あんのん雑記

愛媛県西予市野村町の慈雲山安穏寺、
住職の雑記です

まけない大樹に会いに行く

2012年03月16日 | 東日本大震災について


3月13日、東北での最終日。

曹洞宗の三部義道老師が発案した復興支援プロジェクト「まけないタオル」の

テーマソングを作詞された早坂文明老師にお会いするため、宮城県山元町 徳本寺へ・・・


たくさんのお檀家さんが犠牲となり、100を超えるご遺骨が位牌堂に安置されています。

何度か、東北へと参りましたが犠牲となった方々を目の当たりにするのは初めてでした。



お参りし、一つ一つのお位牌に眼を通しました。

すべてに「3月11日」と記されています、

整然と並ぶお位牌から「3月11日」という日付が飛び出してくるような錯覚に襲われました。

何も考えることができませんでした。


隣で、奥様が目の前の骨壷を指差し、

「あの方も、あの方も実は遺骨がないんです・・・」

とつぶやかれました。



徳本寺を後にし、

「まけないタオル」の歌詞のモデルとなった、津波に耐えた「大樹」に会いに行きました。


教えていただいた住所をナビに入れ車を走らせます。

ナビの地図には商店や人家、線路などが表示されますが、現実の世界は、ただ茶色の地平があるばかりです。

目立つものは、高く積み上げられ、山となった瓦礫です。



でこぼこした道をしばらく走っていると、廃墟と化した小学校の陰から突然に巨大な木が見えました。

すべてが流された大地で力強く立ち、枝を広げています。




車を降り、海の方向へと手を合わせお経を唱えました。


それから、「大樹」へ歩きました。



ケヤキの大木で、大人が3人ほどで漸く抱え込めるような太い幹です。、

地上から天をつかむ様に高く、広く枝を伸ばしていました。



根元には誰かが置いたのか、波が運んだのかランドセルが一つ転がっていました。


しばらく、「大樹」のそばに立ちつくしていました。

聞こえるのは、枝が風を切る音とテトラポットに砕ける波の音、

そして、瓦礫を運ぶダンプの音・・・




早坂老師とお話していた時、こんなことをおっしゃいました。

「いま何が支援として必要ですかと問われても、

 何も思い浮かばないですよね・・・

 震災の直後は、衣食住の確保で大変だったんだけど、今はある程度あるんです・・・

 着るものも、食べるものも、住むところも満足とは言わないまでも、ある程度あるんです・・・


 いま、お願いしたいのは『忘れないで』という事なんですかね・・・。」


今まで目にしたものを心に刻み、祈り続けようと思います。

また、目にしてきたこと、聴いたことをを人に伝えていこうと決心しました。