
南北朝鮮の会談への評価は様々ですね。
金委員長から「核ミサイル完全廃棄と全拉致被害者帰還」という約束を取り付けることが平和実現のための唯一の道だった。しかし、文大統領はそれに失敗したとは、西岡力麗澤大学客員教授。
金正恩による「南北和解」ムード演出に乗せられた評価が蔓延していますが、「朝鮮半島の平和と繁栄、統一のための板門店宣言」の内容は、核とミサイル開発についてはなにも進展はなかったのです。
金正恩が、平和を強調するのは、米朝首脳会談が決裂した場合に軍事的緊張が高まることを予想した金委員長が、韓国政府と韓国国民に戦争反対を叫ばせて米軍の活動を抑えようとした策略かもしれないと。
宣言に書かれた「朝鮮半島の非核化」とは、核保有国である米国と北朝鮮が対等な立場で核軍縮を行うということなのだ。これは従来の北朝鮮の主張で、何の変化もないとも。
米朝首脳会談が失敗に終わったら何が起きるのか?
産経新聞ワシントン駐在客員特派員の古森氏が、米国のベテラン朝鮮問題専門家のラリー・ニクシュ氏にインタビューしています。
米国からの圧力が強まったために金正恩委員長がトランプ大統領との会談を求めてきたことは明白だが、金委員長が核兵器の放棄に踏み切るという見通しは、現段階ではまったく不確実のままです。だから米朝会談が失敗する事態を考え、それに備えるべきと、ニクシュ氏。
首脳会談が不調に終わった場合、北朝鮮は全力を挙げて火星15号を完成させ、実験発射し、日本上空を通過させて米国本土に近い太平洋の海域に撃ち込み、米本土に核弾頭をミサイルで撃ち込める能力を誇示することで、改めて米側から譲歩を引き出そうとするでしょうと、ニクシュ氏。
枯渇している資金は、イランにミサイルのノドン、核兵器技術、あるいは核弾頭そのものを売ったり、イスラム系テロ組織とされるハマスやヒズボラにスカッドを売るなどして獲得する。
トランプ政権が考えているのは、大規模な軍事衝突は避け、北朝鮮の核関連施設1~2カ所への限定的な軍事攻撃の「鼻血作戦」。
しかし、北朝鮮が全面反撃に出る可能性は高い。米軍の発進拠点や後方基地となる日本への攻撃も起きうる。
日本は、この最悪のシナリオへの備えはしなくてはならないのです。「想定外」では済まされません。
北朝鮮への抑止力。既に北が配備済みで飛来するノドン等の中距離ミサイルは迎撃システムだけではその数に対抗できないので、発射元の敵基地攻撃能力の拡充が必須です。
国民の避難施設、批難計画の充実も必要です。
平和ボケの政局争いをしている場合ではないのです。
短期、中長期の対応を、与野党で立法化し推進せねばならない、戦後最大の危機に面しています。
国民の安全を護るのが国家の第一義の勤め。それを国民から託されているのが国会議員。諸氏が、その基本に立ち戻り、政局ではなく立法に注力していただけることを願います。
# 冒頭の画像は、軍事境界線上の板門店で、南北首脳会談に臨む韓国の文在寅大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長

フユザンショウ
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金委員長から「核ミサイル完全廃棄と全拉致被害者帰還」という約束を取り付けることが平和実現のための唯一の道だった。しかし、文大統領はそれに失敗したとは、西岡力麗澤大学客員教授。
金正恩による「南北和解」ムード演出に乗せられた評価が蔓延していますが、「朝鮮半島の平和と繁栄、統一のための板門店宣言」の内容は、核とミサイル開発についてはなにも進展はなかったのです。
金正恩が、平和を強調するのは、米朝首脳会談が決裂した場合に軍事的緊張が高まることを予想した金委員長が、韓国政府と韓国国民に戦争反対を叫ばせて米軍の活動を抑えようとした策略かもしれないと。
宣言に書かれた「朝鮮半島の非核化」とは、核保有国である米国と北朝鮮が対等な立場で核軍縮を行うということなのだ。これは従来の北朝鮮の主張で、何の変化もないとも。
【正論】人権・核廃棄なしの板門店宣言 モラロジー研究所教授、麗澤大学客員教授・西岡力 - 産経ニュース
<前略>
文大統領は7時間半も金委員長と過ごしたが、彼がいやがる人権問題を議題としなかった。だから、2人は笑みを満面に浮かべ「南北和解」を演出できた。
■「平和」だけが強調された
正式名称が「朝鮮半島の平和と繁栄、統一のための板門店宣言」である宣言では本文に「平和」という語が12回も出てくる。冒頭部分には「朝鮮半島にもはや戦争はなく、新たな平和の時代が開かれたことを8千万のわが同胞と全世界に厳粛に宣言した」とある。しかし朝鮮半島の軍事的緊張は、北朝鮮というテロ国家が核、ミサイル、生物化学兵器を開発し、韓国に軍事挑発を続け、世界中から多くの無辜(むこ)の民を拉致して帰さないことから生まれている。だから、金委員長から「核ミサイル完全廃棄と全拉致被害者帰還」という約束を取り付けることが平和実現のための唯一の道だった。しかし、文大統領はそれに失敗した。
それなのに平和を強調するのは、米朝首脳会談が決裂した場合に軍事的緊張が高まることを予想した金委員長が、韓国政府と韓国国民に戦争反対を叫ばせて米軍の活動を抑えようとした策略かもしれない。
本文2213字(原文)の宣言の中で核問題に言及したのはわずか148字(約7%)だけだ。そこには日本のマスコミが、金委員長が完全な非核化を約束したと大見出しで報じた「南と北は、完全な非核化を通して核のない朝鮮半島を実現するという共通の目標を確認した」という記述が入っていた。しかし、ここで言われている「朝鮮半島の非核化」とは、すでに3月に訪中した金委員長が金日成主席の遺訓だと語ったものと同じだ。1991年に金主席が提唱した米軍撤退、韓米同盟解体をその中身とする「朝鮮半島の非核地帯化」に外ならない。だから、北朝鮮メディアも宣言を全文報じることができた。
■北の立場は従来と変わりない
日本では注目されていないが、宣言では「非核化」記述の直後に「南と北は、北側が講じている主動的な措置が朝鮮半島非核化のために非常に意義があり重大な措置だという認識を共にし」という文が入っている。「北側が講じている主動的な措置」とは4月20日の労働党中央委員会総会で核とミサイルの実験中止、核実験場廃棄を決めたことを指す。ところが、同決定では実験中止の理由を「国家核武力がすでに完成した」からだとしている。核保有宣言なのだ。
金委員長は4月22日に北朝鮮の言論機関と文学創作機関に「北朝鮮が堂々たる核保有国になったことを住民らに宣伝せよ」という指令を下している(韓国の通信社NEWSISのスクープ報道)。つまり、宣言に書かれた「朝鮮半島の非核化」とは、核保有国である米国と北朝鮮が対等な立場で核軍縮を行うということなのだ。これは従来の北朝鮮の主張で、何の変化もない。
ソウルで北朝鮮自由週間開会式が持たれていた頃、ボルトン米国大統領補佐官が米国のテレビに出演して、「リビア型」の完全で検証可能、不可逆的な核ミサイル廃棄を改めて求めた。ボルトン補佐官を従えたトランプ大統領は簡単に譲歩しない。文大統領ができなかった「核ミサイル完全廃棄と全拉致被害者帰還」という約束を金委員長から取り付けられるのか。それができなければ、私たちは軍事緊張の高揚という重大な危機に直面する。(モラロジー研究所教授、麗澤大学教授・西岡力 にしおかつとむ)
<前略>
文大統領は7時間半も金委員長と過ごしたが、彼がいやがる人権問題を議題としなかった。だから、2人は笑みを満面に浮かべ「南北和解」を演出できた。
■「平和」だけが強調された
正式名称が「朝鮮半島の平和と繁栄、統一のための板門店宣言」である宣言では本文に「平和」という語が12回も出てくる。冒頭部分には「朝鮮半島にもはや戦争はなく、新たな平和の時代が開かれたことを8千万のわが同胞と全世界に厳粛に宣言した」とある。しかし朝鮮半島の軍事的緊張は、北朝鮮というテロ国家が核、ミサイル、生物化学兵器を開発し、韓国に軍事挑発を続け、世界中から多くの無辜(むこ)の民を拉致して帰さないことから生まれている。だから、金委員長から「核ミサイル完全廃棄と全拉致被害者帰還」という約束を取り付けることが平和実現のための唯一の道だった。しかし、文大統領はそれに失敗した。
それなのに平和を強調するのは、米朝首脳会談が決裂した場合に軍事的緊張が高まることを予想した金委員長が、韓国政府と韓国国民に戦争反対を叫ばせて米軍の活動を抑えようとした策略かもしれない。
本文2213字(原文)の宣言の中で核問題に言及したのはわずか148字(約7%)だけだ。そこには日本のマスコミが、金委員長が完全な非核化を約束したと大見出しで報じた「南と北は、完全な非核化を通して核のない朝鮮半島を実現するという共通の目標を確認した」という記述が入っていた。しかし、ここで言われている「朝鮮半島の非核化」とは、すでに3月に訪中した金委員長が金日成主席の遺訓だと語ったものと同じだ。1991年に金主席が提唱した米軍撤退、韓米同盟解体をその中身とする「朝鮮半島の非核地帯化」に外ならない。だから、北朝鮮メディアも宣言を全文報じることができた。
■北の立場は従来と変わりない
日本では注目されていないが、宣言では「非核化」記述の直後に「南と北は、北側が講じている主動的な措置が朝鮮半島非核化のために非常に意義があり重大な措置だという認識を共にし」という文が入っている。「北側が講じている主動的な措置」とは4月20日の労働党中央委員会総会で核とミサイルの実験中止、核実験場廃棄を決めたことを指す。ところが、同決定では実験中止の理由を「国家核武力がすでに完成した」からだとしている。核保有宣言なのだ。
金委員長は4月22日に北朝鮮の言論機関と文学創作機関に「北朝鮮が堂々たる核保有国になったことを住民らに宣伝せよ」という指令を下している(韓国の通信社NEWSISのスクープ報道)。つまり、宣言に書かれた「朝鮮半島の非核化」とは、核保有国である米国と北朝鮮が対等な立場で核軍縮を行うということなのだ。これは従来の北朝鮮の主張で、何の変化もない。
ソウルで北朝鮮自由週間開会式が持たれていた頃、ボルトン米国大統領補佐官が米国のテレビに出演して、「リビア型」の完全で検証可能、不可逆的な核ミサイル廃棄を改めて求めた。ボルトン補佐官を従えたトランプ大統領は簡単に譲歩しない。文大統領ができなかった「核ミサイル完全廃棄と全拉致被害者帰還」という約束を金委員長から取り付けられるのか。それができなければ、私たちは軍事緊張の高揚という重大な危機に直面する。(モラロジー研究所教授、麗澤大学教授・西岡力 にしおかつとむ)
米朝首脳会談が失敗に終わったら何が起きるのか?
産経新聞ワシントン駐在客員特派員の古森氏が、米国のベテラン朝鮮問題専門家のラリー・ニクシュ氏にインタビューしています。
米朝首脳会談が失敗に終わったら何が起きるのか? 米国の朝鮮問題専門家が予測する最悪のシナリオ | JBpress(日本ビジネスプレス) 2018.5.2(水) 古森 義久
韓国と北朝鮮の両首脳による南北会談が終わり、朝鮮半島をめぐる激動の行方はもっぱら米朝首脳会談に焦点が絞られてきた。米国のトランプ大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長との会談はここ数週間内に開かれることが確実視されている。
だが、果たして米朝首脳会談は米側の求める北朝鮮の核兵器放棄という合意を生み出すことができるのか? 会談が失敗や不調に終わった場合、なにが起きるのか、米国のベテラン朝鮮問題専門家のラリー・ニクシュ氏に見通しを尋ねてみた。
■席を蹴って退場するかもしれないトランプ大統領
ニクシュ氏は、最悪シナリオとして、北朝鮮が米国や日本を威嚇する形で核とミサイルの開発をさらに進め、イランなどへの核・ミサイル売却もありうると予測する。一方で米国は北の核の拠点に対する限定的な軍事攻撃に一段と傾くだろうと述べた。
4月27日に韓国の文在寅大統領と会談した北朝鮮の金正恩委員長は、これまでの軍事強硬姿勢を一転させ、もっぱら融和や友好の態度を示した。しかし肝心の北朝鮮の核兵器や長距離弾道ミサイルについてはなにも触れなかった。長文の「板門店宣言」でも単に「朝鮮半島の非核化」という記述を入れただけで、その具体的な実現方法は明らかにしていない。この結果は、北朝鮮の非核化という最大の課題を米朝首脳会談へ先送りしたことを示している。
トランプ大統領と金正恩委員長との首脳会談は、まさにこの北朝鮮の非核化を議題として5月末以降に開催するとみられている。同会談で、米側が求める北の核完全破棄への道が開かれるのか、それとも会談が不調、あるいは失敗に終わるのか。トランプ大統領は、会談の成り行きによっては途中で席を蹴って退場するとも述べている。両国が合意に至らず、会談が失敗に終わるというシナリオは十分にあり得るというわけだ。
そんな観点から、ワシントンで長年、北朝鮮ウォッチを続けてきたラリー・ニクシュ氏にインタビューして見解を尋ねた。同氏は米国議会調査局や国務省で朝鮮問題専門官を長年務め、現在はジョージワシントン大学教授や戦略国際問題研究所(CSIS)研究員という立場にある。
■北朝鮮は核兵器の「完全な放棄」に合意するのか
米朝会談が不調の場合の米朝両国の動きについて、ニクシュ氏は詳しい予測を語った。ニクシュ氏との一問一答の内容は以下のとおりである。
――米朝会談が開催される背景をどうみますか。
ラリー・ニクシュ氏(以下、敬称略) 米国からの圧力が強まったために金正恩委員長がトランプ大統領との会談を求めてきたことは明白だと思います。トランプ政権による経済制裁の強化や、軍事攻撃の示唆に対して自らの政権存続への不安を高めたのです。
――とはいえ、北朝鮮は既存の核兵器をすべて放棄するという意思はまったく表明も示唆もしていません。このままだと会談では、トランプ大統領が求める核兵器の「完全で検証可能で不可逆的な放棄」に対し金正恩委員長が応じない可能性もあります。そうなると米朝首脳会談が失敗する結果にもなりかねません。
ニクシュ 確かに金委員長が核兵器の放棄に踏み切るという見通しは、現段階ではまったく不確実のままです。だから米朝会談が失敗する事態を考え、それに備えるべきです。
北朝鮮はこれまで、米国本土に届く核弾頭とミサイルの両方の開発を急いできました。首脳会談が不調に終わった場合、北朝鮮は全力を挙げて大陸間弾道ミサイル(ICBN)火星15号を完成させ、30基ほどできた段階で1基を実験発射し、日本上空を通過させて米国本土に近い太平洋の海域に撃ち込むことが考えられます。米本土に核弾頭をミサイルで撃ち込める能力を誇示することで、改めて米側から譲歩を引き出そうとするでしょう。
――しかし、北朝鮮が今後も米国との軍事対決を続けようとしても、すでにこれまでの米側の経済制裁強化などで弱体となっている側面もあるのではないでしょうか。
ニクシュ 確かに北朝鮮は米国主導の経済制裁で深刻な影響を受け、今年末ごろには外貨が枯渇してエリート層の生活を致命的に圧迫するという見通しもあります。
ただし、北朝鮮はそうした苦境からの打開策として、イランに準中距離ミサイルのノドン、核兵器技術、あるいは核弾頭そのものを売り、巨額の外貨を得るという危険な動きに出ることもありえます。イスラム系テロ組織とされるハマスやヒズボラに短距離ミサイルのスカッドを売る見通しも考えられます。
■軍事衝突が勃発、エスカレートする可能性も
――米朝会談が不調だった場合、北朝鮮は外交面でどのような行動に出ると思いますか。
ニクシュ 外交面では韓国への融和策を進めるでしょう。米朝会談の不調も米国のせいだと声高に主張するようになるでしょう。そして米韓同盟の弱体化に一段と努めるようになると思います。
――一方、米国はどのような行動に出るでしょうか。
ニクシュ 米国と国連が主導する現在の経済制裁をさらに強化すると同時に、軍事オプションへの傾きが顕著となると思います。当面、トランプ政権が考えるのは、北朝鮮の核関連施設1~2カ所への限定的な軍事攻撃でしょう。「鼻血作戦」と呼ばれるこの作戦は、北朝鮮側を威圧して核開発を断念させることが目的です。大規模な軍事衝突はできるだけ避けたいという意向があります。
――しかし現実には、米国側の軍事攻撃が限定的でも、北朝鮮側は限定的ではない反撃に出る可能性が高いとする米側の専門家たちが多いですね。
ニクシュ はい、軍事的手段がエスカレートする危険性は明らかに存在します。しかし基本的には、米国側はあくまで全面戦争を望まず、北朝鮮の核兵器と長距離ミサイルの破壊に限定した攻撃を進めようとするでしょう。
ただし、その前提として北朝鮮の対空砲火を無力にするための大規模空爆が必要になる可能性もあります。そうなると北朝鮮が全面反撃に出る可能性が高くなるわけです。
――米側の軍事オプションが現実味を帯びてくればくるほど、日本も自国への影響を深刻に考えざるをえなくなりますね。
ニクシュ その通りです。もし北朝鮮が米軍や韓国を全面攻撃すれば、米軍の発進拠点や後方基地となる日本への攻撃も起きうることになります。そのため日本は、自国民の拉致事件の解決とはまた別に、国家安全保障の見地から北朝鮮問題に真剣に取り組むことが避けられません。
ニクシュ氏が語る以上のような北朝鮮問題の最悪シナリオを、日本は決して他人事として受け止めてはいけないということだろう。
韓国と北朝鮮の両首脳による南北会談が終わり、朝鮮半島をめぐる激動の行方はもっぱら米朝首脳会談に焦点が絞られてきた。米国のトランプ大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長との会談はここ数週間内に開かれることが確実視されている。
だが、果たして米朝首脳会談は米側の求める北朝鮮の核兵器放棄という合意を生み出すことができるのか? 会談が失敗や不調に終わった場合、なにが起きるのか、米国のベテラン朝鮮問題専門家のラリー・ニクシュ氏に見通しを尋ねてみた。
■席を蹴って退場するかもしれないトランプ大統領
ニクシュ氏は、最悪シナリオとして、北朝鮮が米国や日本を威嚇する形で核とミサイルの開発をさらに進め、イランなどへの核・ミサイル売却もありうると予測する。一方で米国は北の核の拠点に対する限定的な軍事攻撃に一段と傾くだろうと述べた。
4月27日に韓国の文在寅大統領と会談した北朝鮮の金正恩委員長は、これまでの軍事強硬姿勢を一転させ、もっぱら融和や友好の態度を示した。しかし肝心の北朝鮮の核兵器や長距離弾道ミサイルについてはなにも触れなかった。長文の「板門店宣言」でも単に「朝鮮半島の非核化」という記述を入れただけで、その具体的な実現方法は明らかにしていない。この結果は、北朝鮮の非核化という最大の課題を米朝首脳会談へ先送りしたことを示している。
トランプ大統領と金正恩委員長との首脳会談は、まさにこの北朝鮮の非核化を議題として5月末以降に開催するとみられている。同会談で、米側が求める北の核完全破棄への道が開かれるのか、それとも会談が不調、あるいは失敗に終わるのか。トランプ大統領は、会談の成り行きによっては途中で席を蹴って退場するとも述べている。両国が合意に至らず、会談が失敗に終わるというシナリオは十分にあり得るというわけだ。
そんな観点から、ワシントンで長年、北朝鮮ウォッチを続けてきたラリー・ニクシュ氏にインタビューして見解を尋ねた。同氏は米国議会調査局や国務省で朝鮮問題専門官を長年務め、現在はジョージワシントン大学教授や戦略国際問題研究所(CSIS)研究員という立場にある。
■北朝鮮は核兵器の「完全な放棄」に合意するのか
米朝会談が不調の場合の米朝両国の動きについて、ニクシュ氏は詳しい予測を語った。ニクシュ氏との一問一答の内容は以下のとおりである。
――米朝会談が開催される背景をどうみますか。
ラリー・ニクシュ氏(以下、敬称略) 米国からの圧力が強まったために金正恩委員長がトランプ大統領との会談を求めてきたことは明白だと思います。トランプ政権による経済制裁の強化や、軍事攻撃の示唆に対して自らの政権存続への不安を高めたのです。
――とはいえ、北朝鮮は既存の核兵器をすべて放棄するという意思はまったく表明も示唆もしていません。このままだと会談では、トランプ大統領が求める核兵器の「完全で検証可能で不可逆的な放棄」に対し金正恩委員長が応じない可能性もあります。そうなると米朝首脳会談が失敗する結果にもなりかねません。
ニクシュ 確かに金委員長が核兵器の放棄に踏み切るという見通しは、現段階ではまったく不確実のままです。だから米朝会談が失敗する事態を考え、それに備えるべきです。
北朝鮮はこれまで、米国本土に届く核弾頭とミサイルの両方の開発を急いできました。首脳会談が不調に終わった場合、北朝鮮は全力を挙げて大陸間弾道ミサイル(ICBN)火星15号を完成させ、30基ほどできた段階で1基を実験発射し、日本上空を通過させて米国本土に近い太平洋の海域に撃ち込むことが考えられます。米本土に核弾頭をミサイルで撃ち込める能力を誇示することで、改めて米側から譲歩を引き出そうとするでしょう。
――しかし、北朝鮮が今後も米国との軍事対決を続けようとしても、すでにこれまでの米側の経済制裁強化などで弱体となっている側面もあるのではないでしょうか。
ニクシュ 確かに北朝鮮は米国主導の経済制裁で深刻な影響を受け、今年末ごろには外貨が枯渇してエリート層の生活を致命的に圧迫するという見通しもあります。
ただし、北朝鮮はそうした苦境からの打開策として、イランに準中距離ミサイルのノドン、核兵器技術、あるいは核弾頭そのものを売り、巨額の外貨を得るという危険な動きに出ることもありえます。イスラム系テロ組織とされるハマスやヒズボラに短距離ミサイルのスカッドを売る見通しも考えられます。
■軍事衝突が勃発、エスカレートする可能性も
――米朝会談が不調だった場合、北朝鮮は外交面でどのような行動に出ると思いますか。
ニクシュ 外交面では韓国への融和策を進めるでしょう。米朝会談の不調も米国のせいだと声高に主張するようになるでしょう。そして米韓同盟の弱体化に一段と努めるようになると思います。
――一方、米国はどのような行動に出るでしょうか。
ニクシュ 米国と国連が主導する現在の経済制裁をさらに強化すると同時に、軍事オプションへの傾きが顕著となると思います。当面、トランプ政権が考えるのは、北朝鮮の核関連施設1~2カ所への限定的な軍事攻撃でしょう。「鼻血作戦」と呼ばれるこの作戦は、北朝鮮側を威圧して核開発を断念させることが目的です。大規模な軍事衝突はできるだけ避けたいという意向があります。
――しかし現実には、米国側の軍事攻撃が限定的でも、北朝鮮側は限定的ではない反撃に出る可能性が高いとする米側の専門家たちが多いですね。
ニクシュ はい、軍事的手段がエスカレートする危険性は明らかに存在します。しかし基本的には、米国側はあくまで全面戦争を望まず、北朝鮮の核兵器と長距離ミサイルの破壊に限定した攻撃を進めようとするでしょう。
ただし、その前提として北朝鮮の対空砲火を無力にするための大規模空爆が必要になる可能性もあります。そうなると北朝鮮が全面反撃に出る可能性が高くなるわけです。
――米側の軍事オプションが現実味を帯びてくればくるほど、日本も自国への影響を深刻に考えざるをえなくなりますね。
ニクシュ その通りです。もし北朝鮮が米軍や韓国を全面攻撃すれば、米軍の発進拠点や後方基地となる日本への攻撃も起きうることになります。そのため日本は、自国民の拉致事件の解決とはまた別に、国家安全保障の見地から北朝鮮問題に真剣に取り組むことが避けられません。
ニクシュ氏が語る以上のような北朝鮮問題の最悪シナリオを、日本は決して他人事として受け止めてはいけないということだろう。
米国からの圧力が強まったために金正恩委員長がトランプ大統領との会談を求めてきたことは明白だが、金委員長が核兵器の放棄に踏み切るという見通しは、現段階ではまったく不確実のままです。だから米朝会談が失敗する事態を考え、それに備えるべきと、ニクシュ氏。
首脳会談が不調に終わった場合、北朝鮮は全力を挙げて火星15号を完成させ、実験発射し、日本上空を通過させて米国本土に近い太平洋の海域に撃ち込み、米本土に核弾頭をミサイルで撃ち込める能力を誇示することで、改めて米側から譲歩を引き出そうとするでしょうと、ニクシュ氏。
枯渇している資金は、イランにミサイルのノドン、核兵器技術、あるいは核弾頭そのものを売ったり、イスラム系テロ組織とされるハマスやヒズボラにスカッドを売るなどして獲得する。
トランプ政権が考えているのは、大規模な軍事衝突は避け、北朝鮮の核関連施設1~2カ所への限定的な軍事攻撃の「鼻血作戦」。
しかし、北朝鮮が全面反撃に出る可能性は高い。米軍の発進拠点や後方基地となる日本への攻撃も起きうる。
日本は、この最悪のシナリオへの備えはしなくてはならないのです。「想定外」では済まされません。
北朝鮮への抑止力。既に北が配備済みで飛来するノドン等の中距離ミサイルは迎撃システムだけではその数に対抗できないので、発射元の敵基地攻撃能力の拡充が必須です。
国民の避難施設、批難計画の充実も必要です。
平和ボケの政局争いをしている場合ではないのです。
短期、中長期の対応を、与野党で立法化し推進せねばならない、戦後最大の危機に面しています。
国民の安全を護るのが国家の第一義の勤め。それを国民から託されているのが国会議員。諸氏が、その基本に立ち戻り、政局ではなく立法に注力していただけることを願います。
# 冒頭の画像は、軍事境界線上の板門店で、南北首脳会談に臨む韓国の文在寅大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長

フユザンショウ
↓よろしかったら、お願いします。



