遊爺雑記帳

ブログを始めてはや○年。三日坊主にしては長続きしています。平和で美しい日本が滅びることがないことを願ってやみません。

「サハリン権益喪失」でも原発稼働台数は3分の1に減らせる?

2022-08-26 01:23:56 | ロシア全般
 プーチンのウクライナ侵攻に対し、世界の多くの国々は、経済制裁網を強化することで、ウクライナ支援をしています。
 その攻防で鍵を握るのが、ロシア経済の柱である、エネルギーの攻防。
 ロシアからの輸入を減らすことで、ロシア経済や財政に影響を与えることが出来れば、ロシアの軍事力支障化が出来る。
 しかしそれは、ロシアのエネルギーに依存している側にとっても自国内のエネルギー消費に影響が生じるので、両刃の剣となり簡単には進められない。
 それでも、EU諸国は、石炭や原油輸入削減の他に、天然ガス使用量を15%削減し、ロシア産ガスへの依存を減らす方策について合意。
 日本は、サハリン1, 2の開発に参画し、原油や天然ガスを輸入していることは、諸兄がご承知の通り。
 極寒の地での開発に、ロシアでは技術力が無く、英・シェルや、米・エクソンと言ったメジャーが中心となり、日本からは、三井物産と三菱商事が出資参画し、輸入しています。
 サハリン2着工時の、サハリン・エナジーへの出資比率は、英蘭シェルが55%、三井物産25%、三菱商事20%でしたが、完成まじかになると、ロシア側がなんくせをつけ参入、2006年12月にロシアのガスプロム参画が決まり、2007年4月にはサハリン・エナジーの株式の50%+1株を取得、これによってサハリン・エナジーの出資比率は、英蘭シェルが55%から27.5%-1株、三井物産が25%から12.5%、三菱商事が20%から10%に減少させられたのでした。
 今回の対露制裁に伴う、サハリン1, 2からのシェルや、エクソンの撤退決定。
 プーチンは、サハリンエナジーを、新会社に移行することとし、日本側には、参加したければ改めて申し込みしろと一方的通告。
 日本はどう対応するかが注目されましたが、商工会議所会頭や、県団連会長は、日本企業の権益(=利益)を、ウクライナ国民の命より優先。岸田政権は、新会社への参画を認めました。

 サハリン2新会社、三菱商事も参画意向を通知へ: 日本経済新聞

 
「サハリン権益喪失」でも原発稼働台数は3分の1に減らせる? | 野口悠紀雄 新しい経済成長の経路を探る | ダイヤモンド・オンライン 野口悠紀雄:一橋大学名誉教授 2022.8.25

 ■ウクライナ侵攻が変えたエネルギー見通し
 
ロシアのウクライナ侵攻や対ロ制裁で世界のエネルギー事情が大きく変わった

 西側諸国は、ロシアの原油や天然ガスに依存することができなくなり、
欧州連合(EU)は天然ガス使用量を15%削減し、ロシア産ガスへの依存を減らす方策について合意した。

 
日本に対してもプーチン大統領は三井物産と三菱商事が出資するロシア極東の液化天然ガス(LNG)・石油開発事業「サハリン2」の運営を新たに設立するロシア企業に移譲するよう命令する大統領令に署名した。

 日本企業が石油や天然ガス開発事業から締め出される懸念が強まる。

 
「サハリン2」から日本に供給されるLNGは、国内消費の約1割に相当する600万トン程度だが、もしこの供給がなくなれば、老朽火力発電所の再稼働や節電で代替するのは難しいと言われる

 
代替LNGをスポットで調達すると、追加コストが2兆円近くになるとも言われる。

 
だから原発再稼働や新増設を急げという声が高まるが、ここは冷静に考える必要がある

■原発再稼働を急ぐことは 「正解」なのか

 ウクライナ戦争長期化やロシアの対応を受けて、
原油やLNGをロシアに頼ることは、経済安全保障の観点から大きな問題だ、したがって原子力への依存を高めるべきだとの声が強まる

 
岸田文雄首相は7月14日の会見で、この冬に原子力発電所を最大9基稼働させる方針を示したさらに、原発再稼働や原子力利活用に向けた取り組みも始める必要があるとした。24日のGX(グリーンエネルギー)実行会議では次世代の原発の開発・建設について検討を指示した。

 首相の一連の発言は、エネルギー供給基本計画実現のために原発再稼働や新増設を急ぐべしという議論が出てきていることを受けたものだろう。

■サハリン権益の喪失は 長期的には大問題とは言えない
 では、
サハリン権益を喪失することになれば、日本のエネルギー事情にどれほどの影響を与えるだろうか?

 
第6次エネルギー基本計画では、電力需要を、2013年の9896億kWhから30年には8640億kWhへと12.7%減らすとしている。比例配分で計算すれば、20年から30年では7.5%程度の減少になる。

 その上で計画は電源構成での
LNGの比率を現在の37%から30年には20%に減らすとしている。計画通りになればLNGの必要量は、現在の半分程度に減るだろう。

 このように考えると、
サハリン権益の喪失によってLNGの供給量が1割減ったとしても、30年における日本のエネルギー需給に大きな影響を与えることはないといえる。

 
第6次基本計画は、将来の経済成長率についてかなり高い値を仮定している。しかし、実際にはその成長率を実現できない可能性が高い

 そうだとすれば、
30年のLNGの必要量はもっと少なくてすむだろう。

 もちろん
近い将来では、供給削減に対応できず、需給が逼迫する事態は考えられる。また、サハリン産LNGをあてにしていた企業は痛手を被るかもしれない。しかし、日本経済が全体として受ける長期的な影響はさほど大きくないと考えられる。

■第6次エネルギー基本計画で 想定する経済成長率は高め
 
第6次エネルギー基本計画で、将来の経済成長率が高めに想定されているという基本的な問題は、それだけで終わらない。

 前回コラム「日本の脱炭素化は『化石賞』、ウクライナ前に決定したエネルギー基本計画の深刻度」(2022年8月18日付)で指摘したように、
第6次エネルギー基本計画で発電に占める原子力の比重はかなり高めに見積もられている

 
エネルギー需要は、経済成長率に強く依存する。 高い成長率を想定すれば、将来のエネルギー需要は増える。しかし成長率が低ければ、カーボンニュートラルの制約の下でも、非化石電源を増やす必要性は弱まる

 だから、原子力にさほど頼らなくてもすむということになるのだ。

 
第6次基本計画では、将来の経済成長率をどのように想定しているのだろうか?

 2030年度のエネルギー需給見通しを描いた長期エネルギー需給見通し(2015年7月策定)の 「マクロ経済の前提」(https://www.enecho.meti.go.jp/committee/council/basic_policy_subcommittee/mitoshi/pdf/report_02.pdf)では、「財政収支試算」(中長期の経済財政に関する試算、内閣府)の「経済再生ケース」で想定している成長率が使われている。

 つまり
13~22年度の実質経済成長年率の平均値は1.7%だ。この値を、第6次基本計画では24年度以降にも適用している。その結果、実質GDPは、22年度の約600兆円から30年度には711兆円と18.4%増になる。

 
しかし1.7%という成長率は、「経済再生ケース」という架空の数字だ。そして、かなり高めの数字である。

■OECD予測のGDPは基本計画の86% 発電量も少なくて済む
 実際、OECDの改定長期予測(21年10月)によれば、2030年における日本の実質GDPは20年の10.3%増になるとされている。

 
実績成長率をみると、もっと低い。年平均成長率は、13~21年の間では0.44%、15~21年の間では0.24%、2000~21年の間ではでは0.65%だ。

 仮に0.24%をとれば、30年のGDPは22年の1.7%増にしかならない。

 したがって、
30年におけるGDPは第6次基本計画の想定値の85.9%に留まる

 
こうなれば、状況はかなり変わってくる
 
総エネルギー需要は、計画が想定するより減少し、LNGの需要も上で見たよりは減るだろう。

■他の電源の構成維持すれば 原発稼働台数は10基に減らせる
 
経済成長率の想定を変えると、原子力発電に対してどのような影響があるか?

 
第6次エネルギー基本計画での必要な原発の稼働数は30基とされている

 GDPが計画ほど成長せず電力需要が減っても、上記のように85.9%程度になるだけだから、単純計算したところ、必要稼働数は26基程度に減少するだけで依然として状況は厳しいように思われる。

 
しかし、実はそうではない。その理由は、つぎのとおりだ。

 
第6次基本計画では、電源構成における原子力のウエイトを21%(正確には20~22%)にするとしている。つまり原子力以外の電源が79%を占める。

 原子力以外の発電絶対量を維持したままで、全体の電力需要を減らせるとすれば、原子力が受け持つべき発電量を減らすことができるはずだ。

 そうすれば、
あまり無理しなくてもよい範囲にまで原発のウエイトを縮小することが可能かもしれない。

 具体的に計算して見ると、次の通りだ。

 今、22年のGDPの規模を1と指数化しよう。すでに見たように、基本計画では、30年のGDPは1.184だ。発電総量は1.184a。aはGDPから発電量に換算する係数だ。

 基本計画では、総発電量のうち79%を原子力以外が担当する。これは、発電量でいえば、0.79x1.184a=0.93aだ。

 ところで、仮に30年のGDPが、1.184ではなく、実績の成長率から見て現実的と思われる1.017に留まるとしよう。

 その場合には、発電量は1.017aだ。原子力以外の発電絶対量を変えなければ、その比率は0.93a/1.017a=0.914になる。

 つまり、原子力以外の比率は79%から91.4%に、12.4%ポイント上昇する。

 そうすれば、原子力のウエイトを21%から8.6(=21-12.4)%に引き下げることができる。

 すると、30年の原子力の所要発電量は次のようになる。

 計画では、総発電量1.184aの21%だから0.25a。いまの計算では、総発電量1.017aの8.6%だから0.087a。これは、計画の35.1(0.0877a÷0.25a)%だ。

 
稼働台数でいえば、30基とされているものを、その35.1%である10基程度にまで引き下げることができる

 これは
基本計画とはかなり異なる姿だ。

■非現実的な前提では対応誤る 正確な将来像をつかむことが重要
 なお、この前提では原子力以外の発電絶対量を維持するとしたが、この中には火力のような化石燃料を使うものも含まれている。カーボンニュートラルの観点からその絶対量は減らすべきだとの意見があるかもしれない。

 その場合には再生可能エネルギーだけを絶対発電量維持としてもよいが、この場合でも原発所要台数を減らすことができる。

 このように、
経済成長率のいかんによって将来のエネルギー問題の性格は大きく変わるのだ。

 誤解のないように付記するが、私は経済成長率が低いほうがよいと言っているわけではない。

 経済活動のさまざまな側面で、高い経済成長率が問題を解決する。だから成長率の引き上げに努力すべきだ。

 しかし、現実的ではない高い成長率を想定することは、将来の姿を歪んで捉えることを意味する。その結果、問題解決の方向付けを誤る危険がある。

 原子力発電にどの程度、依存するべきかという問題は、その一つの例だ。

 
重要なのは将来の姿をできるだけ正確に捉えることだ

 非友好国の指定をされた日本。
 西側で国境を接し、侵略を受け続けるウクライナ。東側で海を隔てているとは言え国境をし、太平洋戦争末期に、中立条約を無視され、満州や、樺太や千島列島に侵入され、北方領土は奪われたままの日本。
 北方四島の返還交渉は、今や零島返還で落着。更に、中露の海軍や空軍が剣豪で日本列島近辺を威嚇巡回。

 なのに何故か経済団体の首脳や、岸田政権は、ロシアへの投資支援や、資源の購入?それも、世界の多くの国々が制裁を課しているのに、その流れに逆行してまでも。

 内弁慶で、国益を損なう外交実績を重ねていた岸田氏。日本ではかつてなかった、日本の地位を高めた安倍氏の傘の下でのパシリを、自分の外交実績と勘違いをしている岸田氏。

 聴く耳だけで、「けんとうし」で、何もしないので批判される機会も少ないため、支持率が、ご祝儀の不思議な高止まりだった岸田氏。
 ここへきて、実態が露見され始め支持率低下が始まってきました。でも、当面は解散のない期間にはまっている運に恵まれている岸田氏。
 この迄は、日本が沈没しかねません。どうすれば、退陣・交代させられるのでしょう。



 # 冒頭の画像は、サハリンの権益に固執する岸田氏
  ロシア産石油、段階的禁輸 G7結束重視、期限示さず―岸田首相「サハリン権益は維持」:時事ドットコム




  この花の名前は、カリガネソウ


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