魅惑の日本映画

日本がこれまでに生み出した数々の名作、傑作、(珍作?)の映画を紹介していきます。

美女と液体人間★★★☆

2008年01月31日 | Weblog
今回は、今から見ればB級映画ととらえられても仕方の無い、でも見てみると結構面白い東宝の変身人間三部作「美女と液体人間」、「電送人間」、「ガス人間第一号」を紹介します。どれもB級映画の雰囲気が漂ってる作品名ですが、アメリカのB級SF映画と違って、原爆、戦争、科学の発達による悲劇と、奥の深い問題がバックボーンにあるのです。

美女と液体人間
【概要】
巨匠、本多猪四郎が監督、円谷英二が特技監督を務めたSFサスペンス。ある日、ある男の消失事件が発生。事件を任された刑事・冨永は、科学者であり友人でもある政田から、人間は多量の放射能を浴びると、液体化することを告げられ…。

【感想】
冒頭の運動会のかけっこの時に流れるような音楽に、暗い海で船がおどろおどろしくゆっくり進むタイトルバック。(しかも「美女と液体人間」の「液体人間」の文字が、血が垂れているように書かれていて、新東宝のエログロ怪奇映画を見ているよう)
この音楽は果たして適当なのだろうか?でも佐藤勝が作曲だから、コントラプンクト(黒澤明の「野良犬」で初めて使われた画面と正反対の音楽を流す方法)なのでしょうか?まあ、経緯はどうであれかえってこの場面と不釣合いな音楽が独特の世界観を形成しています(笑)
ジャパニーズホラーは、スピリチュアル(?)な、霊的なものが登場するのが常ですが、これは被爆した生命体が液体生命になるというSFですが、有機ガラスをつかった液体人間の素晴らしい特撮で、幽霊以上に恐ろしいものになりました。子供が見たら怖いかもしれませんね。

今から見れば、ダンスシーンなど、アダルトな雰囲気を出そうとして、ドタバタアクションっぽくなってしまった部分もありますが、それも50年前の資料として考えれば興味深いです。
独特の雰囲気をもつ名優中丸忠雄が地味な刑事役で登場しています。彼はほとんど台詞がありませんでしたが、後年の電送人間こと須藤兵長を演じることになります。(キスカ、日本のいちばん長い日でも名演を見せてくれました)
東宝特撮と言ったら、平田昭彦。彼は外せませんね。刑事役が似合うこと。
白川由美は、この世の者だと思えないくらい美人です。こういうアダルトな役で思い出すのは水野久美ですが、今回はやはり弱弱しさを感じさせる白川由美でなければいけないでしょうね。

千田是也博士の、火で覆い尽くされた東京を背景に流れる台詞
「人類が絶滅した時、次に地球を支配するのは液体人間であるかもしれない」は圧巻。
次は「電送人間」ですね。「透明人間」「マタンゴ」は例外的存在なのでいつか日を改めて。

監督:本多猪四郎
原作:海上日出男
脚色:木村武
音楽:佐藤勝

政田助教授: 佐原健二
新井千加子:白川由美
富永捜査一課長:平田昭彦
宮下刑事部長:小沢栄太郎
坂田刑事:田島義文
田口刑事:土屋嘉男
小川刑事:坪野鎌之
関刑事:中丸忠雄

1958年度東宝作品(カラー・シネスコ)

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