1031ビジネス・コンサルティング

経営コンサルタントの目で、日々の出来事から、参考になるキーワードを取り上げて、解説したり、情報発信をします。

【17】GAPとHACCP

2023-04-17 15:49:44 | 独り言
GAPについてはストーリーの第3段階の項などで詳しく述べていますが、最近の事例等からHACCPについて,HACCP伝道師としてお話しておきたいと思います。
 現在小生も参加する6サポWESTという中央サポートセンター登録の農山漁村発イノベーションプランナー(旧6次産業化プランナー)の関西メンバーが集まって活動を行っておりますが、その中にHACCPリードインストラクターの海老澤政之さんがいらっしゃいます。
彼は製薬工場、化粧品工場、食品工場、実験動物施設、病院手術室などのバイオクリーンルーム(BCR)や半導体工場やその他電子部品工場などの産業用クリーンルーム(ICR)の設計・施工に携わった経験を食品衛生管理の基本であるHACCPシステムに展開し、『人に優しい施設創り・人に易しいシステム創り』のサポートを目指しておられ、ご一緒にレストランなどの支援を行ったことがあります。彼から多くのことを学びました。
 HACCPについては平成30年6月13日に公布された食品衛生法等の一部を改正する法律で、昨年から原則としてすべての食品等事業者の皆様にHACCPに沿った衛生管理に取り組んでいただくことが義務化されています。そのためにもHACCPについて学ぶ必要があります。
HACCPはHazard Analysis and Critical Control Pointの頭文字をとったもので、危害分析重要管理点と訳されています。1993年にFAO(国連食糧農業機関)とWHO(世界保健機関)の合同食品規格計画(コーデックス)委員会から「HACCPシステム適用のためのガイドライン」が示されて世界へと広がり、今日では、アメリカをはじめカナダ、オーストラリア、EU諸国等においてHACCPシステムは法律により義務づけられています。
 日本大百科全書によると、「HACCPは、食品の原材料生産から加工、流通、販売、消費に至るまでのすべての過程について、工程ごとにHA(危害分析)を行い、危害を防止するCCP(重要管理点)を定め、CCPのCL(Critical Limit:管理基準)を一定頻度で継続監視することにより、危害の発生を未然に防ぐものである。」と記述されています。さらに「食品は私たちの生活に不可欠なもので、本来安全であるべきものであるが、現実には食中毒の原因であることも多い。消費者が食品の安全・安心に対して非常に敏感になっている現状をみると、食品産業が消費者からの信頼を回復する一つの手段がHACCPシステムの導入であるといえよう。」と述べられています。
 GAPが農産物の生産工程の各段階に対して管理項目を設定し、総合的なリスク管理を行っているのとは異なり、HACCPは加工場などにおいて「確実に危害防止できるポイント(重要管理点)」を明らかにし、そのポイントにおける管理項目を確実に実施することによりリスクを抑えることを目的としたものです
 過去の6次産業化総合化事業の中で加工場設備を拝見する際、海老澤さんの指摘は今後の事業展開を行う中で非常に参考になりました。
将来の事業展開を考えたうえ戦略立案を行い、事業計画を立てる際に、どのようにGAPやHACCPに取り組んでいくかは、事業規模や資金、販路などよく将来設計を工夫したうえで取り組む必要があります。滋賀県の株式会社浅小井農園のように最初の設立段階からGAPの取得を考え、それなりの規模でしっかりとハウス設計を行い、事業の進展に備えていく気構えも必要かもしれません。HACCPはさらにその後の加工場の設置において、認定を考えるべき内容と思われます。株式会社組織などそれなりの企業規模のある会社は、今後の事業推進に当たり、国内消費用の食材提供に限らず商品の輸出などの際重要になると思われますが、ISO22000などさらに食品の安全を目的とした認証システムがあることは知っておいていただきたいものです。
 問題は個人事業主など経営資源が豊かでない場合、どのように対応しなければならないでしょうか。HACCPにできるだけ準じた形での運営が求められます。まずは身の丈に合った対応から準備勉強し、できるだけの対応をする必要があります。売り先や消費者を考えたビジネス展開を心掛けてください。気を付けなければいけないのは、HACCPは認証を求めているのではないということです。HACCPの考えに基づいた衛生管理が行われているかということで、しっかり加工場などの衛生管理をデータに基づいて管理しているかどうかということです。ただ、輸出などを考える場合や大手企業との取引を行う場合などには、HACCP認証を求められる場合があることに注意が必要です。特にアメリカやカナダ、EU、香港、シンガポールなど輸出国が求めるHACCP対応を事前に調べておく必要がある点などに気を付けること、また認定機関には地方自治体、業界団体認証だけでなく、民間の審査団体による認証などがあり、無駄な費用をかけない認証の取得の工夫も必要ということです。知っておいていただきたいのは義務化といわれていますが、実は「制度化」であり、認証とは自治体や業界団体の行う適合証明とは異なり、第三者機関による審査を受けて、「仕組みとしてCodex HACCPの基準に則りHACCPに基づいた衛生管理をしている」と、客観的に認めてもらうことを指します。小規模農家の皆さんはまずはHACCPの考えに基づいた衛生管理のやり方を学び、「6次産業化」に挑戦し加工品などの販売を目指していただきたいし、中小規模の企業になると業界団体などが発表しているHACCPの考えを取り入れた手引書を参考にし取り組んでいただきたいものです。いずれにしてもHACCPの導入を行うことが必要ですが、認証を受けるためには時間も費用も必要となり、取引先としてどこと組むか、どこに販売したいか取引したいかなどよく検討して対応を図る必要があります。
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FCPシートの作成 続き

2023-04-04 12:01:56 | 独り言
19. アレルギー表示
 この欄では、表示の義務のある商品名や、表示を奨励する商品名にチェック欄がついています。使用していない場合は✖で消しておくと、ちゃんと考慮していると思われます。
20.出展者企業名
独特の読み方や読みづらい名称の方は、必ず振り仮名を振ってください。バイヤーは改めて聞きにくいものです。
21.年間売上高
 小規模零細企業はあまり書きたくないところだと思います。金額によっては相手にされない場合もありますが、相手取引予定先も小さい場合は逆に喜ばれる場合もあります。商談の中で相手の名刺を見ながら商談する必要がありますが、面積などの規模からだいたいバイヤーは売上などを予測できます。大規模農家や農業法人は供給力があることを分かってもらうためにも記述したほうが良いと思います。その際には令和何年度、売上〇〇万円などと記入してください。
22.従業員数
 パートやアルバイトの人数も入れて総合の人数を記述しましょう。 規模や人数からバイヤーは供給力や農家の力を判断します。いつ現在の人数か記入しておくと親切です。
23.代表者氏名 フルネームでの記述が原則です。難しい名前には振り仮名も。
24.来場者へのメッセージ
 いろいろな商品を栽培している農家は、どのシートにもコピペして同じ文章にされる場合が多いのですが、バイヤーにとって少しでも印象付けるためには栽培品目ごとに少しでもよいので「こだわり」の栽培、努力の部分を強調しましょう。土壌改良や水、農薬・肥料、苗や種に関してどのような工夫を日ごろされているのか、ストーリーを語る部分です。
補足シートでは、企業姿勢、中でも、企業理念・食品事業者としての基本方針・法令順守への取り組み方針・食の安全・安心に関する理念・お客様とのコミュニケーション方針・食育などの取り組み方針などを記述するように求めています。
25.ホームページ
 他の項でも触れていますが、フェースブック(FB)やブログなどで情報発信されている農家も多いのですが、バイヤーはHPでどのような思いで栽培をされているのか、農業に取り組んでおられるのか知りたくて見に来ます。HPのページネーションに気を付けて情報提供するのが重要な理由はここにあります。また、FBやインスタなどとリンクを張ることでSEO(検索エンジン)対策の工夫もぜひ行ってください。ただし、作成しっぱなしで記事が古いのは逆効果となりますので要注意です。自園での販売などをされている場合は、MEO対策も忘れずに工夫しましょう。Google Mapの左に並ぶ検索結果の店舗名上位に入るか否かで集客は変わってきます。
26.会社所在地/工場所在地
 加工品製造の場合外部委託されていれば、その連携先の名称を記述する必要があります。大手工場などと連携している場合は、むしろ記述することでバイヤーに安心・安全及びそれに対する姿勢が分かります。
27.担当者、e-mail、TEL、FAX 間違いがないか見直しを。
28.製造工程(農林水産品の場合は生産工程)などのアピールポイント
 この項の表示は非常に重要です。写真も含めて、製造工程をフローチャートなどで示す必要があります。それぞれの工程でこだわりの部分を示す必要があるからです。そのプロセスの中で、生産される商品の環境写真、加工品の場合は工場の安心・安全面の実行されているシーンの写真、製品として完成されているシーンやパッケージに入れられている写真など、ポイントを工夫して事前に撮影しておき、HPなどと連動させると良いと思います。
 生鮮品でもどのような環境の中で、どのような水やりや農薬・肥料などを使って栽培しているのか、ハウスなのか路地なのかなど、これもHPと連動して撮影しておく必要があります。
 雛形の例では工場内の絵しか描かれていません。小生はシートの左端には環境(圃場)を見せてはとお話ししています。工場や圃場の周辺環境がどのようになっているのか、工場に入れば安心・安全管理が行き届き、最終製品になっている工程を3段階で見せるのが分かりやすいのではと思います。工場はバイヤーにとって関心事の非常に高い場所になりますが、必ずと言ってよいほど取引開始の際には見学に来ます。工場の管理状況をチェックしないと商品の販売はできません。いかにモノづくりに適した環境で製造を行っているか、安心・安全感を見せる必要があります。
29.商品検査の有無
 農家などでも目視による検査など、記述する必要があります。何もしないで出荷されるとバイヤーとしては取引したくないものです。できるだけ、「有」にチェックを付けられるよう管理することが大切です。加工場に関しては、衛生管理等に係る検査項目に対しての結果を示す必要があります。製造現場・生産現場の安全性を示すことが大切です。
30.衛生管理への取組
 加工品となるとこの取り組みは非常に重要です。
 HACCPの考えに基づく衛生管理を行う義務があり、必ず触れてください。詳しくは次の項で触れることにします。
 また、5S(整理、整頓、清掃、清潔、習慣づけ)などに注意しながら、加工品などでは洗浄、消毒などを加えた7Sへの努力などをしっかり記述してください。
31.危機管理体制
 クレーム対応に関して誰が対応するのか、どのような体制になっているか、トレーサビリティをしっかり行い、原因追及が可能な体制や対応を分かるように記述する必要があります。個人経営の場合は、個人の名前を記述してください。

 以上簡単に触れましたが、項目によってはバイヤーが気に掛ける部分があることを理解し、抜けもれなく記述する必要があります。
 ネットなどで参考事例を見、同業他社や同じ農産物を栽培する農家などの記入例を参考にブラッシュアップしていくことが重要です。

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