1031ビジネス・コンサルティング

経営コンサルタントの目で、日々の出来事から、参考になるキーワードを取り上げて、解説したり、情報発信をします。

余談ですが・・・・・

2024-06-22 11:38:41 | 独り言
 実は製造業の方を中心にデザイン・シンキング(思考)のセミナーを開きワークショップなども担当いたしましたが、ふとある怖さに気が付きました。
 ある時のワークショップで受講生に課題を出した際、参加した皆さんが一斉に作業を開始します。その際にパソコンやモバイル端末など自由に使うことを許可していました。作業開始にあたっての最初の動きはまず「検索」から始まります。
驚いたのはその時の参加者の画面です。同じキーワードの入力、同じ画面での情報収集、個性のある検索画面を見ている人は全く見当たりませんでした。「知識のコモディティ化」という言葉が頭をよぎりました。
 デジタル社会になって、韓国がとりわけサムソンなどが日本の電機メーカーを凌駕していった「失われた30年」を振り返らざるを得ません。
 すでに彼ら韓国企業はアメリカのIDEO社やfrog(フロッグ・デザイン)社などのデザイン会社というよりも「デザイン・シンキング(デザイン思考)」をツールとして事業戦略を構築するデザイン・コンサル企業と連携し、ものづくりを行い、事業戦略においても、そのデザインにおいても日本企業を凌駕していったのではと思われます。実際IDEO社はスタンフォード大学で、frog(フロッグ・デザイン)社はハーバード・ビジネススクールで授業を持っています。デザインを教える芸術系大学ではない大学で授業を持ち、ツールとしての「デザイン・シンキング」を教えているわけです。遅まきながら気が付いた電通や博報堂などの日本企業も彼らと連携し、今では出資や業務提携等をしているやに聞いていますが、その後の彼らの海外HPも昔の情報発信内容が制限され、つまらなくなっていました。以前はどのような考えに基づいてクライアント企業の商品づくりを行ってきたのか、それぞれの事例が非常に面白く拝見できたものです。デザイン・シンキングをツールとして教えても活用方法がまずい日本の企業で、これがその結果という成功事例にはまだお目に掛かっていません。商品的にアップル社のiphoneのような成功事例が生まれているでしょうか。ある企業の若手デザイナーに聞いた話ですが、デザイン系の大学では10年以上前から「デザイン思考」の授業はあったようです。しかし先輩デザイナーは勉強しておらず、言えなかったり使えなかったりしたと話していました。最近は「アート思考」といって問題解決型ではなく、デザイナーの発想を重視した商品開発方法なども注目されています。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【4】―2スマート・アグリ(農業)とICTについて 追補つづき

2024-06-22 11:36:23 | 独り言
 話を戻しますが、デジタル化社会におけるデータの活用方法、コミュニケーション能力は非常に求められているはずなのに、まだまだ活用されているとは言えないのが日本の現状ではないでしょうか。これから農業や製造業等に就職される若い方達には、いかにそうしたツールやデータを活用するか、また活用しながら学びを深くしてほしいと切に願わざるを得ません。
 実は、自動車に興味があり、次に買い替えるときは安心・安全にこだわった車にしようといろいろと勉強していると、ドイツのdSPACE社のTargetlinkというソフトウエアの存在を知りました。実はこのソフトはドイツの農機具メーカーであるCLAAS社のコンバイン収穫機などに採用されているのですが、機械が収穫の最適な状況を判断して人間よりも的確に自動で行うというものです。航空宇宙産業向けなどにも開発されているこのソフトは、いろいろな分野に応用されているようで、自動車における「サービス・デザイン」の進化同様、いろいろな分野に影響をもたらすかもしれません。頼もしくもあり、日本のメーカーには頑張ってほしいとしか言わざるを得ません。最近、こうした海外の先進事例に良くぶつかるケースが増えてきました。気のせいなのか、歳のせいなのでしょうか。しかし最近HPを見ると日本のトヨタや日産、日立、三菱電機などのユーザー名が出てくるようになりました。
 こうしたドイツのソフトウエアだけではなく、オランダやイスラエル等の環境に合ったものづくり技術にも追いつきぜひ追い越して、食料自給率を上げ、安心・安全でおいしい野菜や果物などを生産し、輸出するまでにもっていっていただきたいものです。
 またそうした生産の際に、筋力ではなく知力を使う努力をしてほしいものです。女性の農業への進出、若年層の農業への進出、そのためには農業も働きやすい環境の下での仕事場に変える必要があります。ICTの活用だけではなく、最新のロボットやAI、ドローンなどの活用が必要になってきます。自動化できる部分やロボットの着用や活用による軽作業化など、農業実務の課題解決に関してまだまだ課題も多いと言わざるを得ない状況です。オランダのハウス栽培の現場を見て、その大きさや天井高に驚くのではなく、なぜヨーロッパへの食品工場になっているのか、生産効率が高くなぜ輸出国になっているのか、根本的な部分を学び違いを理解しながら超えていってほしいものです。オランダの栽培方法と日本の大きな違いは、データを活かした病害虫対策だと思っています。日本では病害虫の発生後の対策に優れていますが、オランダではむしろ予防対策が進んでいるといわれています。リスクを最小限に抑えるデータの活用方法は日本でも学びたいものではないでしょうか。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【4】―2スマート・アグリ(農業)とICTについて 追補

2024-06-22 11:33:37 | 独り言
 近年統計学が見直され、ビッグデータの活用などデータ・サイエンティストの存在がクローズアップされています。
 最近はITよりもICTという言葉が使われるようになっていますが、ITを「総合的な情報技術」ととらえ、ICTは「情報伝達技術」ととらえると、情報は伝達するだけではなく、蓄積された情報の分析も必要と考え、むしろそちらへの重きを置いてICTとここでは触れていきます。
 小生もある漬物屋さんの支援を行うとき、当時健康志向の強い消費者がどのような言葉を検索用語としてみているのか調べたことがあります。ヨーグルト、ポリフェノール、乳酸菌など健康志向の消費者が毎月どのようなキーワードで検索しているのか研究し、トマト農家が摘果したミニトマトを漬物にして販売したことがあります。農家と漬物屋さんがコラボし、新たな商品づくりを行った例でもあります。漬物屋さんは別の商品ではありますが、漬物大賞を受賞された経験をお持ちです。最近はデータ・サイエンティストという職業にスポットが当たっていますが、興味ある方はぜひ勉強して、農業分野にも生かしてほしいものです。
 これからの農業において、オランダなどの農業先進国に追いつき追い越すためには、ICTの技術を農業にも生かす必要があります。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【4】-1スマート・アグリ(農業)と植物工場

2024-06-17 22:53:47 | 独り言
ここでまず触れておきたいのが植物工場についてです。植物工場での生産が始まってずいぶん時間が経ちますが、日本ではどれほど成果を上げているでしょうか。簡単なハウス栽培とは違って、今はやりのICTなどを使った栽培方法ですが、ハウス内外の環境・温度湿度や水、肥料、栽培状況などいろいろなデータ管理が行われているようです。しかし投資のし過ぎで失敗するケースも見られます。単価幾らの野菜をどれだけの投資で回収するというのか、素人が判断してもできそうな事業なのに過大投資をし、失敗するケースも見られます。
■オランダ・イスラエルと植物工場
 大手企業が植物工場に進出、と言っても仕組みを売る企業もあれば、実際に葉物野菜などを生産し販売する企業などいろいろ存在します。「みらい(現MIRAI㈱)」の動向に注目していましたが、投資額と栽培する葉物野菜の金額、数量を考えると、巨額投資の経営に疑問符が付くのは当初から思われていたことではないでしょうか。その後のリカバリー状況が気になります。しかし最近は成功事例も見られるようになってきました。何事も身の丈経営から始め、しっかり利益を計算しながら進めていくことが大切です。確実な販路を持ちながら栽培量を増やしていかなければ、投資に見合う回収はなかなか進みません。損益分岐点の把握も重要ですが、実は植物工場で危惧していることは他にもあります。
 農家の中にもオランダのハウス栽培を見学した方が増えてきましたが、オランダでは天井高の高いハウスの中で、ICTを使った非常に高度な栽培を行って、ヨーロッパの食材を賄っています。実際オランダの食料輸出量は世界2位と言われる食糧輸出国ですが、国土面積は日本の50分の1、ほぼ九州と同じ面積で、耕地面積は日本の4分の1(185万ha)です。農業者の総人口に占める割合は2.5%と日本と同じですが、令和4年において日本の農業就業人口は約123万人、オランダは15万人と日本の12%ほど、しかし輸出金額は農水省の2021年度分発表のデータによると1407億ユーロ(866億ドル)と過去最高額で世界第2位、コロナ禍をものともしていませんでした。ちなみに1位のアメリカは1449億ドルでした。なぜここまで収穫量が高く、輸出ができているのでしょうか。ICTテクノロジーによる高度な栽培ノウハウの蓄積が日本の比ではないということ、アプリケーションの数が一説には1,000項目近くあるとか。日本の栽培現場でどれくらいの項目数、管理が行われているでしょうか。
 ただこうした技術的に優れたオランダのノウハウですが、そのシステムを導入すると発生したデータはそのままオランダにも流れます。世界中のデータが集まり、さらなるビッグデータの分析や研究がされるのはよいのですが、日本が技術的に追いつくのはいつになることやら、心配になってきます。
 またオランダ農業でもう一つ注目しているのは、高効率高収益率のある栽培方法ですが、品種ごとに栽培方法が決まっており、品種による付加価値生産の差が見られないという点です。日本の農業とはその点が違うのではと思います。
現在ほとんどの日本の植物工場でも、ハウス内で栽培している野菜等の生育環境(光、温度、湿度、二酸化炭素濃度、養分、水分等)をパソコンなどのシステムで制御し、生育状況のモニタリングを行っています。日本はオランダなどと比較して日当たりの良い環境にあるので、LEDや蛍光灯などの光に頼るよりも、自然光を利用した太陽光利用型の施設園芸のほうが、コスト的にも野菜の味の面などでも適しているのではと思われます。実際オランダでも太陽光利用型が多いようです。こうして日本でも、野菜等の栽培において比較的高度な環境制御と生育予測を並行して行い、周年・計画生産を可能にするような栽培を行っているところが増えてきたと思います。そうした経験を活かし、日本でも早くいろいろなノウハウを蓄積し活用する体制に持って行ってほしいものですが、なかでもデータ管理とその応用についての栽培技術ノウハウは、オランダやイスラエルなどの先進国に早く追いつき追い越してほしいものです。
滋賀県で農業経営塾を担当しましたが、コメンテーターの「浅恋トマト」で有名な浅小井農園の松村社長(現会長)から話を聞きました。現在は滋賀県の少量土壌培地耕作システムでの栽培に独自性を加え、土壌の改良や害虫対策などを行っていますが、実はオランダのコンサルタントに来てもらっていたとのこと。さらにおいしいトマトの栽培を目指しておられますが、ハウスでの栽培状況を公開されており、これからのハウス栽培に挑戦する方や、現状でいろいろな悩みを抱えている方には非常に良い相談役だと思います。
 ところで花卉の世界への輸出国はオランダがダントツだと思っていました。実際世界シェア60%以上といわれています。しかしイスラエルの花卉のヨーロッパへの輸出が多いことにも最近気が付きました。イスラエルは軍需産業が盛んでその技術を応用したデジタル印刷機などの開発に関して、デザイン会社を運営した経験から知っていましたが、農山漁村発イノベーションプランナー(旧6次産業化プランナー)として農業の知識を学んでいると、イスラエルの新たな面を知ることになりました。砂漠の中で水資源の少ない国のはずなのに野菜や果物の自給率は95%とか。驚くほかありません。ハウス内での点滴潅水技術は、水利用の効率で世界1ともいわれています。イスラエルのデジタル印刷機はアメリカのヒューレットパッカード社が導入していましたが、インクをパイプで送り込む方式で15年ほど前はとても色鮮やかだったことを覚えています。ただ当時、機構的に各インクパイプの制御の難しさやメンテナンスが頻繁に発生するため導入をあきらめた記憶があります。ハウス栽培の現場ではどのようになっているのか、農水省発表のイスラエル農業のデータを見るまでもなく、砂漠における施設栽培の現状を実際に目で確かめたいものですが、興味を覚えながら現状ではイスラエルとなると見学などちょっと難しいかもしれません。
 また、栽培で気になるのが、熟成度を色で判断しようとする試みです。カメラで写したRGB(光の色の3原色)による色のモニター上への再現は、個々のモニターのカラーマネジメントに優れていない中で、非常に難しいやり方です。自分自身印刷会社を経営していた時、スタジオの現場で撮影したモデルの顔や服の色を印刷のCMYK(4色)に変換することのむつかしさは、ジャパンカラーの範囲では目視して色の違いが分かるくらいであり、色の再現がいかに難しいか実感しています。そのためカメラの目だけで、野菜や果物の生育状況を判断するシステムがどれほど実務に応用できていくのか勉強したいとは思っています。
 ところでオランダのスマートアグリに関する技術は学ぶとしても、栽培品種においてどのように考えていけばよいか、日本ではむしろ異なる考え方を採用するべきだと思っています。理由は前述しましたが農水省の2023年度更新、「オランダの農林水産業の概況」でも書かれているように、オランダの施設野菜の栽培面積の8割をキュウリ、トマト、ピーマン(パプリカ含む)の3品目が占めています。これらは世界的に見て輸出平均価格が高い品目、つまり需要が大きい品目に絞られていることが分かります。オランダの選択と集中における輸出方式は確かに付加価値生産、加工貿易として見習う点もありますが、そのまま日本が導入する必要はないと思われます。日本では全国いろいろな地域で多品種少量ながらいろいろな農産物がそれぞれ付加価値生産に近い方式で栽培されているわけですから、一部コモディティ化する商品があるとしても、消費者ニーズを考えると、オランダのようにそこまでの選択と集中が必要なのかは疑問です。国内需要に応じながら、輸出できるものと輸入で対応すべきものを区別する必要はあると思いますが、安心・安全だけではなく、「味」にもうるさい舌の肥えた日本の消費者に対応しながら、アジア地域の市場開発等に工夫を凝らしてほしいと思います。最近では東南アジアの国々の現地市場のスーパー等を見て回ると、多種類の野菜が並んでおり、果物なども生食を好む地域として、今後の市場開拓先としての輸出戦略はもっと工夫を凝らしてほしいと思います。
 そうした中、いかにハウスの中で効率よく安心・安全でおいしい農産物を栽培し、販売することができるのか、AIやITが進んできた日本の農業でその活用にもっと取り組んでほしい課題の一つではと思っています。台風や地震など自然災害や天変地異などいろいろな自然現象のリスクが増加してきている中で、露地栽培と比較してハウス内栽培は今後非常に重要になってきます。そうした中、いかに消費者のニーズに応えた、また現状の課題に応えた農産物を提供していくか、食糧の自給自足問題にも関係することでもあり、「工場」とは言わずに簡易型であってもいろいろな栽培技術を高めて、生産に見合った販売や数量にもっていってほしいものです。
 滋賀県の少量土壌培地耕システムを農業技術振興センターで拝見したことがあります。いかにハウス内で農産物を栽培するか非常によく考えられたシステムではありましたが、よりおいしい「味」を追求し、より高度な収穫を目指して、完成度を高めてほしいシステムの一つでした。ハウス内栽培が可能になった段階で研究が終わっているようでしたが残念でなりません。さらなる「味」への追求など、消費者目線での研究を加えてほしいと思ったものです。
東北の震災後、こうした栽培システムが採用されると、トマトなどはすぐにでも栽培が可能と思われたのですが、最近のニュースで、農業生産法人「やまもとファームみらい野」が東日本大震災の津波被害を受けた宮城県山元町高瀬に建設されたトマトの「水耕栽培ハウス」で出荷式を迎えたニュースが流れほっとしました。(平成29年5月12日河北新報)遅かったとはいえ、非常に喜ばしいニュースでした。
実は水産資源保護協会から東北の漁業者の方の販路開拓の支援を依頼され、2016年、ちょうど天皇陛下(現上皇陛下)が岩手県の上閉伊郡大槌町吉里吉里にある『三陸花ホテルはまぎく』に宿泊され、そのホテルから出てこられる時間に遭遇いたしました。なぜ、このホテルなのか、支援先訪問の際東北大学の方にお聞きしました。1997年、ちょうど20年ほど前にこのホテルの前身「浪板観光ホテル」にお泊りになられ、部屋から眺めた窓の外の「はまぎく」に目をお留になられたのがきっかけで、亡くなられた経営者の山崎龍太郎さんが宮内庁にその花を届けられたことがあったそうです。山崎龍太郎さんは今でも行方が分からないそうですが、宿泊された方を避難誘導し津波に巻き込まれたそうです。宮内庁の思いやりなのか、天皇陛下(現上皇陛下)のお考えなのかはわかりませんが、そのお話を聞いた瞬間涙がこぼれ出たのを覚えています。
現場を離れながら、海岸沿いにそびえたつ防波堤、万里の長城ほど長くはありませんが、海が見えない景観、隙間から見る港に船がいない風景、住宅があったであろう内陸は何もない状況、加工場は港から離れた遠い山の中、働き手がいないとの悩みは申し訳ないのですが当たり前に思えました。一律平等公平な東北の港の再開発の姿を見て、現場を見ることの大切さを実感し、ショックを受けました。ただ、元に戻すのが支援ではなく、今後の日本の漁業をどうすればよいか、再考する機会ではないかと思われたからです。
ある大きな冷凍庫を持つ工場では、細々と加工品づくりを行っていました。その横には配達する軽自動車がそのまま置いてあり、ほこりや虫対策など全くできていない状況の再開でした。食の安心・安全を考えるとそこは工場ではなく、広い「体育館」の片隅で作業を行っている状況でした。何とかしてあげたい。でもこのままでは商品を、首都圏や関西圏の消費者に届けることはできない。そんな板挟みの中で、プレハブとは言わなくても蚊帳でもよいから二重にして虫などが来ない安心・安全な衛生管理に努めた状況つくりを提案したのを覚えています。しかし、天井には昔のハエ取り紙が無数にぶら下がっており、それには虫だらけの状況、軽自動車が作業場の横にあるわけですから、外部の埃もそのまま入ってきます。蚊帳では埃除けにはなりません。国や県の支援で、せっかくおいしい食品づくりのノウハウを持った企業の支援をしてほしいと切に願ったものです。こうした「工場」の課題や問題点を持ったまま「再開」している企業が多いのにも驚きました。衛生管理をそれぞれの企業に依頼したのは言うまでもありませんが、個々の企業に対する身の丈支援がまずは必要だと思った次第です。
2022年の3月、再び地震が起き東北新幹線が大きな影響を受け脱線しています。ちょうど東北支援に行く予定で宿泊や新幹線の切符を買ったばかりで驚きました。コロナ禍で緊急事態宣言が解除になると予測した時でもあり、重ねて残念な状況に陥りました。ウクライナの惨状と比較してはいけないかもしれませんが、被害を受けた当事者の気持ちは神戸での震災経験があるため人ごととは思えません。さらには2024年年明け早々の能登半島地震、自然災害のリスクの大きさに心が砕けそうになります。
 話を戻しますが、小生の地元奈良市に「あずま―植物工場株式会社」があります。一部上場企業である株式会社バイテックホールディングスとともに石川県に植物工場を稼働させています。石川県は植物工場の集積地のようになっていますが、電力コストが安いというメリットを生かした進出です。ここ数年福井県の産業振興センターで福井県内の企業のモノづくりや販路開拓の支援を行って参りましたが、福井県でも原発立地地域などでは電気料金の大幅な優遇制度があります。こうした植物工場にかかる経費のうち、電気代などでコストダウンにつながる優遇制度のある地域では、こうした活動が活発になるかもしれません。そうした優遇制度が薄れたときでも、首都圏や関西圏に近い立地での運営が販路の近さなどから有利になると思われます。いずれにしても、植物工場を成功させるためには、運営にかかる総額のコストダウンと経費に見合う量の生産、そのための販路確保が重要です。最近、上述した石川県に進出の2社は配送面で連携し運送コストの削減などを図っているようです。
6次産業化がうたわれて久しくなりますが、そうした事業を成功させるためにも、基である農産物の栽培から国としての研究を進めて、技術の確立を図っていただきたいものです。全国で環境が違うとはいえ、ハウス栽培なら、一定条件を保持しながら、安定供給ができる仕組み作りができるはずです。都道府県や企業、農家それぞれの個別研究ではなく、国としてより高みに技術を持っていく仕組みができないものでしょうか。県別にまた農家別に栽培技術などの知識が暗黙知となっている気がします。暗黙知の形式知化こそが、これからの日本の農業に求められていることではないでしょうか。そのノウハウがアジアをはじめ発展途上の国々で求められてもいるだと思われます。
長々と書いてきましたが、この項の最後にコロナ禍でアメリカのyoutubeの映像や記事が気になりました。2022年の2月に紹介された「垂直農法」についてです。
「How an Indoor Farm Uses Technology to Grow 80,000 Pounds of Produce per Week — Dan Does」(Youtubeのタイトル)
2014年アメリカのニューヨークを拠点に生まれたスマート屋内農場を展開する米国最大の垂直農業テクノロジー企業Bowery Farming社のことです。従来の屋外農園に比べて水の使用量を95%削減し、農薬や化学薬品を使用せずに、美味しい農作物を栽培、垂直型農場を運営する農業テクノロジー企業といわれその映像は今後都会でもビルの中で直接野菜の栽培を行い、新鮮なままサラダなどにして食べる時代が来ることを予感させます。単価の安い野菜を運搬する費用を考えずに栽培し、即食卓に届ける時代が来ます。工場の建築費用等はまだ掛かると思われますが、コスト面での問題を解決するとラストワンマイル競争による物流戦争も、こうした技術の進歩で、食材を地方に依存しなくても済むようになるかもしれません。イスラエルのように自給自足型農業に日本も変化していけないでしょうか。植物工場の形態についても、栽培品目の工夫などを行いながら、実験と研究を重ねて日本の農業技術を発展させてほしいものです。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【3】SOCIETY5.0と農業

2024-06-17 22:48:05 | 独り言
これからの日本の農業について本来最初に触れておくべき内容かもしれないテーマはSOCIETY5.0と農業の関係かもしれません。少子・高齢化の進展による労働力不足が懸念される中、生産性の向上を図るためには高度な社会資本の有効活用が求められます。そのため国はSOCIETY5.0の推進を図っています。
 内閣府のHPで、「新たな価値の事例(農業)」として次のような内容が書かれています。(以下の番号は筆者加筆)
 「Society 5.0では、気象情報、農作物の生育情報、市場情報、食のトレンド・ニーズといった様々な情報を含むビッグデータをAIで解析することにより、「①ロボットトラクタなどによる農作業の自動化・省力化、②ドローンなどによる生育情報の自動収集、③天候予測や河川情報に基づく水管理の自動化・最適化などによる超省力・高生産なスマート農業を実現すること」「④ニーズに合わせた収穫量の設定、⑤天候予測などに併せた最適な作業計画、⑥経験やノウハウの共有、⑦販売先の拡大などを通じた営農計画の策定すること」「⑧消費者が欲しい農作物を欲しい時に入手が可能になること」「⑨自動配送車などにより欲しい消費者に欲しい時に農産物を配送すること」といったことができるようになるとともに、社会全体としても食料の増産や安定供給、農産地での人手不足問題の解決、食料のロス軽減や消費を活性化することが可能となります。」
いま我々に求められているのは限られた経営資源の有効活用であり、現在の社会基盤を活用した地域の生産性向上、サービスの充実を図り、今始まっている未来に備えることです。
 次項では少しそうした始まっている未来について触れてみたいと思います。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする