魅惑の日本映画

日本がこれまでに生み出した数々の名作、傑作、(珍作?)の映画を紹介していきます。

大盗賊(東宝)★★★★

2008年02月05日 | Weblog

【概要】
今は昔、堺の港。豪商呂宋助左衛門は海賊の嫌疑で捕えられ、樽詰めになって火刑に処せられたが、脱出。島国日本に住みあきた助左は“俺は濡れ衣を着せられたのだ海賊になるのもお面白い、南の海で夢を果すのだ"と南シナ海に乗り出した。途中、船が遭難し助左は賊宝と共に筏に乗り、漂流中に黒海賊に襲われて賊宝を奪われた。ある島に辿り着いた助左だったが、その島には女に弱い仙人や、弥々姫を狙う宰相や妖術使いなど、一癖も二癖もある奴がいた・・・
goo映画より抜粋,改訂

【感想】
堺の港の最盛期であることから、時代設定は一応安土桃山時代(あるいは戦国?)なんでしょうが、それは冒頭数分までの話で、後は中近東だか何だかよく分からない、ごちゃまぜの無国籍な世界がくり広げられます。
まあ、アメリカでの公開タイトルが“The Lost World of Sinbad”ですから、アラビアンナイト・シンドバットの冒険をイメージしたのでしょうか。それはともかく、自分の城にいながらもはや捕らわれの身の姫を助け出すという、明るく単純明快なストーリーと三船敏郎の豪快な存在が物語を引っ張っていき、見ていて飽きません。それぞれのキャラクターが面白い。

 助左(三船敏郎)…用心棒、大坂城物語などで見られたご存知三船敏郎と言った役柄なので、こういう物語では安心して見られました。この当時、世界のミフネとまで言われた彼が、こんな(と言っては失礼ですが)珍作(はっきり言って珍作です)に出て、東宝特撮俳優(水野久美、田崎潤などなど)と共演するなんて、滅多にないですよ。
 黒海賊(佐藤允)…演技が過剰でクスッとしちゃいます。「わはっはっはっは」と笑うところなんて…。戦争映画でいい味を出していた彼ですが、ここでは癖のある役を演じています。
 エロ仙人(有島一郎)…東宝喜劇映画の第一人者。女に(というかオッパイに)弱い仙人という設定がGood。この仙人と天本英世演じる妖婆との対決も見所の一つ。彼の存在が、この映画を更に面白くしています。
 増尾(草笛光子)…元奴隷の身分で、宰相に気に入られ、現在の地位にいるものの、宰相が弥々姫の身体を狙っていることを知ると、助左を助けるおいしい役どころ。草笛さんこういう映画にも出るんですね。
 弥々姫(浜美枝)…出ましたボンドガール。やはり美しいですね。海外の女優さんにも引けを取らないと思いますが、彼女はどこか可愛らしさもあります。
 洗濯女(若林映子)…こちらもボンドガール。黒澤明の「隠し砦の三悪人」の雪姫役にオーディションにでたものの落選してしまいましたが、後に大きな飛躍を遂げる事になります。彼女は声も容姿もエキゾチックで、この映画の雰囲気そのもの。
 美輪(水野久美)…海賊の女大将。彼女も日本人離れした美しさを持っていますし、こういう活発な役がぴったりです。「食い逃げ野郎!」と助左に悪態をつきながらも、好意を抱いてるところがいいですね。
 宰相(中丸忠雄)…彼は役柄を問わず、どんな映画にも出るんですね。電送人間は強烈でしたが、「日本のいちばん長い日」や「キスカ」でも重要な役を演じていました。この映画ではふっきれて、どこか楽しそうに演じている気がします。
 摺武(田崎潤 )…スリムと読みます。メタボなのにスリムなんて、わらってしまいます。助左に敗れた死に際、「助左、おれはお前が好きだった…」と言うのですが、ああ、そっちの人だったんだ…なんて余計なことを考えてしまいました。
  妖婆(天本英世)…強烈!!演技者とは彼のことを言うのです。普通は女性が演じるんでしょうけど、でも彼しかいないなあ。岸田森(この映画には出てませんが)と天本英世は、日本映画界には欠かせない名脇役でしたね。

公開年は1963年。天国と地獄と同じ年に三船敏郎がこの映画に出ていたというのは驚きです。東宝特撮最盛期の醍醐味も味わえるのですが、ファンタジーありアクションありの娯楽映画に仕上がっているので、(有名な役者が結構登場していると言う事も含めて)見る価値はあります。
VHSしか出てないので、レンタルできる所は少ないですが、名画座でみる機会があるかもしれませんし、廃盤になっていないので買って見ることも出来ます。私なんかは買ってしまいましたけどね。


監督 谷口千吉
特技監督 円谷英二
脚本 木村武 関沢新一
構成 八住利雄
音楽 佐藤勝

呂栄助左衛門 三船敏郎
揚藩 佐藤允
仙人 有島一郎
増尾 草笛光子
弥々姫 浜美枝
洗濯女 若林映子
美輪 水野久美
宰相 中丸忠雄
摺武 田崎潤
明国公子 船戸順
妖婆 天本英世
羅刹王 志村喬

1963年度東宝作品(カラー・シネスコ)DVD化なし,VHSのみ

他にもレビュー書いてるので、アーカイブをご覧下さい。

座頭市と用心棒
ガス人間第一号
電送人間
美女と液体人間
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モスラ(1961年度版)
新幹線大爆破
隠し砦の三悪人
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☆はじめに☆


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