この作品は省三33歳からの軌道です・・・。ご興味が御座いましたら華シリーズもお読み頂けましたらうれしゅう御座います・・・お幸せに・・・。
夏の路 (省三の青春譚)
夏の路 陽射しの強い路は・・・木陰にて涼を取り・・・。
7
十月に入った。衣装を着けての通し稽古が続いていた。
何時の間にか省三は日程になれ消化していた。大きな発作はこなかった。その頃には省三が車を運転して行けるようになっていた。
「お疲れ様でした」
みんなが声を掛け合い稽古が終わった。
省三が帰ろうとすると芳子が声を掛けてきた。
「先生、今日は仕事が遅くなったので自転車で来なかったのです・・・送って下さい。それに少しお聞きしたいことともありまして」
芳子は少し鼻にかかった声だった。
「いいけれど、まだ夜の運転は自信がないけれど、それでよければ」
省三は正直に言った。
「先生と事故るのだったら本望です」
「冗談だろう」
「いいえ、本気です」
省三は慌てて駐車場へ歩いた。まだ帰っている人がいた。その人に聞かれたら、誤解をされたら公演日までの結束力と緊張感が緩むことを恐れた。
「何をそんなに恐れているのですか・・・石井の演技が分らなくて少し聞きたいだけなのですよ」
省三は芳子を乗せて郊外の喫茶店へ入った。ウエイトレスが注文をとりに来た。
「スパゲッティとワインを」
芳子は注文した。
省三はコーヒーを頼んだ。
「みんなの前では言わなかったが、石井にのめり込まないで、突き放してやってみてくれないか」
「分りました」
それで注意は終わった。
「何か聞きたいと・・・」
「もういいんです・・・」
「いいのか」
「最近疲れるのです、毎日飲んでます」
「飲んでいるのか・・・呑めればいいね・・・私は飲めないから・・・」
「彼とは別れました・・・先生の言うとおり・・・」
「それで・・・」
「いいえ、辛いんです」
「愛していたのか・・・」
「いいえ、愛してしまったのです・・・」
「いい人が出来たのだね・・・」
「はい」
「よかったね・・・」
「良くないんです」
「複雑なのか・・・」
「酔っていいですか」
「送っていくから・・・」
「介抱してくれますか」
芳子は飲まない前から酔っていた。
スパゲッティを食べワイングラスを何杯も空けた。
芳子はスタイルのいい綺麗な女性だった。目がとろんとし色香を増していた。
芳子の家の近くに車を止めても下りようとしなかった。
「帰りたくない」
芳子は小さく言った。熱いといってブラウスを脱いだ。
「抱いて」
芳子は小さく言った。
省三は肩を抱いてそのままじっとしていた。
「公演が終わるまで・・・」
省三はそう言った。声は震えていた。
省三はいつかこんな日が来ることを予期していたが、心は乱れていた。
(この小説は「十七歳の海の華」の続編である。彷徨する省三の青春譚である。
ここに草稿として書き上げます。書き直し推敲は脱稿の後しばらく置いて行いますことをここに書き記します)
皆様御元気で・・・ご自愛を・・・ありがとうございました・・・。
恵 香乙著 「奏でる時に」
あいつは加奈子を抱いた。この日から加奈子は自分で作った水槽の中で孤独な魚と化した。
山口小夜著 「ワンダフル ワールド」文庫本化決定します・・・。
1982年、まだ美しかった横浜―風変わりなおんぼろ塾で、あたしたちは出会った。ロケット花火で不良どもに戦いを挑み、路地裏を全力疾走で駆け抜ける!それぞれが悩みや秘密を抱えながらも、あの頃、世界は輝いていた。大人へと押しあげられてしまったすべての人へ捧げる、あなたも知っている“あの頃”の物語。
山口小夜著「青木学院物語」「ワンダフル ワールド」の文庫本・・・。
作者のブログです・・・出版したあとも精力的に書き進めています・・・一度覗いてみてはと・・・。
恵 香乙さん
山口小夜子さん
環境問題・環境保護を考えよう~このサイトについて~
別の角度から環境問題を・・・。
らくちんランプ
K.t1579の雑記帳さん
ちぎれ雲さん