魅惑の日本映画

日本がこれまでに生み出した数々の名作、傑作、(珍作?)の映画を紹介していきます。

ど根性物語 銭の踊り★★★★

2008年09月22日 | Weblog

最近、11月に公開されるXファイルに触発されて全シリーズ買いこんだDVDを1話から再度見直してる最中で、邦画の更新がはかどりませんでした
今日は久しぶりに休みだったので非常に遅く起きて、「ヨドバシにでも行ってみるか」と急に思いつき、掘り出し物を見つけてしまいました。
いくら市川崑が有名だからって言っても、この映画知ってる人すくないだろうな~


★あらすじ★

まがったことが大嫌いなタクシー運転手町田百八(勝)は、ひき逃げした車を見つけると乗客のことも忘れて追跡し、車ごとぶつかるような正義漢。
その腕っ節を買われて「社会に害毒を流すものを消す」殺し屋グループ(船越、浜村、ロイ)にスカウトされ仲間に入るが、その正義感が災いし逆に命を狙われ…。
彼が画策する計画のクライマックスとは?


☆感想☆

いやあ、こんな映画があるなんて知りませんでした
市川崑監督の作品はどんなのがあるかだいたいチェックしてるんですが、きょう秋葉原のヨドバシカメラのDVDコーナーの邦画の棚をずっと見てたら偶然「勝新太郎」のコーナーで発見したのです。

ど根性?えっ、ど根性ガエル?
いえいえ、どうやらこの映画、「ど根性」3部作の最後の作品で、「悪名」と並ぶ人気シリーズのようです。(本当に?)

「ど根性一代」「ど根性物語 図太い奴」が前2作で舞台は2つとも昭和初期。
しかしこの「銭の踊り」は現代(昭和)という点で明らかに差別化を図っているようです。

でもいくら大映のパッケージデザインが洒落てても、この題名は絶対に見ないよなあ…


ど根性物語 銭の踊り


なんてタイトルきっと荒々しい毛筆赤字でスコープ画面いっぱいにけたたましい音楽と共に現れたら電源を切ってやろうと思ってましたが、
そこは市川監督。
どんなにシリーズ化の珍妙なタイトルでも、スタイリッシュにしてしまうんだから不思議。本とにセンスいい。まあ、それはDVDでお確かめくださいな。
ハナ肇の音楽もカッコいいです

さて、主人公の勝新は殺し屋の船越、浜村らに綿密に調査され無理やり殺し屋になるわけですが、ここらへんはよくある展開ですが、
時折見せる船越英二の情けなさや、
勝新太郎の演技の自然さ、
江利チエミのぶっきらぼうな大衆食堂のウエイトレスとのやり取りなどが面白いです。

冒頭のひき逃げ犯が後半に出てきたり、時々挿入される、完全にサイドに置かれている刑事たちの場面など、細かい演出が素敵です。

斜めに曲がった電柱を勝新が片手で元に戻すシュールな場面は暗示ともとれます。


市川崑って色々なジャンルに取り組む方なんですね。

最近市川崑ばっかりですが、面白いんだからしょうがない。



監督 市川崑
脚本 九里子亭
音楽 ハナ肇

町田八百 勝新太郎
十條月見 江利チエミ
姫一枝  船越英二
江戸仙蔵 浜村純
堀川五六 ロイ・ジェームス
九谷丸吉 大辻伺郎
吉良警補 スマイリー小原
刑事A  潮万太郎
刑事B  夏木章
刑事C  伊東光一
デントン マイク・ダニン

1964年度大映作品(カラー・シネスコ)

履歴↓↓

億万長者
憲兵と幽霊
怪猫亡霊屋敷

激動の昭和史 軍閥

相棒(劇場版)
おとうと
衝動殺人 息子よ
満員電車
八甲田山

黒い十人の女
穴(大映)
血と砂
ハウス(HOUSE)
相棒(最終回SP『黙示禄』…番外編)

悪い奴ほどよく眠る
無法松の一生
蜘蛛巣城
江分利満氏の優雅な生活
大江山酒天童子
日本沈没

妖星ゴラス
斬る
待ち伏せ
殺人狂時代
太平洋奇跡の作戦キスカ
赤毛

戦国野郎

ブルークリスマス
大盗賊(東宝)
座頭市と用心棒
ガス人間第一号

電送人間
美女と液体人間
赤ひげ
世界大戦争
椿三十郎

用心棒
モスラ(1961年度版)
新幹線大爆破
隠し砦の三悪人
日本のいちばん長い日

☆はじめに☆


億万長者★★★★

2008年09月09日 | Weblog

☆あらすじ☆
館香六(木村)は税務署徴税係に勤める無口な小心者。周囲の人間たちは、汚職をしている署長や18人の子持ちの未亡人をはじめ、脱税をもくろむ人々、果ては肉体労働をしながら原爆製造に夢中の者―――ひと癖も二癖もある人物たちを相手の税金徴収に館は悪戦苦闘する。ある日、館は署長の娘と連れだって税金徴収に出かけるが…。


★感想★

登場人物たちが主人公も含め、へんな奴ばかり。
無口な徴税係を主人公(しかも同年に七人の侍に出ている木村功)にしていることらして常軌を逸してますが、

やたら早口でべらべら喋る(言ってる事は筋が通ってる)13人(!)の子持ちの芸者に山田五十鈴

その芸者ともう一度よりを戻したい汚職政治家に伊藤雄之助

ニューフェイスで収入のない貧乏多家族の長男に岡田英次

借金してまで海外で宣伝しようと企み、飛行機事故で死んでしまうスプーンの会社の社長に多々良純、その妻に北林谷栄
この二人を見ると大映の映画と一瞬錯覚を起こします。新東宝じゃなくて、俳優は東宝と大映ですね完全に。


そしてなんと言っても強烈なのは
原爆製作に夢中で寄付金を募る原爆女・久我美子(!)
育ちのいいお嬢さんなのに相当の汚れ役でした。

日本で原爆を作る映画と聞いて思い浮かべるのは勿論ジュリー主演の「太陽を盗んだ男」ですが、それを戦後9年に、しかも久我美子にやらせるとは、
本当に市川監督の考えることは凄い…

でもだたぶっとんでるだけじゃなくて、原爆女の両親が広島で被爆して死んだと言う過去を持ち、そのために平和を手に入れるために原爆を作ろうと躍起になってるってとこが、市川崑の映画らしい、明確なメッセージが込められている気がします。

貧困に絶えられなくなり、一家心中をしようとする前に、カメラの代わりの空箱で一家そろって記念撮影をする贋家族のシーンは切な過ぎる

でもその後直ぐに父と息子岡田英次のすっとんきょな会話が用意され、
ほんとにブラックユーモアだな~と

原子マグロを食べて結局岡田英次以外の家族は死んでしまいますし

あ、そうだ。
山田五十鈴にそそのかされ、汚職の詳細をつづったいわゆる館メモを作成した館香六ですが、そのメモが政界を巻き込んだ大騒動になるのも面白い。

結局奇人扱いされてしまった館が落胆しながらマグロを食べて死んだ贋一家の家に行くと、二階に下宿している原爆女がとうとう原爆を完成!実験すると言い出します。

館(木村功)は下着とパンツ一丁の岡田英次と一緒に逃げ出す…

物凄い終わり方…

この三年後に市川監督は社会風刺映画「満員電車」を発表しますが、「億万長者」の黒さは、時代背景を考慮しなくても凄まじい…

市川崑が鬼才だと再確認した一篇。
汚職と脱税と貧困が蔓延する現代社会を風刺的に描いた傑作。
異色作家、安部公房や細君、和田夏十らが脚本に参加しているためか、シュールで小気味よい会話が楽しめます。(山田五十鈴と加藤嘉のやりとりは最高)

とにかく見たほうがいいです。
面白いです。


監督、脚本…市川崑   
脚本協力……安部公房、和田夏十、横山泰三、長谷部慶治  
音楽…………団伊玖磨 
   
館香六  木村功 
鏡すて  久我美子 
花熊   山田五十鈴 
団海老蔵 伊藤雄之助 
贋十二  信欣三 
贋はん  高橋豊子 
贋門太  岡田英次 
伝三平太 加藤嘉 
伝麻子  左幸子 
車太賀吉 多々良純 
妻・山子 北林谷栄 

1954年度新東宝作品(モノクロ・スタンダード)

履歴↓↓

憲兵と幽霊
怪猫亡霊屋敷

激動の昭和史 軍閥

相棒(劇場版)
おとうと
衝動殺人 息子よ
満員電車
八甲田山

黒い十人の女
穴(大映)
血と砂
ハウス(HOUSE)
相棒(最終回SP『黙示禄』…番外編)

悪い奴ほどよく眠る
無法松の一生
蜘蛛巣城
江分利満氏の優雅な生活
大江山酒天童子
日本沈没

妖星ゴラス
斬る
待ち伏せ
殺人狂時代
太平洋奇跡の作戦キスカ
赤毛

戦国野郎

ブルークリスマス
大盗賊(東宝)
座頭市と用心棒
ガス人間第一号

電送人間
美女と液体人間
赤ひげ
世界大戦争
椿三十郎

用心棒
モスラ(1961年度版)
新幹線大爆破
隠し砦の三悪人
日本のいちばん長い日

☆はじめに☆


憲兵と幽霊★★★

2008年09月02日 | Weblog

★あらすじ★

天知茂が冷酷な憲兵少尉を演じたことで話題となった怪奇スパイサスペンス。野心あふれる憲兵少尉・波島の謀略によって、田沢は無実の罪で銃殺され、彼の妻も波島の手に落ちる。波島に恨みを抱く田沢は亡霊となって蘇り、波島は次第に常軌を逸していく。
(DVD NAVIGATOR」データベースより)


☆感想☆

タイトルとは違って意外と普通の映画
エログロ路線を期待すると肩透かしをくらいます

とはいえ、
天知茂の魅力満載の一篇。
大衆映画的ながらも、巨匠中川信夫のセンスが時折見ることの出来る怪奇映画。

憲兵とバラバラ死美人(のちに記載予定)では、良い憲兵悪い憲兵という構図がなされていたのが、中川信夫の憲兵物は憲兵を徹底して悪として描いています。
幽霊やサスペンスという分かりやすい形式をとりながら、完全に日本軍批判、反戦映画ですねこれは。

天知茂は色気違いで、殺人狂で、自分の罪を他人になすりつけるどうしようもなく悪い奴ですが、75分間全編を引っ張って、凄まじい最期を見せつけます。

ホラーというか、憲兵シリーズは決してホラーじゃないんですよね。
というよりもむしろサスペンス色が強く、幽霊は確かに出てきますが、
その幽霊の演出も、波島(天知)が徐々に正気を失っていく過程での幻影と受け取ることも出来ます

ラストの墓地に、十字架にかかげられた波島が殺した人々が暗闇から現れるシーンは、名シーンですね。
当時としては大変斬新で洗練られた画面だと思います。

久保菜穂子と中山昭二が再会を誓い合うラストで終わるハッピーエンド。
どんなに不条理で恐怖に満ちた物語でも、中川信夫監督はいつもそういう終わらせ方をします


監督 中川信夫 
製作 大蔵貢  
脚本 石川義寛 
音楽 江口夜詩 
   
波島  天知茂 
田沢  中山昭二 
しず  宮田文子 
明子  久保菜穂子 
張覚仁 芝田新 
紅蘭  三原葉子 
踊り子 万里昌代 

1958年度新東宝作品(モノクロ・シネスコ)

履歴↓

亡霊怪猫屋敷


激動の昭和史 軍閥

相棒(劇場版)
おとうと
衝動殺人 息子よ
満員電車
八甲田山

黒い十人の女
穴(大映)
血と砂
ハウス(HOUSE)
相棒(最終回SP『黙示禄』…番外編)

悪い奴ほどよく眠る
無法松の一生
蜘蛛巣城
江分利満氏の優雅な生活
大江山酒天童子
日本沈没

妖星ゴラス
斬る
待ち伏せ
殺人狂時代
太平洋奇跡の作戦キスカ
赤毛

戦国野郎

ブルークリスマス
大盗賊(東宝)
座頭市と用心棒
ガス人間第一号

電送人間
美女と液体人間
赤ひげ
世界大戦争
椿三十郎

用心棒
モスラ(1961年度版)
新幹線大爆破
隠し砦の三悪人
日本のいちばん長い日

☆はじめに☆