遊爺雑記帳

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対中貿易「ドル放棄」国が増加 中国が目論む米ドル機軸体制の打破

2023-05-06 01:33:55 | 米中新冷戦時代
 世界の五大決済通貨のシェアは、米ドルが41.1%、ユーロで35.4%、ポンドは6.47%、円は2.8%、中国が2.2%です。
 世界の新興国、途上国で、中国と貿易する際に中間貿易通貨としての米ドル使用を放棄し、人民元決済を導入する国がじわじわ増えている。3月以降、ブラジル、アルゼンチン、シリアなどが次々と人民元決済を導入すると発表。
 中国は、100年ぶりの世界の変局の時代を迎えて、米ドル機軸体制の打破こそが、米国一極体制から米中二極体制あるいは中国一極体制への再構築の筋道につながると考えてきた。
 アンチ米国の新興国、途上国で、エネルギー、食糧、資源鉱物の産地であるコモディティ貿易国をターゲットに、米ドル基軸体制打破のチャンス到来と人民元のシェア拡大に邁進していると指摘されているのは、元産経新聞の中国駐在記者で、中国出入国禁止とされた福島香織さん。
 
対中貿易「ドル放棄」国が増加、夢物語と笑えなくなってきた人民元国際化 人民元決済の拡大が加速、中国が目論む米ドル機軸体制の打破 | JBpress (ジェイビープレス) 2023.5.4(木) 福島 香織:ジャーナリスト

 世界の新興国、途上国で、中国と貿易する際に中間貿易通貨としての米ドル使用を放棄し、人民元決済を導入する国がじわじわ増えている3月以降、ブラジル、アルゼンチン、シリアなどが次々と人民元決済を導入すると発表した。

 これを人民元の国際化が進んだと受け取るかどうかは意見の分かれるところだが、米国で銀行破綻が続く中で、人民元の受動的な上昇を招き、短期的にはその価値が上がっているという見方もある。
果たして、人民元がドルにとって代わる日はくるのか

シリア、アルゼンチン、ブラジルが人民元決済を推進
 
4月29日、シリアのアサド大統領中国から派遣された翟隽特使と会見し、貿易決済の人民元使用を推進することに賛同を示した

 アサドは「世界は政治、経済において、中国が新たなグローバル情勢のバランサーとなることを求めており、同時に中ロ関係やBRICsの枠組みなどが新たな多極的な国際秩序を建設する強大な空間を作るだろうと考えている」と述べた。

 
アサドは米中の対抗がまず経済から始まり、これが貿易でドルを使わない必要性をますます大きくしている、と指摘BRICs国家はドル脱却において主導的な影響力を発揮し、国際貿易において人民元採用を選択していることに言及。さらに中国の経済圏構想「一帯一路」の重要性や、サウジアラビアとイランの関係改善への中国の努力、そのことによる中東地域全体へのポジティブな影響力を評価した。

 その数日前の
4月26日には南米のアルゼンチンのセルジオ・マッサ経済相が「今月から中国輸入品の支払い10.4億ドル相当は、米ドルを使用せず、人民元で決済する」と発表3月にはブラジルのルラ大統領が中国を訪問し、ブラジルと中国間の貿易決済で米ドルを中間貿易通貨として使わないと宣言していた。

 マッサによれば、人民元を決済に使用することでアルゼンチンは今後数カ月のうちに中国からの輸入テンポが加速し、人民元決済による効率がさらに高まるだろう、という。人民元決済により、輸入審査も180日から90日に短縮できるとの見通しを示した。現地の商会によれば、人民元決済はアルゼンチンの中国からの輸入プロセスを簡素化できる。

 またマッサは、人民元を決済通貨に使用することで、中国との企業との取引を選択する企業がますます増えることになるだろう、という。
アルゼンチンの場合は、人民元決済により、外貨準備のドルの枯渇を回避できるという面もある。

拡大速度が加速している人民元決済
 
こうした動きの中で、ロイターは、中国人民元が緩やかだが、国際貿易決済通貨の地位を拡大していると報道。米ドルは依然として世界の機軸通貨として貿易決済通貨として圧倒的なシェアを占めているが、中国が関わる二国間貿易では人民元決済がじわじわと増えて、3月の段階では人民元決済量がドル決済量を初めて超えた中東からの石油購入、ブラジル、ロシアとの貿易決済がすべて人民元で支払われたからだ

 ブラジル、アルゼンチン、シリアに続き、
マレーシアもすでに中国との貿易で中国通貨を決済通貨として使用する方向で交渉が開始している。両国はまたアジア通貨基金の設立についても協議を行っているが、これは米ドルに対する依存度を減らすのが狙いだ。

 
タイも中国との貿易の人民元決済などについて協議を5月から本格化する。また、カンボジアではすでに同国内のホテルやレストランでの人民元決済が可能になっている。自国通貨の弱いカンボジアは高度にドル化された経済だったが、ここ数年、中国はカンボジアの人民元利用の拡大とドル脱却をあの手この手で働きかけている

 ドル機軸を支えるグローバルな決済システム、いわゆる
「SWIFT」のデータによれば、人民元の世界貿易融資における比率が2年前の1.3%から今年の2月までに4.5%に増加した。ちなみにドルは84%を占める。

 また人民元の3月の支払い額は月あたり、明らかに増加して20.9%増だった。同時期の世界のすべての通貨の支払い額全体は1.7ポイント上昇しただけだった。結果、
3月、人民元は世界の決済通貨全体の2.2%を占め、2月の2.2%より若干増えて、世界の五大決済通貨の1つとしての地位を維持した。

 今のところ
米ドルのシェアは圧倒的で、世界の決済通貨全体の41.1%を占めている次がユーロで35.4%ポンドは6.47%円は2.8%だ。シェアからすれば人民元決済は微々たるものだが、その拡大速度は加速している。

人民元決済が広がる2つの理由
 
その理由の1つとして、やはりロシアのウクライナ侵攻に対する西側からの経済制裁がある

 ロシアは西側の経済圏から事実上デカップリングされたことで、奇しくも中国以外の世界第4の国際人民元交易センターとなったのだった。
ロシアの人民元取引は2022年初めは1%に満たなかったのに、今や40~45%が人民元決済となった

 
おそらく中国、ロシア、ブラジルは、今後、第三国との貿易についても人民元で支払うように働きかけていくだろう。こうした反米的な国家がドルを放棄して、人民元決済圏を広げ、人民元価値を上げていこう、という動きは強まるかもしれない

 
人民元決済が広がる理由としてもう1つ挙げられるのは、米国金融の不安定化だ。

 
昨年(2022年)の加速的利上げがもたらした金融不安によって、シリコンバレー銀行に続いてファーストリパブリック銀行も破綻するはめになった。今後も米国の地方銀行破綻が続くという見通しもある。このことが世界経済にどういう影響を与えるかは今しばらくの観測が必要だが、米ドルの流動性への不安から東南アジアを中心に脱ドルの動きが加速するであろう、という分析が、中国共産党の内部誌「金融発展研究2023年第1期」に寄稿されていた。

まだ国際通貨としての条件を満たしていない
 もちろん、
だからといって人民元がドルから機軸通貨の地位を奪えるかというと、それはそう単純な話ではない

 まず
人民元はまだまだ国際通貨としての条件を満たしていない。その資本勘定の開放には消極的で、人民元をドルやユーロや日本円のように自由に流通させようともしていない。口では資本市場開放と繰り返しているが、習近平政権はむしろ資本市場に対する党のコントロールを強化する方向に動いている

 
台湾中信金融管理学院の謝金河教授はフェイスブックで、こう指摘していた。

「人民元がドルにとって代わって世界の主要外貨備蓄となるまでには、道のりははるか遠い。人民元と米ドルでは、世界の外貨備蓄量の比重差は非常に大きく、しかも人民元の外貨備蓄のシェアは昨年上半期の2.88%をピークに下がって、下半期には2.69%になっている」
人民元はまず自由化されることが先決で、そうしてからやっと機軸通貨ドルにとって代われるかどうかを語るべきだ

 一方、香港の経済評論家の利世民がRFI(フランス国際放送)で興味深い指摘をしていた。

「中国は、より多くの人に人民元をより多く利用してほしいと考えている。しかし、実情は米ドルの主導的地位を揺るがすのは難しい。なぜなら米ドルの資金プールは非常に大きく、売買と自由度が極めて高い。一方、中国は、株式の繁栄のほか、(人民元流通拡大が)国内経済とその背後の実権に影響を与えないことを望んでいる。ゆえに、中国がやろうとしているのは人民元の国際化ではなく、人民元の金融商品の国際化または人民元建て債券の国際化であると考えている」

 さらに、香港にその任務を負わせたいと考えているという。だから、香港が10年前に突然イスラム金融を発展させたように、最近になって人民元建て株式売買と債権発行を開始したのだ、と。彼の予測では、数億の価値がある香港の強制性公積金が今後、人民元建て債券を大量に購入することになろう、という。そうなれば香港ドルと米ドルのペッグレートは人民元の流通後も維持できるのか、という疑問を呈している。

 1983年、香港ドルが英国ポンドから米ドルにペッグされるようになった例を振り返れば、香港ドルが人民元とペッグされる決定と発表は、ある日突然行われるかもしれない。

中国が目論む米ドル機軸体制の打破
 こうした
専門家の意見を総合すると、人民元がドル機軸を脅かすような状況というのは当面ありえないとは思われるが、人民元経済圏が確実に急速に拡大していることは間違いない

 
その背景として、中国の経済プレゼンスの拡大以上に、米国のロシアに対する経済制裁、金融制裁の容赦なさがあるかもしれない。つまり、世界の少なからぬ反米国家は、ロシアの状況を見て、自国もいつかドル決済システムから排除されるかもしれない、と怯えたことだろう。

 
SWIFTに変わる決済システムとして中国の「CIPS」という人民元決済システムが注目されるようになったのも当然かもしれない。CIPSは送金情報伝達手段がSWIFTに依存しているし、SWIFTの代替システムになるにはまだまだ時間がかかるが、米国がドル決済システムからの排除を制裁手段として振り回すようになっていけば、人民元決済空間はそれだけ拡大する。数十年単位でみれば、あり得ない話ではなく、その過程でおそらくは香港ドルが米ドルから人民元ドルペッグとなり、香港証券市場での人民元建て債券発行、証券売買が拡大していくことになる。

 
人民元決済を導入した国の多くが、アンチ米国の新興国、途上国で、エネルギー、食糧、資源鉱物の産地であるコモディティ貿易国であることも要注意だ。

 米ドルが基軸通貨となった最大の理由は、第2次大戦後以来、世界の石油貿易でドルが決済通貨となったからだ。「石油・ドル」システムが米国の国際金融におけるボスの地位を担保し、その結果、世界の外貨準備通貨となった。

 米国とかつての帝国主義国との最大の違いは、広く深い金融市場によってグローバルな資源コントロールシステムを構築したことである、と吉林大学経済学院の李暁教授がBBCのインタビューでコメントしていた。米国の国内外政策の核心は、この米ドル機軸体制をうまく運転することであり、これこそが米国の核心的利益だ、と。

 
中国はこのことをよく理解し、100年ぶりの世界の変局の時代を迎えて、米ドル機軸体制の打破こそが、米国一極体制から米中二極体制あるいは中国一極体制への再構築の筋道につながると考えてきた米国がまさに中国を西側の経済・金融からデカップリングしようとしているときに、エネルギー資源や食糧資源が集中する中東、中央アジア、ユーラシア、東南アジアを一帯一路という経済圏、中国朋友圏としてまとめて人民元決済を拡大していこう、というのが、今進行している中国のシナリオだろう。

 
目的とロジックと手段が明確で確実に進んでいるということを考えれば、人民元機軸時代が来るなどばかばかしい夢物語だと鼻先で笑って油断しているわけにはいかないと思うわけだ。


 世界の新興国、途上国で、中国と貿易する際に中間貿易通貨としての米ドル使用を放棄し、人民元決済を導入する国がじわじわ増えている。3月以降、ブラジル、アルゼンチン、シリアなどが次々と人民元決済を導入すると発表。
 
 マレーシアもすでに中国との貿易で本国通貨を決済通貨として使用する方向で交渉が開始している。両国はまたアジア通貨基金の設立についても協議を行っているが、これは米ドルに対する依存度を減らすのが狙いだと、福島さん。
 タイも中国との貿易の人民元決済などについて協議を5月から本格化する。また、カンボジアではすでに同国内のホテルやレストランでの人民元決済が可能になっている。自国通貨の弱いカンボジアは高度にドル化された経済だったが、ここ数年、中国はカンボジアの人民元利用の拡大とドル脱却をあの手この手で働きかけているのだそうです。

 福島さんは、人民元決済が広がる理由を 2つあげておられます。
 1つは、ロシアのウクライナ侵攻に対する西側からの経済制裁。
 ロシアの人民元取引は2022年初めは1%に満たなかったのに、今や40~45%が人民元決済となった。
 おそらく中国、ロシア、ブラジルは、今後、第三国との貿易についても人民元で支払うように働きかけていくだろう。こうした反米的な国家がドルを放棄して、人民元決済圏を広げ、人民元価値を上げていこう、という動きは強まるかもしれないと、福島さん。

 もう1つ挙げられるのは、米国金融の不安定化。
 昨年(2022年)の加速的利上げがもたらした金融不安によって、シリコンバレー銀行に続いてファーストリパブリック銀行も破綻するはめになった。今後も米国の地方銀行破綻が続くという見通しもある。
 米ドルの流動性への不安から東南アジアを中心に脱ドルの動きが加速するであろう、という分析が、中国共産党の内部誌「金融発展研究2023年第1期」に寄稿されていたと、福島さん。

 だからといって人民元がドルから機軸通貨の地位を奪えるかというと、それはそう単純な話ではないとも。
 まず人民元はまだまだ国際通貨としての条件を満たしていない。
 人民元をドルやユーロや日本円のように自由に流通させようともしていない。習近平政権はむしろ資本市場に対する党のコントロールを強化する方向に動いていると。

 台湾中信金融管理学院の謝金河教授は、「人民元がドルにとって代わって世界の主要外貨備蓄となるまでには、道のりははるか遠い。人民元と米ドルでは、世界の外貨備蓄量の比重差は非常に大きく、しかも人民元の外貨備蓄のシェアは昨年上半期の2.88%をピークに下がって、下半期には2.69%になっている」
 「人民元はまず自由化されることが先決で、そうしてからやっと機軸通貨ドルにとって代われるかどうかを語るべきだ」と。

 専門家の意見を総合すると、人民元がドル機軸を脅かすような状況というのは当面ありえないとは思われるが、人民元経済圏が確実に急速に拡大していることは間違いないと、福島さん。
 その背景として、米国のロシアに対する経済制裁、金融制裁の容赦なさがあるかもしれない。つまり、世界の少なからぬ反米国家は、ロシアの状況を見て、自国もいつかドル決済システムから排除されるかもしれない、と怯えたことだろうと。
 SWIFTに変わる決済システムとして中国の「CIPS」という人民元決済システムが注目されるようになったのも当然かもしれないとも。
 米国がドル決済システムからの排除を制裁手段として振り回すようになっていけば、人民元決済空間はそれだけ拡大すると、福島さん。
 人民元決済を導入した国の多くが、アンチ米国の新興国、途上国で、エネルギー、食糧、資源鉱物の産地であるコモディティ貿易国であることも要注意だと。

 中国は、100年ぶりの世界の変局の時代を迎えて、米ドル機軸体制の打破こそが、米国一極体制から米中二極体制あるいは中国一極体制への再構築の筋道につながると考えてきた。米国がまさに中国を西側の経済・金融からデカップリングしようとしているときに、エネルギー資源や食糧資源が集中する中東、中央アジア、ユーラシア、東南アジアを一帯一路という経済圏、中国朋友圏としてまとめて人民元決済を拡大していこう、というのが、今進行している中国のシナリオだろうと、福島さん。
 目的とロジックと手段が明確で確実に進んでいるということを考えれば、油断しているわけにはいかないと思うと。

 お金と軍事力とで覇権拡大を続ける習近平の中国。
 G7国他、自由を標榜する国々の団結が求められますね。



 # 冒頭の画像は、モスクワを訪問した習近平
  すがるプーチン、手を差し伸べる習近平、電撃訪ロで見せつけた圧倒的力の差 東アジア「深層取材ノート」(第180回)(1/4) | JBpress (ジェイビープレス)



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