遊爺雑記帳

ブログを始めてはや○年。三日坊主にしては長続きしています。平和で美しい日本が滅びることがないことを願ってやみません。

中共人民解放軍の制度面での弱点 

2015-03-13 01:34:08 | 中国 全般
 米議会の委託によってランド研究所から提出されたレポート「未完の中国軍事変革:人民解放軍の弱点に迫る」では、人民解放軍の弱点を、制度面と戦闘能力の面から分析されていて注目されているのだそうです。
 戦闘能力は、お金と時間をかければ弱点は改善できるが、制度面の弱点は、人民解放軍の「最大の弱点」だと斬るのは、
霞山会理事、研究主幹の阿部 純一氏
 党の軍隊が国の軍隊の役割を背負っている人民解放軍。この独立性をもつ軍隊を、国の指導者が制御できるか否かは、アジアや世界平和に直結する問題といっても過言ではない話ですが、習近平は弱点を克服できるのでしょうか。
 

実は危うい中国共産党と人民解放軍の関係 指導者に「権威」がなければ軍は動かず:JBpress(日本ビジネスプレス) 2015.03.03(火) 阿部 純一

 
米国議会の超党派による「米中経済安全保障検証委員会(US-China Economic and Security Commission)」の委託によってランド研究所から提出されたレポート「未完の中国軍事変革:人民解放軍の弱点に迫る(China's Incomplete Military Transformation: Assessing the Weakness of PLA)」が注目を集めている。日本語で読める紹介記事もあるので、レポートの詳細についてはここでは触れない。

 
人民解放軍の弱点を、制度面と戦闘能力の面から分析したこのレポートは、米国の中国専門家の分析に加え、中国国内で発表された論考にも依拠したものであり、西側の観点と中国国内の意見を総合した研究
として興味深いものとなっている。

党の軍隊でありながら極めて独立性が高い
 ここで筆者が注目したいのは、人民解放軍の制度面での弱点である。戦闘能力の面での問題点は、中国の国防予算の増額などこれまでの趨勢が今後も維持されていけば、早晩解決されるであろう。しかし、
制度面における問題点は、そう簡単に解決できない
。カネと時間をかければ解決できるというものではないからである。
 ここでは、このランド研究所のレポートでも触れられている人民解放軍の制度面での弱点について、筆者なりに敷衍(ふえん)して分析を試みてみたい。
 特に着眼したいのは「
人民解放軍は中国共産党の軍隊であり、国家の軍隊(国軍=National Army)ではない
」ということである。もちろん、党の軍隊であろうが国家の軍隊であろうが、そのことが人民解放軍の決定的な弱点に直接結びつくわけではない。党の軍隊である人民解放軍を支えているのは政府の支出する国防費であり、その任務も「国家の主権と安全を守り、領土を保全し、国の平和的発展を保障する」(2013年「中国の武装力の多様な運用」)であるとすれば、一般的な国防軍と変わるところはない。
 だが、ここで注目したいのは、
人民解放軍が「党の軍隊」とはいえ、極めて独立性の高い組織となっていることであり、実はそこにこそ深刻な問題が潜んでいると思われる。独立性が高いということは、すなわち「党の軍隊」は表向きの姿であり、実際は党の統制からかなり自由な組織となっているということである。
<中略>

習近平主席が軍の腐敗撲滅に精力的な理由
 「党への忠誠」は「習近平主席への忠誠」とイコールの関係にある。
人民解放軍の党に対する「忠誠」は、その意味で制度的に担保されていない。もっぱら中央軍事委主席個人の権威と軍との「力関係」に依存
すると言っても過言ではないだろう。
 問題なのは、その
軍の党に対する忠誠が「力関係」という恣意的なものであることだ。胡錦濤政権時代、中央軍事委副主席であった徐才厚が軍の人事を壟断していた事実が露呈したのは昨年の話だが、カネで軍のポストや階級が取引されていた事実や、それによって徐才厚が巨万の蓄財をしていたという罪状は、換言すれば当時の中央軍事委主席である胡錦濤がいかに軽んじられていたかを示すものでもある。しかも、徐才厚は総政治部主任を務めた経歴から明らかなように、軍政のトップとして軍内に党の指導を徹底させる立場にあったわけだから、徐才厚事件のもたらした影響は極めて深刻ということになる。「党が軍を指揮する」原則は、その意味で現状の党軍関係における組織構造の中では極めて脆弱
であると言わざるをえない。

 
習近平主席が人民解放軍における腐敗撲滅に精力的であるのは、人民解放軍との「力関係」で優位に立つ必要があるから
と言ってよいだろう。軍の服従を取りつけるためには、習近平主席は自らの権威を極限にまで高める必要があるのだ。

 四半世紀以上前の話になるが、1989年11月に小平が中央軍事委主席のポストを江沢民総書記に譲る際、軍歴のない指導者にこのポストが務まるかどうかを深く懸念した。そこで小平は、同年9月4日付で政治局に送った中央軍事委主席・辞任願の中で「江沢民同志為首的領導核心」(江沢民同志を指導核心のトップとする)との表現を使用して後継者に指名した。江沢民が同年11月の党13期中央委員会第5回総会で中央軍事委主席に選出された時には、すでに「江沢民同志を核心とする党中央」という表現が定着していた。江沢民はこうして小平のバックアップを受け権威を高め、中央軍事委主席の座についたのである。
 しかし、
習近平主席には残念ながら小平のような軍に対して絶対的な権威を持つカリスマ指導者の庇護下にはない
し、そうしたカリスマ自体、もはや存在しない。前任の胡錦濤主席は、2002年に党総書記に選出されたが、彼をバックアップすべき立場の江沢民は2004年まで中央軍事委主席に居座り、その軍権掌握を妨げた。
 結局、胡錦濤主席は最後まで軍権掌握にてこずることとなり、それを習近平は2010年に中央軍事委副主席に就任してから間近に見てきた。胡錦濤主席の場合、最後まで指導者として「核心」と呼ばれることはなかった。権威を確立することができなかったのである。その
胡錦濤主席の轍は踏むまいと習近平主席が考えた
としても不思議ではない。
 習近平主席が
自らの権威を高める手段として「反腐敗」を選択したのは、いわば必然
であった。

 江沢民主席時代に、いわゆる「解放軍ビジネス」とされる軍系企業が跋扈し、人民解放軍は「軍の特権」を悪用した利潤追求に走り、1990年代末に当時の朱鎔基総理によって歯止めがかけられたものの、「金儲け」の旨味を知った軍幹部は手口を変えて蓄財に励む状態が続いた。
 
江沢民時代の1980年代末から、国防予算が毎年、対前年比で2桁の上昇が続いたのは、江沢民主席が軍に対する権威の足りない部分を補う意味があった。それは胡錦濤時代になっても継続した
が、中国経済そのものが高度成長を続けていたなかでのことであり、軍にとってはそれによって胡錦濤主席に対する忠誠を高めることにはつながらなかった。
 いわば
江沢民時代以降の人民解放軍は「カネまみれ」の状態が続いていたことになる。そうした状況を一変させることとなった習近平主席による「反腐敗」キャンペーンの人民解放軍への適用は、軍の綱紀粛正を図るとともに、軍の権威を低下させ、習近平主席の権威を高める効果
を生むことになる。
 もちろん、
綱紀粛正は反発も生む
。だから、習近平主席は人民解放軍上層部の大規模な人事異動を断行し、そのなかで信頼の置ける軍人を抜擢し、自身の安全を図るとともに軍権を固める工作をしてきたのである。

人民解放軍は“個人の威信”に左右される軍隊
 ここまでの観察が正鵠を射ているとするならば、
党が人民解放軍をコントロールするための最大の拠り所となる中央軍事委主席のポストは、結局はそこに座る指導者の軍に対する権威の如何に依存
することになる。
 習近平主席が政権の座について以来、あらゆる権限を自分に一元化しようとしてきた。結果として、国務院総理である李克強の影が薄くなる状況も生まれ、李克強総理の経済政策を象徴した「リコノミクス」なる表現がいつの間にか話題にもならなくなってしまった。
 
習近平主席への権力の集中について、「毛沢東以来だ」という風評もあったが、まさにそれこそ習近平主席の狙うところなのだろう。毛沢東を彷彿とさせる権力の集中による「権威」の確立こそ、人民解放軍をコントロールするために必須の要件
だということを習近平主席は確信していると思われるからである。
 党が軍を指揮できなければ、軍が堕落することは、江沢民や胡錦濤の時代に明らかになった。それは中央軍事委主席である党総書記の責任でもある。そうだとすれば、
習近平主席が人民解放軍に対する権威を確立できるかどうかが今後の人民解放軍のありようを決める
ことになる。

 「党の指揮」ではなく
個人の威信に左右される軍隊が人民解放軍であるとすれば、それこそが人民解放軍の「最大の弱点」ではないだろうか。


 小平の後に中国を担ってきた、江沢民と胡錦濤は軍歴がなく、人民解放軍を治めるために軍事費を増額し続け、そのことが今日の肥大化した人民解放軍を産み、日本を含めたアジアの海や空、中国と国境を接する国々の平和が犯される事態を招いています。
 江沢民・上海閥と、胡錦濤・共青団との政局闘争の中から、江沢民の傀儡の様相で産まれた習近平政権。政権基盤が弱い分、江沢民の傀儡政権となると思いきや、基盤固めに注力し、唯一の強味の太子党の人脈で軍に足篝を求め、「反腐敗」キャンペーンという切り札をみつけ、政敵の粛清と軍の掌握を進めています。

 富国強兵を唱え、中華の国の再来を標榜し、腐敗を撲滅する姿勢は、人民の請けも悪くなく、格差社会、人権弾圧、環境破壊といった社会の弊害を隠すことにも寄与していますね。
 しかし、恐怖政治ですべての権力を集中させる手法は、眼晦ませの一時しのぎにすぎず、長続きしないことは歴史が証明しています。
 
 江沢民や胡錦濤が、軍事予算の飴で軍を管理しようとした手法は、習近平政権でも引き継がれています。飴だけで制御できなかった、両者を観た習近平は、「反腐敗」の御旗をみつけ、軍の制御を試みようとしています。
 毛沢東や小平など、軍の中での実績で軍を率いたのとは異なります。GDP成長率目標の引き下げを余儀なくされるなかで、軍事費予算の削減は出来ていません。つまり、習近平も未だ軍を制御出来ていません。
 
 危うい恐怖政治(腐敗撲滅の虎退治が、江沢民派と胡錦濤派に偏っている)の手法が、弾けた時にはクーデターの爆弾もはらんでいます。

 政局の覇権争いの激化に、国内経済の失速、民族対立(他民族弾圧の代々の政権が自分で蒔いた火だね)を抱えた習近平。難局が乗り切れるか、眼が離せません。



 # 冒頭の画像は、60周年の国慶節での軍事パレード






  この花の名前は、鶏頭


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