「ん? こりゃたまげた。オレンジ味のジュースだ。いやー、おれ達ついてるな」ガッチは言うと、グビグビ、と喉を鳴らしながら、ひと息で飲み干しました。「うまかったぜ、サトル。もう一杯、もらえないかな」
サトルは、もう出てこないかもしれないよ、と断りながら、また自動販売機のボタンを押してみました。
するとどうでしょう。今度もまた、ジュースの缶が出てきたのでした。どうやらこの自動販売機は、こんなさびしい場所にあるせいで、どこか中の機械が故障してしまっているようでした。
二人は、無料のジュースを浴びるほど飲むと、また大の字になりました。満足そうな顔からは、先ほどまでの苦痛に満ちた表情など、想像もできませんでした。
地獄から一変して、天国に飛び上がった心地よさを味わいながら、サトルとガッチは、気持ちよさそうな寝息を立て始めました。
さて、どのくらい時間が経ってからでしょうか。二人がゆっくりと目を覚ましました。昼間、あれほど暑かったお日様は姿を消し、変わって、満天の星が地上を照らしていました。
「ガッチ――なんか呼んだ?」
「サトル――なんか呼んだか?」
サトルとガッチは目を覚ますと、お互いに顔を見合わせながら言いました。二人とも、どちらかが自分を起こしたものと思っていたのでした。
「えっ、ぼく呼んでないよ」
「あっ、おれも呼んでないぞ」
二人はよくわからない、といった表情で、考えました。確か、眠っている時に声がしたのでした。自動販売機の声ではありません。もっと、腹の底から湧いてくるような、太い声でした……。
そういえば、二人ともそんな声はしていません。はて、それでは一体誰が二人を起こしたのでしょうか――。
「ガッチ。なんか生暖かい風が吹いてない。昼間みたいな――」と、サトルが頬をなでながら言いました。
「いや、涼しい風しか吹いてないぜ。ちょっと肌寒いくらいの――」と、ガッチが声を詰まらせました。
「どうしたの?」と、急に黙りこくったガッチ見て、サトルが言いました。
「おい……」と、ガッチが声をひそめて言いました。「いいか、“今だ”って言ったら、おれを肩に乗せて、一目散に走れよ――。もしかしたら、おれ達の方が遅いかもしれねぇけど」
サトルは、もう出てこないかもしれないよ、と断りながら、また自動販売機のボタンを押してみました。
するとどうでしょう。今度もまた、ジュースの缶が出てきたのでした。どうやらこの自動販売機は、こんなさびしい場所にあるせいで、どこか中の機械が故障してしまっているようでした。
二人は、無料のジュースを浴びるほど飲むと、また大の字になりました。満足そうな顔からは、先ほどまでの苦痛に満ちた表情など、想像もできませんでした。
地獄から一変して、天国に飛び上がった心地よさを味わいながら、サトルとガッチは、気持ちよさそうな寝息を立て始めました。
さて、どのくらい時間が経ってからでしょうか。二人がゆっくりと目を覚ましました。昼間、あれほど暑かったお日様は姿を消し、変わって、満天の星が地上を照らしていました。
「ガッチ――なんか呼んだ?」
「サトル――なんか呼んだか?」
サトルとガッチは目を覚ますと、お互いに顔を見合わせながら言いました。二人とも、どちらかが自分を起こしたものと思っていたのでした。
「えっ、ぼく呼んでないよ」
「あっ、おれも呼んでないぞ」
二人はよくわからない、といった表情で、考えました。確か、眠っている時に声がしたのでした。自動販売機の声ではありません。もっと、腹の底から湧いてくるような、太い声でした……。
そういえば、二人ともそんな声はしていません。はて、それでは一体誰が二人を起こしたのでしょうか――。
「ガッチ。なんか生暖かい風が吹いてない。昼間みたいな――」と、サトルが頬をなでながら言いました。
「いや、涼しい風しか吹いてないぜ。ちょっと肌寒いくらいの――」と、ガッチが声を詰まらせました。
「どうしたの?」と、急に黙りこくったガッチ見て、サトルが言いました。
「おい……」と、ガッチが声をひそめて言いました。「いいか、“今だ”って言ったら、おれを肩に乗せて、一目散に走れよ――。もしかしたら、おれ達の方が遅いかもしれねぇけど」