柳美里の今日のできごと

福島県南相馬市小高区で、
「フルハウス」「Rain Theatre」を営む
小説家・柳美里の動揺する確信の日々

祖母

2010年08月31日 02時15分52秒 | 日記
15年前、わたしは妊娠6ヶ月で十二指腸潰瘍と出血性胃炎を患い、喀血がとまらず死にかけていた。

面会謝絶になっていた病室に、突然、祖母が訪ねてきた。
家族には誰にも知らせていなかったのに……

「美里が死にかけている」

と思い、都内の病院を探し歩いたのだという。

その翌年の10月19日、祖母は82歳で亡くなった。
亡くなる前日だった。
入院先の横浜中央病院を訪ねると、もう意識がないはずの祖母が、目を開け、わたしの顔を見て涙を流し、手を伸ばしてわたしの手首を凄い力で握りしめた。

祖母は「美里は3歳までうちで育てたから、うちの子だよ」とよく言っていた。
ベッドから起き上がれない夜は、祖母が訪ねてくるような気がする。
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