遊爺雑記帳

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半導体競争、日本企業への恩恵とは

2024-06-14 01:23:56 | 米中新冷戦時代
 TOPPANホールディングスの株価は昨年初めから倍増している。
 AI(人工知能)ブームを受けて需要が高まっている半導体パッケージ基板の一種で同社が主導的地位にあるからだと、WSJのピーター・ランダース and ヤン・ジー。(以下 WSJと総称)
 
半導体競争、日本企業への恩恵とは - WSJ By ピーター・ランダース and ヤン・ジー 
2024年6月12日

 【東京】TOPPANホールディングスは、雑誌や新聞の印刷で知られる創業124年の日本企業だ。その株価は昨年初めから倍増している。 

 定期購読が急増したからではない。
AI(人工知能)ブームを受けて需要が高まっている半導体パッケージ基板の一種で同社が主導的地位にあるからだ

 
日本は、 化学製品・パッケージ材料・製造装置といった、半導体サプライチェーン(供給網)の中でもあまり語られることのない地味な分野で強みを持つ市場調査会社オムディアによると、世界の重要な半導体材料6種類に日本企業が占める割合は半分近い

 TOPPANの半導体担当の執行役員である古屋明彦氏は自社製品の一部を指し示しながら、「これらがないと、米国が一番心配している国防のところも機能しない」と述べた。

 
世界各国が半導体の自国生産拡大で競う中で、日本は今、その優位性が脅かされていると感じている

 
それを維持しようとする取り組みの中心にあるのが、TOPPANのような企業だ。日本政府は安全保障の観点から、これらの分野で優位性を保つことが重要だと考え、数々の国内サプライヤーに数千億円を投じている。

 日本が半導体サプライチェーンにおいて一定の影響力を確保できれば、最重要同盟国である米国との軍事的結びつきは強固になる。単に米国のハードウエアに依存するのではなく、自国の技術を米国に提供できるからだ。またそれによって、半導体分野での覇権を狙う中国に米国が対抗する際、日本は一定の地位を確立できると、政府関係者は言う。

 
政府系ファンド、産業革新投資機構(JIC)傘下のJICキャピタル(JICC)は今月、半導体素材大手JSRの買収(1兆円規模)を完了するJSRは元々、合成ゴムの製造会社だったが、現在は、回路パターンをチップに転写する際に使われる樹脂「フォトレジスト」の製造で評価されている

 JICCは、積極的な投資・合併によるさらなる行動を促した。「より大胆に業界再編を志向することで(中略)国際競争力を高めていく必要がある」

 JSRほどではないが、政府の補助金制度によりTOPPANなどの半導体関連企業にも資金が流れている。政府関係者は、日本が半導体産業全体において米国・台湾・韓国にリードを奪われた1990年代の再来は避けたいと話す。

 
米国は中国への依存を断ち切ろうとする一方で、半導体やその製造材料は民主的な同盟国に頼る意向をなお示している

 日本は2019年、その半導体材料での優位性がいかに地政学的な価値を持つかを証明した。当時、歴史問題でもめていた韓国に対してそれを利用したのだ。日本政府はフォトレジストなどの材料の対韓輸出管理を厳格化し、サムスン電子などの韓国半導体メーカーによるアクセスを制限した。

 それから約3年後、韓国では新大統領が就任し、歴史問題に関してより融和的な路線を打ち出した。日本政府はこの措置を解除した。

専門技術の集積化
 
半導体の専門技術は、種類ごとに特定の国や地域に集中する傾向がある。韓国は先進的なメモリー半導体で優位を占め、台湾の工場は世界最高のロジック半導体の大半を製造する。オランダの半導体製造装置大手ASMLホールディングスは最先端リソグラフィー装置市場を独占している。

 
日本は、半導体製造に使われる多くの特殊材料を生産している。そのメーカーは、肥料、グルタミン酸ナトリウム、印刷、写真フィルムなど、コンピューター時代以前のビジネスにルーツを持つ企業であることが多い。

 
TOPPANと大日本印刷の2社は、回路を転写するための原版の一種であるフォトマスクで世界シェアの大部分を占める(半導体メーカーによる内製品除く)。

 
富士フイルムは、20世紀に米イーストマン・コダックの黄色の箱のフィルムと競合した緑色の箱のフィルムでよく知られているが、世界の半導体製造用スラリー(半導体の表面を研磨・平たん化するために使用される化学混合物)の多くを製造している日本企業の一つだ半導体製造用フォトレジストの大半は、JSRや富士フイルムなどの日本企業が供給している

 
オールドエコノミー企業がこうしたニッチな製品を見いだせたのは、半導体製造とそれ以前の時代の技術との間に深いつながりがあるからだシリコンウエハーへの回路パターンの転写は、書籍や美術品の印刷技術の多くを応用したものである。これは19世紀に西洋人を魅了した木版画にさかのぼる、日本の職人の強みだ

 
富士フイルムの取締役兼執行役員エレクトロニクスマテリアルズ事業部長、岩﨑哲也氏は、フォトレジストの原理(感光材料に光のパターンを照射して画像を作成する)は、結果が写真であろうと集積回路であろうと同じだと述べた。「そういう意味では、当社が非常に得意とする領域であった」

 岩崎氏によると、
富士フイルムは1980年代、ライバルのコダックに追随する形でフォトレジスト事業に参入した。コダックが破産法の適用を申請してから十数年後の今、富士フイルムの株価は最高値圏にある。半導体材料の売上高を倍増させ、2030年度に5000億円を達成するという計画などが好感されているためだ。

グローバルであり続ける
 
米国は新たな半導体工場に数百億ドルの補助金を投入しているため、このような企業との協業に期待を寄せている米半導体大手インテルサムスン電子、半導体受託生産で世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)がオハイオ、テキサス、アリゾナ各州に建設した半導体工場なども、そうした補助金の対象だ。

 
米商務省の担当者は「半導体のサプライチェーンは今後もグローバルであり続けるため、国際的な協業体制はわれわれ全体の成功に不可欠だ」と述べた

 それでも、
米企業はサプライチェーンの目詰まりを警戒し、日本のサプライヤーに生産の多様化を迫っているTOPPANは3月、現在は新潟工場でのみ生産している特殊な半導体パッケージ基板の新工場をシンガポールに建設すると発表した。

 「率直に言うと、お客さまの要求だった」と古屋氏は語る。
米半導体製品大手ブロードコムなどからそうした声が上がったという。ブロードコムはコメント要請に応じなかった。

 
古屋氏によると、顧客は「地震とか災害で供給が止まるようなことになると非常に困る」と考えていた

 日本は、 化学製品・パッケージ材料・製造装置といった、半導体サプライチェーン(供給網)の中でもあまり語られることのない地味な分野で強みを持つ。市場調査会社オムディアによると、世界の重要な半導体材料6種類に日本企業が占める割合は半分近いと、WSJ。
 世界各国が半導体の自国生産拡大で競う中で、日本は今、その優位性が脅かされていると感じている。

 それを維持しようとする取り組みの中心にあるのが、TOPPANのような企業だと。

 政府系ファンド、産業革新投資機構(JIC)傘下のJICキャピタル(JICC)は今月、半導体素材大手JSRの買収(1兆円規模)を完了する。JSRは元々、合成ゴムの製造会社だったが、現在は、回路パターンをチップに転写する際に使われる樹脂「フォトレジスト」の製造で評価されている。

 政府の補助金制度によりTOPPANなどの半導体関連企業にも資金が流れている。政府関係者は、日本が半導体産業全体において米国・台湾・韓国にリードを奪われた1990年代の再来は避けたいと話すと、WSJ。

 米国は中国への依存を断ち切ろうとする一方で、半導体やその製造材料は民主的な同盟国に頼る意向をなお示している。

 半導体の専門技術は、種類ごとに特定の国や地域に集中する傾向がある。
 韓国は先進的なメモリー半導体で優位を占め、台湾の工場は世界最高のロジック半導体の大半を製造する。オランダの半導体製造装置大手ASMLホールディングスは最先端リソグラフィー装置市場を独占している。
 日本は、半導体製造に使われる多くの特殊材料を生産していると、WSJ。

 TOPPANと大日本印刷の2社は、回路を転写するための原版の一種であるフォトマスクで世界シェアの大部分を占めるのだそうです。

 世界の半導体製造用スラリー(半導体の表面を研磨・平たん化するために使用される化学混合物)の多くを製造している日本企業の一つだ。半導体製造用フォトレジストの大半は、JSRや富士フイルムなどの日本企業が供給していると、WSJ。

 オールドエコノミー企業がこうしたニッチな製品を見いだせたのは、半導体製造とそれ以前の時代の技術との間に深いつながりがあるからだ。シリコンウエハーへの回路パターンの転写は、19世紀に西洋人を魅了した木版画にさかのぼる、日本の職人の強みなのだそうです。

 富士フイルムの取締役兼執行役員エレクトロニクスマテリアルズ事業部長、岩﨑哲也氏は、フォトレジストの原理は、結果が写真であろうと集積回路であろうと同じだと述べた。「そういう意味では、当社が非常に得意とする領域であった」

 岩崎氏によると、富士フイルムは1980年代、ライバルのコダックに追随する形でフォトレジスト事業に参入した。コダックが破産法の適用を申請してから十数年後の今、富士フイルムの株価は最高値圏にある。半導体材料の売上高を倍増させ、2030年度に5000億円を達成するという計画などが好感されているためだ。

 米国は新たな半導体工場に数百億ドルの補助金を投入しているため、このような企業との協業に期待を寄せている。米半導体大手インテル、サムスン電子、半導体受託生産で世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)がオハイオ、テキサス、アリゾナ各州に建設した半導体工場なども、そうした補助金の対象だ。

 米商務省の担当者は「半導体のサプライチェーンは今後もグローバルであり続けるため、国際的な協業体制はわれわれ全体の成功に不可欠だ」と述べたのだそうです。

 それでも、米企業はサプライチェーンの目詰まりを警戒し、日本のサプライヤーに生産の多様化を迫っている。TOPPANは3月、現在は新潟工場でのみ生産している特殊な半導体パッケージ基板の新工場をシンガポールに建設すると発表。

 TOPPANの半導体担当の執行役員である古屋明彦氏は、「率直に言うと、お客さまの要求だった」と語る。
 米半導体製品大手ブロードコムなどからそうした声が上がったという。ブロードコムはコメント要請に応じなかったと、WSJ。
 古屋氏によると、顧客は「地震とか災害で供給が止まるようなことになると非常に困る」と考えていたのだそうです。

 米商務省が主導する、半導体のサプライチェーンの国際的な協業体制。
 日本の関連企業もその国際的協業体制に参画し、脱中国の民主的国家での協業体制の発展への寄与に期待ですね。


 # 冒頭の画像は、TOPPANの半導体事業を統括する古屋明彦氏



  なつみかん


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