魅惑の日本映画

日本がこれまでに生み出した数々の名作、傑作、(珍作?)の映画を紹介していきます。

美女と液体人間★★★☆

2008年01月31日 | Weblog
今回は、今から見ればB級映画ととらえられても仕方の無い、でも見てみると結構面白い東宝の変身人間三部作「美女と液体人間」、「電送人間」、「ガス人間第一号」を紹介します。どれもB級映画の雰囲気が漂ってる作品名ですが、アメリカのB級SF映画と違って、原爆、戦争、科学の発達による悲劇と、奥の深い問題がバックボーンにあるのです。

美女と液体人間
【概要】
巨匠、本多猪四郎が監督、円谷英二が特技監督を務めたSFサスペンス。ある日、ある男の消失事件が発生。事件を任された刑事・冨永は、科学者であり友人でもある政田から、人間は多量の放射能を浴びると、液体化することを告げられ…。

【感想】
冒頭の運動会のかけっこの時に流れるような音楽に、暗い海で船がおどろおどろしくゆっくり進むタイトルバック。(しかも「美女と液体人間」の「液体人間」の文字が、血が垂れているように書かれていて、新東宝のエログロ怪奇映画を見ているよう)
この音楽は果たして適当なのだろうか?でも佐藤勝が作曲だから、コントラプンクト(黒澤明の「野良犬」で初めて使われた画面と正反対の音楽を流す方法)なのでしょうか?まあ、経緯はどうであれかえってこの場面と不釣合いな音楽が独特の世界観を形成しています(笑)
ジャパニーズホラーは、スピリチュアル(?)な、霊的なものが登場するのが常ですが、これは被爆した生命体が液体生命になるというSFですが、有機ガラスをつかった液体人間の素晴らしい特撮で、幽霊以上に恐ろしいものになりました。子供が見たら怖いかもしれませんね。

今から見れば、ダンスシーンなど、アダルトな雰囲気を出そうとして、ドタバタアクションっぽくなってしまった部分もありますが、それも50年前の資料として考えれば興味深いです。
独特の雰囲気をもつ名優中丸忠雄が地味な刑事役で登場しています。彼はほとんど台詞がありませんでしたが、後年の電送人間こと須藤兵長を演じることになります。(キスカ、日本のいちばん長い日でも名演を見せてくれました)
東宝特撮と言ったら、平田昭彦。彼は外せませんね。刑事役が似合うこと。
白川由美は、この世の者だと思えないくらい美人です。こういうアダルトな役で思い出すのは水野久美ですが、今回はやはり弱弱しさを感じさせる白川由美でなければいけないでしょうね。

千田是也博士の、火で覆い尽くされた東京を背景に流れる台詞
「人類が絶滅した時、次に地球を支配するのは液体人間であるかもしれない」は圧巻。
次は「電送人間」ですね。「透明人間」「マタンゴ」は例外的存在なのでいつか日を改めて。

監督:本多猪四郎
原作:海上日出男
脚色:木村武
音楽:佐藤勝

政田助教授: 佐原健二
新井千加子:白川由美
富永捜査一課長:平田昭彦
宮下刑事部長:小沢栄太郎
坂田刑事:田島義文
田口刑事:土屋嘉男
小川刑事:坪野鎌之
関刑事:中丸忠雄

1958年度東宝作品(カラー・シネスコ)

赤ひげ★★★★★

2008年01月31日 | Weblog
【概要】
江戸時代末期、エリート青年医師・保本登(加山雄三)は心ならずも貧民たちの施設・小石川療養所に配属される。しかし、そこで出会った「赤ひげ」の異名をとるベテラン医師・新出去定(三船敏郎)に感化され、真の人間愛にめざめていく。
Amazonより抜粋

【感想】
黒澤明の映画で、最高傑作はどれだと聞かれたら、「七人の侍」や「生きる」が多数だそうです。まあ、それは納得できますが、「用心棒」「椿三十郎」といった娯楽色をさらに強めた作品もやはり彼の代表作にあげられるでしょう。

私がもしもこんなことを聞かれたら(まずそんなことはないと思のですが)間違いなくこの「赤ひげ」を選びます。
当然、他の黒澤作品がつまらないと言っている訳ではなく、どれも同じようにして面白い。また、どの作品が好きかと問われて返答に困るのは、黒澤明は様々なジャンルに挑み、作品を作るごとに新たな手法を加えて、作品ごとに違った魅力があるからです。(でも徹底した正攻法で、安定感がある。)

だた、この「赤ひげ」は黒澤明の良さが全部集約されている、いわば集大成的な映画(監督談)なんですよね。

椿三十郎などでみられたユーモアもあり、刀を使わないものの、三船敏郎(赤ひげ)のアクションシーンもあり、そしてなにより、「七人の侍」「生きる」などで見せた黒澤明のヒューマニズム溢れる叙情的な演出も炸裂しています。
職人の佐八(山崎努)と、おなかの決して成就することのない悲恋の話は、現代とは違う江戸時代ならではの奥床しさを感じます。
おとよ(二木てるみ)の話は、原作の「赤ひげ診療譚」のエピソードを変えて組み立てなおしたオリジナルですが、この話の核となって後半を盛り上げます。二木てるみの名演に注目!Wikipediaで調べたところ、彼女は当時16歳で、史上最年少のブルーリボン章を受賞したそうです。(やっぱりなあ)
また、おとよを通して保本登(加山雄三)が更に成長していく過程も素晴らしいです。
貧乏で仕方なく泥棒を働き、結果として一家心中(未遂)してしまう長坊(頭師佳孝)を助けようと、養生所のおばさんとおとよが井戸に向かって長坊の名前を叫ぶ場面は、原作には一応書かれているものの、割と簡素でしたが、映画ではドラマチックに仕上がっています。
原作は、江戸の情緒あふれる庶民の行き様を短編形式で描く形で登場人物達のやりとりも面白かったです。映画もその形式で物語りは進みますが、原作よりも感動的でした。

最後、保本が決心して養生所に残ることを決めるも、新出(赤ひげ)は快く承認しない場面(赤ひげの困った表情、保本の明るい表情)で物語りは終わります。その二人の演技も爽快でよかった。見終わった後に、清々しい気分になる、久々にいい映画を観たと思いました。


これで1948年以来の三船敏郎、黒澤明のコンビに終止符がうたれ、黒澤明は東宝との契約を切り、三船敏郎も三船プロとして本格的に動き出すわけですが、そう考えると、少しもったいなく、あと何本かは三船黒澤コンビの映画を見てみたいと思うのは私だけではないはずです。
三船敏郎は原作の赤ひげそのままといった感じで、彼しかいないなと思いました。

それから、佐藤勝の音楽は数ある黒澤映画の中で最高の出来栄えです。


監督 黒澤明
脚本 井手雅人
小国英雄
菊島隆三
黒澤明
音楽 佐藤勝
原作 山本周五郎『赤ひげ診療譚』
1958年連載

新出去定 三船敏郎
保本登 加山雄三
おとよ 二木てるみ
佐八 山崎努
お杉 団令子
おなか 桑野みゆき
おくに 根岸明美
狂女 香川京子
森半太夫 土屋嘉男
津川玄三 江原達怡
五平次 東野英治郎
長次 頭師佳孝
娼家の女主人 杉村春子


1965年度東宝作品(モノクロ・シネスコ)

世界大戦争★★★★

2008年01月29日 | Weblog
【概要】
記者クラブの運転手・田村(フランキー堺)は戦後を生き抜き、地道に働いていた。ところが世界情勢は緊張を増し、ついに戦争へと突入してしまう。田村は妻・お由(乙羽信子)と娘・冴子(星由里子)、息子と共に最後の夕食を共にする。冴子は将来を誓い合った恋人の高野(宝田明)にモールス通信で電文を打つ。「…コーフクダッタネ…」。やがてミサイルが東京を襲い、世界最後の日が訪れる。
Amazonより抜粋


【感想】
特殊撮影については、出来不出来賛美両論ですが、当時としては最高水準です。
でもまあ、今の日本の特殊効果技術に比べると、ミニチュアと分かっていても迫力がありますねえ。

この映画は当初、橋本忍脚本、堀川弘道監督で進行していたのですが、最終的には八住利雄脚本、松林宗恵監督で決定しました。(橋本氏の政府に重点を置いた作品も見てみたかった)
東宝特撮映画全史によると、その間12回にまで及ぶシナリオの改訂が行われたそうです。第三次世界大戦と言う、日本映画にとっては未知数の、かつ本格的な近未来戦争映画を作るにあたって、製作者の熱意が伝わってきます。
この映画が公開された翌年、ついにキューバ危機が起こり、まさに世界大戦争は絵空事ではない、事実起こりえるものでした。

世界大戦争の宣伝プレスに書かれている森岩雄専務の言葉。
「最近の国際情勢を見てみると、いつ、どんなことで戦争の危機がはじまるかわからない。(中略)映画人である吾々は映画でそれを世界の人々に訴える。どこの国の人よりも吾々はこの映画を作る権利と義務がある。だから、東宝の人間がやっているのではなく、日本人がこれを作っているのだと思っている。」
現代人に、これほどまでの映画を作る熱意があるだろうか?やはりSFといえども、当時を経験したことのある人でなければこの映画は作れなかっただろうと思います。

それから、音楽もいいです。邦画史上屈指の出来栄えです。
団伊玖磨の美しく切ない旋律と、星由里子と宝田明のモールス信号で最後の会話を交わす場面が重なるシーンでは号泣です。(星由里子は当時19歳。若い!そして可愛い)
フランキー堺と乙羽信子のコンビも最高。
やり場の無い怒りをベランダでぶちまけるフランキー堺と、モールス信号のシーンは名場面です。

一応、政府関係の描写はあるものの、あくまでもフランキー堺、庶民の視点で描かれているため、どうすることも出来ない悔しさ、悲しさが浮き彫りになります。
開戦の経緯があまり描かれていないと言う意見もあるようですが、先程書いたとおり、世界情勢が切迫した状況を考慮すれば、これだけ反戦のメッセージを込めた映画を作ったことにただただ感心するのみです。
東宝特撮だけあって子供にも見られるように作ってあるので、普通の戦争映画と違って非常にわかりやすく、ストレートに戦争の残酷を伝えています。
一面の焼け野原の東京をバックに、「この物語は架空のものであるが明日起こる事実かもしれない。・・・・・・だかそれを押し止めよう。・・・・まだそれが起こらない中に」というメッセージが映し出されて物語りは終わります。

このメッセージを説教くさいととるか、とらないか。
そのへんでこの映画の評価も相当変ってくるでしょう。

平和をどうどうと願えるってことは、とても幸せで素晴らしいことです。


監督 松林宗恵
脚本 八住利雄、木村武
特技監督 円谷英二
音楽 團伊玖磨

田村茂吉 フランキー堺
高野 宝田明
お由 乙羽信子
田村冴子 星由里子
江原早苗 白川由美
船長 東野英治郎
総理大臣 山村聰
外務大臣 上原謙
官房長官 中村伸郎
ワトキンス ジェリー伊藤(モスラでは悪役でしたが…)
江原 笠智衆

1961年度東宝作品(カラー・シネスコ)


椿三十郎★★★★★

2008年01月26日 | Weblog
【概要】
黒澤、三船コンビの傑作時代劇『用心棒』の続編的映画。ある藩のお家騒動に巻き込まれた凄腕の浪人・三十郎が、腹黒い家老たちの不正を暴こうとする若侍たちを手助けして大暴れする。
(「DVD NAVIGATOR」データベースより)

【感想】
「用心棒」の桑畑三十郎と椿三十郎は、キャラクター設定こそ同じものの、「用心棒」は八州回りが登場するため比較的江戸時代後期、「椿」は幕府の安定期の雰囲気が漂っていて、比較的江戸時代初期なので、二つの時代設定が完全に違うので厳密に言えば続編ではないのですが、まあ、そんなことはどうでもいい。主人公の三十郎の「私の名前は、~~三十郎です。もうそろそろ四十郎ですが…」と言う台詞や、敵を一杯食わせて数秒の内に全員斬ってしまうシーンなど、二つの作品に共通点が見られて楽しませてくれます。
「用心棒」はドライな雰囲気で、そこにユーモアが点在しているという感じでしたが、「椿」の方は全体的にユーモラスで、三十郎自身もどこか可愛らしい。
奥方(入江たか子)とその娘(団令子)も忘れてはいけない。若侍と三十郎が真剣に考えている最中も彼女達はマイペース。
捕らわれの身の小林桂樹もいいスパイスになっています。

「用心棒」では殺陣、そして「椿三十郎」では超有名な三船敏郎と仲代達也の決闘シーンがよく取り上げられますが、「椿三十郎」の面白さは、三十郎を含め、悪役もすべてのキャラクター設定と、脚本にあると思います。
時代劇と言えば「武士道残酷物語」や「上意討ち」のように重厚で暗い作品もあるのですが、私は「椿」のような娯楽映画に徹した痛快時代劇の方が好きです。

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織田裕二主演のリメイク版「椿三十郎」を見ました!
面白かったです。いろいろと現代風にアレンジしていて、凄い上から目線ですが、がんばってるなと思いました。松山ケンイチと、佐々木蔵之介がいい味を出していました。本家本元と比較検証するのは邪道ですのでやめますが、リメイク版を見た人は必ず黒澤&三船バージョンを見ることをお勧めします。


監督 黒澤明
脚本 黒澤明、菊島隆三、小国英雄
音楽 佐藤勝

椿三十郎:三船敏郎
室戸半兵衛:仲代達矢
井坂伊織:加山雄三
守島隼人:久保明
広瀬俊平:土屋嘉男
保川邦衛:田中邦衛
寺田文治:平田昭彦
見張りの侍木村:小林桂樹
睦田夫人:入江たか子
千鳥:団令子
次席家老黒藤:志村喬
竹林:藤原釜足
大目付菊井:清水将夫
城代家老睦田:伊藤雄之助


1962年度東宝作品(モノクロ・シネスコ)

用心棒★★★★★

2008年01月25日 | Weblog
【概要】
馬目の宿は縄張りの跡目相続をめぐって一つの宿湯に二人の親分が対立、互いに用心棒、兇状特をかき集めてにらみ合っていた。そこへ桑畑三十郎(三船敏郎)という得体の知れない浪人者がふらりとやって来た。

【感想】
三船敏郎は「~~三十郎」がはまり役です。この映画の後に素浪人物を演じる彼ですが、どれもこのキャラクターが元になっているような気がします。それ程にこの桑畑三十郎のインパクトは強烈でした。
話し言葉や態度はぶっきら棒だが頭が冴えている。そして優しい、魅力的なヒーローです。翌年の傑作「椿三十郎」はさらにユーモアを加えていますが、「用心棒」はもう少しドライな雰囲気に仕上がっています。

やくざの二大勢力がコミカルに描かれていて、悪人といえども何処か憎めない。山田五十鈴は毒婦を演じさせたら右に出る者はいないと思うのですが、「どん底」では超憎たらしい役を演じていた彼女でさえ、今回はどこかユーモラス。
居酒屋の東野英治郎、番屋の沢村いき雄、棺桶屋の渡辺篤コンビ、
三十郎との勝負を前にしてそそくさと逃亡する用心棒の本間先生に藤田進、
脇役達も生き生きとしていて、その人たちを見るのも楽しい。

それと、佐藤勝の音楽が、およそ時代劇とは思えないような選曲で斬新。彼も日本を代表する映画音楽家ですが、彼は時に叙情的に、時に実験的に曲調を変えられる凄い作曲家だと思います。

今回の舞台である宿場町は、全て一から作りあげたセットだそうですが、物凄く良く出来ていて、「ああ、これはセットなんだな」とは思わせません。
細かな所まで神経を行き届かせている。それだからこそ黒澤明のダイナミックな画面構成が堪能できます。

映画とは、メッセージ性を含んでいることも勿論大切ですが、その前に、作品として面白くなければ映画として成功とは言えません。
黒澤明の「用心棒」は、娯楽映画の傑作です。

やっぱり、時代劇は白黒(モノクロ)がいいな。と思いました。



監督 黒澤明
脚本 黒澤明 菊島隆三
音楽 佐藤勝
   
桑畑三十郎 三船敏郎
卯之助 仲代達矢
ぬい 司葉子
おりん 山田五十鈴
亥之 加東大介
清兵衛 河津清三郎
居酒屋の親爺 東野英治郎
名主 藤原釜足
番屋の半助 沢村いき雄
棺桶屋 渡辺篤
用心棒本間先生 藤田進

1961年度東宝作品(モノクロ・シネスコ)


モスラ(1961年度版)★★★★

2008年01月23日 | Weblog
【概要】
悪徳古美術ブローカー・ネルソンの手で南海のインファント島から連れ去られた小美人を取り戻すため、守護神モスラが東京に来襲する。モスライモ虫状の幼虫が渋谷をがれきと化した後、東京タワーに繭を張り巨大な翼を持つ成虫へと脱皮する。

(Amazonより一部改)

【感想】
東宝が製作した怪獣映画の傑作です。怪獣映画というくくりよりもむしろ、ファンタジー映画と言った方がいいのでしょうか。核実験により南海の無人島にいるはずのない原住民と二人の妖精、その守護神モスラ…これまでの怪獣が登場する映画は、必ず断末魔のシーンが用意されているのでどこか悲しげな終わり方をするのが常でしたが、モスラはインファント島の守護神として島へ帰ってゆく。また、フランキー堺と香川京子のコンビに加え、志村喬、小泉博が少しユーモラスな雰囲気を醸し出していて全体的に明るいのが特徴です。フランキー堺は同年に世界大戦争にも出演していますが、やがては悲劇的な結末をむかえる主人公を見事に演じていました。
また、オープニングの東宝スコープのマークが登場する所からの音楽が素晴らしい。どこか南方の感じがする旋律は、これから始まる壮大な物語の幕開けに相応しい。ここで伊福部昭を起用しなかったのが正解ですね。伊福部さんは、怪獣映画では定評のある作曲家ですが、どれも似たような旋律なので私は作品に素直に入り込めないのですが(そういっても重々しい雰囲気の曲は最高に好きで、メーサーマーチは傑作ですが)今回古関裕而を起用することで、あの有名なモスラの歌も誕生したわけです。ちなみにこれは有名な話ですが、古関さんは六甲颪の作曲者でもあります。しかし、古関さんは特に野球に興味はなかったようです。(笑)

純文学の三人を原作者としていることが異例ですが、今回も東宝ならではの反戦映画です。
この映画は娯楽超大作ですが、根底にあるのはエンディングにもあるように
「平和こそ、永遠に続く繁栄への道である」
これは東宝特撮初期の作品に健著で、ゴジラも含め、妖星ゴラス、世界大戦争へと続いていくわけです。

監督 本多猪四郎 
原作 中村真一郎、福永武彦、堀田善衛
脚色 関沢新一
特技監督 円谷英二
音楽:古関裕而

福田 フランキー堺
中條 小泉博
花村 香川京子
ネルソン ジェリー伊藤
小美人 伊藤エミ、伊藤ユミ(ザ・ピーナッツ)
原田 上原謙
編集長 志村喬

1961年度東宝作品(カラー・シネスコ)

新幹線大爆破★★★★

2008年01月20日 | Weblog
【概要】
東京発博多行き新幹線ひかり号に爆弾が仕掛けられた。この爆弾、新幹線の速度が時速キロ以下になると自動的に爆発する仕掛けになっているため、車を止めることも出来ない。

【感想】
「スピード」の原点、評価が高い割には、あまり知られていないような気がするのは私だけでしょうか。

いわくつきの黒沢脚本「暴走機関車」が元ネタとされています。小野竜之介、佐藤純弥の脚本はさらに減速すると爆発するという新しいアイディアを入れて緊迫感溢れる映画に仕上がっています。それにしてもさすが、黒澤明は様々なジャンルの脚本を書く方ですね。新しいことに挑戦していくという姿勢が素晴らしいと思います。
 

 本作品は、暴走機関車こそ元ネタにしているものの、パニックアクションだけにとどまらず、高度経済成長のひずみが見えかかってきた60年代後期から70年代のやり場のない人たちの怒りをも描写している点で、だだのパニックアクションではない凄さがあります。何処となく漂う悲壮感、多岐川裕美扮する妊婦が流産してしまうのも、何と言うか日本映画らしい。これがハリウッドだったら絶対にパッピーエンドに終わると思うのですが。
 

 造り手達の熱い思いがひしひしと伝わってきて、出演者たちの演技も迫真もの。爆弾を除去する駅員たちに、思わず手に汗を握ります。
 
 全編に渡ってテンション高く物語が進んでいくため、冷静に見れば「?」やご都合主義と言われても仕方のないくだりもあるにはあるのですが、それは映画の上、難題をひとつずつクリアしていく面白さがあって気になりません。
 

最後は高倉健と東映の作品らしく、割と古風な終わり方なんですが、それがまた日本映画らしさでもあります。
 

152分と長尺ですが、見応えがあり、飽きが来ません。
 

あの北大路欣也や志保美悦子がワンカット出演しているというのも贅沢な映画でした。



監督 佐藤純弥
企画 天尾完次、坂上順
脚本 小野竜之介、佐藤純弥

沖田 高倉健
古賀 山本圭
大城 織田あきら
倉持運転指令室長 宇津井健
青木運転士 千葉真一
森本副運転士 小林稔侍
    丹波哲郎 ほかオールスター

1975年東映作品(カラー・シネスコ)


隠し砦の三悪人★★★★

2008年01月19日 | Weblog
【概要】
戦国時代を舞台に、敗軍の侍大将・真壁六郎太(三船敏郎)が隠し砦にこもり、欲深い百姓達(千秋実と藤原釜足)を丸め込んで協力させ、追っ手から雪姫(上原美佐)と、お家再興の軍資金、黄金二百貫を守って、敵中を横断突破するアクション活劇。(Amazonより一部改定して抜粋)


【感想】
ユーモアと勇姿、後味が良いまま「終」の文字が出る痛快時代劇。時代劇とはこうでなくちゃ!と思います。

武士の重々しさ、悲劇を描いた作品も時代劇ですが、私は、昔風で言うなら痛快活劇が大好きです。

三船敏郎の豪快さ(刀を両手で振り上げて馬に乗って敵を切りにいくシーンは圧巻)、雪姫役の上原美佐の男気(?)溢れる潔さ(当時新人でしたが、この後岡本喜八監督作品や、日本誕生などに出演して、二年で辞めてしまった。きりりとした表情が印象的だったために残念。)、最後まで強欲な百姓、千秋実と藤原釜足のユーモアと滑稽、そして何と言っても「裏切り御免!」と言って関門突破を最後に助ける藤田進には、思わず手を叩いてしまいます。

宿場で惨めな思いをしていた独り身の娘を買い上げて助けるんですが、彼女の存在も憎い演出です(いい意味で)。


全てのキャラクターが生き生きと描かれ、久しぶりに面白い時代劇を見たと思います。ここでの三船の活躍が、後に用心棒、椿三十郎へと引き継がれていくわけです。


阿部寛、松本潤、長澤まさみ、宮川大輔、監督はローレライ、リメイク版日本沈没の樋口真嗣のリメイクで今年公開されますが、見てみないとわかりませんが、オリジナルには到底及ばないでしょう。


それにしても椿三十郎に続いてシナリオに全く手をつけないでリメイクって、、、リメイク版が仮に面白かったとしても、その功績の大半は大変苦労して作ったシナリオにあるわけですからね(逸話は有名)、なんだか複雑な感じ。


黒澤明の綿密なダイナミズムとも言うべき演出、そして、出演者自身の奥深さは、並々ならぬものを感じます。

監督 黒澤明
製作 藤本真澄、黒澤明
脚本 菊島隆三、小国英雄、橋本忍、黒澤明
音楽 佐藤勝


真壁六郎太 三船敏郎
太平    千秋実
又七    藤原釜足
田所兵衛  藤田進
老将長   志村喬
雪姫    上原美佐

1958年度東宝作品(モノクロ・シネスコ)




日本のいちばん長い日★★★★★

2008年01月17日 | Weblog

【概要】
大宅壮一の原作を元に、昭和20年8月14日から15日にかけての太平洋戦争終結(ポツダム宣言の受託如何)をめぐって緊迫したドラマを展開する軍・政府部内の様々な人間像をドキュメンタリータッチで描き出し、歴史の大きな転換期を24時間という限定した時間の中に凝縮して浮き彫りにした作品。
(東宝特撮映画全史より一部改定して抜粋)


【感想】

東宝創立35周年記念映画。
岡本喜八、いや、日本映画界における代表作。

そもそも私は戦争映画が嫌いで、その理由は予告編にあるのですが、昔の大抵の戦争映画は、明るい音楽で、「興奮!迫力!」などを歌い文句にして、戦争高揚映画のようにとらえてしまいがちだったからです。
(実際に中身を見てみれば、そのほとんどが、戦争の悲惨さ、虚しさを訴えているものなんですがね。)

戦争映画を見るきっかけになったのは「キスカ」という戦争映画にしては珍しい全員玉砕を避けられるというパッピーエンドで終わる作品で、そんな映画ですらも、反戦のメッセージが込められている事。これが私が戦争映画を見られるようになったきっかけです。(このブログでも紹介しています。)


そして「日本のいちばん長い日」は私にとって戦争映画の概念をさらに覆す、ああ、こういう視点で描く戦争映画もあるんだあ。と思わせる作品でした。


だって戦争で日本人が死ぬ場面が無いんですから。
それを抜いて、戦争の悲劇を克明にするというのは凄い。
逆に、そういう場面を排除したことが成功につながったのかもしれませんね。

映画というメディアの性質上、小説などの原作では描けない視聴に訴えかけるインパクトが大切なのですが、この映画は以外に淡々と進んで行くんです。

でも、全編に渡って緊張感があふれている。


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この映画はは、歴史上公式な終戦の日を描いているため、戦闘機が飛び交ったり、爆撃されたりというシーンは前半のこれまで日本が歩んできた惨たらしい歴史を紹介するシーンのみで、後は政府と軍、宮内省の攻防を描いています。
(日本の降伏時期をおくらせようと企図した陸軍将校達が近衛第一師団長森赳中将を殺害、師団長命令を偽造し宮城を占拠したクーデター事件)

前半は、仲代達也の淡々としたナレーションで、ごく簡単に、ごく分かりやすく太平洋戦争から広島、長崎の原爆投下、そしてアメリカ、中国、イギリスが日本に無条件降伏を要求するまでを説明します。
その間、映画のタイトルがいっこうに現れず、20分くらいでようやく登場するんですが、それまでの説明が、決して飽きることなく簡潔にまとめられているので見入ってしまいます。

その後も、ぬきさしならない状況の中で話はどんどん進んでいき、無駄な場面が一切ない。(変なロマンスも皆無!この映画は余計な場面を一切排除し、それが現実味をだし、長尺を忘れ去れます。)

唯一登場する女性は(特攻隊の場面で見送るお母さんは抜きますよ)新珠三千代のみ。それも台詞極少。
それでもあっけらかんとした態度を保つ女中(内心は怖くてたまらない)は強烈な印象を残してくれました。


陸軍将校達の暴走、暴動は、それが信念として自分達の中で立派に成立しちゃってるのが怖い。
(実際に戦地に立ったり、爆撃を受けたりした庶民のことを真に考えていないんですよね。「今ここでポツダム宣言を受諾したら、戦死して逝った人たちに申し訳がない」なんていうのは勝手な理屈です。)


三船敏郎はじめ、出演者それぞれも迫真の演技で、158分は瞬く間に過ぎていきます。このとき三船敏郎は47歳だったっていうんだから驚き。
貫禄ありすぎです




岡本喜八監督作品ですが、極めて重厚な作り。
明治時代に突入する時期を描いた「赤毛」の後に見たものですから、よけい感慨深かったです。 

一種の記録映画のようでもあり、かつ映画の面白さもとことんまで詰めた60年代日本映画の傑作です。

物語のラスト、太平洋戦争の日本人の犠牲者の数が数字で表示されます。
(佐藤勝の音楽と明朝体の説明文は日本沈没を予期させます。)

仲代達也のナレーションもぐっと来ます。
「ただ祈るだけ」
そう、私たちに出来るのはそんなことくらいかもしれない。
しかし、そんなことすら出来なくなれば、もう私たちの未来は無いでしょう。

エンドロール(正式にはエンディングクレジット・スタッフとキャストの名前を映画の最後に流すあれ。私はあれを見終わらないと映画館の席が立てません。)を用いるのもこのころの邦画にしてはめずらしいですよね?
この時の音楽が、今まで劇中で使用されたことの無い、軍歌のような、節のきいた曲が流れるんですが、軍人のテーマというよりはむしろ、平和を、そして日本の未来を願う人達のテーマ曲に思いました。

最後の鐘の音。
佐藤勝氏は失敗だったと言ったそうですが、岡本喜八監督はあれで正解だったと言ったそうです。
で、私もいい効果音だと思います。
 

どんな戦争映画よりも説得力のある日本映画の底力を見せ付けられた映画でした。
戦争映画としても傑作の出来栄えだし、もう、そんなジャンルを遥かに超えた存在です。


監督 岡本喜八
脚本 橋本忍
音楽 佐藤勝

東郷外相     宮口精二
松本外務次官  戸浦六宏
鈴木総理    笠智衆
米内海相    山村聡
阿南陸相     三船敏郎
岡田厚相    小杉義男
下村情報局総裁 志村喬
井田中佐     高橋悦史
竹下中佐    井上孝雄
椎崎中佐    中丸忠雄
畑中少佐     黒沢年男
NHKナレーター 加山雄三

ナレーション   仲代達也

その他オールスター

1967年度東宝作品(モノクロ・シネスコ)158分


☆はじめに☆

2008年01月17日 | Weblog
東宝のマークが劇場内に映し出されると、何だかわくわくしませんか?(しないか…)
特にTOHO SCOPEのロゴは、きっと子供達の胸を高鳴らせたに違いないです。


1960年代は日本映画の黄金期ですね。
自分が今までに見てきた60年代の映画リストを見てみますと、
傑作のオンパレードです。
現代の映画には見られない製作者の思いも伝わってくるように感じます。
当時の技術を最大限に生かし、工夫し、観客に見せる。今は画像処理で何でも出来るようになりましたが、それ以上のものが昔の映画達にはありました。
懐古趣味と言う前に、一度その作品群を見てください。


このブログでは、私が毎日見た映画を紹介していきます。
(あまり知られてないのもあります。)
題名にもあるように、シネマスコープ(横に長いサイズで撮影された画面)の映画が中心ですが、
50年代はモノクロ・スタンダード(今のアナログテレビのサイズ)でしたので、紹介する作品の中には例外もあります。今はビスタサイズが主流ですしね。


最近は色々な作品がDVD化され、ツタヤにも並ぶようになってきました。
資金の乏しい私としては、大変うれしいことであり、
毎日見たかった映画が見れることになりました。
出来る限り頻繁に更新していきますのでよろしくお願いします。
ジャンルは様々ですが、黒澤明、岡本喜八、東宝特撮などが中心ですかね。

一応★(☆は★の半分の点数)五つが満点の点数をつけますが、これは見ているときのテンションなども影響しますので、あまり参考にはならないかな。

日本映画データベース
ウィキぺディア
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