遊爺雑記帳

ブログを始めてはや○年。三日坊主にしては長続きしています。平和で美しい日本が滅びることがないことを願ってやみません。

北のミサイル発射で解ったこと

2012-04-16 23:43:40 | 北朝鮮産のアサリ
 北のミサイル失敗は、とてもそれを笑えない日本のお粗末なMDの現状(政府と霞が関の防衛官僚)を世界に露呈することになりました。
 遊爺も書かせていただいていましたが、メディアでもこの点を多く取り上げていて、失敗判明当初の北の失敗だけを取り上げる論調が、日本の現状に眼を向ける方向に修正されたのは、一安心させられました。
 以下は、その後の報道などの情報から拾った記憶に留めておきたい話です。
 
 ひとつは、これまで東向きに打ち上げていたものを、南向きに変えた理由。
 東北の震災被害を考慮した。な~んてオセンチな話では無い様で、米国へ届くミサイルの推力実験には、東向きでの地球の自転の助けを借りたものではなく、一段階進化した強力で何度の高い実験が必要というのが、ほとんどの解説で、なるほどと思っていました。
 ところが、記事を見てはたと思いだしたのですが、米国本土へ撃ちこむには、最短距離は北極圏の上空を通過させる必要があると言うことです。
 冒頭の画像(正距方位図法)の赤い矢印はロスアンゼルス向けの線ですが、ニューヨークやワシントンならもっと北寄りのコースとなりますね。
 この北寄りのコースで実験すると、ロシアの領土の中に落下するコースとなります。落下が海上(落下物を回収されない)となるには、南向きの今回のコースがベストだったのでした。
 

【正論】防衛大学校教授・倉田秀也 北は米視野に「極軌道」を狙った (4/16 産経)

<前略>
  ≪東方から南方発射に変えた意味≫
 これまで日本海側の舞水端里(ムスダンリ)で行われたように、北朝鮮が東方に向けてミサイルを発射する場合、その発射方向は地球の自転と同じ方向で、自転の速度をミサイルの推進力に利用できた。北朝鮮が過去、衛星軌道に飛翔(ひしょう)体を投入できたという記録はないが、1993年の「ノドン」発射実験以来、東方に向けたミサイル発射は大気圏外に飛翔体を運搬することには概(おおむ)ね成功している。その能力は実証済みということであろう。すでに
300基を超す「ノドン」が実戦配備されているという。その射程は約1300キロ以上。日本の主要都市が射程内に収まって久しい

 だが、
ミサイルの射程を「ノドン」以上に東方に延ばすことは、北朝鮮にとりあまり意味はない。かつて本欄でも指摘した通り、北朝鮮がいう「核抑止力」なるものが米国に向けてである以上、ニューヨーク、ワシントンに「キノコ雲」を立たせる能力
を持たない限り、それは完成することはない。
 北朝鮮と米本土東海岸の最短距離は、メルカトル図法の地図上では東方への直線なのであろうが、地球は丸い。
北朝鮮から米本土への最短の飛翔ルートは北極圏を掠(かす)める。今回、北朝鮮は初めて地球の自転の速度を利用できない南方に向けて発射を試みた。そして、何らかの飛翔体を投入しようとしたのは、地球の自転方向と直角に交わる極軌道
であった。
 確かに、極軌道に乗った人工衛星は、地球が自転している間に、北極と南極を周回するため、地球全体を観測することができる。北朝鮮がいうように、人工衛星「光明星3号」の目的が地球観測であるなら、極軌道への投入は合理的ではある。しかし、北朝鮮の「先軍」外交が米本土に向けての「核抑止力」の向上を目的とするならば、極軌道に沿ったミサイルの発射はそれ以上に合理的である。

 ≪北の「核抑止力」と同盟管理≫
 米本土を直接脅かしうる「核抑止力」の構築--それは、日米韓3国間の連携と協調を口にするわれわれの意図にかかわらず、同盟管理を難しくするであろう。すなわち、朝鮮半島での武力衝突が何らかの形で日本に波及し、北朝鮮が「ノドン」で日本を核攻撃したとして、米国はニューヨーク、ワシントンに「キノコ雲」が立つことを覚悟してまで、日本防衛の公約を果たすだろうかという懸念である。この日本の懸念が現実となることこそ、北朝鮮のいう「核抑止力」にほかならない。それは、米国への挑戦であると同時に、日米同盟に対する挑戦でもある。
 今回の失敗に懲りず、金正恩氏は引き続き、米本土に届きうるミサイルを開発することで、「核抑止力」の向上を図るに違いない。今回の発射を嗤(わら)うのは容易ではあるが、北朝鮮が「先軍」を掲げる限り、米本土を直接脅かしうる「核抑止力」の構築という意図まで挫(くじ)かれることはないのである。


 二つ目は、日本の脅威は「ノドン」だということです。上記の記事でも触れられていますが、その数が、200とも300とも言われるノドンが日本全土をカバーしているのです。
 今回の実験で明らかになった、日本のMDの現状では、発射されても約2分以上はレーダーで確認できないことが世界中に知れ渡ったということです。しかも、そんなこと(水平線の限界)はあらかじめ解っていなければならないことですが、発射と同時にJアラートで通知と計画をPRしたり、発射後23分経過しても確認中だとの混乱は、あらかじめ水平線の限界を認識していたとは考えられませんね。
 髭の隊長は、イージス艦の配備位置を、1隻は黄海にすべきと提言したと仰っていますが無視された様です。
 そもそも南西諸島近海でレーダーのカバーできない領域があり、与那国島への部隊常駐が計画されるなど、日本のレーダー網の盲点は自覚されているはずですが。
 中朝の脅威監視の決手 「グローバルホーク」 - 遊爺雑記帳

 期日と時間帯を予告され、対応すべく総力を挙げた配備をしたのにこの失態で、実戦で200とも300とも言われるノドンが日本全土に向け発射されたら、MDの現状では無防備に等しいことが実証されたのです。
 自衛隊の前線では、米国の情報で発射確認して防御体制に入ってはいますが、霞が関がこれでは撃墜命令が出ない可能性が強く、座して着弾を待つことになります。
 そもそも、ノドンの数に対応できるMDの設備能力も足りていません。

 日本独自での探知衛星。MD設備の増大・拡充。敵基地攻撃の抑止力法整備。等々、MDシステムの見直しが迫られました。

 今回の実験は、成功すれば約1万キロの米本土に到達する距離を目指していたとの韓国の発表がされています。
 
【北ミサイル発射】成功していたら…米西部に到達! 北ミサイルの射程1万キロか  - MSN産経ニュース

 失敗に懲りずチャレンジを続けるのか、日本と在日米軍基地をノドンで攻撃することを前面に出して圧力をかける方向に留めるのか、今後の動向が注目されます。




 この梅の花の名前は、冬至

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