迷いが出てきます。信念をもって自ら決めた道を進むことが、継続して事業を推進していく上での力となるのです。その思いをFCPシートやHP、最近ではインスタグラム等で語ることによって、バイヤーや消費者はその思いに共感し、商品の購買に結びつけてくれるのです。
資金や人材・組織面で潤沢な裏付けのない場合、その限られた資源を有効活用するためにも、思いを明確にしながら、どこでどのような場所で、誰に、もしくはどのような消費者に対して商品を販売したいのか、現在の市場環境や消費者の変化を理解し、企業規模によっては市場調査を行ったうえで、S・T・P(セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニング)を明確にすることが重要です。そのうえで、売りたい顧客に向けてマーケティング戦略を採る必要があります。
■商品面
農産物である1次産品として、商品面ではまずどのようなことが考えられるでしょうか。
消費者の趣向は常に変化します。その変化に対応しなければ売れる商品を作ることはできません。前の項で述べたように、消費者の変化に対応した商品とはどのようなものでしょうか。
東北の震災後、首都圏の味の好みが変わったといわれました。やや薄味になりながら3年たつと元に戻りつつあると日経新聞には書かれていました。日能研の調査などでも、「焼きそば・ソース味」は全国で差がないのに、ラーメンでは首都圏はしょうゆ味が比較的好みなのに北に行くほどみそ味になり、九州では豚骨になるなど食べるものでまだ味の違いがあります。
したがって食材に関して、販売したい地域での味の好みにはまだ注意する必要があります。味付けがそのまま他の地域で好まれるとは限らないのです。
ジュースの味をどうするか考えるときでも、どのような味付けにするかは、売りたい顧客を考える際、気を付ける必要があります。例えばスポーツの後のドリンクでも味の濃さに注意が必要です。毎週テニスを行っていますが、その後で飲む100%果汁のジュースはのど越しが却ってよくなく、少し薄めのものであったり、スポーツドリンクに頼ったりします。でも、旅行先でのホテルや旅館での食事時にはジュースや牛乳などその濃さにむしろこだわりたいものです。
よく相談される内容で、コメの場合の袋の大きさやジャム、ジュースでの販売する適量、瓶などの大きさを聞かれます。
顧客のニーズはいろいろで、小生のようにジャムが好みの人間は大瓶150g以上のものを探しますが、現在の売れ筋は30gほどの小瓶です。毎日同じ味を楽しむのではなく、個人でも家族でもいろいろと味の変化を楽しみたいからだと思われます。
そうした消費者の購買の関心事は味だけではなく、瓶の形状やパッケージ、シールなどいろいろな点に置かれています。
6次産業化で商品化された後よく相談されるのが、手作りで作成したシールなどの出来栄えについてですが、まずお話しするのがCI(コーポレート・アイデンティティ)についてです。CIについては【13】ブランド化の項で詳しく触れますが、展示会などで商品を展示した際、開発された商品群が統一感のあるデザインでパッケージや商品のシールがデザインされていると、一見して〇〇企業やどこそこ農園の商品と分かるように工夫することが大切です。ブランド化を図り知名度の向上、売上の確保を目指すのなら、自園の取り組んでいる理念やビジョンを明確にするためにも、CIを考え、そこからデザインを起こしていく必要があります。
全国一の売上を誇る糸島市の道の駅に「伊都物語」という乳製品のCIで成功している例があります。セミナーで必ず触れるのですが、いろいろな農家が同じブランドでいろいろな乳製品を作っているにもかかわらず、統一ブランドで非常に分かりやすく、それぞれの商品の味もおいしく、他府県への進出を目指しています。日本航空のファーストクラスの食事のデザートにも採用されました。
パッケージや商品のデザインを考えるとき、その商品だけでデザインを考えると、次からの開発商品との整合性や今までの商品との関連性などが弱く、統一感のない、展開の際特色のないイメージ展開となります。デザインを依頼する際忘れないでいただきたいことです。
■価格面
6次産業化で相談の多いのが価格設定についてです。仲間内の価格や道の駅の価格を見ながら、同調価格にされる方が非常に多いのですが、利益を生むためには、しっかりとした原価計算の上に、ご自身の生活費を乗せる必要があります。努力しないで儲けることはできませんが、せっかく苦労して栽培し育てた農産物です。工夫を凝らし付加価値を高め、その商品に関しては少しでも「リーズナブル」な価格設定を行い販売する工夫が必要です。
6次産業化では農家の皆さんが直接加工から販売まで行うことが奨励されているように思われますが、決してそうではありません。
「餅は餅屋」、1次、2次、3次それぞれの強みを生かした連携も認められているわけですから、供給の流れつまりサプライチェーンとして、それぞれの役割を担う中間企業の利益を考えた価格設定を行うことも必要です。後述しますが、そこに「ストーリー」の必要性が生まれます。ただ単に栽培した商品を道の駅などで販売するのが、本当の農業といえるのでしょうか。工夫し努力し栽培した商品を必要とする消費者に販売することが重要で、価格コンシャスな消費者に目を向けると、価格競争に陥り、疲弊してしまいます。最近道の駅で成功しているところは、価格は決して安くはありません。新鮮・朝採りなどをうたい文句に「適正価格」で販売されています。スーパーよりも新鮮なら安くする必要もないのです。目玉商品の価格を見て「コモディティ化」した商品価格に目を向けないようにする必要があります。
コモディティ化とはよく例に出すのですが、ティッシュペーパーの事例で説明しています。現在のティッシュボックス5箱入りを皆さんはいくらなら購買するでしょうか。昔はもう少し大形の箱でしたが、王子製紙の知人である当時徳島工場の工場長が他社に先行して現在の薄さのボックスを開発し、1年間は先行者利得を得たようです。しかし、機能面での紙の柔らかさなどにほぼ差がない現在、あっという間に追いつかれ、ほとんどイベント価格で販売されているのが現状です。つまりそのイベント価格である200円前後の価格が主婦の頭にあるため、それ以上の価格では買わなくなってしまい、価格競争に陥っているわけです。自分の思い描く安値でしか買わなくなってしまうこと、機能性の変化が少なくなると起こってしまう現象です。
野菜だから他のライバルと差別化するのはむつかしいとよく言われます。栽培にどのような努力をされたでしょうか。土壌改良や水へのこだわり、苗や種へのこだわり、農薬や肥料へのこだわり、いろいろな部分で工夫できます。その工夫や努力を情報発信することで付加価値を表現し、消費者の価値観に合わせていき、評価してくれる消費者のいる店舗で販売を目指す必要があります。
価格設定で気を付けたいのは、中間に誰と連携するのかしないのか、どこで販売するのかをまず考える必要があるということ、さらには、そうした売場で展示面積を取得するためには、価格も「松・竹・梅」などのランクをつける工夫をすることが重要です。それは商品構成面であったり、容器の大きさであったり、販売する商品によって工夫が必要です。例を挙げますと、後輩のバイヤーが北海道展で弁当の販売を計画したとき、消費者が驚く海産物のてんこ盛り弁当を考えました。どうしても1万円近くにまで値段が上がってしまいます。彼はそれでも販売したくて工夫を凝らしました。それは従来の弁当の価格設定に対して1万円を挟む、より高額な商品とそれよりも少し安めの値段設定の弁当を作り、それぞれに工夫を凝らした商品内容で販売をしました。いわば「松・竹・梅」と価格を3段階に分けることで、それぞれの販売数量を予測し完売したとのことです。
ジャムでも述べましたが、売れ筋の瓶の大きさをよく調べ、それは百貨店やスーパーの店頭を見ればわかりますが、30gから150g入りなど用途別に工夫し1種類で済まさないことも必要です。多様化する消費者のニーズにどのように応えていくか、いろいろな工夫が必要でそれに対応した商品構成、価格設定を行う必要があるということです。「松・竹・梅」とは単に価格の差ではなく、商品構成や、容器の大きさ、構成内容の違いなどで工夫するということです。ただ経営資源(人、もの、金)に限りのある場合は、できれば高みから攻めて、ブランド化、知名度の向上を図る方法を採ることが重要です。力をつけたら商品の幅を広げていきましょう。