遊爺雑記帳

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米中デカップリング、本当に起きているのか

2024-02-09 01:23:56 | 米中新冷戦時代
 米国の対中貿易赤字は10年以上ぶりの水準に縮小した。一見するとこれは、両国経済のデカップリング(切り離し)が進んでいるかに見える。
 だが米国は、データが示唆するほどには中国から輸入する慣行を変えていない。中国や西側の製造業者は、関税を回避する方法をいくつも見つけた。関税が引き上げられたら、おそらくさらに知恵を絞るだろうと、WSJ・グレッグ・イップ。
 
米中デカップリング、本当に起きているのか - WSJ
関税導入後も大きく変わっていない米中貿易、税率60%だとどうなるか
 グレッグ・イップ 2024年2月8日

 米国の対中貿易赤字は10年以上ぶりの水準に縮小した。一見するとこれは、ドナルド・トランプ前米大統領が2018年に中国からの輸入品に課した高関税の影響で、両国経済のデカップリング(切り離し)が進んでいるかに見える

 
トランプ氏は、大統領選で再選を果たしたら中国からの全輸入品に60%かそれ以上の関税を課す考えをちらつかせている

 
だが米国は、データが示唆するほどには中国から輸入する慣行を変えていない中国や西側の製造業者は、関税を回避する方法をいくつも見つけた。関税が引き上げられたら、おそらくさらに知恵を絞るだろう。

 
米商務省の7日の発表によると、23年の財の貿易赤字(速報値)は1兆1000億ドル(約163兆円)と、前年の1兆2000億ドルから縮小した。国内総生産(GDP)に占める割合は3.9%に低下し、ここ10年余りで最低となった。

 この
縮小の大半は中国に起因する。昨年の対中貿易赤字は2810億ドルと、前年を1000億ドル余り下回り、2010年以来の低水準となった。

 赤字縮小の要因の一つとして、22年に米国の輸入業者が発注しすぎて在庫が膨らみ、23年に消費は好調ながら輸入を減らした可能性が考えられる。

 
本質的には、貿易赤字が縮小したから米国が消費した中国製品も減った、とはならない。貿易戦争が激化するにつれ、米国の関税を回避するために多くの製造業者が生産拠点を他国に移した。実際、米国の昨年の対メキシコ貿易赤字は1520億ドルと、17年の2倍超に跳ね上がった。メキシコからの輸入が中国からの輸入を上回ったのは、少なくとも15年ぶりだ。対ベトナム貿易赤字は1050億ドルと、17年のほぼ3倍に達した。

 
ベトナムやメキシコからの輸入増加分の多くは、元をたどれば中国に行き着く。完全なデータがないため正確な数字は分からないが、マッキンゼー・グローバル・インスティテュートの最近のリポートによると、中国は17年から20年にかけて米国の製品輸入に占める割合が低下する一方、米国が消費したモノに含まれる、海外が生み出した付加価値に占める割合は上昇した。一例として、米国がベトナムから輸入したノートパソコンと、ベトナムが中国から輸入したノートパソコン部品は、17年から22年に同じ金額だけ増えたという

 
さらに中国企業は、10年前に導入された、800ドル未満の輸入品が免税となる米貿易法の規定(「デミニミス」ルール)を利用している。

 
イエール大学経済学者アミット・カンデルワル氏らがまとめた連邦政府のデータによると、このデミニミスルールに基づいて米国に輸入された貨物の数は23年に10億個と、17年の3倍に増えた

 
だからといって関税の影響が全くないわけではないカンデルワル氏らによると関税対象品目の輸入は30%減少し、代わりに他の中国製品や外国製品、国産品が買われた。これによって米経済が負担するコストは推計でGDPの0.04%で、消費者へのマイナス効果が生産者と国庫へのプラス効果を若干打ち消すという。

 
マサチューセッツ工科大学(MIT)のデービッド・オーター氏らによる別の研究では、関税の恩恵が及ぶはずの企業が所在する郡では、雇用がわずかに増加した。だが平均すると、中国の報復措置に伴う損失がそれを上回った。それにもかかわらず、これらの郡はトランプ氏支持が優勢だったという。

 
米中デカップリングの最大の障害は、中国が世界の製造業で支配的地位を占めているため、代替品を見つけるのが難しいことだ中国経済は消費する以上のものを製造するようにできており、余剰分は輸出される。不動産投資が崩壊して成長を押し下げる中、多くの企業が赤字に陥っているにもかかわらず、中国共産党はこれまで以上に製造業に頼っている。

 「
24年は生産能力過剰の年になり、中国の輸出業者に対する圧力は非常に高くなるだろう」。在中国欧州連合(EU)商工会議所のイエルク・ブトケ名誉会頭はこう話す。「風力タービンやソーラーパネルでは誰もが損失を被っている。自動車は1社がもうかって100社は赤字だ」

 では、25%の関税で米国の対中依存度がほとんど低下しないなら、
60%にすればもっと下がるのだろうかおそらくそうなるだろう。カンデルワル氏が税率35%で試算したところ、輸入とそれに伴うコストへの影響ははるかに大きく、GDPの0.8%だった。

 
米シンクタンク、外交問題評議会(CFR)のブラッド・セッツァー氏は、関税が60%になっても中国はそれを回避したり影響を中和したりする方法を積極的に探すと読んでいる。「製品を分解してネジを数本抜き、代わりのネジ業者を見つけ、第三者に出荷して100%中国製ではないようにし、その第三者の輸出品に見せようとする意欲はすさまじい」と同氏。中国企業がデミニミスルールをさらに利用すると考えている。

 
とはいえ、米中がこのまま離れられない運命にあるわけではない。サプライチェーン(供給網)は徐々に変化していくものだ。工程や部品が一つ国外に移転し、その後サプライヤーのエコシステムが出来上がることはよくある。中国の部品が第三国経由で米国に入って来るケースは減っていきそうだ。

 
マッキンゼーの報告書の共同執筆者オリビア・ホワイト氏は、「途上国へのグリーンフィールド投資は横ばいだが、中国とロシア以外への直接投資の割合は大幅に増加している」と指摘する。

 
アップルはインドを携帯電話の生産拠点にするため、より多くのサプライヤーを同国に移している。韓国のサムスンはベトナムに拠点を設けた

 
問題は、中国企業もこのゲームに参加していることだ。米国の関税を回避するため、中国の電気自動車(EV)やバッテリー関連企業は、米国と貿易協定を結んでいるメキシコや韓国、モロッコなどに工場を建設したり、建設を検討したりしている。

 
中国は対米輸出の減少分を補うため、自国通貨を引き下げて関税を引き上げていない国への輸出を増やし、これらの経済圏における中国企業の存在感が増すことになる。セッツァー氏はこう予測する。

 もちろん米国は、そうした輸入を締め出すために他の貿易相手国に関税を課す可能性がある。
トランプ氏は、中国からの輸入品だけでなく全輸入品に10%の関税を課す構えを見せる

 
ただそんなことをすれば、中国からだけでなく全世界から米国をデカップリングすることになる

***

――筆者のグレッグ・イップはWSJ経済担当チーフコメンテーター

 米商務省の7日の発表によると、23年の財の貿易赤字(速報値)は1兆1000億ドル(約163兆円)と、前年の1兆2000億ドルから縮小。
 この縮小の大半は中国に起因する。昨年の対中貿易赤字は2810億ドルと、前年を1000億ドル余り下回り、2010年以来の低水準となったと、WSJ・グレッグ・イップ。
 本質的には、貿易赤字が縮小したから米国が消費した中国製品も減った、とはならない。貿易戦争が激化するにつれ、米国の関税を回避するために多くの製造業者が生産拠点を他国に移した。
 ベトナムやメキシコからの輸入増加分の多くは、元をたどれば中国に行き着くと。

 さらに中国企業は、10年前に導入された、800ドル未満の輸入品が免税となる米貿易法の規定(「デミニミス」ルール)を利用しているのだそうです。

 イエール大学経済学者アミット・カンデルワル氏らがまとめた連邦政府のデータによると、このデミニミスルールに基づいて米国に輸入された貨物の数は23年に10億個と、17年の3倍に増えた。
 だからといって関税の影響が全くないわけではない。カンデルワル氏らによると、関税対象品目の輸入は30%減少し、代わりに他の中国製品や外国製品、国産品が買われたのだと。

 米中デカップリングの最大の障害は、中国が世界の製造業で支配的地位を占めているため、代替品を見つけるのが難しいことだ。中国経済は消費する以上のものを製造するようにできており、余剰分は輸出される。
 不動産投資が崩壊して成長を押し下げる中、中国共産党はこれまで以上に製造業に頼っているのだと、WSJ・グレッグ・イップ。
 
 米シンクタンク、外交問題評議会(CFR)のブラッド・セッツァー氏は、関税が60%になっても中国はそれを回避したり影響を中和したりする方法を積極的に探すと読んでいる。「製品を分解してネジを数本抜き、代わりのネジ業者を見つけ、第三者に出荷して100%中国製ではないようにし、その第三者の輸出品に見せようとする意欲はすさまじい」と同氏。中国企業がデミニミスルールをさらに利用すると考えていると。

 とはいえ、米中がこのまま離れられない運命にあるわけではない。サプライチェーン(供給網)は徐々に変化していくものだ。工程や部品が一つ国外に移転し、その後サプライヤーのエコシステムが出来上がることはよくある。中国の部品が第三国経由で米国に入って来るケースは減っていきそうだとも。

 マッキンゼーの報告書の共同執筆者オリビア・ホワイト氏は、「途上国へのグリーンフィールド投資は横ばいだが、中国とロシア以外への直接投資の割合は大幅に増加している」と指摘。
 アップルはインドを携帯電話の生産拠点にするため、より多くのサプライヤーを同国に移している。韓国のサムスンはベトナムに拠点を設けた。

 問題は、中国企業もこのゲームに参加していることだと、WSJ・グレッグ・イップ。
 米国の関税を回避するため、中国の電気自動車(EV)やバッテリー関連企業は、米国と貿易協定を結んでいるメキシコや韓国、モロッコなどに工場を建設したり、建設を検討したりしているのだそうです。

 中国は対米輸出の減少分を補うため、自国通貨を引き下げて関税を引き上げていない国への輸出を増やし、これらの経済圏における中国企業の存在感が増すことになると、CFRのセッツァー氏。

 米国は、そうした輸入を締め出すために他の貿易相手国に関税を課す可能性がある。トランプ氏は、中国からの輸入品だけでなく全輸入品に10%の関税を課す構えを見せる。
 ただそんなことをすれば、中国からだけでなく全世界から米国をデカップリングすることになると、WSJ・グレッグ・イップ。

 米中冷戦時代は、これからもつづきそうですね。
 日本の岸田首相、上川外務大臣での変化への対応策や如何!



 # 冒頭の画像は、大統領選挙候補戦で好調なスタートをきったトランプ氏



  この花の名前は、チェイランサス



竹島に関する動画 / 政府広報 - YouTube

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