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つれづれなるままに・・・・

羊と鋼の森

2018-06-17 | 映画

ずっと楽しみにしていた映画です

羊とは ピアノの弦を叩くハンマーに付いている羊毛のフェルト

鋼とはピアノの弦、森はピアノの材質の木材を表しているそうです

羊のハンマーが鋼の弦をたたくことによって聴く者を音楽の森に誘うという意味もあるそうで

本当に言葉の表現が深いです

なんだか 今NHKで放送されてるピアノの森とダブってしまいます^^

主人公の外村が高校の体育館のピアノを調律しに来た板鳥という調律師が調律したピアノの音色を聞きます

すると、それまではピアノにもクラシックにも無縁だったにも関わらず

板鳥のピアノの調律に憧れた外村は高校卒業後専門学校に通い 楽器店でピアノ調律師を目指します

良い調律師を目指す外村でしたがクラシックにもまったく縁のない山村育ち・・・毎日が勉強です

そんな中 戸村は一緒に働く天才調律師の板鳥にどんな音を目指しているのかと聞きます

すると 小説家の原民喜の言葉を伝えます

明るく静かに澄んで懐かしい文体 少しは甘えているようでありながら

きびしく深いものを湛えている文体 夢のように美しいが現実のようにたしかな文体

原作では外村が板鳥の調律を見ているシーンではこんなふうに書かれています

風景だったピアノが呼吸を始める。

ひとつずつ音を合わせていくうちにピアノはその重たい身体を起こし縮めていた手足を伸ばす

歌う準備を整えて今にも翼を広げようとする  その様子が僕がこれまでに見てきたピアノとは違った

大きな獅子が狩りの前にゆっくりと身を起こすようなイメージだろうか

ホールのピアノというのは別の生きものなのだ  別、としか考えられなかった

鳴る音が、これまでに見てきた家にあるピアノとはまったく別

朝と、夜。インクと、鉛筆。それくらい別のもののようだった

ピアノは440Hzでチューニングされるのですが 調律って奥が深いんです

どんな音色がいいのか、どんなタッチがいいのか それに応えてくれるのが調律師さんです

美しいA(ラ)の音の響き・・・我が家のピアノは二点Aが狂ってる>< 職場は二点CとDが・・・

ちょっとの音の狂いが響きを変えるし 耳と感性がないとできないだろうなぁ・・・

ずっと山の中で育った外村は音楽の経験はないですが、森の響きとピアノの響きがリンクしてるように思えます

土があり、水が流れ、草が生え、動物がいて、風が吹いて・・・

 

もともとの原作がいいのです 言葉が美しくて・・・宮下奈都さんの言葉の力がすごすぎます

原作ではメトロノームについてこんなこと書かれています

何かに縋って、それを杖にして立ち上がること 世界を秩序立ててくれるもの

それがあるから生きられる、それがないと生きられない、というようなもの

とにかくあっという間の二時間でした

優しいお話でとってもいい上に、音の違いを楽しめました

これ音が狂ってるとか、それぞれのピアノの演奏も違うし、音色も違うし ピアノの森もそうなんですけど

そういった違いを感じながら楽しめるのはいいですね・・・でもそっちに気が行き過ぎてしまうことも多いのですが^^;

調律師ってピアニストみたいに華やかな仕事ではないですが

ピアニストにとってよい調律師に出会って自分の表現したいことを実現させてくれる最も大事なパートナーなんだと思います

そんな仕事にプライドを持って働いておられる方たくさんおられると思います

数百年前のピアノを管理するような調律師さんとかはもっと大変なんだろうなぁ・・・

そんな新米調律師の外村は、羊のハンマーが鋼の弦をたたくことによって生まれる音楽の森を歩む人生を選びました

どんな小さいことでも 頑張っていれば必ず意味があるんだなと感じさせてくれました

音楽はジブリでお馴染みの久石譲さんでとても優しい音楽で癒されました

エンドロールで流れる辻井伸行さんの音色も優しくて 最後まで癒されました!