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中国・習近平が目論む「個人崇拝」 毛沢東礼賛で自身の失政もチャラにしたいのか

2023-12-30 01:33:55 | 中国 全般
 12月26日は毛沢東の誕生日で、今年は毛沢東生誕130周年。習近平が毛沢東評価の講話を発表。この内容が10年前の毛沢東生誕120周年記念日のときの講話とかなり違っていると話題になっていると、福島香織さん。
 「中国社会主義現代化建設事業の偉大なる創始者」
 「偉大なる国際主義者」
 との新たな 2つの評価を加えた。新たな評価は何を意味するのか。

 
中国・習近平が目論む「個人崇拝」、毛沢東の夢は「オレが実現」? 文化大革命の過ちも「必要悪」、毛沢東礼賛で自身の失政もチャラにしたいのか | JBpress (ジェイビープレス) 2023.12.29(金) 福島 香織

・毛沢東が生誕130周年を迎えた。記念イベントで中国の習近平国家主席は、毛沢東をかつてないほど礼賛した。

・中国共産党では個人崇拝は明確に禁じられている。だが、習近平は自らを神格化が進む毛沢東の後継者であると位置付け、自身への個人崇拝をなし崩し的に広めようとしているかに見える。

・毛沢東がなしえなかった「革命」の夢は「オレが実現する」とでも言わんばかりだが、足元では習近平の政治・経済運営の失敗が目立ちはじめている。毛沢東礼賛には自身への批判をかわす狙いもありそうだ。


 
クリスマス翌日の12月26日は毛沢東の誕生日で、今年は毛沢東生誕130周年だった。これに合わせて、毛沢東同志生誕130年記念座談会が開催され、習近平が毛沢東評価の講話を発表したこの内容が10年前の毛沢東生誕120周年記念日のときの講話とかなり違っていると話題になっている。習近平は毛沢東について、新たに2つの評価を加えたのだ。

 
その2つとは次の通りだ。
「中国社会主義現代化建設事業の偉大なる創始者」
「偉大なる国際主義者」


 これらの習近平による
新たな評価は何を意味するのだろう

 「毛沢東同志は偉大なるマルクス主義者、偉大なる無産階級革命家、戦略家、理論家であり、マルクス主義の中国化の偉大なる開拓者であり、中国社会主義現代化建設事業の偉大なる創始者であり、近代以来の中国の偉大なる愛国者で民族英雄であり、党の第1代の中央指導集団の核心であり、中国人民の運命と国家の姿を徹底的に変えた時代の偉人であり、
世界のために抑圧された民族を解放し、人類進歩の事業に対し、重大な貢献をした偉大なる国際主義者だ

 習近平は
毛沢東生誕130周年記念座談会の講話で、毛沢東をこう表現した

 10年前の120周年記念のときは「毛沢東同志は偉大なるマルクス主義者、偉大なる無産階級革命家、戦略家、理論家であり、マルクス主義の中国化の偉大なる開拓者、近代以来の中国の偉大なる愛国者と民族英雄で、党の第1代の中央指導集団の核心であり、中国人民の徹底的な自己運命と国家の姿を改変するよう指導した時代の偉人だ」という表現にとどまった。

 また、
習近平の毛沢東に対する10年前の評価は歴史人物に対する評価は、その時代と社会の歴史的条件に照らして分析されるべきであり、歴史的状況や歴史的プロセスの総合的理解や歴史的法則の科学的発展と切り離してはならず、歴史的必然性と歴史的偶然性との関係も無視してはならない。歴史の順当な環境の中で収められた成功は個人に帰するものではないし、歴史の逆境の中での挫折も個人のせいにはできない。今日の時代の条件や発展レベル、認識レベルで前人を推し量ったり、成果を求めたりはできないし、後世の人たちにしかできなかった業績を前人に要求することもできない」という表現で、毛沢東の文革の過ちを認めつつ、時代のせいだとエクスキューズするような言い回しがあった

 
だが毛沢東生誕の130周年の今年は、「毛沢東思想は我らが党の貴重な精神的財産であり、長期的に我々の行動を導いてくれた。毛沢東同志を最もよく記念するには、彼が始めた事業を継続して前へと推進させることだ」とポジティブな評価を全面的に打ち出した

文化大革命は「錯誤」はあったが「必要悪」
 さらに、
文革については、「社会主義は人類歴史上の新事業であり、中国は極めて遅れた基礎から社会主義革命と建設を始めた。鑑とする先行経験もなく、紆余曲折やミスを完全に避けることは困難だ。毛沢東同志が指摘したように社会主義建設のルールに対する認識には一定のプロセスが必要だった。実践から出発し、経験のないところから経験を生み、経験の少ないところから経験を積み、社会主義建設というこの認識されていなかった必然の王国から、少しずつ盲目性を克服し、客観的規律を認識し自由を得て、認識上の飛躍によって、自由の王国に到達しなければならなかった」と、飛躍のための必要なプロセスと位置付け、錯誤であったとはしていたが、むしろ必要悪のように評価していた。

毛沢東同志が社会主義建設の道を模索する中で遠回りしたことは否定できない特に文化大革命を発動、指導したことが重大な錯誤であったことは。毛沢東の歴史的功罪については我らが党がすでに全面的に評価している。功績が第1で、錯誤は第2だ。彼の錯誤は、偉大いなる革命家、偉大なるマルクス主義者が犯した錯誤だ」「改革開放以降、我らが党は毛沢東同志と毛沢東思想の歴史的地位を正確に評価し、新たな実際と歴史的経験をもとに中国が社会主義現代化実現の正確な道筋を確立すべきである。党と国家の任務の焦点を経済建設中心から社会主義現代化建設に移動させ、4つの基本原則を堅持し、改革開放の歴史的政策決定を実行し、中国の特色ある社会主義の新長征を始動するのだ」とも。

 
こうした習近平のグレードアップした毛沢東賛美の背景には何があるのだろう。毛沢東生誕デー直前に発刊された共産党理論雑誌の「求是」は毛沢東を賛美し、今日毛沢東のような指導者習近平が存在することについて「党と国家の幸せ、人民の幸せ、中華民族の幸せ」と大絶賛だ。

 そもそも習近平の父、習仲勲は毛沢東の発動した文革によって迫害され、獄中であわや死に追いやられるところだった。そして、習近平もそれにより下放されて苦しんだのだ。習近平がまともな基礎教育を受けられず、いまだ字を読み間違うなど無知無学をささやかれるのは、毛沢東のせいともいえる。

 というのに、
なぜ習近平は毛沢東神格化に向かうのか。習仲勲は共産党史の中でまぎれもなく開明派で、賞賛されるべき数少ない指導部メンバーであったが、なぜ習近平は父親の文革での迫害の不当性を主張するのではなく、父親を投獄した毛沢東の文革を必要悪のように評価するのか

習近平の父は毛沢東に迫害されたが・・・
 海外のSNS上では文革で迫害され海外に脱出した華人たちが、これについて、いろいろとうわさしあっている。実は習近平の父親は習仲勲ではなかった? 下放期間が長く、父親との縁が薄くなった? あるいは、若き未熟な習近平は文革の下放中に完全に習近平思想に洗脳されてしまい、いまだそれが解けない? あるいは、迫害される弱い父より、迫害する強い独裁者にあこがれるのか?

 この
習近平のグレードアップした毛沢東論について、在米華人評論家で、元中央党校機関紙「学習時報」の副編集長だった鄧聿文が、「習近平は今回の毛沢東評価の着地点として、中国式現代化を推進した、としている。(中国式現代化は習近平のスローガンであり)これは習近平自身が毛沢東の事業を継承し、今もその方向に向かっている、ということが言いたいのだ」と分析していた。

 確かに
習近平は今回の講話で「毛沢東同志を最もよく記念する方法は、彼が開始した事業を継承して前進することだ。中国式現代化を全面的に推進して強国を建設し、民族復興の偉大なる事業を進めることが、全党全国各民族人民の新時代の新たな道のりの中心任務だ。これは毛沢東ら先輩革命家がついになし得なかった事業で、いまの中国共産党人の圧倒的歴史的責任である。新たな道のりにおいて、我らは初心を忘れず、使命を心に刻み、歴史的自信を堅く定め、歴史的イニシアチブを掌握し、中国式現代化の壮大な事業を絶えず前進させていかねばならない」と語り、毛沢東のなしえなかった夢はオレがなす、と言わんばかりの発言をしていた

 ラジオ・フリーアジアの報じたところによれば、
米国ニューヨーク市立大学政治学教授の夏明も「習近平は今回の毛沢東評価により、自身を毛沢東路線の継承者であることを明らかにした。政権の正統性、彼の権威と目標及び体制全体の規範をすべて100%毛沢東と一致させたいということの現れだ」としている。習近平自身の独裁化を正当化するために、父親を苦しめた毛沢東賞賛をさらにグレードアップする必要があったのだ。

自身への個人崇拝を狙う?
 
個人崇拝は党規約では明確に否定されている。だが、毛沢東は実際、お札にも印刷され、その個人崇拝、神格化は今なお継続している毛沢東の個人崇拝、神格化は許されるのか。この共産党の根本テーマに、習近平は答えを出すと同時に、自分自身が毛沢東の100%継承者であることを強調し、習近平の個人崇拝も許されるはずである、というロジックを導こうとしているのかもしれない

 また
毛沢東の文革の過ちについて擁護しているのも、昨今、習近平自身の政策の過ちを長老や中央委員、地方政府官僚らから指摘されたり批判されたりすることが増えていることと関係があるかもしれない。欧米に対する「戦狼外交」(威圧的で好戦的な外交)や、不動産総量規制政策、民営企業統治の強化、あるいは大雨・干ばつの災害対策、雄安新区などスマートシティー計画、一帯一路政策についての失敗はすでに隠せないほどの悪影響が広がっている

 こうした
習近平の政策失敗について、「毛沢東の文革の過ちは追及すべきではない」という論調を広めることで、習近平も毛沢東と同様、政策的錯誤があっても、追及すべきでない、という世論を喚起したいのかもしれない

 さらに今回、毛沢東を国際主義者と評価することで、
習近平が国際秩序の新しい枠組みの再構築を目指すのは、毛沢東が夢見てなし得なかった世界革命をイメージしているのかもしれない。習近平は中国式現代化を世界(特にグローバルサウス)に輸出し、米国先進国グループと異なる新しい国際秩序圏をつくろうとしている

毛沢東を旗印にするデモ
 
だが、こうした世論誘導はひょっとすると、習近平にとってむしろ、これまでにない大きなリスクを引き起こすことになるかもしれない

 
毛沢東生誕日イブの12月25日夜からほぼ一昼夜、毛沢東の故郷の湖南省韶山では、毛沢東信奉者による大規模なデモが行われた。確かな規模はわからないが、万を超える群衆が毛沢東の肖像画や五星紅旗を振りながら「資本主義はいらない!」「我々は本物の毛沢東思想がほしい」などと叫んでいる動画がネット上で拡散されている。

 
デモの背景にあるのは庶民の生活苦に他ならない習近平の政策ミスによって経済が悪化し、生活が苦しくなっているが、独裁体制の恐怖政治のもとで習近平の政策を批判することはできないだから資本主義を否定し、毛沢東を旗印にするデモが今各地で起こり始めているのだ。これは庶民が本当に極左的民族主義に洗脳されているせいなのか、それとも言論・デモの自由がない社会で声を上げる苦肉の策なのかは分からない

 だが、
毛沢東の100%継承者を自認する習近平が、毛沢東旗印のデモを、他の反体制デモのように弾圧できないとすれば、ここから再び「造反有理」の社会混乱が中国で広がる可能性はあるのではないか

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福島 香織(ふくしま・かおり):ジャーナリスト
 大阪大学文学部卒業後産経新聞に入社。上海・復旦大学で語学留学を経て2001年に香港、2002~08年に北京で産経新聞特派員として取材活動に従事。2009年に産経新聞を退社後フリーに。おもに中国の政治経済社会をテーマに取材。

 習近平の毛沢東に対する10年前の評価は「歴史人物に対する評価は、その時代と社会の歴史的条件に照らして分析されるべき。
 今日の時代の条件や発展レベル、認識レベルで前人を推し量ったり、成果を求めたりはできないし、後世の人たちにしかできなかった業績を前人に要求することもできない」という表現で、毛沢東の文革の過ちを認めつつ、時代のせいだとエクスキューズするような言い回しがあった。

 だが毛沢東生誕の130周年の今年は、「毛沢東思想は我らが党の貴重な精神的財産であり、長期的に我々の行動を導いてくれた。彼が始めた事業を継続して前へと推進させることだ」とポジティブな評価を全面的に打ち出したと、福島さん。

 新たに加えられた評価は
 「中国社会主義現代化建設事業の偉大なる創始者」
 「偉大なる国際主義者」
 の二つ。

 「毛沢東同志が社会主義建設の道を模索する中で遠回りしたことは否定できない。特に文化大革命を発動、指導したことが重大な錯誤であった。」
 「毛沢東の歴史的功罪については我らが党がすでに全面的に評価している。功績が第1で、錯誤は第2だ。彼の錯誤は、偉大いなる革命家、偉大なるマルクス主義者が犯した錯誤だ」
 「中国が社会主義現代化実現の正確な道筋を確立すべきである。党と国家の任務の焦点を経済建設中心から社会主義現代化建設に移動させ、中国の特色ある社会主義の新長征を始動するのだ」
 とも。

 こうした習近平のグレードアップした毛沢東賛美の背景には何があるのだろうと、福島さん。
 なぜ習近平は父親の文革での迫害の不当性を主張するのではなく、父親を投獄した毛沢東の文革を必要悪のように評価するのか。

 習近平のグレードアップした毛沢東論について、在米華人評論家で、元中央党校機関紙「学習時報」の副編集長だった鄧聿文が、「習近平は今回の毛沢東評価の着地点として、中国式現代化を推進した、としている。(中国式現代化は習近平のスローガンであり)これは習近平自身が毛沢東の事業を継承し、今もその方向に向かっている、ということが言いたいのだ」と分析。

 習近平は今回の講話で毛沢東のなしえなかった夢はオレがなす、と言わんばかりの発言をしていたと。

 米国ニューヨーク市立大学政治学教授の夏明も「習近平は今回の毛沢東評価により、自身を毛沢東路線の継承者であることを明らかにした。」としている。
 習近平自身の独裁化を正当化するために、父親を苦しめた毛沢東賞賛をさらにグレードアップする必要があったと。

 個人崇拝は党規約では明確に否定されている。だが、毛沢東は実際、お札にも印刷され、その個人崇拝、神格化は今なお継続している。毛沢東の個人崇拝、神格化は許されるのか。
 この共産党の根本テーマに、習近平は答えを出すと同時に、自分自身が毛沢東の100%継承者であることを強調し、習近平の個人崇拝も許されるはずである、というロジックを導こうとしているのかもしれないと、福島さん。

 また毛沢東の文革の過ちについて擁護しているのも、昨今、習近平自身の政策の過ちを長老や中央委員、地方政府官僚らから指摘されたり批判されたりすることが増えていることと関係があるかもしれないとも。 
 習近平の失政は、すでに隠せないほどの悪影響が広がっている。
 
 「毛沢東の文革の過ちは追及すべきではない」という論調を広めることで、習近平も毛沢東と同様、政策的錯誤があっても、追及すべきでない、という世論を喚起したいのかもしれないと、福島さん。
 だが、こうした世論誘導はひょっとすると、習近平にとってむしろ、これまでにない大きなリスクを引き起こすことになるかもしれないとも。

 毛沢東生誕日イブの12月25日夜からほぼ一昼夜、毛沢東の故郷の湖南省韶山では、毛沢東信奉者による大規模なデモが行われたのだそうです。
 デモの背景にあるのは庶民の生活苦に他ならない。習近平の政策ミスによって経済が悪化し、生活が苦しくなっているが、独裁体制の恐怖政治のもとで習近平の政策を批判することはできない。だから資本主義を否定し、毛沢東を旗印にするデモが今各地で起こり始めている。
 これは、言論・デモの自由がない社会で声を上げる苦肉の策なのか?

 だが、毛沢東の100%継承者を自認する習近平が、毛沢東旗印のデモを、他の反体制デモのように弾圧できないとすれば、ここから再び「造反有理」の社会混乱が中国で広がる可能性はあるのではないかと、福島さん。
 
 毛沢東の独裁政治の反省から、鄧小平が産み出した、定年制を伴う集団指導体制を構築し、改革開放経済を進め、米国に迫る経済大国に成長させた中国。
 しかし、定年制を崩し、独裁体制で毛沢東の後継者を標榜する習近平。
 行き詰まった中国経済の中での毛沢東継承は、中華の世界構築に益するのでしょうか。。



 # 冒頭の画像は、毛沢東生誕130年を祝うため集まった人たち



  この花の名前は、オキザリス・ヴェルシコロール
 

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