遊爺雑記帳

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建国70年の軍事パレード 習氏が進めてきた軍改革の成果を示す意図 

2019-10-03 01:23:56 | 中国 全般
 中国の建国70年の軍事パレードが、最新兵器を含め盛大に敢行されました。
 中国の軍事パレードは、歴代指導者たちが軍の掌握ぶりや軍事力の増強ぶりを内外に示す舞台となってきたのだそうで、1949年10月1日に北京で建国式典を行い、建国の父・毛沢東が天安門の楼上から軍事パレードを観閲して以後、毎年の建国記念日に実施するのが慣例となっていたのですね。
 しかし、文化大革命(66-76年)による国内の混乱で60年から中断。84年、改革・開放政策を進めていた鄧小平が、25年ぶりに建国記念日のパレードを復活。建国50年の99年に江沢民が、建国60年の2009年に胡錦濤が実施していました。
 しかし、習近平は、この10年に1度の慣例を破り、15年に「抗日戦争勝利70年」、17年には軍創設90年を名目に、建国記念とは無関係の大規模パレードを行っていました。そして、今回の建国70年の軍事パレード。
 米中新冷戦時代の今日、米国に対して軍事強国化を推進してきた成果を誇示し、接近阻止を謀ると共に、対米劣勢の外交での挽回ぶりを国内に誇示する狙いもあるとの評価が聞かれますね。

 読売の竹内誠郎中国総局長の評価は以下。
 
独善強める危うい兆候 中国総局長 竹内誠郎 (10/2 読売朝刊)

天安門の楼上、奥から登場した習近平(シージンピン)国家主席は、左右の江沢民(ジアンズォヨミン)元国家主席、胡錦濤(フージンタオ)前国家主席があたかも従者のように見えるほど一身に注目を集めた。軍事パレードに先立つ演説で習氏は「毛沢東同志がここで中華人民共和国の成立を宣言した」と振り返ったが、その後の最高指導者である鄧小平と江、胡の3氏には触れなかった。10年前の建国60年では、胡氏が過去3代の最高指導者に敬意を表していたにもかかわらずだ。
「我こそは建国の父の直系」と言わんばかりの演説は、前日の行動が暗示していた。習氏は最高指導部の面々を引き連れ、毛の遺体を安置した記念堂を参拝した。江、胡両氏は毛につきまとう個人独裁のイメージを嫌い、生誕記念の節目以外は「足を踏み入れることを避けていた」(共産党関係者)という異例の行為だ。
国内は毛時代に遡ったかのような党礼賛、愛国精神発揚であふれる。日本で開催された女子バレーボールのワールドカップを制したばかりの中国チームも、愛国宣伝の格好の材料だ。習氏は9月30日、郎平監督らとの会見の場を設け、今世紀半ばまでに米国と並び立つ「社会主義現代化強国」の建設に向けた「体育強国の実現」を呼びかけた。
習政権の懸命な愛国宣伝の裏側には、中国本土の熱気とは対照的に外から注がれる冷めた視線がある。
その原因をたどれば、これまでの中国の振る舞いに行き着かざるをえない。
新彊ウイグル自治区では、少数民族に対する大規模な強制収容の実態が指摘されている。中国政府は「教育措置だ」と判で押したような説明を繰り返し、批判は「内政干渉」の一言で一(い)蹴(しゆう)する。南シナ海では、周辺国の反対を一顧だにせず岩礁を埋め立て、次々と軍事拠点を建設している。
中国が繰り返す独善的な言行を考えれば、香港のデモで建物などの破壊行為がエスカレートしているにもかかわらず、国際社会が中国政府の実力行使の方を強く警戒するのも当然と言える。
外圧で習氏の権力基盤が揺らいでいるとみるのは早計だ。1日の式典で習氏の引き立て役となった江、胡両氏らも、外圧は一党独裁体制の崩壊につながりかねないとの認識で一致している。
外圧はむしろ、政権の団結を強める方向に作用しているようだ
「古希」を迎えた大国はますます内向き志向を強めるのか。
危うい兆候が垣間見えた節目の日だった

 10年前の建国60年では、胡氏が過去3代の最高指導者に敬意を表していたのだそうですが、習氏は、毛沢東の後の最高指導者である鄧小平と江、胡の3氏には触れなかったのだそうです。
 江、胡両氏は毛につきまとう個人独裁のイメージを嫌い、生誕記念の節目以外は「足を踏み入れることを避けていた」毛の遺体を安置した記念堂を、最高指導部の面々を引き連れ前日参拝した習近平。「我こそは建国の父の直系」と言わんばかりの演説をしたのだそうです。

 今日、国内は毛時代に遡ったかのような党礼賛、愛国精神発揚であふれている。
 習政権の懸命な愛国宣伝の裏側には、中国本土の熱気とは対照的に外から注がれる冷めた視線があると竹内総局長。
 習近平の中国がこれまでに繰り返している独善的な言行を考えれば、国際社会の視線は当然だと。
 ただ、外圧で習氏の権力基盤が揺らいでいるとみるのは早計だとも。
 江、胡両氏らも、外圧は一党独裁体制の崩壊につながりかねないとの認識で一致していて、外圧はむしろ、政権の団結を強める方向に作用しているようだと。
 国内経済成長率の低迷、その打開策の「一帯一路」政策も、「債務の罠」が露呈。そこへ米中貿易戦争での国内経済への打撃の追い打ち。
 定年制を廃し、独裁化を謀った地位が危ういとの声が少なくないなかで、逆風がむしろ団結を読んでいるとの竹内総局長の解説は、斬新です。

 盛大な軍事パレードは、対米、そして国内への習近平の力の誇示、失地回復の絶交のチャンスだったのですね。
 
米の介入阻止 狙う 核戦力「3本柱」誇示・極超音速兵器 切り札 (10/2 読売朝刊)

 【北京=中川孝之】中国の習近平(シージンピン)政権は北京で1日に行った建国70年の軍事パレードで、大陸間弾道ミサイル(ICBM)など最新鋭の兵器を公開した。将来想定される台湾などでの有事で、米軍の介入阻止を図ろうとする中国軍の意図が鮮明になった

 パレードの終盤で、迷彩塗装の巨大ミサイルが16基、天安門の前に現れた。中国製の弾道ミサイル「東風(DF)」シリーズの一つで、米全土を射程に収めるICBM「DF41」だ。
 中国紙・環球時報などによれば、移動式発射台に載せ、内陸部の高原など米軍が攻撃しにくい場所から自在に発射できる。核弾頭を最大10個搭載し、別々の都市を攻撃することが可能で、防御が難しいとされる。
 DF41は、今回公開した従来型の2種類のICBMの欠点を克服したものだ。地下サイロから発射される「DF5B」は、多数の核弾頭を搭載できるが、発射前に液体燃料を注入するのに時間がかかるため即応性に欠ける。「DF31AG」は移動式発射台を用いるが、重い弾頭を搭載できない難点があった。
 海と空からの核攻撃能力も示した。潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の「巨浪(JL)2」は、戦略ミサイル原子力潜水艦に配備済みで、米本土に到達させることが可能だ。空中給油で航続距離を伸ばし、グアムの米軍基地を打撃する改良型の戦略爆撃機「轟(H)6N」には、搭載するミサイルで核攻撃を担う計画もあるとされる。
 匿名で取材に応じた
中国のミサイル専門家は、「戦略核戦力の3本柱(トライアド=TRIAD)」と呼ばれる〈1〉ICBM〈2〉SLBM〈3〉核搭載の戦略爆撃機――の能力進展を誇示する狙いがあったと解説する。
 
中国は「核の先制不使用」を掲げ、米軍から核の先制攻撃を受けた場合、破壊を免れた核ミサイルで反撃する戦略をとる。陸海空に分散すれば、反撃用の核ミサイルを温存できるため、米軍の脅威となる。
 1950年代から
核ミサイルの開発を進めた毛沢東の狙いの一つは、米国を介入させずに台湾の武力統一を図ることだった。この目的は現在も変わらない。この専門家は「『3本柱』を確立すれば、米国は米国民を犠牲にしてまで介入できなくなる」とみる。
 
中国は核攻撃力の強化をさらに進めようとしている。米国の戦略爆撃機B2を意識し、ハワイの打撃も可能なステルス戦略爆撃機「H20」JL2の射程を延長した「JL3」の開発が行われている。

無人機も進展
 中国軍は核ミサイル以外にも、「A2AD」と呼ばれる軍事戦略で、西太平洋で米軍に対する軍事優位を確立しようとしてきた。
新たな切り札となるのが、音速の5倍以上で飛行する「極超音速滑空兵器」を搭載できる、中距離弾道ミサイル「DF17」だ。
 パレードに登場した16基のDF17の弾頭部分は刃物のようにとがっていた。これが極超音速滑空兵器とみられる。
高速であるうえ途中で軌道を変えることができるため、米軍のミサイル迎撃能力では撃墜が困難とされる。米軍もまだ配備できない兵器だ。戦争の様相を一変させる「ゲームチェンジャー」と呼ばれる。
 DF17は、
「空母キラー」と呼ばれる中距離弾道ミサイル「DF21D」と共に、西太平洋で航行中の米空母を打撃できると推定される。グアムに達する「DF26」と同様に、西太平洋で米軍をけん制する要の戦力だ。
 今回のパレードでは、軍用無人機開発の進展も見せつけた。レーダーで捕捉されにくいステルス無人機「攻撃11」や、超音速で偵察飛行する「無偵8」などだ。
 戦闘機では、最新鋭のステルス戦闘機「殲(J)20」5機が編隊飛行した。
機体数は過去のパレードや航空ショーに比べ最多で、北京の外交筋は「本格的な作戦に参加できる能力を示した」と分析する。

 
習氏が進めてきた軍改革の成果を示す意図もあったようだ。軍事パレードの総指揮は、空軍出身で、北京を管轄する「中部戦区」司令官の乙暁光上将が務めた。習氏は陸軍偏重を改め、海空軍や戦略ミサイル部隊であるロケット軍など、米軍との戦闘に直接関わる軍を重要視している。過去の建国記念日の軍事パレードの総指揮は、いずれも陸軍出身者が担っていた。

 「戦略核戦力の3本柱(トライアド=TRIAD)」と呼ばれる〈1〉ICBM〈2〉SLBM〈3〉核搭載の戦略爆撃機――の能力進展を誇示し、軍事大国化し米国に追いつき追い越す、「中国の夢」を追求する習近平の念願が進んでいることを示したのですね。

 新たな切り札とされる、音速の5倍以上で飛行する「極超音速滑空兵器」を搭載できる、中距離弾道ミサイル「DF17」。
 米軍のミサイル迎撃能力では撃墜が困難とされる、戦争の様相を一変させる「ゲームチェンジャー」と呼ばれる兵器なのだそうです。
 A2/AD(接近阻止/領域拒否)戦略で、米空母をけん制する強力なミサイルの「DF21D」と共に、西太平洋で航行中の米空母を打撃する力が増強されたことになりました。

 まだまだ続く米中の「新冷戦時代」。
 自由主義国家と独裁主義国家との覇権争いでもあります。
 この長期戦のなかで日本はどんな役割を果たすべきなのか。少なくとも、今の野党の国内の政局優先での野合や、重箱の隅つつきに明け暮れる姿勢では、国を亡ぼすことになるのは避けねばなりませんね。



 # 冒頭の画像は、1日、北京で、軍事パレードに臨む(左から)胡錦濤前国家主席、習近平国家主席、江沢民元国家主席




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