「ふーん」と、小人のガッチは、疑っているように言いました。「よくわからねぇけど、おれ様でよかったら、力を貸してやるぜ」
サトルは、ひげの生えた不思議な子供のことや、お城のような建物にあったドアのひとつから、落とされたこと。そして、お母さんが変身した鬼に追いかけられたことなど、どうして自分がここへ来てしまったのか、ガッチに話しました。
「ふーん。なんか変な話だなぁ」と、ガッチが言いました。「ここはさ、ドリーブランドってんだ。大昔は寝ぼすけの王さまが治めていたらしいけど、今の王様は目を覚ますことが滅多になくて、城の中で寝てばかりいる。だからおれ達も、めったに顔を見ることがないんだ。だからって、困ることはないのさ。ここに住んでる人達が、町ぐるみで治めているからな。
まぁ古い言い伝えでは、住人同士のいざこざが絶えなくて、『戦争』とかいう、たくさんの人達が傷つけ合った事があったらしんだが、今じゃそんな事が本当にあったのか、知っているヤツなんていやしない。だからおれは、そんなの誰かが作ったおとぎ話じゃないかって、そう思ってる。
王様の城へは、おまえの後ろの道を真っ直ぐに行けば着くぜ。で、おれが向かっている方に行けば、希望の町っていう、ちっちゃいけれども、にぎやかな町がある。おれはこれからそこへ行くつもりだけどね――。ここから一番近いのは、その町だ。
ほかにもいろいろ知りたいなら、魔笛の谷に住んでいる風博士を訪ねて行けばいい。――どうだい、役にたったかい」
「うん。ありがとう」と、サトルは言いました。
「じゃあ、これからどうするつもりだい」と、ガッチが、にっこり笑いながら言いました。
「えっ? そうだなぁ――」と、サトルは少し考えると言いました。「やっぱり、ぼく風博士の所へ行った方がいいと思うんだけど。早く帰らないと、またお母さんに怒られちゃうから」
「ふーん。そうだなぁ、そうした方がいいと思うぜ」と、ガッチが大きくうなずきました。「でも、風博士の所に行くにゃあ、希望の町を通っていかねぇとならないんだ。案内するから、ほら、よろしく頼むぜ」
「……」と、サトルは首をかしげました。
「だからさぁ、わかんねぇかなぁ、おれが案内してやるからさ、肩を貸しなよ。おれとおまえが並んで歩いたって、一歩踏み出すたびに、どんどん差がつくじゃねぇか」
「いいの」と、サトルが言いました。
「どうってことないさ。旅は、お互い様だってぇの」
と、サトルがしゃがむと、小人のガッチが、ぴょこんと肩に飛び乗りました。
「ねぇ、どのくらいで着くの」と、歩き出したサトルが言いました。
「そうだなぁ」と、ガッチが考えるように言いました。「この感じなら、日暮れまでには着くと思うぜ」
サトルはガッチを肩に乗せながら、草原の真ん中に延びる細い道を、希望の町に向けて歩き始めました。
草原の道を歩きながら、サトルは、ふと気がつきました。いつのまにか、自分が寝間着を着ているのでした。サッカーをしている時は、ちゃんと洋服を着ていたはずなのに――。
サトルは、ひげの生えた不思議な子供のことや、お城のような建物にあったドアのひとつから、落とされたこと。そして、お母さんが変身した鬼に追いかけられたことなど、どうして自分がここへ来てしまったのか、ガッチに話しました。
「ふーん。なんか変な話だなぁ」と、ガッチが言いました。「ここはさ、ドリーブランドってんだ。大昔は寝ぼすけの王さまが治めていたらしいけど、今の王様は目を覚ますことが滅多になくて、城の中で寝てばかりいる。だからおれ達も、めったに顔を見ることがないんだ。だからって、困ることはないのさ。ここに住んでる人達が、町ぐるみで治めているからな。
まぁ古い言い伝えでは、住人同士のいざこざが絶えなくて、『戦争』とかいう、たくさんの人達が傷つけ合った事があったらしんだが、今じゃそんな事が本当にあったのか、知っているヤツなんていやしない。だからおれは、そんなの誰かが作ったおとぎ話じゃないかって、そう思ってる。
王様の城へは、おまえの後ろの道を真っ直ぐに行けば着くぜ。で、おれが向かっている方に行けば、希望の町っていう、ちっちゃいけれども、にぎやかな町がある。おれはこれからそこへ行くつもりだけどね――。ここから一番近いのは、その町だ。
ほかにもいろいろ知りたいなら、魔笛の谷に住んでいる風博士を訪ねて行けばいい。――どうだい、役にたったかい」
「うん。ありがとう」と、サトルは言いました。
「じゃあ、これからどうするつもりだい」と、ガッチが、にっこり笑いながら言いました。
「えっ? そうだなぁ――」と、サトルは少し考えると言いました。「やっぱり、ぼく風博士の所へ行った方がいいと思うんだけど。早く帰らないと、またお母さんに怒られちゃうから」
「ふーん。そうだなぁ、そうした方がいいと思うぜ」と、ガッチが大きくうなずきました。「でも、風博士の所に行くにゃあ、希望の町を通っていかねぇとならないんだ。案内するから、ほら、よろしく頼むぜ」
「……」と、サトルは首をかしげました。
「だからさぁ、わかんねぇかなぁ、おれが案内してやるからさ、肩を貸しなよ。おれとおまえが並んで歩いたって、一歩踏み出すたびに、どんどん差がつくじゃねぇか」
「いいの」と、サトルが言いました。
「どうってことないさ。旅は、お互い様だってぇの」
と、サトルがしゃがむと、小人のガッチが、ぴょこんと肩に飛び乗りました。
「ねぇ、どのくらいで着くの」と、歩き出したサトルが言いました。
「そうだなぁ」と、ガッチが考えるように言いました。「この感じなら、日暮れまでには着くと思うぜ」
サトルはガッチを肩に乗せながら、草原の真ん中に延びる細い道を、希望の町に向けて歩き始めました。
草原の道を歩きながら、サトルは、ふと気がつきました。いつのまにか、自分が寝間着を着ているのでした。サッカーをしている時は、ちゃんと洋服を着ていたはずなのに――。