この作品は省三40歳からの軌道です・・・。ご興味が御座いましたら華シリーズもお読み頂けましたらうれしゅう御座います・・・お幸せに・・・。
冬の空 (省三の青春譚)
冬の空 どんよりと覆う空は 心を閉ざすのか・・・。
16
源内の書斎、小道具と明かりの処理。
静がうんざりして、電話に出ている。
三太郎、五右衛門、茶子兵衛がいる。
静 はい。何処へ行ったかは・・・。ええ、分かりません。御免ください。
三太郎、五右衛門、茶子兵衛が歌う。
「主人は何をするものぞのセレナーデ」
主人は、どこへ、いずこへ、
花も嵐も踏み越えて、ゆくは男をの生きる道とほざいて、自分勝手の横暴に泣くは女の定めでしょうか。結婚前は、愛しい恋しと言う言葉、おまえにきみにあるようなもの、月があんなに明るいのも、きみの美しい姿を照らすため、すずやかなる瞳、天を仰ぐ可愛らしい鼻、米も縦にしても入らぬ小さな唇、その出るところとへっこんだ所のナイボデイ・・・いいえ、何にも増して、汚れを知らぬ清らかな心の姿だ。とうまい言葉に乗せられて・・・。それもその筈、物書きの端くれでした。それからが忍従と我慢の日々で・・・。あなた、あなた、どこでどうしているのやら・・・。
小町が出てきて。
小町 お母さま!
静 はい。
小町 今、玄関に変な人が・・・。
静 変な人・・・。
小町 はい。児島屋与兵と申しておりますが。
静 児島屋与兵と言えば・・・。
小町 慶応年間の倉敷村の庄屋であったそうでありますが・・・。それに、浜田屋の壇那様もご一緒に・・・。
静 どのような御用でしょうか・・・。
小町 さあー・・・。
静 何はともわれお話を・・・。
小町 はいでは・・・。
小町が去る。
三太郎 何だかややこしい事になりそうでやすよニニヤーン。
五右衛門 江戸時代の人間が・・・恐いワワワン。
茶子兵衛 源内主人の頭が混乱しているようですわニヤーンにニヤン。
小町に案内されて、児島屋、浜田屋が入って来る。
児島屋 お初にお目にかかります。私は、児島屋・・・。
浜田屋 私が、浜田屋でございます。
静 ど言うことでございましょうか?
児島屋 何か好からぬ、胸騒ぎが・・・。
浜田屋 最近は、押し寄せる雄叫びが、耳の奥で・・・。
児島屋 あの当時、この村の商人は皆、米商人の看板を表に掲げ、裏では金貸し・・・。それも生きんがためでありました。
浜田屋 京大坂へ津留めを破り荷を送ったのは、少しでも食物をその日暮しの人の為と・・・。
静 わかりました。それで、源内に何か・・・。
児島屋 源内先生に、城山三郎の本を読んで理解をして、その後の善行を以て物語を進めて欲しいと思ってお訪ねいたした次第でございます。
浜田屋 この私も、歴史は時の実力者によって曲げられることが多くて・・・。その事 を・・・。
静 はい。よく分かりました。帰りましたらそのように・・・。
小町 わざわざ、明治の世から・・・。ええ、(引っ繰り返った)
小町に駆け寄る、三太郎、五右衛門、茶子兵衛。
「ニヤーワワンワンニニニンニンニヤーン」
静 そうなのですか?(その場に崩れながら)何が何だか、ああ、おお、・・・。
「ワワンワンワワーニヤンニヤーンニンニヤニンヤニン」
犬猫三匹が引っ繰り返る。
四十瀬から、倉敷村への道筋。
暗やみに荷駄を牽く一団、シルエット。
孫一郎 女子子供に手を掛けてはならん!
一行が続く、静に、黙々と、スローモウションで。
坂太郎 向山に、鶴形に大砲を配置し、南門、西門を破り焼き払え。
倉敷の風景が段々と明かりによって浮かび上がってくる。
早暁の風景である。
突然、大砲が打ち込まれる音が鳴り響く。
ホリゾントが段々と燃える赤に変わる。
大戸を打ち敲く音が続き、
元奇兵隊士達 「おおーうー」
大川小助 「西門が落ちたぞ」
引頭兵助 「南門も落ちだぞ」
坂太郎 「怪我を負うな、逃げる者を深追いするな」
原田 「代官桜井の首を執れ」
蠢く元奇兵隊の雄叫びと、ケペール銃の音。
倉敷の風景の奥のホリゾントが真っ赤に燃えだす。
舞台は雑然として明かりの交錯が縦横無尽である。
観竜寺の山門の前。
孫一郎と坂太郎と兵助。
倉敷の太鼓の音が鳴り響く。
坂太郎 代官所がまだ燃えていますよ。
孫一郎 (腕組をして)うーん。
兵助 隊長!
坂太郎 何分にも、腹が立つ、代官が留守であったことが・・・。
孫一郎 さだめか・・・。
坂太郎 隊長、大店から軍用金を調達して、いち早くこの倉敷を・・・。隊士たちも意 気が上がっています。
小助 熱き心を冷ましてはなりません。この期に一機に松山城を・・・。
孫一郎 この観竜寺で暫しの休憩を・・・。
坂太郎 このまま、隊士たちの体を駆け巡る、闘争本能を・・・。
小助 獣の血を冷ましてはなりません。
兵助 隊長、みんなを休ませて・・・疲れています。
原田が出てきて。
原田 立石さんよ。あっしゃ此処らで消えまさぁー。幕府と長州を敵に回して・・・。 あっしにゃー、國を思う心も、隊士たちのこれからを思う心も持っちゃあいねえ。命あってのものだね・・・。
坂太郎 何が言いたいのだ。
原田 立石さんよ、世のなかそんなに甘くねえ。敵は外にも中にもいるやも知れやせ んよ。
孫一郎 よい。もうとつくに命は捨てておる。お前は、生き延びて次の世を見つめてく れ。
小助 隊長、そんな弱気では指揮に差し障ります。
原田 もう立石さんの務めは済んだ、これから蝦夷へ・・・。
坂太郎 何を、戯けたことを、大望に水を指すのか?
原田 さあてー、備前岡山藩はこの事件をどう処理するか、その動きが、倒幕の輩には 気掛かりであった事でやしょうな。岡山藩は長伐に兵を出しておるが・・・。
孫一郎 何が言いたいのだ。
坂太郎 隊長、この者の戯言を聞いては為りません。
小助 そうです。
孫一郎 原田、もう、どうでも良い。私は、時代の流れの一つの泡、海の潮騒、人が、どのように考え利用したか・・・。もう良い。行かれい・・・身を案じよ。
原田 この時代には、立石さんのような男もいたと・・・。あばよ!
原田が去る。
兵助 隊長!
坂太郎 迷っては為りません、ここは予定の道程を・・・。
孫一郎 二刻後に松山へ起つ!
小助 ハッ!そのように。
岡山藩主が出て。小姓が太刀を持ち控えている。
岡山藩主 元騎兵隊士に何もしてはならん。健気である。百姓町人、その暴徒の群れが ・・・。幕府もここに極まれり。この岡山藩、あくまで中立にして、幕府の朝廷の戦いをじっと見守る。領内に逃げてきたら、捕らえてはならん、殺してはならん。追い返せ 。
おけいと正吉、千之輔、お鶴。
下手のトップに、
おけい これが旦那様のさだめなのですか?
子供達 お父さま・・・。お母さま・・・。
瓦板売りが。子供が走り回っている。
瓦板売り 立石元奇兵隊士一行は観竜寺で暫しの休息を取りやして、大店から軍用金を六千両程せしめ、荷駄を引きながら浜の茶屋、西坂を通り山手を抜け、宝福寺にへ入りやしたょ。そこで、打ち合せの示し合わせた同志達を待ちやしたが、一人として駆け付けるものはいやせんでやしたよ。約束合意なんか絵に描いた餅、焼いても炊いても食 えやぁしねえ。がっくり、立石膝を落として悔しがりやしたが。だが・・・、思いなおしやして・・・。
子供 孫一郎の心中いかばかりか・・・。
皆様御元気で・・・ご自愛を・・・ありがとうございました・・・。
山口小夜さんの「箱根用水物語」が始まりました・・・。作者渾身の作品・・・。
1年間の連載・・・。これはお奨めです・・・。是非、作品を読んで作者と出会ってください・・・。小夜子姉貴さん
恵 香乙著 「奏でる時に」
あいつは加奈子を抱いた。この日から加奈子は自分で作った水槽の中で孤独な魚と化した。
山口小夜著 「ワンダフル ワールド」文庫本化決定します・・・。
1982年、まだ美しかった横浜―風変わりなおんぼろ塾で、あたしたちは出会った。ロケット花火で不良どもに戦いを挑み、路地裏を全力疾走で駆け抜ける!それぞれが悩みや秘密を抱えながらも、あの頃、世界は輝いていた。大人へと押しあげられてしまったすべての人へ捧げる、あなたも知っている“あの頃”の物語。
山口小夜著「青木学院物語」「ワンダフル ワールド」の文庫本・・・。
作者のブログです・・・出版したあとも精力的に書き進めています・・・一度覗いてみてはと・・・。
恵 香乙さん
山口小夜子さん
環境問題・環境保護を考えよう~このサイトについて~
別の角度から環境問題を・・・。
らくちんランプ
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