1031ビジネス・コンサルティング

経営コンサルタントの目で、日々の出来事から、参考になるキーワードを取り上げて、解説したり、情報発信をします。

【19】地方創生と人口減少社会

2021-04-22 17:15:22 | 独り言
以前中小企業大学の恩師服部吉伸先生や仲間と共著で「人口減少社会を右肩上がり経営で乗り切る」という本を書いたことがあります。感覚的には先の話と思われ、対策も取らずにいる企業もあれば、地方行政のように、学校を新築しても将来は高齢者施設に転用できるような工夫をしているところもあります。
 2021年東京オリンピックの開催後、人口は毎年70万人ほど減少していくと予測されていますが、2030年代になると年間平均して100万人ほどの減少になるといわれています。そうなると税収減、設備投資の減、消費の減、生産年齢人口の減による高負担社会の発生などが考えられます。道路、上下水道、トンネル、橋梁、公共施設などインフラの維持がむつかしくなります。予算消化のため2月3月は道路工事などが多かったのに、財源がなくなると、穴だらけの道路などがそのまま放置、行政効率の低下等、市町村合併・再編成などいろいろなことが考えられます。ただでさえ高齢化している社会、農業生産者の平均年齢を考えると、これからの農業がどのような道を歩むのか、このままでは日本経済すら成り立たないような事態が発生するかもしれないとき、今からいろいろな手段を講じる必要があります。
 地方創生、1億総活躍社会はそうした危機感から出てきたとも思われますが、自園や自社の在り方について未来像は描けているでしょうか。
 事業承継に関して製造業だけでなく農業の現場では、後継者不足に悩む状況が多々見られるようになり、家族内で後継者がいるところは何とかうまく、技術の伝承から始まって経営の継続を図ってほしいと思っています。
企業寿命が30年といわれている中で、古いデータですが2014年に実は倒産企業の企業寿命は23.5年になっていました。その中でも製造業のうちの46.3%、農林水産業の41.3%が老舗企業です。支援先には事業継承を負のスパイラルで継いだ農園もありました。厳しい労働環境、資金繰りなどで、父親のノウハウさえも引き継げずに放り出された状況の方もいます。しかし農業に携わるすべての方に、何としてでも日本農業、その地域の農業を支えてほしいと思っています。そのためにどのような支援ができるのか、微力ながら6次産業化プランナーの仲間とグループを組み、経営革新認定支援機関としても仲間とグループを組みながら、モノ作りから販路開拓、事業再生の支援活動を行っています。
 話を戻しますが、地方創生のためには何が必要かということ、いろいろなジャンル、分野で求められていることは多いのですが、まずは農業の活性化のためにこの人口減少社会の中でどのようにすればよいのか、日本にとって非常に大きなテーマとなっています。オランダのような農業先進国と同じことをすれば解決するでしょうか。地域のブランド化を図り、インバウンドによる海外からの観光客誘致で問題の解決になるでしょうか。
■農食観連携
 農業に関して、コロナ禍以前から行政の担当の方に提案しているのは「農・食・観」連携です。農水省のHPなどで6次産業化の認定事例を見て今後の事業展開の参考にしていただきたいと思いますが、単に6次産業化に取り組むだけではなく、高付加価値農産物の生産、単独でも連携しても供給力の拡大による新加工品の開発、それらの情報発信と販路開拓、地元レストランやホテル、旅館などと連携した食材開発や加工品の販売、業務用の開発とギフト商品などとしてのブランド化、観光地との連携によるお土産品開発、そうした一連の動きをプロジュースしていくのが行政の仕事だと思います。単体農家や企業だけで集客は非常にむつかしく、小さな点を少し広い面とすることで、地域のブランド化が可能になり、集客も国内だけでなく海外からも可能になるかもしれません。道の駅を作っても、小規模で地域の役に立っても、地域ブランドにまで持ち上げるには努力が必要です。まして観光資源や体験が可能な観光用農地などのない場所で、レストランを経営するのもむつかしいことです。それぞれに「ストーリー」がなければ、誰も来ないし商品を買ってもくれないでしょう。例えば春の桜のシーズン、花や寺社仏閣などの観光資源があれば、水の良い農地でのこだわり栽培ができれば、食材の提供もでき、レストランや旅館ホテルなど、地域の名物として共同して提供が可能となります。地域ブランドはこうして作りあげる必要があります。観光農家や特別栽培農家、レストランや食堂、中小規模の地方ホテルや旅館だけではそれぞれ単体で集客がむつかしい時代、どのように連携し地域の「ストーリー」づくりを行うか、それは街づくりにも関係があります。シャッター通りをどのように活性化したらよいか、地産地消のために食材が地元で供給できる体制になっているのか、100円イベントなどを毎年繰り返し、知名度の向上を図っているところがありますが、大切なのは、イベントでの集客ではなく、日ごろの集客とフアンづくりです。その際の「ストーリー作り」、ブランド化が必要となります。
ただし農食観連携がすべてではありません。求められる持続可能な社会や農業を生み出すためには、いろいろな方法が考えられますが、重要なのは再度日本の農林水産業を活性化させることです。そのためのインフラ整備を長期計画でどのように行っていくのか、まさに100年計画が求められています。単年度で予算のやりくりを行うのではなく、いま、オリンピック後の日本の在り方を再度検討すべきこの機会を、生かす必要があります。
農林水産業のすべてを循環型で持続させ、生活の安心・安全にもつなげる必要があります。製造業の失われた20年を、同時に組み立て直す必要もあります。
そのためには点在する道の駅が地域の生活基盤となる整備を行い、地域農林水産業の規模は小さくても総合産業化を目指すことで、それぞれの地域の生活基盤を守る手段とすること、グリーン・ツーリズムなど都市と地方の交流、インバウンドの動きなどを総合的にコントロールし、集客も循環型で行うなど、日本の各地で「点」で行われている催しを何とか地方だけのものにしないで、周年行事として集客し、活性化するなどの必要があります。規模は小さくてもよいのですが、繰り返し催行できるための支援が必要ですし、地域での採算にも努力する必要があります。今、すべての業際を取り除き、すべての面で総合的に連携する必要がある時期に来ていると思われます。そのための優先事項を100年計画で、納得いく形で示し、継続して推進することが重要ではないでしょうか。
実は地方創生について、ある大学の論文に寄稿したものがあり後日アップしたいと思っています。
内容は「エッジ・イノベーション」についてです。
地方からイノベーションを中央に広げていく、リバース・イノベーションの地方版ともいえるものです。
自分自身のヒントにしているのは、自動運搬車(ロボット)による地方の経済循環を活発化させることです。
スマートシティ構想などが内閣府などからアナウンスされていますが、中国の深圳などの事例を見るとすでに日本はかなり遅れています。飛行場などご覧になられたことはおありでしょうか。
ファーウェイなどの地元に対する貢献は半端ではなくすごい規模の開発につながっています。ITの活用など驚くばかりですが、都市からそれを行おうとすると、カネも時間もかかります。
そうではなくて的を絞って、地方の経済循環を活性化させる方法から始めてはというのが提案です。後日のアップを楽しみにしてください。

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【18】真実の瞬間(Moment of Truth)とアイグラス

2021-04-17 13:50:47 | 独り言
バイヤーは担当売場や商品の売上数字が気になります。自分が仕入れた商品が売場で売れているのか、何が売れ筋で何がダメなのか、POSレジでの成果は毎日チェックしますが、現場に行っていろいろなヒアリングを行い、売場担当者と意思の疎通を図ります。
 小売業では消費者のニーズを、どのようなシーンごとにとらえているかお判りでしょうか。その際参考にするのが、「真実の瞬間」という言葉です。
 SAS航空のヤン・カ-ルソン社長が自社のサービス戦略に取り入れた言葉で、消費者はわずか数秒で顧客自身の満足度を図るというものですが、語源は闘牛士が闘牛にとどめを刺す瞬間の言葉です。
 現在はSNSやパソコンでいろいろと情報検索ができます。そうした
①情報を得た瞬間、
②検索してさらなる情報をHPなどで得た瞬間、
③興味を持ち購買しようと店舗やHPを訪問した瞬間、
④購買しHPや店舗でのサービスを受けた瞬間、
⑤商品を実際に利用した瞬間、
⑥そうした情報を仲間やSNSでシェアする瞬間、
いろいろな瞬間があります。
それぞれの場面で消費者は「満足」「不満」を感じ、総合的な判断を下しているわけです。それぞれの場面で顧客満足を得るために、いま小売業はいろいろな努力をしています。どこかの場面で「不満」を感じられたら、売上につながらず商売は継続しません。合格点をもらうために、消費者の満足を継続してもらうために涙ぐましい努力をしています。
実はこうした「真実の瞬間」を図るツールがあります。アイグラス(アイトラッキンググラス)といわれるものです。消費者が、パソコンのHPのどの部分を見ているのか、情報誌のどこに注目しているのか、店舗に来る途中途中でどこを見ているのか、店舗の外観のどこに注目しているのか、入口での看板やポスターなど、何に目がいっているのか、売場では棚のどこをどのように見ているのか、商品を手に取った時、どの部分を見ているのかなど、追跡することができます。実際アイグラスを利用してHPや商品パッケージを変更し、売上増に結びつけている企業があります。
 例えばダイドードリンコ株式会社でアイグラスを活用し、自販機の商品配列を変更した事例は有名です。商品のシールやパッケージデザインの変更事例も海外では多く発表されています。
そこから「Zの法則」が覆りました。人は紙媒体などを見る場合、本来Z字のように左上から始まって右上へ、目線を斜め左下に持ってきて右に向けるいわゆるアルファベットのZ文字のように目線を動かして情報を判断するというものでした。HPなどではFの法則などと言われています。しかしアイグラスを使って、ベンディングマシーンやHP、チラシ、ポスターなどをモニターの方に見てもらうと、法則通りの動きはせず、与えられた対象物における商品や文字の配置、デザインなどによって目線の動きが異なることが分かってきました。重点的にどこを見ようとしているのか、そこからどのように判断をしたのかなど、いろいろなデータを引き出すことに成功しています。その中から、ダイドーはベンディングマシーンの配列を変え、売上に貢献したわけです。
ネット検索すると海外などでも商品パッケージのロゴの並びやロゴを囲む色、デザインを変更したりすることで売上の向上を図った例がたくさん見ることができます。
 そのため、小生はアイグラスを使って、農業技術の向上が図れないのかなどと思っています。
一橋大学の野中郁次郎名誉教授はその本「知識創造企業」の中で、知識の暗黙知の形式知化への知のスパイラルについて説明していらっしゃいますが、昔と違い現在ではベテランや師匠と言われる人が「背中を見せてモノを覚える」時代は終わったと思われます。
伝統工芸の部門や製造業などでも「匠」はたくさん存在するのですが、日本のモノづくりがなぜガラパゴス化して遅れてきたのか、伝統工芸などの「匠」の技術を消費者のライフスタイルに合わせた新商品化できないのか、そうした場面で、アイグラスを技術力のある方にかけてもらい、どのような点に注力しているのか、農業でも同じで、栽培する農産物の成熟度合いを見ながら、いろいろな手段を使うのはどのような場面でどのような部分なのかなど、漠然としか見ていない新人に対して、実際の見方のノウハウを教え、素人でも勉強できる手段にもなるのではと思います。
 あるTV番組で日本の技術の高さを海外のプロに見てもらうシーンがありましたが、逆に農業の生産場面などを東南アジアや中国、インドなどの環境の中でどのように生かしていけばよいのか、国内で自慢していても広がるとは思えません。製品が海外で思わぬ使われ方をしている「和風総本家」などの番組がありましたが、そうした利用シーンからもっと日本の技術輸出・商品輸出を考える必要があるのではないでしょうか。
 最新のツールを使って、技術力の向上を図りながら、海外での生産活動を行うことで、地球の人口増への対応、食糧難の解消など、日本のできることはもっとあると思うのですが、国の補助金もそうしたバラエティに富んだ支援に期待したいものです。さらに言えば、最近モノづくりの現場などではAR(拡張現実)やVR(仮想現実)などの技術を使い、スマートグラスで眼鏡の先の空間にマニュアルやいろいろなデータを映し出したり、眼鏡自身に映像などを映すことができるようになっています。農業の現場などでもいろいろな使い方ができそうです。
 アマゾンのアメリカやカナダなどでの動きを調べているとき、アメリカのノルドストローム百貨店やフランスの婦人靴店などMRを活用した靴の販売を行っている店舗が存在することに驚いたことがあります。日本でももっといろいろな分野で応用され、活用されていけばと思ったことですが、最近やっとゲームセンターなどで活用されてきているようで、中国のゲームセンターなどにも追いついてきたようです。
早く農業などの分野でも広く活用され、日本の高い栽培技術をより広く高めていってほしいと思います。
別の機会に触れますが、オープン・シェア革命の広がりに期待しています。

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【17】GAPとHACCP

2021-04-06 11:38:08 | 独り言
GAPについてはストーリーの第3段階の項などで詳しく述べていますが、HACCPについてお話しておきたいと思います。
 現在小生も参加する6サポWESTという中央サポートセンター登録の6次産業化プランナーの関西メンバーが集まって活動を行っておりますが、その中にHACCPリードインストラクターの海老澤政之さんがいらっしゃいます。
彼は製薬工場、化粧品工場、食品工場、実験動物施設、病院手術室などのバイオクリーンルーム(BCR)や半導体工場やその他電子部品工場などの産業用クリーンルーム(ICR)の設計・施工に携わった経験を食品衛生管理の基本であるHACCPシステムに展開し、『人に優しい施設創り・人に易しいシステム創り』のサポートを目指しておられ、ご一緒にレストランなどの支援を行ったことがあります。彼から多くのことを学びました。それがきっかけで小生もHACCP伝道師として活動するようになりました。
 HACCPについては平成30年6月13日に公布された食品衛生法等の一部を改正する法律で、原則としてすべての食品等事業者の皆様にHACCPに沿った衛生管理に取り組んでいただくことが盛り込まれています。更に本年2021年6月からは義務化になりました。
そのためにもHACCPについて学ぶ必要があります。
HACCPはHazard Analysis and Critical Control Pointの頭文字をとったもので、危害分析重要管理点と訳されています。1993年にFAO(国連食糧農業機関)とWHO(世界保健機関)の合同食品規格計画(コーデックス)委員会から「HACCPシステム適用のためのガイドライン」が示されて世界へと広がり、今日では、アメリカをはじめカナダ、オーストラリア、EU諸国においてHACCPシステムは法律により義務づけられています。
 日本大百科全書によると、「HACCPは、食品の原材料生産から加工、流通、販売、消費に至るまでのすべての過程について、工程ごとにHA(危害分析)を行い、危害を防止するCCP(重要管理点)を定め、CCPのCL(Critical Limit:管理基準)を一定頻度で継続監視することにより、危害の発生を未然に防ぐものである。」と記述されています。さらに「食品は私たちの生活に不可欠なもので、本来安全であるべきものであるが、現実には食中毒の原因であることも多い。消費者が食品の安全・安心に対して非常に敏感になっている現状をみると、食品産業が消費者からの信頼を回復する一つの手段がHACCPシステムの導入であるといえよう。」と述べられています。
 GAPが農産物の生産工程の各段階に対して管理項目を設定し、総合的なリスク管理を行っているのとは異なり、HACCPは加工場などにおいて「確実に危害防止できるポイント(重要管理点)」を明らかにし、そのポイントにおける管理項目を確実に実施することによりリスクを抑えることを目的としたものです
 6次産業化総合化事業の中で加工場設備を拝見する際、海老澤さんの指摘は今後の事業展開を行う中で非常に参考になりました。
将来の事業展開を考えたうえ戦略立案を行い、事業計画を立てる際に、どのようにGAPやHACCPに取り組んでいくかは、事業規模や資金、販路などよく将来設計を工夫したうえで取り組む必要があります。滋賀県の株式会社浅小井農園のように最初の設立段階からGAPの取得を考え、それなりの規模でしっかりとハウス設計を行い、事業の進展に備えていく気構えも必要かもしれません。HACCPはさらにその後の加工場の設置において、義務化への対応を考えるべき内容と思われます。株式会社組織などそれなりの企業規模のある会社は、今後の事業推進に当たり、オリンピックでの食材提供や商品の輸出などの際重要に認定を受けることも必要になると思われますが、ISO22000などさらに食品の安全を目的とした認証システムがあることは知っておいていただきたいものです。
問題は個人事業主など経営資源が豊かでない場合、どのように対応しなければならないでしょうか。HACCPにできるだけ準じた形での運営が求められます。つまりHACCPの考え方を取り入れた衛生管理を行い、データ管理を行う必要があります。まずは身の丈に合った対応から準備勉強し、できるだけの対応をする必要があります。売り先や消費者を考えたビジネス展開を心掛けてください。そのためにまずは下記HPから自園や自社が所属する関連HPを参考に記述されているフォーマットなどを自園・自社向きに活用し対応することをお勧めします。注意していただきたいのは、HACCPは認定を求めているのではないということです。あくまでもHACCPの考え方を取り入れた衛生管理を行うために、しっかりとデータに基づく管理を行うということです。食品等事業者団体による衛生管理計画手引書で、皆さんが加工されている食品のHACCPのための手続き、作業の進め方を参考に衛生管理に努めていただければと思います。

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000179028_00003.html
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