
エスカレートする関税などで米政府から圧力を受ける中国の工場経営者は、存亡に関わる問題に直面している。米国への販売で利益を上げられなければ、一体どこに輸出すればよいのかと、WSJ・久保田陽子副局長。
先頃深圳で開催された中国の輸出業者向けの展示会で、特に人気を集めたイベントは、ロシアで商品の売れ行きを伸ばす方法を指南するセッションだったと、久保田副局長。
ロシアの電子商取引(EC)企業の従業員がオンラインショッピングに関するロシア消費者の傾向を説明し、何百人もの参加者が熱心に聴き入ったのだそうです。
世界最大の消費者市場である米国にここ何十年も狙いを定めてきた中国輸出業界にとって、それは目を見張る光景だった。だがエスカレートする関税などで米政府から圧力を受ける中国の工場経営者は、存亡に関わる問題に直面している。米国への販売で利益を上げられなければ、一体どこに輸出すればよいのか!
深圳で年2回開催される「全球跨境電商展(世界越境EC展示会)」の登壇者たちは多くの答えを提示した。だがいずれも、米国の消費者を基盤にビジネスを構築してきた輸出業者を完全に安心させることはなかった。目に見えて不安が広がっていたと、久保田副局長。
「基本的には米国市場に代わるものはない」と、クリスマスツリーメーカー、Union Tree(ユニオンツリー)のブースにいた販売マネジャーのマイク・ワンさん。
一部の業者は、東南アジアや南米といった他の市場が米国市場の埋め合わせになることを期待。
カンボジアやベトナムなどに工場を移転し、米国の対中関税を回避する方法を検討中の企業もある。中間業者やコストを排除しながら、米消費者に直接販売する方法を依然として模索する企業もある。
懸念されるのは、もしドナルド・トランプ米大統領が関税を今後も引き上げ続けた場合、これらの選択肢がどれも十分機能しないかもしれないことだ。
トランプ氏の関税で今のところ、中国製品のコストは20%上乗せされている。関税を支払うのは輸入業者だが、多くの米小売企業はコスト増を相殺するため、中国の納品業者に値下げを迫っている。その結果、ごく薄い利幅で経営している中国の工場の一部が脱落する可能性があると、久保田副局長。
外国に販路を求める場合、米国に肩を並べる単一市場は他にない。中国の対ロシア輸出はウクライナ侵攻開始後に急増し、2023年は前年比47%増、24年は同4%増となったが、成長の余地は限られている。ロシアの人口は約1億4600万人と米国の半分に満たず、1人当たり所得ははるかに低く、経済はインフレなどの圧力に苦しんでいる。
すでにロシアは安い中国製品の流入に反発し始めている。一部の中国製品に関税を発動したほか、輸入車両のリサイクル費用を引き上げ、実質的に中国車の価格を上昇させていると、久保田副局長。
一方、東南アジア市場は細分化している。国の数が多く、それぞれに異なる言語や文化、規制がある。中国国内での販売拡大も有望な選択肢ではない。巨大な市場ではあるものの、非常に競争が激しく、経済が低迷して消費の伸びが鈍化していると、久保田副局長。
クリスマスツリーを製造するユニオンツリーは、売上高の約半分を北米市場(主に米国)が占めるのだそうです。
関税が今後もなくならなければ、痛みは避けがたい。ユニオンツリーの利益率は約5%~10%に過ぎず、トランプ氏の関税を吸収するにはあまりに薄利だという。
約150人の従業員がいる同社は、進むべき明確な道筋を見いだせていない。東南アジアなどに拠点を設ける方法は、部品の大半を中国から輸入する必要があるため、たとえ他の経費が比較的安くても、コストがかかり過ぎると考えている。
だが、高齢者向け移動車両の製造・販売を手がける台州市増輝車業(Taizhou Zenghui Auto)のオーエン・フーさんは、米国では関税対策の値上げが可能だと自信を見せたと、久保田副局長。
競合他社の数が少ないこと、米国の健康保険でカバーできる場合が多いことが理由。
米国市場へのアクセスが狭まることを、恋愛の終わりのように感じる人もいた。米国市場との関係は大勢の中国人を豊かにするのに役立ったが、今や修復不可能かもしれないと。
別のクリスマス装飾品メーカー、恵州市鉅宝実業の営業担当のヤン・ジャンジュンさんは同社の売上高の約90%を米国市場が占めるとし、米小売り大手のウォルマートやターゲットなどの店舗で販売されていると述べた。だが彼は米国に対しうんざりした気持ちになりつつあるのだと。
「最初は米国と中国の単なる関税問題だと思っていた。だが今や問題の本質が変わり、中国を抑圧することが目的だと感じる」とヤンさん。
会社はカンボジアでの生産拡大を検討しているのだそうですが、東南アジアではコストが上昇し、一部地域では労働者のストライキが起こる可能性があるのだそうです。
中間業者を排除し、利益率を改善することを目指し、ECプラットフォームへの出店も調査中だとヤンさん。
中国の工場経営者は負けん気が強く、商売を続けるためなら何でも試すだろう。「彼らを葬り去ることは不可能だ」とも。。。
「辞書の中で最も美しい言葉は『関税』だ」と、関税を武器に各国とのディールを展開し、MAGA(Make America Great Again)に邁進するトランプ氏。
しかし、その関税の負担は、米国の輸入企業や消費者にかかっていることはどこまで理解しているのでしょう?
フォード・モーターのジム・ファーリー最高経営責任者(CEO)等は、否定的な発言をされていますね。
トランプ関税の影響「壊滅的」 米フォードCEOが警鐘 - 日本経済新聞
# 冒頭の画像は、クリスマスツリーメーカーのマイク・ワンさん

この花の名前は、タンポポ
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中国輸出業者の苦悩 米消費者の「代わりが見つからない」 - WSJ
中国の工場経営者、一つの時代の終わりを感じる人も By 久保田陽子副局長 2025年3月31日
【深圳】先頃開催された中国の輸出業者向けの展示会で、特に人気を集めたイベントは、ロシアで商品の売れ行きを伸ばす方法を指南するセッションだった。
ロシアの電子商取引(EC)企業の従業員がオンラインショッピングに関するロシア消費者の傾向を説明し、何百人もの参加者が熱心に聴き入った。登壇者によると、あるプラットフォームでは常夜灯や香りつきキャンドル、知育玩具などが人気商品で、価格は安ければ安いほどよいのだという。聴衆はプレゼンテーションの様子を写真に撮り、QRコードを読み取って情報交換のためのチャットグループに参加した。
世界最大の消費者市場である米国にここ何十年も狙いを定めてきた中国輸出業界にとって、それは目を見張る光景だった。だがエスカレートする関税などで米政府から圧力を受ける中国の工場経営者は、存亡に関わる問題に直面している。米国への販売で利益を上げられなければ、一体どこに輸出すればよいのか。
中国製造業の中心地である深圳で年2回開催される「全球跨境電商展(世界越境EC展示会)」の登壇者たちは多くの答えを提示した。だがいずれも、米国の消費者を基盤にビジネスを構築してきた輸出業者を完全に安心させることはなかった。目に見えて不安が広がっていた。
「基本的には米国市場に代わるものはない」と、中国東部の輸出拠点である義烏に本社を置くクリスマスツリーメーカー、Union Tree(ユニオンツリー)のブースにいた販売マネジャーのマイク・ワンさん(37)は述べた。
約800社のメーカーが出展した同イベントは、輸出に意欲的な中国の工場と、バイヤーや貿易業者、ECプラットフォーム担当者をつなぐ場となることを目指している。今年のブースでは、電動工具からキッチン用品、双眼鏡、化粧品、宝飾品、テーブルクロスに至るまで、ありとあらゆるものが展示された。
一部の業者は、東南アジアや南米といった他の市場が米国市場の埋め合わせになることを期待していると述べた。カンボジアやベトナムなどに工場を移転し、米国の対中関税を回避する方法を検討中の企業もある。中間業者やコストを排除しながら、米消費者に直接販売する方法を依然として模索する企業もある。あと少し工夫すれば、利益を何とか確保できるのではないかと。
懸念されるのは、もしドナルド・トランプ米大統領が国内調達を増やすよう自国企業に迫るために関税を今後も引き上げ続けた場合、これらの選択肢がどれも十分機能しないかもしれないことだ。トランプ氏の関税で今のところ、中国製品のコストは20%上乗せされている。関税を支払うのは輸入業者だが、多くの米小売企業はコスト増を相殺するため、中国の納品業者に値下げを迫っている。その結果、ごく薄い利幅で経営している中国の工場の一部が脱落する可能性がある。
トランプ氏は4月2日に一連のいわゆる「相互関税」についても発表する予定だ。中国の工場経営者が関税回避のために拠点を作ることを検討している国々さえも、その標的になる可能性があり、移転先をどこにするのか判断しにくい状況となっている。
外国に販路を求める場合、米国に肩を並べる単一市場は他にない。中国の対ロシア輸出はウクライナ侵攻開始後に急増し、2023年は前年比47%増、24年は同4%増となったが、成長の余地は限られている。ロシアの人口は約1億4600万人と米国の半分に満たず、1人当たり所得ははるかに低く、経済はインフレなどの圧力に苦しんでいる。
すでにロシアは安い中国製品の流入に反発し始めている。一部の中国製品に関税を発動したほか、輸入車両のリサイクル費用を引き上げ、実質的に中国車の価格を上昇させている。
一方で、東南アジア市場は細分化している。国の数が多く、それぞれに異なる言語や文化、規制がある。中国国内での販売拡大も有望な選択肢ではない。巨大な市場ではあるものの、非常に競争が激しく、経済が低迷して消費の伸びが鈍化している。
クリスマスツリーを製造するユニオンツリーは、売上高の約半分を北米市場(主に米国)が占める。同社の製品は伝統的な深緑色のツリーの上に星形のオーナメントを載せたものやカラフルな電球が輝く赤いツリーなど、米国の家庭やオフィスに置かれたところを想像しやすいものだ。
ワンさんによると、今のところ関税の影響は大きくない。大口顧客は関税が課される前にすでに注文を済ませているためだ。
だが関税が今後もなくならなければ、痛みは避けがたい。ユニオンツリーの利益率は約5%~10%に過ぎず、トランプ氏の関税を吸収するにはあまりに薄利だという。
約150人の従業員がいる同社は、進むべき明確な道筋を見いだせていない。東南アジアなどに拠点を設ける方法は、部品の大半を中国から輸入する必要があるため、たとえ他の経費が比較的安くても、コストがかかり過ぎると考えている。
だが先行きを心配する参加者ばかりではない。高齢者向け移動車両の製造・販売を手がける台州市増輝車業(Taizhou Zenghui Auto)のオーエン・フーさんは、米国では関税対策の値上げが可能だと自信を見せた。競合他社の数が少ないことが背景にある。またこうした車両は米国の健康保険でカバーできる場合が多い、と彼は言う。
フーさんによると、現在約2300ドル(約34万5000円)で販売しているモデルを約2500ドルに値上げする予定だという。ただ、消費者がより安価なモデルに乗り換える一定のリスクがあることも認めた。
他の参加者の中には、米国市場へのアクセスが狭まることを、恋愛の終わりのように感じる人もいた。この関係は大勢の中国人を豊かにするのに役立ったが、今や修復不可能かもしれない。
別のクリスマス装飾品メーカー、恵州市鉅宝実業(Huizhou Cyberich Industrial)のブースで、営業担当のヤン・ジャンジュンさんは同社の売上高の約90%を米国市場が占めるとし、米小売り大手のウォルマートやターゲットなどの店舗で販売されていると述べた。だが彼は米国に対しうんざりした気持ちになりつつある。
「最初は米国と中国の単なる関税問題だと思っていた。だが今や問題の本質が変わり、中国を抑圧することが目的だと感じる」とヤンさんは言う。
顧客からの提案を受け、会社はカンボジアでの生産拡大を検討していると彼は述べた。一方で、東南アジアではコストが上昇し、一部地域では労働者のストライキが起こる可能性があることも理解していると言う。
また中間業者を排除し、利益率を改善することを目指し、ECプラットフォームへの出店も調査中だという。イベントではこれに焦点を当てた発表セッションにも出席したいとヤンさんは語った。
中国の工場経営者は負けん気が強く、商売を続けるためなら何でも試すだろう。「彼らを葬り去ることは不可能だ」と彼は言う。
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久保田陽子 ウォールストリートジャーナル副局長
北京にあるウォールストリートジャーナルの次長であり、テクノロジー、自動車、消費者セクターなど、中国でのビジネスニュースの取材を担当しています。
北京、上海、シンガポール、ニューヨークの特派員と研究者のチームを監督しています。これらは共に、中国および多国籍企業、産業および貿易政策、サプライチェーン、米国と中国の間の技術的競争などの分野をカバーしています。
横浜出身で、日本とアメリカで育ち、プリンストン大学を卒業しました。
中国の工場経営者、一つの時代の終わりを感じる人も By 久保田陽子副局長 2025年3月31日
【深圳】先頃開催された中国の輸出業者向けの展示会で、特に人気を集めたイベントは、ロシアで商品の売れ行きを伸ばす方法を指南するセッションだった。
ロシアの電子商取引(EC)企業の従業員がオンラインショッピングに関するロシア消費者の傾向を説明し、何百人もの参加者が熱心に聴き入った。登壇者によると、あるプラットフォームでは常夜灯や香りつきキャンドル、知育玩具などが人気商品で、価格は安ければ安いほどよいのだという。聴衆はプレゼンテーションの様子を写真に撮り、QRコードを読み取って情報交換のためのチャットグループに参加した。
世界最大の消費者市場である米国にここ何十年も狙いを定めてきた中国輸出業界にとって、それは目を見張る光景だった。だがエスカレートする関税などで米政府から圧力を受ける中国の工場経営者は、存亡に関わる問題に直面している。米国への販売で利益を上げられなければ、一体どこに輸出すればよいのか。
中国製造業の中心地である深圳で年2回開催される「全球跨境電商展(世界越境EC展示会)」の登壇者たちは多くの答えを提示した。だがいずれも、米国の消費者を基盤にビジネスを構築してきた輸出業者を完全に安心させることはなかった。目に見えて不安が広がっていた。
「基本的には米国市場に代わるものはない」と、中国東部の輸出拠点である義烏に本社を置くクリスマスツリーメーカー、Union Tree(ユニオンツリー)のブースにいた販売マネジャーのマイク・ワンさん(37)は述べた。
約800社のメーカーが出展した同イベントは、輸出に意欲的な中国の工場と、バイヤーや貿易業者、ECプラットフォーム担当者をつなぐ場となることを目指している。今年のブースでは、電動工具からキッチン用品、双眼鏡、化粧品、宝飾品、テーブルクロスに至るまで、ありとあらゆるものが展示された。
一部の業者は、東南アジアや南米といった他の市場が米国市場の埋め合わせになることを期待していると述べた。カンボジアやベトナムなどに工場を移転し、米国の対中関税を回避する方法を検討中の企業もある。中間業者やコストを排除しながら、米消費者に直接販売する方法を依然として模索する企業もある。あと少し工夫すれば、利益を何とか確保できるのではないかと。
懸念されるのは、もしドナルド・トランプ米大統領が国内調達を増やすよう自国企業に迫るために関税を今後も引き上げ続けた場合、これらの選択肢がどれも十分機能しないかもしれないことだ。トランプ氏の関税で今のところ、中国製品のコストは20%上乗せされている。関税を支払うのは輸入業者だが、多くの米小売企業はコスト増を相殺するため、中国の納品業者に値下げを迫っている。その結果、ごく薄い利幅で経営している中国の工場の一部が脱落する可能性がある。
トランプ氏は4月2日に一連のいわゆる「相互関税」についても発表する予定だ。中国の工場経営者が関税回避のために拠点を作ることを検討している国々さえも、その標的になる可能性があり、移転先をどこにするのか判断しにくい状況となっている。
外国に販路を求める場合、米国に肩を並べる単一市場は他にない。中国の対ロシア輸出はウクライナ侵攻開始後に急増し、2023年は前年比47%増、24年は同4%増となったが、成長の余地は限られている。ロシアの人口は約1億4600万人と米国の半分に満たず、1人当たり所得ははるかに低く、経済はインフレなどの圧力に苦しんでいる。
すでにロシアは安い中国製品の流入に反発し始めている。一部の中国製品に関税を発動したほか、輸入車両のリサイクル費用を引き上げ、実質的に中国車の価格を上昇させている。
一方で、東南アジア市場は細分化している。国の数が多く、それぞれに異なる言語や文化、規制がある。中国国内での販売拡大も有望な選択肢ではない。巨大な市場ではあるものの、非常に競争が激しく、経済が低迷して消費の伸びが鈍化している。
クリスマスツリーを製造するユニオンツリーは、売上高の約半分を北米市場(主に米国)が占める。同社の製品は伝統的な深緑色のツリーの上に星形のオーナメントを載せたものやカラフルな電球が輝く赤いツリーなど、米国の家庭やオフィスに置かれたところを想像しやすいものだ。
ワンさんによると、今のところ関税の影響は大きくない。大口顧客は関税が課される前にすでに注文を済ませているためだ。
だが関税が今後もなくならなければ、痛みは避けがたい。ユニオンツリーの利益率は約5%~10%に過ぎず、トランプ氏の関税を吸収するにはあまりに薄利だという。
約150人の従業員がいる同社は、進むべき明確な道筋を見いだせていない。東南アジアなどに拠点を設ける方法は、部品の大半を中国から輸入する必要があるため、たとえ他の経費が比較的安くても、コストがかかり過ぎると考えている。
だが先行きを心配する参加者ばかりではない。高齢者向け移動車両の製造・販売を手がける台州市増輝車業(Taizhou Zenghui Auto)のオーエン・フーさんは、米国では関税対策の値上げが可能だと自信を見せた。競合他社の数が少ないことが背景にある。またこうした車両は米国の健康保険でカバーできる場合が多い、と彼は言う。
フーさんによると、現在約2300ドル(約34万5000円)で販売しているモデルを約2500ドルに値上げする予定だという。ただ、消費者がより安価なモデルに乗り換える一定のリスクがあることも認めた。
他の参加者の中には、米国市場へのアクセスが狭まることを、恋愛の終わりのように感じる人もいた。この関係は大勢の中国人を豊かにするのに役立ったが、今や修復不可能かもしれない。
別のクリスマス装飾品メーカー、恵州市鉅宝実業(Huizhou Cyberich Industrial)のブースで、営業担当のヤン・ジャンジュンさんは同社の売上高の約90%を米国市場が占めるとし、米小売り大手のウォルマートやターゲットなどの店舗で販売されていると述べた。だが彼は米国に対しうんざりした気持ちになりつつある。
「最初は米国と中国の単なる関税問題だと思っていた。だが今や問題の本質が変わり、中国を抑圧することが目的だと感じる」とヤンさんは言う。
顧客からの提案を受け、会社はカンボジアでの生産拡大を検討していると彼は述べた。一方で、東南アジアではコストが上昇し、一部地域では労働者のストライキが起こる可能性があることも理解していると言う。
また中間業者を排除し、利益率を改善することを目指し、ECプラットフォームへの出店も調査中だという。イベントではこれに焦点を当てた発表セッションにも出席したいとヤンさんは語った。
中国の工場経営者は負けん気が強く、商売を続けるためなら何でも試すだろう。「彼らを葬り去ることは不可能だ」と彼は言う。
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久保田陽子 ウォールストリートジャーナル副局長
北京にあるウォールストリートジャーナルの次長であり、テクノロジー、自動車、消費者セクターなど、中国でのビジネスニュースの取材を担当しています。
北京、上海、シンガポール、ニューヨークの特派員と研究者のチームを監督しています。これらは共に、中国および多国籍企業、産業および貿易政策、サプライチェーン、米国と中国の間の技術的競争などの分野をカバーしています。
横浜出身で、日本とアメリカで育ち、プリンストン大学を卒業しました。
先頃深圳で開催された中国の輸出業者向けの展示会で、特に人気を集めたイベントは、ロシアで商品の売れ行きを伸ばす方法を指南するセッションだったと、久保田副局長。
ロシアの電子商取引(EC)企業の従業員がオンラインショッピングに関するロシア消費者の傾向を説明し、何百人もの参加者が熱心に聴き入ったのだそうです。
世界最大の消費者市場である米国にここ何十年も狙いを定めてきた中国輸出業界にとって、それは目を見張る光景だった。だがエスカレートする関税などで米政府から圧力を受ける中国の工場経営者は、存亡に関わる問題に直面している。米国への販売で利益を上げられなければ、一体どこに輸出すればよいのか!
深圳で年2回開催される「全球跨境電商展(世界越境EC展示会)」の登壇者たちは多くの答えを提示した。だがいずれも、米国の消費者を基盤にビジネスを構築してきた輸出業者を完全に安心させることはなかった。目に見えて不安が広がっていたと、久保田副局長。
「基本的には米国市場に代わるものはない」と、クリスマスツリーメーカー、Union Tree(ユニオンツリー)のブースにいた販売マネジャーのマイク・ワンさん。
一部の業者は、東南アジアや南米といった他の市場が米国市場の埋め合わせになることを期待。
カンボジアやベトナムなどに工場を移転し、米国の対中関税を回避する方法を検討中の企業もある。中間業者やコストを排除しながら、米消費者に直接販売する方法を依然として模索する企業もある。
懸念されるのは、もしドナルド・トランプ米大統領が関税を今後も引き上げ続けた場合、これらの選択肢がどれも十分機能しないかもしれないことだ。
トランプ氏の関税で今のところ、中国製品のコストは20%上乗せされている。関税を支払うのは輸入業者だが、多くの米小売企業はコスト増を相殺するため、中国の納品業者に値下げを迫っている。その結果、ごく薄い利幅で経営している中国の工場の一部が脱落する可能性があると、久保田副局長。
外国に販路を求める場合、米国に肩を並べる単一市場は他にない。中国の対ロシア輸出はウクライナ侵攻開始後に急増し、2023年は前年比47%増、24年は同4%増となったが、成長の余地は限られている。ロシアの人口は約1億4600万人と米国の半分に満たず、1人当たり所得ははるかに低く、経済はインフレなどの圧力に苦しんでいる。
すでにロシアは安い中国製品の流入に反発し始めている。一部の中国製品に関税を発動したほか、輸入車両のリサイクル費用を引き上げ、実質的に中国車の価格を上昇させていると、久保田副局長。
一方、東南アジア市場は細分化している。国の数が多く、それぞれに異なる言語や文化、規制がある。中国国内での販売拡大も有望な選択肢ではない。巨大な市場ではあるものの、非常に競争が激しく、経済が低迷して消費の伸びが鈍化していると、久保田副局長。
クリスマスツリーを製造するユニオンツリーは、売上高の約半分を北米市場(主に米国)が占めるのだそうです。
関税が今後もなくならなければ、痛みは避けがたい。ユニオンツリーの利益率は約5%~10%に過ぎず、トランプ氏の関税を吸収するにはあまりに薄利だという。
約150人の従業員がいる同社は、進むべき明確な道筋を見いだせていない。東南アジアなどに拠点を設ける方法は、部品の大半を中国から輸入する必要があるため、たとえ他の経費が比較的安くても、コストがかかり過ぎると考えている。
だが、高齢者向け移動車両の製造・販売を手がける台州市増輝車業(Taizhou Zenghui Auto)のオーエン・フーさんは、米国では関税対策の値上げが可能だと自信を見せたと、久保田副局長。
競合他社の数が少ないこと、米国の健康保険でカバーできる場合が多いことが理由。
米国市場へのアクセスが狭まることを、恋愛の終わりのように感じる人もいた。米国市場との関係は大勢の中国人を豊かにするのに役立ったが、今や修復不可能かもしれないと。
別のクリスマス装飾品メーカー、恵州市鉅宝実業の営業担当のヤン・ジャンジュンさんは同社の売上高の約90%を米国市場が占めるとし、米小売り大手のウォルマートやターゲットなどの店舗で販売されていると述べた。だが彼は米国に対しうんざりした気持ちになりつつあるのだと。
「最初は米国と中国の単なる関税問題だと思っていた。だが今や問題の本質が変わり、中国を抑圧することが目的だと感じる」とヤンさん。
会社はカンボジアでの生産拡大を検討しているのだそうですが、東南アジアではコストが上昇し、一部地域では労働者のストライキが起こる可能性があるのだそうです。
中間業者を排除し、利益率を改善することを目指し、ECプラットフォームへの出店も調査中だとヤンさん。
中国の工場経営者は負けん気が強く、商売を続けるためなら何でも試すだろう。「彼らを葬り去ることは不可能だ」とも。。。
「辞書の中で最も美しい言葉は『関税』だ」と、関税を武器に各国とのディールを展開し、MAGA(Make America Great Again)に邁進するトランプ氏。
しかし、その関税の負担は、米国の輸入企業や消費者にかかっていることはどこまで理解しているのでしょう?
フォード・モーターのジム・ファーリー最高経営責任者(CEO)等は、否定的な発言をされていますね。
トランプ関税の影響「壊滅的」 米フォードCEOが警鐘 - 日本経済新聞
# 冒頭の画像は、クリスマスツリーメーカーのマイク・ワンさん

この花の名前は、タンポポ
↓よろしかったら、お願いします。

遊爺さんの写真素材 - PIXTA