ウンキョンちゃんのお祖父さんは、1936年のベルリンオリンピックで(日本代表として)優勝したマラソンランナー、孫基禎さんです。
9月26日にBSで再放送された「世界わが心の旅」や、『8月の果て』を読んでくださったかたはご存知だと思いますが、
孫基禎さんとわたしの祖父は共に、植民地下の朝鮮で日章旗を胸につけて走らなければならなかったマラソンランナーだったのです。
わたしは、ウンキョンちゃんと知り合う前に、孫基禎さんと出逢いました。
孫さんは、2002年11月15日にソウル市内の病院でお亡くなりになりました。
わたしは、16日のお通夜、17日の永訣式に参列しました。
ウンキョンちゃんは、黒いチマチョゴリを着て、化粧気のない青白い顔をしていました。
柩が霊柩車におさめられたあと、「だいじょうぶ?」と声をかけると、ウンキョンちゃんは静かな声でいいました。
「おじいさんがいってたんです。おれの葬式は雨だって。雲で覆われて空も見えないだろうって……雪ですね……」