魅惑の日本映画

日本がこれまでに生み出した数々の名作、傑作、(珍作?)の映画を紹介していきます。

カモとねぎ★★★★★

2009年02月06日 | Weblog

★あらすじ★
その端正な風貌から“貴族詐欺師”と呼ばれる石黒信吉(森雅之)とキザなチンピラ丸木久平(高島忠夫)、森洋介(砂塚秀夫)の3人の詐欺師は、競艇で八百長を仕組み、まんまと300万円を手にしたが、丸木と森の不注意からその金を謎の女(緑魔子)に持ち逃げされてしまった。女の残したマッチを手掛りに、3人はようやくのことで暴力バーのホステスである女、麻美を見つけたのだが彼女は情夫の保釈金にその300万を使っていた…。
(goo映画より抜粋・一部改訂)


★感想★

(注)上のあらすじですが、文章に書いてあるのは映画の序の部分です。
これもまた神保町シアターで見てきました。
森雅之って、あんまり私見てなかったんですが、本作で彼の魅力をしっかりと認識できました。
森雅之の七変化。それがこの映画の見所のひとつですが、その変装ぶりが全て板についていて笑わせるし感心させられます。


まずは冒頭の競艇で船に乗って釣りをするよれよれの森雅之に思わず吹きました。
タイトルクレジットのお洒落さとスキャット、そしてこの冒頭は相当ボルテージ高いです。
丸木(高島)と森(砂塚)が乗る車は按摩(マッサージとは言わない)機能つきなんですが、これ完全に小ネタの域にはいってます。

結局、麻美は300万円を返すまで詐欺師達のグループの一員になります。
ここからこの映画のストーリーは進行していくわけです。まず手始めに麻美の働く違法暴力バーに森雅之が弱弱しい税務署の係長に扮し、客として潜入します。そこで注文するのはなんとソーダ水
他のホステス達にも3つソーダ水を注文します。
税務署の係長だと知った店員は慌てて森雅之に口止め料を払うのでした。


それから青少年を性の不道徳から守る会(うろ覚えなので適当)の山岡久乃に教育映画と偽りアダルトビデオを見せちゃいます。
(あげくその会の援助金をパクるという…)
ビデオをを見た山岡久乃がまんざらでもないといった印象を受けたのがおかしかったです。
この時の森雅之は教育委員会委員長。その助手が砂塚秀夫で、かれは以前顔を見られているので、銀歯の入れ歯(しかも出っ歯)をして現れます。古典的な笑いなんですけど、劇場内は爆笑でした。


さて、散々笑わせたところで、今度の舞台は毒物を垂れ流す工場です。
そこに不発弾が埋まっている噂を聞いた森雅之詐欺団は自衛隊(!)に扮して工場内の職員を全て立ち退かせ、金庫を破ります。
金庫の中に簡単な金庫と会社が隠していた海水の毒物調査の資料を発見します。
そして見つけ出すつもりはなかった不発弾を見つけてしまい、そのまま慌てて逃げ帰るという…
逃げる際に工場の人に
「不発弾がありました、自衛隊を呼んで下さい。」
って、本当におかしい

森雅之は被害者の娘(桜井浩子です)にその毒物の科学調査の資料を渡します。やさしいですなあ。
その工場の会社はベトナム特需で悪徳をはたらく会社で、森雅之たちはその極秘資料で会社を脅しにかかります。

社長が東野英治郎というのもうけますね。悪いエロ爺ってかんじがして。
緑魔子の簡単な色じかけにころっと引っかかってしまいますし。

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なんだか小ネタ満載の映画なんで、ストーリーを追っているだけになってしまったので、ここらへんで感想でも書くとしましょう。

この映画の良さは、ただ単に詐欺師のコメディだけにとどまらず、当時の社会の悪も登場させている点です。それは決して社会派、社会批判ではなく、マグカフィン(どうでもいいこと)に留めているところが物語りに奥行きを持たせ、でも重くない爆笑篇として成立しているのがいいですね。

とかなんとか言っても深いこと考えないで楽しんで見るのが一番なんですが。

この映画ではどんな巨悪も、逆にどんな道徳的なことも鼻先で笑っている気がします。
悪徳会社も青少年を守る会も関係ない、俺達は俺達の仕事をやるまでだ、とでも言いたげな。

またこの映画の更に良いところは、この詐欺師たちにきっちりオチを用意している所。
社長から巻き上げた金を持ち逃げした丸木と森の乗った飛行機は墜落し、丸木と森は海の真ん中に残されてしまうし、森雅之も山岡久乃の執念で逮捕されてしまいます。
(結局、緑魔子が保釈金を払って釈放されます。でもこの保釈金、競艇で森雅之たちが詐欺をはたらいて得た金をパクったやつですからね。まさに森雅之曰く「ありがとう、と言っていいのか。」)

ここがポイント。
どんなに軽妙で面白くても、彼らは所詮詐欺師なのです。
彼らが成功したままで終わると、まあそれでも構わないんですが、無一文になるというオチを用意してくれたほうが更に親切です。

さて、本作を見て気づいたのは森雅之の魅力と、緑魔子の可愛さと、砂塚秀夫の演技力です。

緑魔子はいつでも元気いっぱいで気持ちいいくらいに金庫破りを演じています。彼女の見せない色気も最高にいいです。

砂塚秀夫は本当に素晴らしい役者で、岡本喜八監督の常連ですが、にっかつ、任侠、ゴジラ、時代劇と幅広く出演しています。彼の魅力は何と言っても独特の台詞回しですね。いつも一筋縄ではいかない、と言うか一言では形容しがたい不思議な良さがありますね。
わけも無くオカマ言葉なのがうけます

それから、谷口千吉監督が毒のある(と言っても大したことないですが)コメディを撮っていたことに驚きです。


なんだか長々と意味のない感想をつらつらと書いてしまいましたが、まあ要するに、また言いますがこの映画は深いこと考えないで見るのが一番なんですね。


ああ、いつかDVD化されるといいなあ。
これVHSにもなってないんですが(私の知っている限り)、何故でしょうか?別に内容は何の問題もないし、A級クラスの俳優陣を起用してるし、何より面白いのに…

最近、昔の邦画のリリースをしていない東宝さんですが、いつかソフト化されていない数々の名画をリリースしてくれる日を待ち望んでいます。


監督 谷口千吉
脚本 松木ひろし、田波靖男
音楽 真鍋理一郎


森雅之
緑魔子
砂塚秀夫
高島忠夫

山岡久乃

小沢昭一
東野英治郎 

1968年度東宝作品(カラー・スコープ)


●リバイバル情報●

神保町シアターでは次回「東宝文芸映画の世界」を特集します。
私がチェックしているのは元祖「ジャコ萬と鉄」と「あすなろ物語」。
特に「ジャコ萬と鉄」はなかなか見られない三船&月形、そして黒澤明脚本なので必見です。監督は谷口千吉です。

「カモとねぎ」は2/18~2/24まで浅草新劇場で公開します。


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