
コメ流通の「多重構造」が価格高騰を招いている──。
令和のコメ騒動に関しては、小売チェーンや識者からこのような指摘がなされている。
コメの流通は1995年に食糧管理法が廃止されて以降自由化が進み、最近ではJAを経由して市場に出るコメは全体の4割ほどで、残り6割は卸売業者や専門業者が集荷している。
NX総合研究所の小林知行氏は令和のコメ騒動の主要因として「コメが今どこに、どれくらいあるか」が分からない仕組みになっていることを指摘する。また「堂島取引所でのコメ先物取引」との関連性も疑う。どういうことか。
令和のコメ騒動には庶民から見ると不可解な点が多数あります。代表的なものは「生産量は増えたのに、在庫は不足し価格も高騰した」こと。
コメ不足と価格高騰の本当の理由は、どこにあるのでしょう。
コメの流通の「不可視化」、つまり「今コメがどこに、どれくらいあるのか」が全く分からないサプライチェーンになっていることが大きいと、小林知行氏。
現在の主食用米の2つの流通経路の、1つは、JAがコメを農家から集荷し、一次問屋→二次問屋→スーパー・飲食店など、という経路を辿るルート。生産量全体の約4割を占めています。
2つ目に「集荷機能を持った問屋が直接農家からコメを買い上げる」というルート。これは全体の6割ほどを占めていて、小売店やスーパーまでの間に問屋が複数入っていて、非常に複雑なサプライチェーンになっています。
コメ不足とコメ価格の高騰が同時発生した理由として考えられるのは、「2つ目のルートで、どこかの問屋が意図的に『売り渡し』を渋った」可能性ですと、小林氏。
なぜ問屋は意図的に売り渡しを渋ったのか。
原因のひとつとして考えられるのは、2024年8月に再開した「堂島取引所でのコメの先物取引」です。8月当時はコメの平均価格が上がり続けていましたので、問屋が「今売るよりも、もう少し『待って』価格が上がってから売った方が儲かる」と判断した可能性がありますと、小林氏。
小売店も問屋が売り渋る以上、価格を下げるわけにはいきませんし、そもそも「今どの業者がどのくらいコメの在庫を抱えているのか」を把握することができません。
では、どうすれば投機や転売的な動きを抑制し、生産者と消費者の需給バランスが取れた形でコメを販売できるのか。「コメが今、どこに、どれくらいあるのか」が見えるサプライチェーンを作るしかありませんと、小林氏。
「米トレーサビリティ法」という法律がありますが、どの業者が、現在どれくらいのコメの在庫を抱えているのか、という情報は同法では明らかになりにくい。
ひとつは、米トレーサビリティ法を改正し「コメの在庫が今、どこにどれだけあるのか」という流通経路上のコメ在庫の所在を明らかにする目的を追加することが有効ではないかと考えます。本改正に合わせて、緩やかな罰則規定の見直しを行うことも検討すべきではないかと考えますと、小林氏。
もうひとつは、テクノロジーを活用して、リアルタイムにコメの流通経路を確認すること。RFIDタグという電池を持たない小型ICタグを米袋やパレットに貼り付け、チェックポイントをいくつか設けておけば、中央で省庁やJAが「今、コメがどこにどれだけあるのか」が分かるようになりますと。
約1年続くコメ騒動で疲弊している庶民からすれば「かつてのようにJAに集荷を一任し、価格をコントロールすべきだ」という声も聞こえてきそうですとも。
物流業界も同じですが、規制緩和と自由化を進めたことによって事業者の数が増え過ぎてしまい、コントロールが効かなくなっている、という状況は各業界で起きていると思いますと、小林氏。
日本の新自由主義は30年間の強烈なデフレ下で実現されたことから、コメにかかわる事業者たちも「豊作貧乏」に近い状態で、市場原理主義の恩恵を受けることは難しかったと。
少子高齢化で供給量自体が先細っていくこれからの日本で必要なのは「新自由主義のソフトランディング」と呼ぶべき発想でしょうと、小林氏。
コメの文脈でいえば、いまさら食糧管理法を復活させるのは現実的に難しいと思います。流通が自由になったことで、新たな販路を開拓したコメ農家さんも多くいて、彼らのモチベーションを損なうことは避けたいとも。
例えば、RFIDタグ搭載を集荷時に義務付ける際には、リターンとしての保障制度も充実させなければいけません。
一方で、これ以上コメ流通の自由化を野放しにすると、投機的な動きや転売もとまらない。さらに、家電業界のように、売る側の小売店の力が強くなりすぎると、ただでさえ低収入で苦しんでいる農家に追い討ちをかけるように「買い叩き」圧力が強まり、コメ生産の持続可能性すら怪しくなってきます。
消費者も生産者も、流通関係者も、小売業者も納得できる環境を作るためには「投機筋に対する規制」と「テクノロジーを活用したサプライチェーンの透明性の確保」が必要なのですと、小林氏。
進次郎大臣には、郵政民営化の大改革を強い意志で成し遂げた小泉総理(当時)に匹敵する大改革の実現を期待します。
# 冒頭の画像は、2024年夏のコメ先物取引開始を祝うセレモニーで鏡開きをする堂島取引所の有我渉社長ら

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令和のコメ騒動に関しては、小売チェーンや識者からこのような指摘がなされている。
コメの流通は1995年に食糧管理法が廃止されて以降自由化が進み、最近ではJAを経由して市場に出るコメは全体の4割ほどで、残り6割は卸売業者や専門業者が集荷している。
コメ高騰のきっかけは先物取引?「待てば値上がり」、売り渋りが問屋に広がったか 自由化でコメ流通はカオスに、安定供給には投機規制とテクノロジー活用が不可欠 | JBpress (ジェイビープレス)
2025.7.1(火) 湯浅 大輝 小林 知行
コメ流通の「多重構造」が価格高騰を招いている──。2024年夏から続く令和のコメ騒動に関しては、小売チェーンや識者からこのような指摘がなされている。コメの流通は1995年に食糧管理法が廃止されて以降自由化が進み、最近ではJAを経由して市場に出るコメは全体の4割ほどで、残り6割は卸売業者や専門業者が集荷している。
物流、ロジスティクス、SCMに関するコンサルティングが専門のNX総合研究所の小林知行氏は令和のコメ騒動の主要因として「コメが今どこに、どれくらいあるか」が分からない仕組みになっていることを指摘する。また「堂島取引所でのコメ先物取引」との関連性も疑う。どういうことか。
(湯浅大輝:フリージャーナリスト)
■令和のコメ騒動が「不可解」な理由
──令和のコメ騒動には庶民から見ると不可解な点が多数あります。代表的なものは「生産量は増えたのに、在庫は不足し価格も高騰した」こと。2024年産のコメ収穫量は前年比2.4%増の679万トンでしたが、なぜか「スーパーにコメがない」「コメが異常に高い」という事象が発生しました。コメ不足と価格高騰の本当の理由は、どこにあるのでしょう。
小林知行氏(以下、敬称略):コメの流通の「不可視化」、つまり「今コメがどこに、どれくらいあるのか」が全く分からないサプライチェーンになっていることが大きいです。
まず、現在の主食用米の2つの流通経路をおさらいしましょう。1つは、JAがコメを農家から集荷し、一次問屋→二次問屋→スーパー・飲食店など、という経路を辿るルート。生産量全体の約4割を占めています。
2つ目に「集荷機能を持った問屋が直接農家からコメを買い上げる」というルート。これは全体の6割ほどを占めていて、小売店やスーパーまでの間に問屋が複数入っていて、非常に複雑なサプライチェーンになっています。
コメ不足とコメ価格の高騰が同時発生した理由として考えられるのは、「2つ目のルートで、どこかの問屋が意図的に『売り渡し』を渋った」可能性です。
そもそも、コメのような年に1回しか「旬」の時期がない商品において、旬以外の時期に価格が上がることはまずありません。令和のコメ騒動が発生した当初は、新米が出回る時期ではありませんでしたし、2025年に入ってからもコメは値上がりを続けています。
では、なぜ問屋は意図的に売り渡しを渋ったのか。
■「今売るよりも、価格が上がるのをもうちょっと待とう」
小林:原因のひとつとして考えられるのは、2024年8月に再開した「堂島取引所でのコメの先物取引」です。8月当時はコメの平均価格が上がり続けていましたので、問屋が「今売るよりも、もう少し『待って』価格が上がってから売った方が儲かる」と判断した可能性があります。
いずれにしても、今はコメの流通は2004年以降「自由」になっていますので、問屋が特に違法なことをしたわけではありません。とはいえ、消費者にとって令和のコメ騒動は家計へのダメージが大きいことは事実です。
また、小売店も問屋が売り渋る以上、価格を下げるわけにはいきませんし、そもそも「今どの業者がどのくらいコメの在庫を抱えているのか」を把握することができません。
では、どうすれば投機や転売的な動きを抑制し、生産者と消費者の需給バランスが取れた形でコメを販売できるのか。「コメが今、どこに、どれくらいあるのか」が見えるサプライチェーンを作るしかありません。
──どういうことでしょうか。
小林:「米トレーサビリティ法」という法律がありますが、これは主にコメの食品偽装や事故米の不正転売などを防ぐために作られた法律です。どの業者が、現在どれくらいのコメの在庫を抱えているのか、という情報は同法では明らかになりにくい。
ひとつは、米トレーサビリティ法を改正し「コメの在庫が今、どこにどれだけあるのか」という流通経路上のコメ在庫の所在を明らかにする目的を追加することが有効ではないかと考えます。本改正に合わせて、緩やかな罰則規定の見直しを行うことも検討すべきではないかと考えます。
もうひとつは、テクノロジーを活用して、リアルタイムにコメの流通経路を確認すること。RFIDタグという電池を持たない小型ICタグを米袋やパレットに貼り付け、チェックポイントをいくつか設けておけば、中央で省庁やJAが「今、コメがどこにどれだけあるのか」が分かるようになります。
──約1年続くコメ騒動で疲弊している庶民からすれば「かつてのようにJAに集荷を一任し、価格をコントロールすべきだ」という声も聞こえてきそうです。
■新自由主義がもたらした混乱を収束させるには
小林:物流業界も同じですが、規制緩和と自由化を進めたことによって事業者の数が増え過ぎてしまい、コントロールが効かなくなっている、という状況は各業界で起きていると思います。
さらに日本の新自由主義は30年間の強烈なデフレ下で実現されたことから、コメにかかわる事業者たちも「豊作貧乏」に近い状態で、市場原理主義の恩恵を受けることは難しかったと思います。
まして、少子高齢化で供給量自体が先細っていくこれからの日本で必要なのは「新自由主義のソフトランディング」と呼ぶべき発想でしょう。
コメの文脈でいえば、いまさら食糧管理法を復活させるのは現実的に難しいと思います。流通が自由になったことで、新たな販路を開拓したコメ農家さんも多くいて、彼らのモチベーションを損なうことは避けたいからです。
例えば、RFIDタグ搭載を集荷時に義務付ける際には、リターンとしての保障制度も充実させなければいけません。
一方で、これ以上コメ流通の自由化を野放しにすると、投機的な動きや転売もとまらない。さらに、家電業界のように、売る側の小売店の力が強くなりすぎると、ただでさえ低収入で苦しんでいる農家に追い討ちをかけるように「買い叩き」圧力が強まり、コメ生産の持続可能性すら怪しくなってきます。
消費者も生産者も、流通関係者も、小売業者も納得できる環境を作るためには「投機筋に対する規制」と「テクノロジーを活用したサプライチェーンの透明性の確保」が必要なのです。
2025.7.1(火) 湯浅 大輝 小林 知行
コメ流通の「多重構造」が価格高騰を招いている──。2024年夏から続く令和のコメ騒動に関しては、小売チェーンや識者からこのような指摘がなされている。コメの流通は1995年に食糧管理法が廃止されて以降自由化が進み、最近ではJAを経由して市場に出るコメは全体の4割ほどで、残り6割は卸売業者や専門業者が集荷している。
物流、ロジスティクス、SCMに関するコンサルティングが専門のNX総合研究所の小林知行氏は令和のコメ騒動の主要因として「コメが今どこに、どれくらいあるか」が分からない仕組みになっていることを指摘する。また「堂島取引所でのコメ先物取引」との関連性も疑う。どういうことか。
(湯浅大輝:フリージャーナリスト)
■令和のコメ騒動が「不可解」な理由
──令和のコメ騒動には庶民から見ると不可解な点が多数あります。代表的なものは「生産量は増えたのに、在庫は不足し価格も高騰した」こと。2024年産のコメ収穫量は前年比2.4%増の679万トンでしたが、なぜか「スーパーにコメがない」「コメが異常に高い」という事象が発生しました。コメ不足と価格高騰の本当の理由は、どこにあるのでしょう。
小林知行氏(以下、敬称略):コメの流通の「不可視化」、つまり「今コメがどこに、どれくらいあるのか」が全く分からないサプライチェーンになっていることが大きいです。
まず、現在の主食用米の2つの流通経路をおさらいしましょう。1つは、JAがコメを農家から集荷し、一次問屋→二次問屋→スーパー・飲食店など、という経路を辿るルート。生産量全体の約4割を占めています。
2つ目に「集荷機能を持った問屋が直接農家からコメを買い上げる」というルート。これは全体の6割ほどを占めていて、小売店やスーパーまでの間に問屋が複数入っていて、非常に複雑なサプライチェーンになっています。
コメ不足とコメ価格の高騰が同時発生した理由として考えられるのは、「2つ目のルートで、どこかの問屋が意図的に『売り渡し』を渋った」可能性です。
そもそも、コメのような年に1回しか「旬」の時期がない商品において、旬以外の時期に価格が上がることはまずありません。令和のコメ騒動が発生した当初は、新米が出回る時期ではありませんでしたし、2025年に入ってからもコメは値上がりを続けています。
では、なぜ問屋は意図的に売り渡しを渋ったのか。
■「今売るよりも、価格が上がるのをもうちょっと待とう」
小林:原因のひとつとして考えられるのは、2024年8月に再開した「堂島取引所でのコメの先物取引」です。8月当時はコメの平均価格が上がり続けていましたので、問屋が「今売るよりも、もう少し『待って』価格が上がってから売った方が儲かる」と判断した可能性があります。
いずれにしても、今はコメの流通は2004年以降「自由」になっていますので、問屋が特に違法なことをしたわけではありません。とはいえ、消費者にとって令和のコメ騒動は家計へのダメージが大きいことは事実です。
また、小売店も問屋が売り渋る以上、価格を下げるわけにはいきませんし、そもそも「今どの業者がどのくらいコメの在庫を抱えているのか」を把握することができません。
では、どうすれば投機や転売的な動きを抑制し、生産者と消費者の需給バランスが取れた形でコメを販売できるのか。「コメが今、どこに、どれくらいあるのか」が見えるサプライチェーンを作るしかありません。
──どういうことでしょうか。
小林:「米トレーサビリティ法」という法律がありますが、これは主にコメの食品偽装や事故米の不正転売などを防ぐために作られた法律です。どの業者が、現在どれくらいのコメの在庫を抱えているのか、という情報は同法では明らかになりにくい。
ひとつは、米トレーサビリティ法を改正し「コメの在庫が今、どこにどれだけあるのか」という流通経路上のコメ在庫の所在を明らかにする目的を追加することが有効ではないかと考えます。本改正に合わせて、緩やかな罰則規定の見直しを行うことも検討すべきではないかと考えます。
もうひとつは、テクノロジーを活用して、リアルタイムにコメの流通経路を確認すること。RFIDタグという電池を持たない小型ICタグを米袋やパレットに貼り付け、チェックポイントをいくつか設けておけば、中央で省庁やJAが「今、コメがどこにどれだけあるのか」が分かるようになります。
──約1年続くコメ騒動で疲弊している庶民からすれば「かつてのようにJAに集荷を一任し、価格をコントロールすべきだ」という声も聞こえてきそうです。
■新自由主義がもたらした混乱を収束させるには
小林:物流業界も同じですが、規制緩和と自由化を進めたことによって事業者の数が増え過ぎてしまい、コントロールが効かなくなっている、という状況は各業界で起きていると思います。
さらに日本の新自由主義は30年間の強烈なデフレ下で実現されたことから、コメにかかわる事業者たちも「豊作貧乏」に近い状態で、市場原理主義の恩恵を受けることは難しかったと思います。
まして、少子高齢化で供給量自体が先細っていくこれからの日本で必要なのは「新自由主義のソフトランディング」と呼ぶべき発想でしょう。
コメの文脈でいえば、いまさら食糧管理法を復活させるのは現実的に難しいと思います。流通が自由になったことで、新たな販路を開拓したコメ農家さんも多くいて、彼らのモチベーションを損なうことは避けたいからです。
例えば、RFIDタグ搭載を集荷時に義務付ける際には、リターンとしての保障制度も充実させなければいけません。
一方で、これ以上コメ流通の自由化を野放しにすると、投機的な動きや転売もとまらない。さらに、家電業界のように、売る側の小売店の力が強くなりすぎると、ただでさえ低収入で苦しんでいる農家に追い討ちをかけるように「買い叩き」圧力が強まり、コメ生産の持続可能性すら怪しくなってきます。
消費者も生産者も、流通関係者も、小売業者も納得できる環境を作るためには「投機筋に対する規制」と「テクノロジーを活用したサプライチェーンの透明性の確保」が必要なのです。
NX総合研究所の小林知行氏は令和のコメ騒動の主要因として「コメが今どこに、どれくらいあるか」が分からない仕組みになっていることを指摘する。また「堂島取引所でのコメ先物取引」との関連性も疑う。どういうことか。
令和のコメ騒動には庶民から見ると不可解な点が多数あります。代表的なものは「生産量は増えたのに、在庫は不足し価格も高騰した」こと。
コメ不足と価格高騰の本当の理由は、どこにあるのでしょう。
コメの流通の「不可視化」、つまり「今コメがどこに、どれくらいあるのか」が全く分からないサプライチェーンになっていることが大きいと、小林知行氏。
現在の主食用米の2つの流通経路の、1つは、JAがコメを農家から集荷し、一次問屋→二次問屋→スーパー・飲食店など、という経路を辿るルート。生産量全体の約4割を占めています。
2つ目に「集荷機能を持った問屋が直接農家からコメを買い上げる」というルート。これは全体の6割ほどを占めていて、小売店やスーパーまでの間に問屋が複数入っていて、非常に複雑なサプライチェーンになっています。
コメ不足とコメ価格の高騰が同時発生した理由として考えられるのは、「2つ目のルートで、どこかの問屋が意図的に『売り渡し』を渋った」可能性ですと、小林氏。
なぜ問屋は意図的に売り渡しを渋ったのか。
原因のひとつとして考えられるのは、2024年8月に再開した「堂島取引所でのコメの先物取引」です。8月当時はコメの平均価格が上がり続けていましたので、問屋が「今売るよりも、もう少し『待って』価格が上がってから売った方が儲かる」と判断した可能性がありますと、小林氏。
小売店も問屋が売り渋る以上、価格を下げるわけにはいきませんし、そもそも「今どの業者がどのくらいコメの在庫を抱えているのか」を把握することができません。
では、どうすれば投機や転売的な動きを抑制し、生産者と消費者の需給バランスが取れた形でコメを販売できるのか。「コメが今、どこに、どれくらいあるのか」が見えるサプライチェーンを作るしかありませんと、小林氏。
「米トレーサビリティ法」という法律がありますが、どの業者が、現在どれくらいのコメの在庫を抱えているのか、という情報は同法では明らかになりにくい。
ひとつは、米トレーサビリティ法を改正し「コメの在庫が今、どこにどれだけあるのか」という流通経路上のコメ在庫の所在を明らかにする目的を追加することが有効ではないかと考えます。本改正に合わせて、緩やかな罰則規定の見直しを行うことも検討すべきではないかと考えますと、小林氏。
もうひとつは、テクノロジーを活用して、リアルタイムにコメの流通経路を確認すること。RFIDタグという電池を持たない小型ICタグを米袋やパレットに貼り付け、チェックポイントをいくつか設けておけば、中央で省庁やJAが「今、コメがどこにどれだけあるのか」が分かるようになりますと。
約1年続くコメ騒動で疲弊している庶民からすれば「かつてのようにJAに集荷を一任し、価格をコントロールすべきだ」という声も聞こえてきそうですとも。
物流業界も同じですが、規制緩和と自由化を進めたことによって事業者の数が増え過ぎてしまい、コントロールが効かなくなっている、という状況は各業界で起きていると思いますと、小林氏。
日本の新自由主義は30年間の強烈なデフレ下で実現されたことから、コメにかかわる事業者たちも「豊作貧乏」に近い状態で、市場原理主義の恩恵を受けることは難しかったと。
少子高齢化で供給量自体が先細っていくこれからの日本で必要なのは「新自由主義のソフトランディング」と呼ぶべき発想でしょうと、小林氏。
コメの文脈でいえば、いまさら食糧管理法を復活させるのは現実的に難しいと思います。流通が自由になったことで、新たな販路を開拓したコメ農家さんも多くいて、彼らのモチベーションを損なうことは避けたいとも。
例えば、RFIDタグ搭載を集荷時に義務付ける際には、リターンとしての保障制度も充実させなければいけません。
一方で、これ以上コメ流通の自由化を野放しにすると、投機的な動きや転売もとまらない。さらに、家電業界のように、売る側の小売店の力が強くなりすぎると、ただでさえ低収入で苦しんでいる農家に追い討ちをかけるように「買い叩き」圧力が強まり、コメ生産の持続可能性すら怪しくなってきます。
消費者も生産者も、流通関係者も、小売業者も納得できる環境を作るためには「投機筋に対する規制」と「テクノロジーを活用したサプライチェーンの透明性の確保」が必要なのですと、小林氏。
進次郎大臣には、郵政民営化の大改革を強い意志で成し遂げた小泉総理(当時)に匹敵する大改革の実現を期待します。
# 冒頭の画像は、2024年夏のコメ先物取引開始を祝うセレモニーで鏡開きをする堂島取引所の有我渉社長ら

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