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1031ビジネス・コンサルティング

経営コンサルタントの目で、日々の出来事から、参考になるキーワードを取り上げて、解説したり、情報発信をします。

農業マーケティング つづき 価格面

2025-04-15 22:45:57 | 独り言
■価格面
 6次産業化(事業名は農山漁村発イノベーション事業と変わりましたが、本稿では継続して6次産業化という言葉を使います)で相談の多いのが価格設定についてです。仲間内の価格や道の駅の価格を見ながら、同調価格にされる方が非常に多いのですが、利益を生むためには、しっかりとした原価計算の上に、ご自身の生活費を乗せる必要があります。努力しないで儲けることはできませんが、せっかく苦労して栽培し育てた農産物です。工夫を凝らし付加価値を高め、その商品に関しては少しでも「リーズナブル」な価格設定を行い販売する工夫が必要です。
 6次産業化では農家の皆さんが直接加工から販売まで行うことが奨励されているように思われますが、決してそうではありません。
「餅は餅屋」、1次、2次、3次それぞれの強みを生かした連携も認められているわけですから、供給の流れつまりサプライチェーンとして、それぞれの役割を担う中間企業の利益を考えた価格設定を行うことも必要です。後述しますが、そこに「ストーリー」の必要性が生まれます。ただ単に栽培した商品を直売所や道の駅などで販売するのが、本当の農業といえるのでしょうか。工夫し努力し栽培した商品を必要とする消費者に販売することが重要で、価格コンシャスな消費者に目を向けると、価格競争に陥り、疲弊してしまいます。最近直売所や道の駅で成功しているところは、価格は決して安くはありません。新鮮・朝採りなどをうたい文句に「適正価格」で販売されています。スーパーよりも新鮮なら安くする必要もないのです。目玉商品の価格を見て「コモディティ化」した商品価格に目を向けないようにする必要があります。
 コモディティ化とはよく例に出すのですが、ティッシュペーパーの事例で説明しています。現在のティッシュボックス5箱入りを皆さんはいくらなら購買するでしょうか。昔はもう少し大形の箱でしたが、王子製紙の知人である当時徳島工場の工場長が他社に先行して現在の薄さのボックスを開発し、1年間は先行者利得を得たようです。しかし、機能面での紙の柔らかさなどにほぼ差がない現在、あっという間に追いつかれ、ほとんどイベント価格で販売されているのが現状です。つまりそのイベント価格である200円前後の価格が主婦の頭にあるため、それ以上の価格では買わなくなってしまい、価格競争に陥っているわけです。自分の思い描く安値でしか買わなくなってしまうこと、機能性の変化が少なくなると起こってしまう現象です。
 野菜だから他のライバルと差別化するのはむつかしいとよく言われます。栽培にどのような努力をされたでしょうか。土壌改良や水へのこだわり、苗や種へのこだわり、農薬や肥料へのこだわり、いろいろな部分で工夫できます。その工夫や努力を情報発信することで付加価値を表現し、消費者の価値観に合わせていき、評価してくれる消費者のいる店舗で販売を目指す必要があります。
 価格設定で気を付けたいのは、中間に誰と連携するのかしないのか、どこで販売するのかをまず考える必要があるということ、さらには、そうした売場で展示面積を取得するためには、価格も「松・竹・梅」などのランクをつける工夫をすることが重要です。それは商品構成面であったり、容器の大きさであったり、販売する商品によって工夫が必要です。例を挙げますと、後輩のバイヤーが北海道展で弁当の販売を計画したとき、消費者が驚く海産物のてんこ盛り弁当を考えました。どうしても1万円近くにまで値段が上がってしまいます。彼はそれでも販売したくて工夫を凝らしました。それは従来の弁当の価格設定に対して1万円を挟む、より高額な商品とそれよりも少し安めの値段設定の弁当を作り、それぞれに工夫を凝らした商品内容で販売をしました。いわば「松・竹・梅」と価格を3段階に分けることで、それぞれの販売数量を予測し完売したとのことです。
 ジャムでも述べましたが、売れ筋の瓶の大きさをよく調べ、それは百貨店やスーパーの店頭を見ればわかりますが、30gから150g入りなど用途別に工夫し1種類で済まさないことも必要です。多様化する消費者のニーズにどのように応えていくか、いろいろな工夫が必要でそれに対応した商品構成、価格設定を行う必要があるということです。「松・竹・梅」とは単に価格の差ではなく、商品構成や、容器の大きさ、構成内容の違いなどで工夫するということです。ただ経営資源(人、もの、金)に限りのある場合は、できれば高みから攻めて、ブランド化、知名度の向上を図る方法を採ることが重要です。力をつけたら商品の幅を広げていきましょう。(次稿は販売促進についてです)
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【8】農業マーケティング

2025-03-11 09:37:59 | 独り言
中小企業診断士(経営革新等認定支援機関)や農山漁村発イノベーションプランナー(旧6次産業化プランナー)としていろいろな企業の支援を行う際、よくマーケティングの4Pという言葉を使います。
①商品(PRODUCT)
②価格(PRICE)
③販売促進(PROMOTION)
④販売場所や流通ルート(PLACE)
のことを、英語の頭文字を使って4Pと言います。
しかしすぐにマーケティング=4Pというお話はしません。
なぜならその前に自社や自園の事業の組み立てをしっかり行う必要があるからです。つまり事業戦略の構築、策定を行って初めて、その事業の推進のためにマーケティングの力が必要となるからです。では、具体的にどのように自園の事業戦略を策定すればよいのでしょうか。
大切なのはご自身がどのような農業を事業として進めたいかということです。ビジョンとか理念とか言われますが、企業ではクレドなどという言葉を使って、企業理念を言葉にして日々の仕事に役立てています。
どこでどのような商品を誰に食べてほしいのか、そのために何をどのような栽培方法で作るのか、そうした思いを明確にする必要があります。
そうでないと売れないときにいろいろと事業を進める中で迷いが出てきます。信念をもって自ら決めた道を進むことが、継続して事業を推進していく上での力となるのです。その思いをFCPシートやHP、最近ではインスタグラム等で語ることによって、バイヤーや消費者はその思いに共感し、商品の購買に結びつけてくれるのです。
資金や人材・組織面で潤沢な裏付けのない場合、その限られた資源を有効活用するためにも、思いを明確にしながら、どこでどのような場所で、誰に、もしくはどのような消費者に対して商品を販売したいのか、現在の市場環境や消費者の変化を理解し、企業規模によっては市場調査を行ったうえで、S・T・P(セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニング)を明確にすることが重要です。そのうえで、売りたい顧客に向けてマーケティング戦略を採る必要があります。ただ最近ではこのS・T・Pについてセグメンテーションよりもまずはポジショニングを明確にして「未顧客」に対しての事業戦略を考慮していくべきではないかという考え(「戦略ごっこ」日経BP芹澤 連著)も出ています。小生もその意見に賛成で現在の日本経済の変化、消費者の変化の中では市場のセグメンテーションを図り事業戦略を構築していくのは非常に難しく、むしろ自園としてどこでどのような顧客に自分の商品を買ってもらいたいか、そのためにどのような事業戦略を構築していくべきかを考える方が取り組みやすいのではと考えられます。もちろん資金的にも余裕があり従来のマーケティング手法を取り入れて市場分析されるのも悪くはないのですが、ある程度国内の流通市場が決まってきている中、ポジショニングを決め明確な顧客ターゲットに向けての商品開発を行い、販売計画等を立案・実行するのが事業推進の上では進めやすいのではと思われます。
百貨店で売りたいのか食品スーパーで売りたいのか、道の駅や直売所なのか、もっとブランド化を図り海外にも進出したいのかなど自園の在り方ポジショニングを考えたマーケティング戦略の構築が重要です。ではその進め方に必要なマーケティングの4Pを見ていきましょう。
■商品面
 農産物である1次産品として、商品面ではまずどのようなことが考えられるでしょうか。
 消費者の趣向は常に変化します。その変化に対応しなければ売れる商品を作ることはできません。前の項で述べたように、消費者の変化に対応した商品とはどのようなものでしょうか。
 東北の震災後、首都圏の味の好みが変わったといわれました。やや薄味になりながら3年たつと元に戻りつつあると日経新聞には書かれていました。日能研の調査などでも、「焼きそば・ソース味」は全国で差がないのに、ラーメンでは首都圏はしょうゆ味が比較的好みなのに北に行くほどみそ味になり、九州では豚骨になるなど食べるもので、まだ地域で味の違いがあります。
 したがって食材に関して、販売したい地域での味の好みにはまだ注意する必要があります。味付けがそのまま他の地域で好まれるとは限らないのです。
ジュースの味をどうするか考えるときでも、どのような味付けにするかは、売りたい顧客を考える際、気を付ける必要があります。例えばスポーツの後のドリンクでも味の濃さに注意が必要です。毎週テニスを行っていますが、その後で飲む100%果汁のジュースはのど越しが却ってよくなく、少し薄めのものであったり、スポーツドリンクに頼ったりします。でも、旅行先でのホテルや旅館での食事時にはジュースや牛乳などその濃さにむしろこだわりたいものです。
 よく相談される内容で、コメの場合の袋の大きさやジャム、ジュースでの販売する適量、瓶などの大きさを聞かれます。
 顧客のニーズはいろいろで、小生のようにジャムが好みの人間は大瓶150g以上のものを探しますが、現在の売れ筋は30gほどの小瓶です。毎日同じ味を楽しむのではなく、個人でも家族でもいろいろと味の変化を楽しみたいからだと思われます。
 ただ地元以外での販売の際、例えば県外百貨店やスーパーなどでのポップアップ(催事)などでコンサルタントやプランナーの中には味をその地元に合わせるべきだとアドバイスする方がいます。本当に正しいでしょうか。資金的に余裕があればそうした商品構成に「バラエティ」をもたらすことは可能かもしれませんが、小規模企業において、そこまで内容やシールなどの変更ができる余裕があるでしょうか。意外と出店先の地方に住むふるさと出身者などが元の味を懐かしんで買いに来ている場合もあります。むしろその味を覚えていてなつかしむ購買客の声を古巣の催事ではよく聞きました。つまり無理に味を変える必要はなく、その味を楽しんでもらうことも一つの販売方法なのです。事業を広げていく中で身の丈に合った商品化の工夫をする必要があります。
また、そうした消費者の購買の関心事は味だけではなく、瓶の形状やパッケージ、シールなどいろいろな点に置かれています。
 6次産業化で商品化された後よく相談されるのが、手作りで作成したシールなどの出来栄えについてですが、まずお話しするのがCI(コーポレート・アイデンティティ)についてです。CIについては【13】ブランド化の項で詳しく触れますが、展示会などで商品を展示した際、開発された商品群が統一感のあるデザインでパッケージや商品のシールがデザインされ、一見して〇〇企業やどこそこ農園の商品と分かるように工夫することが大切です。ブランド化を図り知名度の向上、売上の確保を目指すのなら、自園の取り組んでいる理念やビジョンを明確にするためにも、CIを考え、そこからデザインを起こしていく必要があります。
 全国一の売上を誇る糸島市の道の駅に「伊都物語」という乳製品のCIで成功している例があります。セミナーでいつも触れるのですが、いろいろな農家が同じブランドでいろいろな乳製品を作っているにもかかわらず、統一ブランドで非常に分かりやすく、それぞれの商品の味もおいしく、他府県への進出を目指しています。日本航空のファーストクラスの食事のデザートにも採用されたことがあります。
 パッケージや商品のデザインを考えるとき、その商品だけでデザインを考えると、次からの開発商品との整合性や今までの商品との関連性などが弱く、統一感のない、陳列や販売の際特色のないイメージ展開となります。デザインを依頼する際忘れないでいただきたいことです。
 商品については次項の「【9】ストーリーとは」の項でも詳しく述べますが、重要なのはどこで誰に販売したいかを考え、農産品の中でも、どのような種類や品種の商品を提供するのかを明確にする必要があります。さらに、優れた品質を維持するための基準を設定し、品質管理プロセスを確立することが大切です。品質基準には、外観、味、香り、栄養価などが含まれます。品質は非常に重要です。消費者は新鮮で安全な商品を求めますから、品質管理プロセスを確立し、品質を保証することが必要です。さらに、他の競合商品との差別化を図ることも重要で、例えば、オーガニック、地元産、特定の品種など、特長を強調することが差別化の手段となります。これは市場のセグメンテーション、マーケティングのS・T・PのSに関連します。経験を通じて栽培品目は変化していく可能性があります。
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【7】消費者の変化と顧客価値

2025-01-06 16:49:51 | 独り言
 人はみな生活者であり消費者であるのですが、いざ生産現場に立つとそのことを忘れ、生産者の立ち位置でモノづくりに注力してしまいます。
 今消費者が何を考え、どのような購買を行っているのか、自らの消費者の立場をなぜか忘れて生産に没頭してしまいます。
 モノ作りの際に少しでも消費者意識を持っていれば、どのようなストーリーでモノづくりを行えばよいのか、スタートの時点から売れるモノづくりができるのですが、商談会などでお会いする農家の方たちはすでに「完成」した商品で相談されることが多く、最近はまず開催する行政や企業、金融機関の方に商談会前の「モノづくり」相談会を提案しています。
 アフターコロナとしての現在、消費者は何に関心を持って購買をしているでしょうか。価格はもちろんですが、商品の安心安全、中でも健康意識としての栄養について、添加物について、品質要件としてのおいしさ、商品の外観や鮮度、賞味期限、その他国産なのか、日本のどこの地域で作られたものか、その地域の環境要件であったり、農薬や肥料などその作り方に関心があります。
 若い方のスマホの活用は目を見張るものがあり、検索しながら、どこで何を食べたいか、その雰囲気や味を楽しみ、そこで過ごす時間全体に喜びを感じようとします。食べ物でも同じで、どこでその食べたい商品を購入するか、その時間を楽しみ、食を楽しみます。食を楽しんだ後のインスタグラムなどでの情報発信の力や影響は「インスタ映え」や「ばえ」として非常に大きな影響力をもたらしています。そのことはもう「まあこれでいいか」という買い方ではなく「これでないとダメ」「このお店のこれでないとダメ」という購買行動を示しています。それは情報発信者のセンスや感度を表すからにほかないからです。
【17】真実の瞬間」の項で詳しく述べますが、マーケティング用語で「真実の瞬間(moments of truth)」という言葉があります。ヤン・カールソン(スカンジナビア航空元CEO)が提唱した言葉ですが、人は何かを利用するとき、数秒で自分に合っているのか、好みなのかを判断するというものです。情報を知り、検索する際、検索して店舗を利用する際、購入した後の経験、その経験を友人たちとシェアする際、それぞれの場面でそれは発生します。昔はAIDMA(注意、興味、欲求、記憶、購買行動)などと英語の頭文字をとって消費者行動が説明され、現在はAISAS(注意、興味、検索、行動、シェア)やマーケティング4.0では5A(Aware(認知)、Appeal(訴求)、Ask(調査)、Act(行動)、Advocate(推奨)などと言われています。5Aはフィリップ・コトラーが提唱した「マーケティング4.0」における消費者の購買プロセスの概念です。それぞれの瞬間で消費者の価値観に合わなければ購買やリピートにつながらないため、顧客の維持、拡大に結びつきません。商品の提供や情報発信が非常にむつかしくなってきたことを示しています。最近ではよく、カスタマージャーニーという言葉が使われますが、顧客がどのように皆さんの商品と接点を持って認知し、関心を持ち購入に至るのか、そうした購入までのプロセスを旅に例えた言葉で、消費者行動の途中途中で、皆さんの商品との接点をタッチポイントといい、マーケティング活動の最適化を図る考えです。製造業などではこうしたカスタマージャーニーをマップなどに落とし込み、顧客分析を行いマーケティング活動に活かしています。近年カスタマージャーニーに関しても、「ハレ」と「ケ」のシーンによって顧客行動の違いに注意することなどが言われています。セレブの顧客でもシャネルを着るときもあれば、ユニクロのジャージやフリースを着ている人もいます。そこまで細かく分析しなくても、顧客の行動はある程度読めると思います。顧客との接点がどのようなところにあるのか、それを考え、HPやインスタ、FBなどの情報発信ツールの活用から、商品そのもののストーリーをどのように発信し、少しでも多く顧客とのタッチポイント(触れ合う場所)を増やしていくかの工夫をすることが重要です。そのためにも商品のブランドやパッケージ、シールに至るまですべてが自社のメディアであると考え、商品づくりを行う必要があるのです。オウンドメディアという言葉がありますが、HPやFBに限らず小生は、チラシやシールまでもがメディアだとお話ししています。
 なお、FCP商談会シートで商談を行った後、必ず農家の皆さんにお話しするのは、facebook(フェイスブック)やinstagram(インスタグラム)での情報発信もよいのですが、それはフアンの囲い込みにはよくても、バイヤーが見るには面倒なもので、HPのほうが考え方や商品を知るうえで重要な手段となるということです。顧客カルテ(取引先情報)をバイヤーは作成する必要があり、商談後これという取引先とは、取引手続きを行う必要があります。FCPシートだけでは分からない部分など、うまくHPで情報発信をしておく必要があります。またHPの写真やご自身の思いをFCPシートと連動させておく必要もあります。農業マーケティングという言葉があるとするなら、モノ作りから加工、販売まで6次産業化を成功させるためにも、販売促進を考えるとそうした知識を学ぶことも必要です。
 コロナ禍で消費者行動に変化が見られましたが、今までは単にインスタグラムで情報発信をし、情報共有に楽しみを見出していた人たちが一層情報発信する写真そのものにもこだわりを持つようになり、いわゆる「インスタ映え」による情報共有が盛んになっています。商品開発の際、消費者のこうした変化をとらえ、例えば旬の野菜ギフトセットなどにもこうした彩の工夫を凝らした「インスタ映え」する商品構成によるギフトセットの方が売れるようになっています。セミナーでは、ギフトセットのパッキンなどに感謝の気持ちを書き表すだけでなく、商品構成に彩を加えること、商品説明の工夫等も提案しています。何よりレストランやスイーツショップなどでの「映え」狙いはいたるところで拝見することができます。
■顧客価値
 2011年ですからもう14年前になりますが「100円のコーラを1,000円で売る方法」という本が出版されました。小生が所属したグループ会社の外資系ホテルで実際にメニューに載っており、ルームオーダーするとコーラに氷の入ったアイスペールなどのセットが運ばれてきます。当時は100円、現在は150円くらいでしょうか、販売されている商品が、なぜ10倍近くする値段でも売れるのでしょう。おかげでホテルは出版後しばらくの間はお試し客で結構稼働率が良くなったといわれました。栓抜きだけは一流ホテルにしては納得いかないサービスとセミナーではお話ししています。超一流ホテルなのですからもう少し工夫してほしいものです。デザインや機能性に優れると持って帰られるのでしょうか。
 セミナーでお話しする中で重点を置いているのは、「顧客価値」についてです。
 他の事例を挙げてお話しもするのですが、閉店した大阪キタ新地の「ノノピアーノ」では食パンが5,800円で販売されていました。価格だけ聞けば買わないかもしれませんが、使われているバターが、英国王室、フランス大統領府、モナコ王室ご愛用のフランス・エシレバターを使用と聞くと、興味が沸いてこないでしょうか。冗談で、モナコ王室で使用ということはあのグレースケリーも食したのではなどと話していました。若い方にはぴんと来ない冗談ですが・・・
「顧客価値」とは、「顧客が相応のコストを負担してでも手に入れたいと感じる価値」のことです。そこには単に顧客が長時間かけてその商品やサービスの購入にお金をかけるだけではなく、ホテルのコーラの例のように、豊かな気分にさせる雰囲気の中で、そのサービスがイケメン男性スタッフや美しい女性スタッフによってもたらされるとしたら一層高いとは感じないのではないでしょうか。商品やサービスのもたらすそのものの価値はさることながら、ブランド価値、旬などの時期やタイミング、困っていることに対する問題解決などいろいろな要素が含まれます。セミナーではそのほかに、岐阜の高級イチゴ「美人姫」、一粒5万円の例や、大阪のコーヒーショップ「ザ・ミュンヒ」1杯10万円など全国の高額品の話をして、驚いてもらうのですが、すでにTV放映などで知られてきたため、違う商品で最近は「顧客価値」について説明しています。
ともかく、こうした顧客の価値観を理解することが大切です。努力して作り上げた商品を「どこで売るか」「どこで売りたいか」、「どのような人に売りたいか」をしっかりと決めることが、いかに重要かお分かりいただけると思います。
よくマーケティングでマーケットイン、プロダクトアウトという言葉を聞かれると思います。
市場のニーズをつかむことが大切で、消費者目線で消費者の望む商品を作るということ、それをマーケットインと表し、生産者側からの発想で商品開発・生産・販売といった活動を行うことをプロダクトアウトと言われています。
小生は、顧客価値の考えを取り入れるなら、ヴァリューイン、ヴァリューアウトの発想が重要ではないかと考えています。現在は消費者の価値観を把握することでそれに見合う商品開発を行い、開発した商品の価値観を共有できるターゲットに向けて情報発信を行うことが重要と考えているからです。ニーズと価値観の違いは「潜在的な欲求」と「大切にしていること」との違いです。
セミナーでよく例に出すのが、①シーズ、②ニーズ、③ウオンツ、④ディマンドの違いです。
①のシーズは、メーカーなどの所有している技術・材料・アイデアなどと言われますが、セミナーでは「のどが渇いたな」とか「おなかがすいたな」という気持ちと簡単に説明しています。
②のニーズは、「何か飲みたいな」「何か食べたいな」という潜在的な欲求です。
③ウオンツは「コーラが飲みたい」「カレーを食べたい」などという具体的な顕在的欲求を指しています。
「ドリルを売るには穴を売れ」とは、マーケティング業界でよく言われる言葉ですが、「商品を売るには、『顧客価値』から考えよ」ということとセミナーでは説明しています。さらに重要なのは、④のディマンドです。
④ディマンドは、コーラが飲みたいと思い、例えばコンビニに行ったとします。そこであるお茶のキャンペーンが行われており、150円のお茶が88円だったとします。コーラを買おうと思っていたのに、店頭でお茶を買うことに変えてしまった。結局レジを通ったのはお茶になったわけです。
のどが渇いてコーラが欲しいと思っていたのに、店頭の販促やひょっとしたら販売するキャンペーンガールについ欲求が変わってしまった。よくあることではないでしょうか。顧客はいろいろな価値観を持って購買決定をします。その価値観に合わせた販売方法を採らないと、売上にはつながりません。モノづくりに技術がいるように、販売にも技術が必要です。マーケットインの考え方では、市場から顧客のニーズやウオンツを知ろうということですが、むしろ「顧客価値」を知らないと、最終結果でどんでん返しを食らうことにもなりかねません。極端な事例でしたが、モノづくりは商品開発だけではなく、販売の現場まで、つまり最後の最後まで、気を緩めることができないのです。情報化社会の中では「未顧客」の知らないもの、興味のないものに関して、いかにこちらを振り向かせるか、存在を知らせるか、分からせるかが課題なのです。
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【6】ベンチマーキングと4C(3C+C)分析

2024-11-28 18:20:52 | 独り言
久しぶりの投稿になります。
 いわゆる6次産業化にかかわらず1次産業に携わる皆さんの支援を行う際、必ず申し上げることがあります。
 それは競合相手を知るということです。マーケティングの中の言葉に3Ⅽ分析という用語があります。今でも専門家の中には3C分析として事業戦略構築などの際の環境分析で説明される方がいます。しかし今の競争社会の中においてはもう一つ分析が抜けています。それは協力企業(collaborate companies)のことです。どこから仕入れてどこで販売するのか、最近はそうした企業との連携が非常に重要で経営を左右します。そこをないがしろにして経営は成り立たない状況です。
 従来の3C分析とは、外部環境である顧客(customer)とライバルである競合(competitor)の分析から事業を成功させるための要因を見つけ出し、自園・自社(company)の事業戦略に活かす分析を行うフレームワークのことです。
 自分勝手にモノづくりを行い、販路開拓を目指しても、なかなかうまくいきません。すでに多くのライバル(競合)が市場に出ています。新規参入を果たす場合には、必ずこの分析が必要ですし、販路を持っているとしても常にライバルを知ることは重要です。そこにさらにどのような企業と連携していくか、協働していくかを考える必要があります。
 簡単にその重要性をお話しします。
①市場分析のポイント 
むつかしく考えるのではなく、まずご自身が売りたい取引先をイメージします。商品を売りたいお店でも結構です。これは後述する商談会シート(FCPシート)の作成にも役に立ちます。
まず、どのような顧客に売りたいか、そのためどこで売りたいかを考えるわけですが、自園の商品を、購買する意志のある潜在顧客をイメージしてみます。具体的には、販売したい店が百貨店なのか、高級スーパーなのか、高級食材専門店なのか、道の駅なのかなどです。専門書には市場規模(潜在顧客の数、地域構成など)や市場の成長性、ニーズ、購買決定プロセス、購買決定者といった観点から市場分析を行うなどとむつかしく表現されていますが、まずは売りたい店を自分の目で確かめることが重要です。そこでどのような販売方法がとられているのか、商品はどのような陳列がされ、いくらの価格帯(幅)で売られているかなどを確かめます。
製造業などでのモノづくりにおいては、ペルソナ像(ある特定の購買者像)を描きターゲットとして、顧客のライフスタイルを分析し、その生活シーンで開発する商品がどのように使われるのかイメージしながらモノづくりを行いますが、まずはそこまで分析しなくても、「どこで売りたいか」を考えるだけで、商品化に大きなアイデアを生み出すことが可能です。
FCPシートでもやっと第3版でターゲットの欄に「小売り」から変更して百貨店、スーパーの項目を加えていただきました。どこで売りたいかそれをまずは考え、ライバルを知ることです。売場で商品を見れば、自園での栽培から販売までいろいろなヒントを得ることができます。売場ではどのような「こだわり」でその商品を集め販売しているのか、新鮮さの追求なのか、味なのか、はたまた生産者の人柄やモノづくりへのこだわりなのか、栽培された地域の環境なのか、それも水なのか日光なのか、土壌なのか栽培方法なのかなど、季節によっても異なるかもしれません。商品を見れば多くのことを語ってくれます。それも見ないで、試食もしないで、そうしたライバルと競争してもなかなか勝つことはできません。見えない部分でのライバルの強みを知ることはむつかしいからです。
■S・T・P
栽培した商品をどこで販売するか考えるとき、マーケティング用語ではポジショニングの工夫をするといいますが、事業戦略を構築する際、S・T・Pというキーワードが使われます。
Sはセグメンテーション(segmentation)、Tはターゲティング(targeting)、Pはポジショニング(positioning)の頭文字をとったものです。
むつかしく考えないで、どこのどのような市場のどの売場で販売したいのか、まず考えそのために何をしなければならないか工夫をすることを指しているのです。そのためにもまずは「己を知る」ことが重要です。
少し整理してお話しすると、まず市場分析を行う中で、よくお願いするのはSWOT分析です。自園や自社の強み(strengths)をまずは把握してもらい、弱み(weaknesses)もいろいろと考えていただきます。さらには現状での環境を分析、環境といっても社会・経済環境のことで、いろいろな支援制度や税制面でのメリット等の機会(opportunities)及び経営を脅かすような脅威(threats)が何か把握を行います。中小規模の農園や農家では経営資源が豊かにあるわけではありませんから、市場や消費者を何らかの基準で区分しグループ化を図りそのどこを攻めるかをまず考えるのがセグメンテーションです。農業においては、SWOT分析を行った際の強みを生かし、その強みを生かすことのできる有望顧客がだれか、その顧客はどこで商品を買うのかを考えて、むしろ次のターゲティング及び、ポジショニングを工夫するのが良いと思います。
経営塾などではよく使うSWOT分析ですが、個人の農家などを支援する中でSWOT分析などと難しい言葉を使わない場合が多々あります。というより強みと言ってもほとんどの方が、弱みは分かるが強みが何かわからないと話される農家の方が非常に多いのです。そうした場合には、何で儲けているのか、「めしの種」を聞くことにしています。売れているということはそれだけ顧客から支持を受けているわけですから、そこから解きほぐしていくのです。「種=強み」がどんどん出てくるのです。
FCPシートで問われるターゲット顧客はこの売りたい場所、百貨店なのか高級食材販売店なのかスーパーなのかなど、販売したいところを考えることがまず重要です。なぜなら、その考えに基づき、どのような商品をどのような価格で、どの流通や小売業と組んで、消費者に販売促進をかけ売上を確保するか、マーケティング・ミックスを工夫する必要があるからです。
なお、ポジショニングマップについてはこの項の「③自園の分析」をご覧ください。
 最近のマーケティングでは、消費者を「未顧客」として考え、むしろポジショニングから、つまりどこで売りたいかから考えることを提案される専門家もいます。小生もむしろその考え方に近く、販売を目的とする場所のことを考え、利用する消費者を描き、ターゲットとしてとらえ商品化を行い、情報発信を行う戦略です。カスターマー・ジャーニーというマーケティング用語が最近盛んに言われますが、消費者はいろいろな場面で皆さんの商品と接点を持ちます。少しでもその接点を多く持たないと、消費者は知らない興味のない商品のことは全く知りません。つまり「未顧客」のままで終わります。詳しくは後述します。
②競合分析のポイント 
自園が存在する周囲の環境を見てみると、ライバルでもありまた仲間でもある隣近所の農家がどこと既に取引をしているのか、自然に分かってくるのではと思います。そうした競争状況や競争相手についても把握する必要があります。特に、競争相手からいかに市場を奪うか(守るか)という視点を持ちながら、競合の数、参入障壁、競合の戦略、経営資源や構造上の強みと弱み(営業人員数、生産能力など)、競合のパフォーマンス(売上高、市場シェア、利益、顧客数など)に着目する必要があります。
競合との比較は、自園の相対的な強みや弱みの把握に役立ちます。 新規参入を図った農家の方が、ベテランに何を栽培したらよいかよく聞くことがあります。気を付けなければならないのは、よく売れる商品を教えてくれるのですが、だからこそ価格競争に陥る可能性があります。なぜなら販売されている量も多く、競争も厳しいからです。むしろ市場を見ながら付加価値のある独自の農産物を栽培することが重要です。
大手の流通業のバイヤーは、全国の安全・安心でおいしい農産物を生産される農業法人や農家の情報をよく知っています。その理由はギフトショーのお手伝いをしているとき、大手製造業の担当バイヤーから教えてもらいました。トヨタやパナソニックなど自動車や家電メーカーのバイヤーは、世界中の部品メーカーや中小企業の製造機器類の内容やデータ、技術を常に把握しているのだとか。したがって展示会などのマッチングなどに担当者がわざわざ出ていくことはむしろないのだそうです。彼らは現在何らかの理由で世界のベスト10に入る企業のうちライバルとの競合の中で、何社かの「下請け」企業と独自にまた競合もしながら取引を行っていますが、そうしたベスト10の中にまずは入ることができるほどの力を持っているかどうか、販路開拓を目指す企業の内容を実は相手は知っているのです。よほど既存の取引先企業にミスなどがなければ、新規参入は非常にむつかしいことなのです。しかもそのあとに続くであろう企業の内容もよく知っています。大手企業のバイヤーはそう豪語していました。確かにトヨタ生産方式など「系列の重要性」は、彼らのモノづくりの状況からも判断できます。不良品が1点混じるだけで安心・安全に問題が起こり、リコール対象になるわけですから、手を抜くわけにはいきません。食品の生産でも同様、安心・安全だけでなく、おいしさやそのほかのいろいろな条件を現代の消費者やバイヤーから求められているのが現状です。百貨店であれ、スーパーであれ、そこに陳列されている企業や農家の商品に、何で勝つことができるか、自園の強みをよく把握して、マッチングに挑む必要があります。最初から基売場(プロパー売場)への進出は考えないほうが良いのかもしれません。身の丈に合った販売方法の工夫・挑戦をしたいものです。
 最近はアマゾンや楽天、もしくは自園のHPなどで販売したいと思われる方が増えています。比較的容易に参加できますが、手数料、配送料、包装・梱包の手間、金銭の授受方法等よく検討してほしいものです。SEO対策(検索エンジンの1ページ目にいかに出るか)、リスティング広告等いろいろな情報発信の手段がありますが、それなりに費用も掛かります。どのようにして利益を上げるか、HPなのかフェイスブックやインスタなどでまず情報発信するのか等、一層の工夫が必要です。情報発信で気を付けたいのは、バイヤーは限られた時間で取引先などの情報を早く知りたいため、HPでどのような経営者や従業員の皆さんが、どのような思いで、どのような環境の中、どのようにして農業に勤しんでおられるのかを知ろうとします。ファイスブックなどではどこに何が書いてあるのか分からないため、よほど興味のある取引先候補でないと見てはくれません。情報発信のツールとしての活用方法にも工夫がいるということです。
③自園分析のポイント 
 ライバルを知るだけでなく、自園の強みを知り、モノづくりへのこだわりや努力をバイヤーやその先の消費者に知ってもらう必要があります。消費者は極端に言いますと「知ってる・知らない。好き・嫌い。」で購買の判断を行います。農家の皆さんや農業法人の皆さんご自身も消費者です。しかしモノ作りの段階ではそれを忘れて、自園都合の考えをして気を緩めてしまいがちです。もしくは知らない部分でライバルに負けてしまうのです。
そのためにも自園の経営資源や事業活動について、定性的・定量的に把握する必要があります。具体的には、売上高、利益、市場シェア、ブランドイメージ、技術力、組織のスキル、人的資源などを分析し、付加価値を生み出す機能や、間接費にかかる原価もできるだけ正確に計算できるような知識を得、事業としての確立を図る必要があります。
市場シェアなどとお話しすると驚かれる農家の方がいます。道の駅に行かれたら、自園の商品が同じ商品の棚や売場でどれくらいの面積を占めているか、そこからある程度ご自身が作られた商品が市場でどのくらい受け入れられているのかわかります。道の駅でも売上報告を月ごとに配布しているところもありますが、そうしたデータからも分析は可能です。今市場でどのくらい評価されているのか、ただ売れたかどうかの把握ではなく、他園や他社と比較してどのような状況にあるのかを知ることが重要です。基本的な数字の把握を行う癖をつけていただきたいものです。
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6次産業化(現農山漁村発イノベーション)について

2024-09-01 15:11:18 | 独り言
6次産業化に関する提案を以前「大阪農業時報」に投稿したことがあります。実際の掲載内容はBLOGの「6次産業化への課題」からを短縮したものですが、加筆修正した内容全文を掲載します。6次産業化は現在農山漁村発イノベーション事業と名称変更されていますが、6次産業化の方が分かりやすいと思いますので、ここではそのまま6次産業化という言葉を使います。

「地域に雇用増をもたらす6次産業化について」
(1)少ない成功事例と成功の基準
農業に真剣に取り組む若者たちの姿を見るにつけ、何とか事業として成功することを祈り、少しでもその役に立てればと私は6次産業化の支援活動を続けています。
 「6次産業化総合化事業」の認定事例は数多く発表されていますが、成功事例がまだまだ少ないのが現実です。
 成功の基準は道の駅や産直市場で販売するのではなく、全国スーパーマーケット(以下SM)、百貨店は究極の販売先であるとしても、少なくとも「地場SM」、「地方SM」の定番商品になることにあります。なぜなら、地場SM、地方SMの売場に定番品として並ぶということは、「品質優×量産化に成功×コストダウンの実現×価格体系の設定×味が良い×原材料の安定確保×企業組織の確立」といったことが確立された証左であるからです。
 6次産業化がなかなか成功という状態にならない理由を、今までの支援の経験から見ていくことにし、事業を成功に導く提案をしたいと思います。
 そもそも6次産業化とは、農家や農業法人が1次産業としての農林水産物の生産、2次産業としての加工、3次産業としての販売までを行う一気通貫の体制を指しています。
 農産物の生産に関してはプロであるのですが、なんといっても課題はその後の加工→販売の工程にあります。すべてを自ら行うのではなく、誰と組むか、どのようなビジネスモデルを選択・構築するかで、結果は大きく異なってくるのが経営というものです。
 上に示したように成功の基準は明確になっています。ここに到達するのは至難のわざですが、これにチャレンジしているのが、6次産業化であるのです。地域にお土産品が一つ増えたという次元で喜ぶ人はいないと思います。雇用が増えてこそ、意義のある6次産業化であるといえるのです

(2)6次産業化への課題
 6次産業化の課題としては次のものがあります。
①安全・安心なモノづくり→品質面において消費者が求める安心・安全な商品になっているか?
②加工場の衛生・工程管理→加工場が安心・安全なモノづくり対策が十分できているか?HACCPの考え方を取り入れた衛生管理を行っているか?
③セグメンテーション→開発する商品が既存の商品に対して、差別化されているか?優れた特性を有しているか?
④流通チャネルの設計・設定→加工した商品を目指す流通チャネルに乗せることができるか、販路開拓ができているか?
⑤商品の出来栄え→ネーミング、パッケージ、ブランドなど流通に乗るレベルの商品になっているのか?
⑥商品の生産量→消費者やバイヤーに的確に商品や情報を届けることができるか?
⑦価格体系→流通に乗るコストであり、かつ価格体系を確立しているか?
⑧マーチャンダイジング→ブランド戦略、ネーミング、原材料の確保など商品づくりの手立てはできているか?
⑨そもそも「経営能力」を有しているのか?経営能力を養成しようとしているのか?

(3)経営課題と、その解決法
1)ものづくりについて
たとえば、農産物の規格外品を「もったいないから」という理由で、ジャムやジュースなどをつくっても、SMや百貨店では売れません。
売れない理由は
・(規格外のため)安定的な供給がむつかしい
・セグメンテーションを行って他の商品と差別化していない
・原価が高く、流通に乗らない
・味・香り・栄養素などを吟味していないから、消費者やバイヤーから支持を得られない
ということになってしまうのです。
食品にとって
・おいしいのは当たり前
・異物混入がないのは当たり前
・食品の材料、添加物、加工方法等が吟味され、安心・安全というのも当たり前
というのが、日本の消費者の現実です。
 このような基本的なことができた上で、既存商品との差別化が必要とされているのです。
 しかし、6次産業化農家のほとんどが、家内手工業的な加工場で細々と手作りで、加工品作りを行っているのです。保健所の許可を一応は得ていたとしても、一連の作業の中で、加工環境に心もとない場面を多々見てきました。加工については農業法人といえども例外ではありません。
重要なことは、顧客価値を意識したものづくりであるのです。6次産業化の推進を図るのなら、元の農産物の生産に対するこだわり(環境、土壌、水、農薬など)の上に立ったおいしい農産物、新鮮な農産物から加工品を作り、流通ルートに乗せるべきなのです。
 加工場については、集塵機、無塵衣、エアーシャワーなどは当たり前のことです。密閉による外から虫よけ、常に頭巾やマスク、手洗いの励行、清潔な手ぬぐい、こうした心遣い、気遣いがどこまで行われているか、製造業でいわれる4S(整理、整頓、清潔、清掃)が、躾というよりも「習慣づけ」を加えて、5Sとして守られているでしょうか。そのうえでHACCPの考え方に基づく衛生管理が行われているか、データをきちっと取って生かしているかが重要です。

2)展示会について
 展示会などのマッチング会を開いても
・希望する流通企業と商談が成立しない
・「また連絡します」とバイヤーに言われてただ待っている
という状態が多いのです。
農水省にフード・コミュニケーション・プロジェクト(FCP)という組織があり、そこが「ベーシック16」という考えを打ち出しています。それに基づいて商談会用のシート(FCPシート)が作成されています。しかし、6次産業化農家からすると、経験上当たり前だと思っているのか、このシートが未だに完全に作成されていないのです。自分では普通と思われている生産過程を見直して、しっかり記述をしてほしいものです。そこには実はバイヤーや消費者が知りたい情報が隠れていることがあるのです。
 さらに商談会を開く側にも責任があります。ただ農家や農業法人を集め商談会を開き、いろいろな企業のバイヤーを呼んでも、どれほどのマッチング機会を生み出すことができるのか、流通の事情も分からないまま、展示会を開催するところがあります。やらなければならないからやっているということでいいものなのでしょうか?

3)流通事情
 百貨店とSMのバイヤーの行動は違います。
百貨店のバイヤーは、長年の経験から、いつどこでどのような農産物や加工品等が作られ市場に出てくるかを知っています。このため、旬を売場に反映すること、珍しい商品などに眼目を置いています。一方、SMのバイヤーは、季節ごとに売場基本レイアウト図を変更して、品揃えを刷新し、売上の最大化を図っています。
バイヤーが忙しいのは、限りある自店の棚を最大限に効果的に活用するために、天候・温度・湿度などを想定しながら、超稼ぎ筋、超売れ筋、特売品、新商品などを組み合わせて、売場に表現しているからです。
SMや百貨店では、よく見られる農産物直売所や道の駅のように、午後になると空きスペースが出てくるようなことは許されないのです。年間20億円以上販売する直売所や、それ以上の売上高を獲得しているSM、百貨店などは、常に商品の品出しを行って、売場を維持・充実させています。
 朝商品を納め夕方引き取りに来るような取引では集客や売上には限界があり、運営方法等の見直しが必要なのです。
6次産業化に挑戦する場合、欠品を起こさない、ロスを出さないというものづくりの原点からの意識改革が必要です。
 開発商品はどこでどのような顧客にどのように食べて欲しいのか、しっかり考えたうえで、生鮮品の販売、加工品の販売について工夫し、集客方法についても努力していただきたいところです。

4)6次産業化を成功させるために
 6次産業化事業を成功させるためには、次の対策が必要とされています。
①既存商品に対する差別化点を明確にする
②土、苗や種、農薬、肥料等元となる生産物のものづくりへのこだわりをもつて、「おいしさ」を追求する
③消費者・バイヤーがなるほどと思う展開ストーリーが必要である
④徹底してHACCPの考え方に基づく衛生管理を行い「安心・安全」の加工品を作る
⑤セグメンテーションを行い、既存商品とは異なる特長をもっている
⑥将来の取引拡大を意識した加工場への設備や機器の整備・投資を考慮する
⑦ネットワークを生かす
⑧まず顧客をイメージし、どのような顧客にどこでどのような商品について食べてほしいか、買ってほしいかを考える→使用場面
⑨商品のネーミング、パッケージ、シール、チラシに至るまで、総合的な基本計画を作成したうえで、情報発信を心掛け挑戦していく

5)支援センター(サポートセンター)や行政への提案
支援センターや行政等、事業の認定側も以上述べてきましたように
・商品のセグメンテーション・ストリー性
・異物混入を防ぐ方法の確立、HACCP支援
・材料の安定的な確保
・商品の特長・こだわりの明確化
・販路・販売チャネルの設定
・継続的な取引が可能な安定的な製造
といった点まで支援しながら認定にもっていき、事業を成功させてほしいものです。 
単に「自分で生産し、加工し、販売しなさい」ではなく、どのようなものづくりをし、どのような販路で販売するように工夫するかまで、支援センターがあり農山漁村発イノベーションプランナー(旧6次産業化プランナー)がいるのですから、そうした支援の工夫を行った上で認定にもっていっていただきたいものです。
 6次産業化への農家等の挑戦を成功させるためには、いろいろな方法はあると思われますが、行政もいかに日本の農業の活性化を進めるか、支援活動を行っていくか、6次産業化(農商工連携等も含め)の認定方法や推進方法に対してより一層の工夫をしてほしいと思います。
 それは、単に生産者の支援だけではなく、食や観光等との総合的な連携も必要となります。個人や企業等、点で支援を行うだけでなく、今後はもっと面的な支援の必要性もあるのではないでしょうか。地域資源の活用は本当にできているのか、単に認定に終わっていないか、そのまま認定して放置されていないか、いろいろな県や市町村と仕事をするたびにアフターフォローの重要さを感じます。
6次産業化は、日本の農業生産に経営そのもののあり方、ビジネスプランの策定、マーケティングなどの知識を据えないと6次産業化は成功しないと思います。
 前回でふれましたが、事業再構築補助金のように加工場などにも補助金が出る支援は限られています。行政の皆さんに対しても企業の加工場支援のための補助金はありますが、何といってもせっかく農山漁村発イノベーション事業として名称変更されたのですから、加工場等への投資に関して前年度に計画をヒアリングし、次年度に予算化するのではなく、毎年申請に対しての認定を行う事業再構築補助金のような内容に制度変更していただきたいと切にお願いする次第です。今のままでは応募はしりすぼみで終わるのではないかと危惧します。
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