魅惑の日本映画

日本がこれまでに生み出した数々の名作、傑作、(珍作?)の映画を紹介していきます。

穴(大映)★★★★★

2008年03月30日 | Weblog

【概要】
ルポライターの北長子は、自ら1ヵ月の失踪騒動を起こしそのルポを書き、彼女を探す懸賞を募集するという企画を週刊誌に売り込む。ところが、彼女は預金横領事件に巻き込まれ事態は意外な展開に。
「DVD NAVIGATOR」データベースより抜粋

【感想】

最初に映画会社について個人的で勝手な意見で語るんで、興味ない人は流してください。
後半に「穴」のレビューがあります。

50年代から60年代の主な映画会社「東宝」「大映」「日活」「東映」「新東宝」「松竹」には、それぞれ作品のジャンルは違えど、会社ごとに作品のカラー(雰囲気?)があります。

東宝は特撮、時代劇、現代劇と割合幅広い路線で活躍し、都会的な空気がどの作品にも流れているような感じがします。

新東宝は50年代末期からエログロへと路線変更し、猟奇的なタイトルが印象的な陰湿な雰囲気を出していました。

日活はポルノへ移行するまでは、石原裕次郎、赤木圭一郎、小林旭などの今で言うアイドル(ちょっと語弊がありますね、この表現には)的な、スターという名にふさわしいまず俳優ありき的な、そんな感じの作品が目立ちます。吉永小百合の「あゝひめゆりの塔」や「キューポラのある街」は社会派の傑作でしたけどね。

松竹は「東京物語」や「二十四の瞳」など、日本人の心に訴えかけるような作品を多く製作しているイメージがあります。「男はつらいよ」などもそういった流れに含まれるのかな。また、私が日本映画の最高傑作と信じて疑わない「砂の器」も松竹の作品です。

東映は中村錦之助や東千代之介、大川橋蔵などが活躍する時代劇が有名ですね。初期には「一心太助」などのコメディがよく作られましたが、後年東宝の黒澤明や小林正樹などの影響でリアリズムへと移行していきました。私が東映の時代劇で好きなのは、前半コメディ、後半胸に迫る感動作の「美男の顔役」(大川橋蔵)やアニメーションを駆使し、後半は舞台の要素を取り入れた一種のファンタジーとも言うべき「恋や恋なすな恋」(大川橋蔵)などですかね。ちなみにこの両作品ともVHSにしかなっていないのです。早くDVDになってほしいものです。

さて、本題。
大映は市川雷蔵の時代劇、ガメラなどの特撮、そしてこのブログでもかつて紹介したことのある「大江山酒天童子」や「大魔神」「妖怪シリーズ」の特撮と時代劇の融合など、意欲的なことをやっています。現代劇も量産しており、東宝のように都会的な雰囲気を出そうとしているのですが、どうも東宝と比べると一歩劣るようです。個人的な見解ですよこれは。

そんな印象を一気にぶっとばしてくれたのがこの「穴」です。
前置きがかなり長くなりましたね。失礼しました。
この映画を見て京マチ子の印象が変りました。彼女は「羅生門」や「地獄門」などでシリアスな役柄が印象的だったので、そういう役しかやらない人なのかと勘違いしていました。
兎に角100分全てが彼女の魅力炸裂といった感じに、コミカルな役をのりに乗って演じているのが気持ちいいです。
うまいなあと思ったのが夫に逃げられた田舎娘に変装したときで、
一番好きなのは「一番安心して眠れるところがあるの」と言った後、薬中毒の患者になって牢屋に入れられているシーンです。
そこまでやるか!といいたくなるくらいの名演でした。

船越英二が裏切り者だということは案外早くに私は分かってしまいましたが、もともと六井、千木、そして白州は共謀者なわけで、北長子に不審な行動をとってもおかしくないのです。徐々に千木が怪しいと思わせる演出は見事です。

船越英二はもう悪役と聞いても驚きませんが、山村聡が銀行の金を横領する計画を話しているシーンを見てちょっとびっくりしました。彼は東宝で「日本のいちばん長い日」や「世界大戦争」コアなところで「ノストラダムスの大予言」などの印象が強いですからね。
それと、「となりのトトロ」や「大誘拐」で知られる北林谷栄も、彼女らしい役柄で登場します。

1957年、黒白映画と聞いてちょっと見るのをためらってる人に是非見て欲しい映画です。
公開から50年以上たった今見ても面白さや演出のセンスは、量産されているサスペンスドラマや事件ものの映画よりこっちのほうが断然上回っています。テンポも速い。
もうびっくりです。

監督 市川崑 
脚本 九里子亭 
音楽 芥川也寸志 

北長子 京マチ子 
千木恋介 船越英二 
白州桂吉 山村聡 
猿丸警部 菅原謙二 
鳥飼秋太 石井竜一 
赤羽スガ 北林谷栄 
六井ふき子 川上康子 
甘粕左平 潮万太郎 
大屋編集長 見明凡太郎 
六井外次 春本富士夫 
中村武子 日高澄子 
青年作家 石原慎太郎 
運転手  浜村純 

1957年度大映作品(モノクロ・スタンダード)




履歴です↓

血と砂
ハウス(HOUSE)
相棒(最終回SP『黙示禄』…番外編)

悪い奴ほどよく眠る
無法松の一生
蜘蛛巣城
江分利満氏の優雅な生活
大江山酒天童子
日本沈没

妖星ゴラス
斬る
待ち伏せ
殺人狂時代
太平洋奇跡の作戦キスカ
赤毛

戦国野郎

ブルークリスマス
大盗賊(東宝)
座頭市と用心棒
ガス人間第一号

電送人間
美女と液体人間
赤ひげ
世界大戦争
椿三十郎

用心棒
モスラ(1961年度版)
新幹線大爆破
隠し砦の三悪人
日本のいちばん長い日

☆はじめに☆

上のレビューに無い八甲田山はこちら


最新の画像もっと見る

1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
大映映画フアン (naoki/M)
2009-11-06 10:22:06
始めまして、古き大映映画大好き人間の
naoki/Mと申します。
DVDで穴という映画をレンタルするの
ですが、どんな映画かネットで調べてみて
ましたら、貴殿のブログに訪問することに
なり、内容が解りました。有難う御座い
ます。私は、川上康子が良いと思って
います。午後八時13分は特に印象に
残っております。ビデオ化、DVD化も
無いようですね、何か情報が在りましたら
お願い致します。他愛ない私のブログにも
いらして下さったら嬉しいです。
今後とも宜しくおねがいいたします。
返信する