こんな日は不思議と目覚時計に頼らなくても起きる事ができるものである。前夜の就寝時には稲光と屋根をたたきつける雨音がけたたましかったが・・・・嘘の様な快晴の朝を迎えた。徐に起き上がり窓を開けると、伊豆山から見下ろす青い相模湾は無数の三角波が立っていた。三角波は風の強いときに出来る波で小船にとっては船出を諦めさせるに充分な現象でもあった。小さく「駄目か!」と呟き、ベランダ脇の黄色く実を付けたビワの木に注目すると、この木も強い風に身を任せるように大きく揺れていた。ここでまた「駄目か!」と2回目の呟きである。そう、小舟での出漁が駄目だったら、ビワでも収穫しようと昨夜思っていたのである。第一目標は出漁、第二目標はビワの収穫と決めていたが、両方とも駄目になるとは・・・・。そんな時ふと思ったのが「小田原城に久し振りに行って見よう」だった。小田原城公園には25年以上も前に撮影会で出掛けた事はあったが、天守閣に上ったことは無いので、天守閣から風の吹く相模湾でも見下ろしてみようと言う単純な発想だった。そして数時間後には小田原城天守閣から下界を眺めていた。天守閣に上る階段や坂で、かなりを汗をかいていたが、天守閣を吹き抜ける強風という表現が一番似合う風のせいで、あっと今に汗は何処かに吹き飛ばされてしまったようである。見下ろす相模湾のここからも分かる三角波の遠く向こうに大島がうっすら見えていた・・・・・。