「ラスト・ハーレム」
オスマントルコを扱った映画をいろいろ探すのだが、なかなか良いものがない。
やっとあった「ラスト・ハーレム」(1999年伊仏トルコ合作)・・・
男性顧客を呼び込もうと苦心したタイトルなのだろうが、あまり効果は無かったようだ。
内容もさることながら、画面が終始暗く、字幕が少なく筋書きも分かりにくい。
こういう映画はよほどその作品の背景となる歴史や文化に精通した人の監修を仰ぎ . . . 本文を読む
ハリウッドを始め、メジャーな映画会社が本格的に南米舞台物に取り組んだ形跡はない。
従って、イギリス人監督による1986年の一本「ミッション」は大変重要だ。
この映画を本格的に理解するためには、以下の知識が要る。
1、スペイン・ポルトガルの南米植民地統治のあらまし
①初期コンキスタドーレたちによる「エンコミエンダ制」とその推移
②本国人とクリオーリョ、メスティソ、インディオ、黒 . . . 本文を読む
3月17日、アカデミー賞授賞式直後の公開ながら、映画館はさほど混み合っていない。
主演女優賞作品という勲章があるのに、内容はいま一つ物足りないこと、既に見抜かれているのだろうか。
確かにメリル・ストリープは上手い。完璧にサッチャーになりきっている。
一言で言えば、彼女のワンマンショー、彼女のために造ったような映画だ。
映画一作の標準時間を2時間とすれば、この映画は1時間45分で15分余して . . . 本文を読む
マッチョすぎる「孔子の教え」
この映画、孔子の生きた春秋時代の雰囲気は部分的にはよく描けているが、
CGを使った軍隊や戦場のシーンがオーバーかつ多用し過ぎて、
一体孔子をどういう人物と心得ているのか。
確かに孔子とか論語とかいろんな本があるのだが、もうひとつピンとこない。
上から目線で説教臭い「お言葉」をあれこれ捏ねまわされてもぜんぜん面白くない。
もっと人間臭く書いてくれないと・・・。
そ . . . 本文を読む
絵葉書のような「ゲーテの恋」
久しぶりのドイツ映画。ゲーテの若き日の彷徨を描いた
「若きウェルテルの悩み」の映画化と考えていいだろう。
18世紀末のドイツの雰囲気はよく出ていて、
絵葉書やプロマイド写真のような出来上がり。但し・・・それだけ。
しかしゲーテといえばシラーと並びドイツ人が誇る大文豪、ドイツの至るところに彼らの銅像がある。
彼らが煽った「シュトゥルム・ウントドランク」=疾風怒濤 . . . 本文を読む
なんともお粗末「1911」
中国の「辛亥革命」は中国、いや世界史上も最重要出来事の筈。
この映画はその「革命100周年映画」と鳴り物入りの公開であるが、
現在の映画の水準から言ってもなんともお粗末。
歴史などと五月蠅いことを言わずに、
全くのエンタメと割り切って見るとしても、これがちっとも面白くない。
ともあれ映画造りの土台たる脚本がチグハグ、人物描写がとてもステレオタイプ、戦闘シーン過剰 . . . 本文を読む
「アランフェス協奏曲」・・・・・この有名なギター曲の題名・地名が気になって、調べると以下のような「アランフェスの蜂起」という事件がある。
①時はフランス革命の真っ最中。スペインの王室は腐敗・混乱の極み。国王カルロス4世は愚鈍の象徴、王妃ルイサは我欲のかたまり。王妃の愛人で近衛兵のゴドイを宰相にまで仕立て上げ、フランス革命勃発に際しては異端尋問を強化するのみ。しかし若い皇太子フェルディナンドが . . . 本文を読む
ダントンといえば、パリのサン・ジェルマン大通りの、オデオン四辻のあたりに立っているダントンの銅像を思い出す。
アンジェイ・ワイダ監督の「ダントン」。フランス革命上の有名人物を、極めて人間くさく、ロベスピエールと対比しながら描いた秀作だ。
原作はスタニスワヴァ・プシビシェフスカの「ダントン事件」ということであるが、この映画に描かれている内容は、その細部においても史実に一致しているようである。 . . . 本文を読む
<インド宗教暴動>
報復続発で200人以上殺害(毎日新聞) 2002 年 3 月 01 日
【イスラマバード春日孝之】インド西部グジャラート州の最大都市アーメダバードで、先月27日に起きた列車放火事件を機にイスラム教徒へのヒンズー教徒の報復事件が続発し、各地で暴動が広がっている。
国防省は1日、事態沈静化に向け陸軍を派遣したが、これまでに200人以上が殺害された。暴動が全国規模に飛び火する可 . . . 本文を読む
最近のなり物入りの映画だが、ヒットは期待薄、早期に切り上げられるだろう。
ともかく、お金と、渡辺謙の英語やコン・リーの美貌が勿体ない。
製作者か監督かしらないが、
「最後まで誰が犯人か分からないミステリー仕立て、エキゾチック上海、一流役者」
というだけで、あとは宣伝費任せ。・・・一人よがりもいいとこだ。
背景となっている歴史的事件ももう少し丁寧・正確さが欲しい。
(・・・・目くじらを立てる . . . 本文を読む
五味川純平氏の「戦争と人間」・・・大変な力作かつ大作であることは間違いない。
これが日本の文壇・文学界にどう位置づけられているのか、分からないが、
以下素人が全く勝手に想像を逞しゅうして一筆。
ちょっとオーバーに、一言で言えば、この小説は日本版「戦争と平和」なのだという珍説。
五味川氏は「人間の条件」の成功で、日帝とその結果としての戦争・敗戦を伝えるものとして、
自己の役割に自信を持ったに . . . 本文を読む
NHKBSプレミアムが8月15日―20日の間、「人間の条件」を一部から六部まで、連日一部づつ一挙放映した。
私にとっての「人間の条件」・・・高校生時代(昭和34-37)、若い社会の先生がこの本を愛読し、
文字通り寝食を忘れて読んでいた、さすがに本のあらすじまでは話されなかったが、
「君たちにはちょっと早い。読んだら勉強できなくなる」と話されたことを鮮明に覚えている。
その後大学に入って、この . . . 本文を読む
カンヌ映画祭でパルムドール(最高賞)を獲った「ツリー・オブ・ライフ」。
監督のテレンス・マリックは「孤高の映像作家」などと持ち上げられるが、
要は綺麗だが難解なものに取り組むご仁。
だから「天国の日々」や「シン・レッド・ライン」など、何故かヒットしない、
興行上の失敗作を世に送り出す厄介作家でもあると思う。
今回ブラッド・ピットが好演しているとはいえ・・・ヒットするとは限らない。
この映画 . . . 本文を読む
シルクロード紀行(6)河西回廊と嘉峪関
中華世界から外の世界への第一歩、シルクロードへの出発点となる地域がいわゆる「河西回廊」。
・・・・・当初、漢の武帝がBC111年に置いた河西四郡(武威、腸液、酒泉、敦煌)が始まりとされ、
11世紀には、河西五州(上記夫々が涼州、甘州、粛州、砂州とされ、新たに安西に瓜州が置かれた)として再編成された。
このことが頭にあると、当初、旅行会社のシルクロードツ . . . 本文を読む
フランス革命を扱った、あるいはそれを背景にした映画はたくさんあるように思うかもしれないが、よーく考えるとあまりない。
いや、少し厳密に言うと、一般には「フランス革命」というと、漠然と幅広く考えていて、以下の四つの分野の総てを含んでしまっている。
①革命前の「アンシャンレジーム」・・・・典型例:マリー・アントワネット物
②狭義の革命勃発とその成り行き・・・・下記
③皇帝ナポレオンの出現と活躍・・・ . . . 本文を読む