魅惑の日本映画

日本がこれまでに生み出した数々の名作、傑作、(珍作?)の映画を紹介していきます。

赤毛★★★★★

2008年02月10日 | Weblog

【概要】
幕末から明治へ変わろうとしていた革命期、百姓上がりの官軍隊士・権三(三船敏郎)は赤報隊・隊長の印である赤毛を借りて、故郷の澤渡宿へ赴いた。しかし宿場は代官と結託した駒虎一家に支配されており、権三は虐げられてる人々を救うべく立ち上がるのだが…。
Amazonより抜粋

【感想】

赤報隊…戊辰戦争時の官軍先鋒隊の一。三隊編成で、一番隊は相楽総三(さがらそうぞう)を隊長とし、年貢半減を布告しつつ、中山道を東進したが、総督府から偽官軍とされ、1868年3月、相楽らは信濃国下諏訪で斬られた。(大辞林より)

この映画は明治100年(明治からちょうど100年)で沸き立つ中、1968年に製作されました。そして、これまで数多くの作品に反骨の精神を反映してきた岡本喜八の想いがこの映画ではより一層あらわになっています。
一番隊の相楽総三は実在の人物。映画では描かれませんでしたが、彼が歴史上行った行為は決して評価されるものではなく、江戸市中の放火や暴行など、倒幕運動の元、江戸幕府を挑発するのが主でした。(まあこれには色々な解釈があるでしょうけどね)
そんな相楽も新政府の意向で「年貢半減」を宣伝したのですが、新政府は年貢半減令を取り消して、彼は結局偽官軍として処刑されてしまうのでした。可哀想って言えば可哀想。
しかし、今回この映画で訴えたいのは相楽などの上層部ではなく、三船敏郎の権三を代表とした、もっと下の庶民の怒りでした。

「どんなに政治が変わっても、苦労するのは百姓達」
権三の母が権三に言った言葉こそがこの映画の根底にあるもののように思います。
また、幕府側の岸田森や新政府側の神山繁、そして細かいことは知らないでただ世直しの為だけに奮闘する三船、世の中を「葵から菊に変るだけ」と冷静に見る高橋悦史など、様々な考えを持った人物が動き回る様子は、時代を置き換えてまさに「日本のいちばん長い日」を彷彿とさせます。
そう言う意味で、この「赤毛」を見た後に「日本のいちばん長い日」を見ると、岡本喜八監督の反骨のメッセージを読み解くことが出来ると思います。
どちらも娯楽映画としても一級品の出来栄えですが、赤毛の方が勇ましい三船敏郎や、おとぼけキャラ(表現が古くて済みません)の寺田農、腰抜けの伊藤雄之助、やはりここでも重要な役どころの岸田森も見れて、岡本喜八ワールドが楽しめる作品になっています。
ただ、可笑しい分、最後に来る「ええじゃないか」の大行進は涙無しには見られません。前半の明るさも、佐藤勝の三味線ロックも、最後の悲劇を十分に引き立てています。

“赤毛は世直しの印、革命軍の先駆け、維新に斬り込んだ男”
この映画のキャッチコピーが、見終わった後哀しく響いたことは言うまでもないです。


監督 岡本喜八
脚本 岡本喜八 廣澤栄
音楽 佐藤勝

権三 三船敏郎
三次 寺田農
一ノ瀬半蔵 高橋悦史
とみ 岩下志麻
お袖 岡田可愛
お春 乙羽信子
荒垣弥一郎 神山繁
相楽総三 田村高廣
神尾金太郎 伊藤雄之助
馬宿 浜村純
番頭 岸田森
伍平爺さん 左卜全

1969年東宝作品(カラー・シネスコ)

戦国野郎
ブルークリスマス
大盗賊(東宝)
座頭市と用心棒
ガス人間第一号
電送人間
美女と液体人間
赤ひげ
世界大戦争
椿三十郎
用心棒
モスラ(1961年度版)
新幹線大爆破
隠し砦の三悪人
日本のいちばん長い日
☆はじめに☆ (←2/10更新)


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