仕事と育児の両立支援では少子化は解消できない。少子化の原因が婚姻率の減少、未婚率の上昇だからであると指摘されるのは、拓殖大学学事顧問の渡辺利夫氏。
仕事と育児の両立支援よりもっと踏み込んだ「家族政策」の必要性を訴えておられます。
「家族政策」として、「家族の生存権」の保障を説いておられます。
「国土強靱化×地方創生総合ワーキンググループ」の提言の、社会保障の「世代間格差」ならびに子育てコストの「世代内格差」の2つに着目しておられます。
未婚率の高い若年現役世代が、高齢化する分厚い団塊ジュニア世代を養わねばならない耐え難く重いコストが、「世代間格差」。無子の団塊ジュニア高齢者は子育ての費用を一切支払うことなく、有子世代が支払う社会保障費によって支援される「フリーライダー」の存在が、「世代内格差」。
子育ての費用を一切支払うことなく、他人がコストを負担して育てた子供に養ってもらう、ただ乗りの「フリーライダー」の存在。この、「世代内格差」が着目点と、遊爺はかねがね考えていました。
勿論、子供が欲しくて産みたくても、生理的に産まれないといったケースもありますが、その場合は、里親になるといった道があります。
コストを負担した人が、負担したコストに比例した保障が得られる。それが、平等な社会。コストの負担にはいろいろな負担のしかたがあり、そこに知恵を働かせればよいと考えるのです。
少子化対策では、育児と仕事の両立が注目されますが、その前の、未婚率の上昇こそが、根源の原因。「世代間格差」は、ベビーブームが生んだ人口の波で、長い間には徐々に解消されていくと考えられますが、「世代内格差」は、人為的な制度の問題。改善の余地は大いにあると考えます。
未婚率の対策(原因はいろいろあり根が深いが)が根本で、同時に、「世代内格差」の対策(平等なコスト負担)が、少子化対策に取り入れられるべきと考えますが、いかがでしょう。
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仕事と育児の両立支援よりもっと踏み込んだ「家族政策」の必要性を訴えておられます。
100万人割った出生数の衝撃 拓殖大学学事顧問・渡辺利夫 (2/27 産経 【正論】)
≪次世代再生産が難しくなる≫
厚生労働省が昨年12月に発表した人口動態統計年間推計によれば、2016年の出生数は98万1千人で、1947年の統計開始以来初の100万人割れとなった。決定的要因は未婚率の上昇であり、出生率低下の8割が未婚化に起因する。同推計によれば2016年の婚姻率(人口総数に対する婚姻件数の比率、千人当たり)は過去最低の5.0となった。
2010年の国勢調査によれば、同年の生涯未婚率(50歳時の未婚率)は男性20・1%、女性10・6%である。1980年の2・6%、4・5%に比べて劇的な増加である。厚労省の別の統計によれば2015年の同比率は男性22・8%、女性13・9%である。高い生涯未婚率は、日本の社会において、次世代再生産のプロセスが毀損(きそん)されつつあることを意味する。
日本の人口ピラミッド図には2つの出っ張りがある。1つは1947~49年生まれの団塊世代であり、もう1つが71~74年生まれの団塊ジュニア世代である。団塊ジュニアが生む子供の増加により2000年あたりで第3次ベビーブームが到来するはずであり、旧厚生省もそう推計していたのだが、そうはならなかった。未婚率の顕著な上昇のゆえであった。
≪仕事と育児支援では解決しない≫
未婚率はなぜ予測を裏切る速度で上昇したのか。一つには、この間に進められた新自由主義的市場改革により終身雇用・年功序列の慣行が崩れ始め、バブル崩壊も加わって雇用環境が極度に不安定化したことがあげられる。非正規雇用の増加はその象徴である。もう一つには、男女雇用機会均等法などが女性の労働市場参入を促進し、非婚、晩婚、無子化をもたらした。新自由主義的な市場改革は、少子化の定着により日本の人口構造に手ひどい負の遺産を残してしまったのである。
政府とてこの歴史的失敗に気づいていないわけではない。子育て支援とワークライフバランスの適正化という、つまりは仕事と育児の両立支援策を提唱してすでに久しい。しかしこの間、少子化は深刻の度を増す一方であった。婚姻率の上昇、未婚率の減少により家族の再生をいかに図るか、この的に矢を射ていないのである。
結婚、出産、育児などは本質的に「個の自由」に関わる問題であり、これへの国家の介入は許されないかのようなセンチメントに呪縛されて、政府も「家族政策」には手が出せなかったということなのであろう。
両立支援策では少子化は解消できない。少子化の原因が婚姻率の減少、未婚率の上昇だからである。結婚をどう考えているのかを妻に問う厚労省の第5回全国家庭動向調査(2014年)によれば「結婚後は、夫が外で働き、妻は主婦業に専念すべきだ」「子どもが3歳くらいまでは、母親は仕事を持たず育児に専念したほうがよい」のアンケート項目に、それぞれ59・7%、84・6%の専業主婦が同意している。この調査結果は仕事と育児の両立支援よりもっと踏み込んだ「家族政策」の必要性を訴える。
≪「家族の生存権」を保障せよ≫
この点に関し、明治大学の加藤彰彦教授を座長とする「国土強靱(きょうじん)化×地方創生総合ワーキンググループ」が画期的な提言を試みている。その基礎概念は、社会保障の「世代間格差」ならびに子育てコストの「世代内格差」の2つである。年間200万人出生の分厚い団塊ジュニア世代が高齢者となるのは40年前後である一方、この世代の3割が無子である。未婚率の高い若年現役世代が彼らを養わねばならないコストは耐え難く重い。これが世代間格差である。
無子の団塊ジュニア高齢者は子育ての費用を一切支払うことなく、有子世代が支払う社会保障費によって支援される「フリーライダー」であり、これが世代内格差である。子供1人を育て上げるのに必要な費用は2千万円から3千万円だといわれる。これだけのコストを費やし、なお他人の社会保障費の一部まで負担しなければならないとなれば、結婚に希望をもてず、出産・育児に消極的にならざるをえないのは当然であろう。
政府は昨年6月の閣議で決定した「ニッポン1億総活躍プラン」において「希望出生率1・8」を標榜(ひょうぼう)した。その実現には第3子以上を希望する夫婦の増加が不可欠である。現状では有配偶者の多くが経済的理由のために第3子以上の希望を果たせないでいるという。彼らに累増的な加算支援を施すことで「多子志向・家族志向」の夫婦を増加させ、同時に低所得者層に対して第1子、第2子への加算給付を行う、というのが提言の骨子である。
憲法第24条に家族保護規定を導入せよ。さらに憲法第25条の「個人の生存権」を実質的に担保しているものが家族である以上、家族再生産の権利、つまりは「家族の生存権」を保障する旨を書き込むべし、とも提言している。このきわめてまっとうな提言に沿う対応を政府は急がねばなるまい。(わたなべ としお)
≪次世代再生産が難しくなる≫
厚生労働省が昨年12月に発表した人口動態統計年間推計によれば、2016年の出生数は98万1千人で、1947年の統計開始以来初の100万人割れとなった。決定的要因は未婚率の上昇であり、出生率低下の8割が未婚化に起因する。同推計によれば2016年の婚姻率(人口総数に対する婚姻件数の比率、千人当たり)は過去最低の5.0となった。
2010年の国勢調査によれば、同年の生涯未婚率(50歳時の未婚率)は男性20・1%、女性10・6%である。1980年の2・6%、4・5%に比べて劇的な増加である。厚労省の別の統計によれば2015年の同比率は男性22・8%、女性13・9%である。高い生涯未婚率は、日本の社会において、次世代再生産のプロセスが毀損(きそん)されつつあることを意味する。
日本の人口ピラミッド図には2つの出っ張りがある。1つは1947~49年生まれの団塊世代であり、もう1つが71~74年生まれの団塊ジュニア世代である。団塊ジュニアが生む子供の増加により2000年あたりで第3次ベビーブームが到来するはずであり、旧厚生省もそう推計していたのだが、そうはならなかった。未婚率の顕著な上昇のゆえであった。
≪仕事と育児支援では解決しない≫
未婚率はなぜ予測を裏切る速度で上昇したのか。一つには、この間に進められた新自由主義的市場改革により終身雇用・年功序列の慣行が崩れ始め、バブル崩壊も加わって雇用環境が極度に不安定化したことがあげられる。非正規雇用の増加はその象徴である。もう一つには、男女雇用機会均等法などが女性の労働市場参入を促進し、非婚、晩婚、無子化をもたらした。新自由主義的な市場改革は、少子化の定着により日本の人口構造に手ひどい負の遺産を残してしまったのである。
政府とてこの歴史的失敗に気づいていないわけではない。子育て支援とワークライフバランスの適正化という、つまりは仕事と育児の両立支援策を提唱してすでに久しい。しかしこの間、少子化は深刻の度を増す一方であった。婚姻率の上昇、未婚率の減少により家族の再生をいかに図るか、この的に矢を射ていないのである。
結婚、出産、育児などは本質的に「個の自由」に関わる問題であり、これへの国家の介入は許されないかのようなセンチメントに呪縛されて、政府も「家族政策」には手が出せなかったということなのであろう。
両立支援策では少子化は解消できない。少子化の原因が婚姻率の減少、未婚率の上昇だからである。結婚をどう考えているのかを妻に問う厚労省の第5回全国家庭動向調査(2014年)によれば「結婚後は、夫が外で働き、妻は主婦業に専念すべきだ」「子どもが3歳くらいまでは、母親は仕事を持たず育児に専念したほうがよい」のアンケート項目に、それぞれ59・7%、84・6%の専業主婦が同意している。この調査結果は仕事と育児の両立支援よりもっと踏み込んだ「家族政策」の必要性を訴える。
≪「家族の生存権」を保障せよ≫
この点に関し、明治大学の加藤彰彦教授を座長とする「国土強靱(きょうじん)化×地方創生総合ワーキンググループ」が画期的な提言を試みている。その基礎概念は、社会保障の「世代間格差」ならびに子育てコストの「世代内格差」の2つである。年間200万人出生の分厚い団塊ジュニア世代が高齢者となるのは40年前後である一方、この世代の3割が無子である。未婚率の高い若年現役世代が彼らを養わねばならないコストは耐え難く重い。これが世代間格差である。
無子の団塊ジュニア高齢者は子育ての費用を一切支払うことなく、有子世代が支払う社会保障費によって支援される「フリーライダー」であり、これが世代内格差である。子供1人を育て上げるのに必要な費用は2千万円から3千万円だといわれる。これだけのコストを費やし、なお他人の社会保障費の一部まで負担しなければならないとなれば、結婚に希望をもてず、出産・育児に消極的にならざるをえないのは当然であろう。
政府は昨年6月の閣議で決定した「ニッポン1億総活躍プラン」において「希望出生率1・8」を標榜(ひょうぼう)した。その実現には第3子以上を希望する夫婦の増加が不可欠である。現状では有配偶者の多くが経済的理由のために第3子以上の希望を果たせないでいるという。彼らに累増的な加算支援を施すことで「多子志向・家族志向」の夫婦を増加させ、同時に低所得者層に対して第1子、第2子への加算給付を行う、というのが提言の骨子である。
憲法第24条に家族保護規定を導入せよ。さらに憲法第25条の「個人の生存権」を実質的に担保しているものが家族である以上、家族再生産の権利、つまりは「家族の生存権」を保障する旨を書き込むべし、とも提言している。このきわめてまっとうな提言に沿う対応を政府は急がねばなるまい。(わたなべ としお)
「家族政策」として、「家族の生存権」の保障を説いておられます。
「国土強靱化×地方創生総合ワーキンググループ」の提言の、社会保障の「世代間格差」ならびに子育てコストの「世代内格差」の2つに着目しておられます。
未婚率の高い若年現役世代が、高齢化する分厚い団塊ジュニア世代を養わねばならない耐え難く重いコストが、「世代間格差」。無子の団塊ジュニア高齢者は子育ての費用を一切支払うことなく、有子世代が支払う社会保障費によって支援される「フリーライダー」の存在が、「世代内格差」。
子育ての費用を一切支払うことなく、他人がコストを負担して育てた子供に養ってもらう、ただ乗りの「フリーライダー」の存在。この、「世代内格差」が着目点と、遊爺はかねがね考えていました。
勿論、子供が欲しくて産みたくても、生理的に産まれないといったケースもありますが、その場合は、里親になるといった道があります。
コストを負担した人が、負担したコストに比例した保障が得られる。それが、平等な社会。コストの負担にはいろいろな負担のしかたがあり、そこに知恵を働かせればよいと考えるのです。
少子化対策では、育児と仕事の両立が注目されますが、その前の、未婚率の上昇こそが、根源の原因。「世代間格差」は、ベビーブームが生んだ人口の波で、長い間には徐々に解消されていくと考えられますが、「世代内格差」は、人為的な制度の問題。改善の余地は大いにあると考えます。
未婚率の対策(原因はいろいろあり根が深いが)が根本で、同時に、「世代内格差」の対策(平等なコスト負担)が、少子化対策に取り入れられるべきと考えますが、いかがでしょう。
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