かの有名なワグナーのオペラ「ローエングリン」。
あまり難しいこと考えずに素直に楽しめばいいのだが、それにしても我々日本人にはちょと分かりにくい点が多すぎる。少なくとも以下の疑問を頭に入れて見た方がいいと思う。
1、国王ハインリッヒ1世とは何者か
・・・・・ドイツの名門ザクセンの初代の王様。カール大帝のフランク王国が分裂し、今のドイツ「東フランク王国」はバラバラの状態が続くが、この王様が出て再統一に向かう。次のオットー1世がドイツ人の王としてローマ教皇から戴冠を受け(936年)、ここに所謂「神聖ローマ帝国」が成立する。
2、国王はベルギーへ何をしにきたのか
・・・・・この劇の場所は現在ベルギーのアントワープのシェルデ河畔。東フランク王国の東国境はマジャール人の侵入に悩まされている。ハインリッヒ1世は王国領土を拡張平定しつつ、マジャール人対策のために兵を募りに来る。この地の貴族テトラムント公は前の領主を倒しハインリッヒに取り入ろうとしている。その妻オルトルートは古いゲルマンの宗教(妖術)を体現しているといわれている。
3、聖杯の騎士とは何か・・・・・ヨーロッパ中世でローマ教皇の権威が最高潮に高まった時期(例、カノッサの屈辱)、キリスト教サイドより教会や社会的弱者を守る戦士として騎士の理念が称揚されるようになり、騎士道、騎士文学が流行する。彼等はイエスキリストにかかわる聖遺物を守護、崇拝、喧伝し各地を遍歴する。
4、ローエングリンとは何者か
・・・・・当時騎士物語の一つとして、「騎士長パルツィヴァル」の物語が流行している。スペイン北部の山中にあるといわれるモンサルヴァート城で聖杯を守護し、多くの騎士達の修道場となっている、云々の物語。ローエングリンはその息子で各地を遍歴、領主や王様のお抱え戦士となる機会を狙っている。
5、決闘裁判、代理裁判
・・・・・当時の風習として(未だ私闘禁止、国権による裁判が成熟していない)、争いごとの解決手法として決闘による決着やその時に代理人を立てることが認められていたという。
・・・・・エルザとローエングリンの即時結婚はこの代理決闘の賜物なのか、それとも純粋に愛の結果なのか。ローエングリンが名乗りをしないのは騎士団の掟なのか、それともこの結婚が一時的なものを見通してのことなのか?
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