魅惑の日本映画

日本がこれまでに生み出した数々の名作、傑作、(珍作?)の映画を紹介していきます。

斬る★★★★☆

2008年02月22日 | Weblog

 

阿佐ヶ谷にある「ラピュタ阿佐ヶ谷」という名画座で「喜八魂」と銘打って岡本喜八監督の特集をしています。実は阿佐ヶ谷に行くのは初めてで、どんな所だろうと思っていたんですが、中央線快速が通るだけあって活気のある町でした。ラピュタは駅から5分たらずの所でした。

冒頭の東宝マークが出るところからして、佐藤勝のウエスタン調の軽快な音楽が鳴り響き、続いてストップモーションのスタッフキャストのクレジットという、岡本喜八お得意のテンポのいい演出が楽しめます。
若侍と浪人という設定は、黒澤明の「椿三十郎」を思い出させますが、まあ、この映画原案が山本周五郎ですから。よく原作が同じと間違えられたりするんですが、そんなことはありません。原作者が同じだけです。
そして、コンセプトの共通点こそあるものの、岡本喜八タッチの現代にも通じる面白さが詰まっています。
「椿」はどこから現れたか分からない、正体不明の浪人「三十郎」がふらりとやってくる非現実的なところに面白さがありましたが、「斬る」は、侍に虚しさを感じ、無宿者にまで成り果てた源太(仲代)と侍になりたくてしょうがない百姓あがりの半次(高橋)との対比で、より現実的に描いているような感じ。比べるものではないですが、この映画は「椿」以上に登場人物たちのキャラクターが立っていて面白いです。

兵頭弥源太(仲代達矢)…「殺人狂時代」でコミカルな役をやってのけた彼は、今回もその独特の台詞回しでとぼけた妙な雰囲気を作っています。ヤクザの真似事をするも、おぼつかない感じがとても上手いです。私は、この源太が仲代達也のはまり役だと思っています。生き生きと演じているんですよね。
田畑半次郎(高橋悦史)…「日本のいちばん長い日」や「赤毛」、「沖縄決戦」など、岡本喜八作品では割と虚無主義、ニヒルな役が多いんですが、半次郎はコミカルでお調子者(死語)。こういう役も出来るのか!と感心してしまいました。
荒尾十郎太(岸田森)…いい役です。もう、岸田森の良さが全部詰まってる役柄です。彼も岡本喜八の常連ですね。彼がちょっとでも出ると画面が引き締まるというか、がらっとその空気が変わる凄さがありますね。
↓↓下の人物もそうですね。同じ場面に映ることはあまり無いんですが、もう、コンビをくんでもいいんじゃないかと言うくらい、異彩を放っております。
島田源太夫(天本英世)…あ、岸田森とはブルークリスマスでも同じ場面で映ってますね。今回の彼は山小屋に閉じ込められた若侍達を直接ではないにせよ助ける重要な役を演じています。台詞がほっとんどない。でも存在感あり。
鮎沢多宮(神山繁)…彼は文学座出身で舞台俳優が本職ですが、映画に出るときは決まって悪役ですよね。しかも偉い役なので始末が悪い。その嫌らしさがぷんぷんにおって来る辺り、さすがですね。ただ、悪役を沢山演じている分、沖縄決戦で県民のことを必死に考える知事を演じたときは感動してしまいましたね
森内兵庫(東野英治郎)…家老役ですが、女郎屋に味をしめて「一生はなれたくないわい」とおちゃめなことを言う。嫌らしく感じないのは、やはり彼の力でしょうね。昔からおじいちゃん役を数多くこなして来た東野英治郎ってすごい。この森内兵庫、最後に女郎屋にいた女達をそれぞれの家に帰してあげるという、優しさも持っています。

ああ面白かった! 映画はやっぱり後味が良くて爽快じゃないとね。

監督 岡本喜八
脚本 岡本喜八,村尾昭
原案 山本周五郎
音楽 佐藤勝

仲代達矢(兵頭弥源太)
高橋悦史(田畑半次郎)
中村敦夫(笈川哲太郎)
久保明(竹井紋之助)
中丸忠雄(庄田孫兵衛)
土屋嘉男 (松尾新六)
星由里子(千乃)
岸田森(荒尾十郎太)
今福正雄(道信和尚)
神山繁 (鮎沢多宮)
東野英治郎(森内兵庫)
天本英世(島田源太夫)
田村奈巳(よう)

1968年度東宝作品(モノクロ・シネスコ)

二日おきに更新すると抜かしておいて、三日おきになってしまいましたね。
八甲田山のレビューはこちら。どうもうまく表示できないみたいで、下の一覧に加えることが出来ませんでした。 

待ち伏せ
殺人狂時代
太平洋奇跡の作戦キスカ
赤毛
戦国野郎


ブルークリスマス
大盗賊(東宝)
座頭市と用心棒
ガス人間第一号
電送人間
美女と液体人間
赤ひげ
世界大戦争
椿三十郎
用心棒
モスラ(1961年度版)
新幹線大爆破
隠し砦の三悪人
日本のいちばん長い日
☆はじめに☆


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