シニア花井の韓国余話

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韓国は北に思い知らせたのか、好機を逃したのか【社説】

2015年08月27日 16時19分01秒 | Weblog
 北朝鮮による地雷埋設から始まる一連の事態を受けた今回の南北合意について、韓国国内では非常に異なる二つの見解が出ている。まず、韓国政府は「北側(北朝鮮)による遺憾の表明」すなわち「北朝鮮が遺憾を表明したこと自体が非常に珍しい」とした上で、ことさらその意義を強調している。これに対して「北朝鮮が遺憾の意を表明したのは、あくまで地雷の爆発により2人の韓国軍兵士が負傷した事実」という点を問題視する見方もある。つまり「これでは北朝鮮が自分たちによる挑発行為を認め、謝罪したことにならない」と疑問を投げ掛けているわけだ。どちらの見解も一理あるといえるだろう。
 今回の合意文書の内容をあらためて見ると、確かに北朝鮮は遺憾の意を表明しているが、それについて「合意文の表現では、第3者がけが人を見舞うようなものとしか受け取れない」という批判が出るのも当然だ。しかも、北朝鮮側の交渉担当者だった黄炳誓(ファン・ビョンソ)朝鮮人民軍総政治局長は、合意に至った直後に北朝鮮のテレビ番組に出演し、地雷問題について「南側(韓国)が根拠のない事件をでっち上げた」などと述べ、北朝鮮の関与を全面的に否定している。そのため一部では「北朝鮮の誤った考え方を根本から正す絶好のチャンスを逃した」とし、合意を批判する声も出ている。
 その一方で、北朝鮮向け拡声器放送の中断を明記した文章に「正常ではない事態が発生しない限り」という条件を付けたことは評価できるだろう。今回の一連の事態を通じ、北朝鮮の権力者たちは北朝鮮住民が真実を知ることを何よりも恐れている事実と、その手段として拡声器放送が非常に効果的だという事実をわれわれはあらためて認識した。今回の合意文書によれば、北朝鮮がいかなる形であれ「正常ではない事態」を引き起こせば、われわれはいつでも拡声器放送を再開できる権利を手にしたことになる。これは、考えようによっては「北朝鮮の挑発行為に対する事実上の抑止効果」を期待できるものにもなるはずだ。
 ちなみに、もし地雷を設置したのが本当に北朝鮮でないのなら、北朝鮮が一連の合意をする理由もなかったはずだ。このように考えれば、今回の合意について「北朝鮮は最後までしらを切り、われわれはまたもだまされた」などと批判する必要はない。ただいたずらに成果を強調することや自画自賛はもちろん禁物だ。
 韓国と北朝鮮は今回の協議で「話し合いの継続」や「離散家族再会行事の実施」などでも合意した。朴槿恵(パク・クネ)大統領は8月25日、大統領府報道官を通じて発表したメッセージの中で「今後大切なことは、南北が合意に至った一連の具体的事業を、継続的な話し合いを通じて円滑に進めていくことだ」との点をあらためて強調した。韓国統一部(省)の当局者も「会談の定例化、体系化を進めていきたい」とコメントしており、このような対話の雰囲気は今後も維持していかなければならない。
 一方で今回の合意により、北朝鮮が韓国海軍の哨戒艦「天安」への攻撃を認めて謝罪するかどうかがあらためて浮上しそうだ。北朝鮮は2010年、哨戒艦「天安」に魚雷攻撃を加えて沈没させ、これによって天安乗組員46人の尊い生命が犠牲になった。この事件を受けて韓国政府はいわゆる「5・24制裁措置」を発表したが、この制裁は今も続いており、これが解除されない限り、たとえ今回南北が交流拡大で合意しても、それを実際に進めていくことはできない。北朝鮮が天安攻撃を認めず、謝罪もしない状態で韓国政府が制裁を解除することは、国民が絶対に容認しないはずだ。
 また、北朝鮮は今回の交渉で「金剛山観光の再開」を求めたという。南北対話の雰囲気を利用して天安攻撃への批判を適当にやり過ごし、その上で金剛山観光を再開させ、外貨を獲得するのが北朝鮮の狙いだ。北朝鮮は今回の交渉を通じ「韓国に対する軍事挑発や脅迫はもう通用しない」と考えたのか、あるいは「拡声器放送による困難な状況の打開」だけを目指していたのかは今のところ分からない。ただし、天安問題に対する北朝鮮の態度を見極めていけば、この点も近く明確になるはずだ。
 北朝鮮は昨年2月、離散家族再会行事が行われている期間中にミサイルを発射した。また、長距離弾道ミサイルと核兵器開発をやめることもないだろう。南北対話は今後も続けていかなければならないが、過度な期待によって判断を誤るようなことが絶対にあってはならない。
韓国大手新聞 朝鮮日報15年8月26日記事抜粋


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