破産債権の確定と配当

2022-07-10 11:23:24 | 倒産法・債権管理

[裁判所による債権調査期日等の定め]

・裁判所は、破産手続開始決定の同時処分として、債権届出期間(破産法31条1項1号)と債権調査期日(法文上は「破産債権の調査をするための期日」(破産法31条1項3号)、その実質は一般調査期日(破産法116条2項、31条1項3号))を定める。裁判所から破産債権者には、破産手続開始決定通知書(破産法32条3項1号)とともに、破産債権届出書の雛形が送付される。□講義219、研究[書41]

・異時廃止が予想される場合は、債権届出期間の定めを留保できる(破産法31条2項:名古屋地裁の「N方式」)。この場合は、破産債権届出書通知書に留保型である旨を記載する。後に配当の見込みが生じたときは、債権届出期間と一般調査期日が定められる(破産法31条3項)。この時、管財人は官報公告費用を予納する。□Nマ7(89)、研究[書42]

・法文上は債権調査は「期間方式」が原則とされているものの、実務では「期日方式」が原則的運用とされている。□研究89

 

[債権届出期間の意義?]

・「債権届出期間」という字面にもかかわらず、それは「届出を制限する失権効の基準時」を意味しない。債権届出期間の経過後の届出も有効である。実務的には、「届出の最終期限≓一般調査期日終了時」と理解した方が便宜である。□条解807、講義219

・債権届出期間の主な本来的意義は、経過後の届出債権を一般調査から排除して特別調査へと振り分ける点にある(破産法122条)。もっとも、実際の運用では、「誰の異議もない」との建前で一般調査にしているし(破産法122条1項ただし書)、現に、換価未了等を理由に財産状況報告集会を続行する場合、一般調査期日が続行されている。□講義223,225

 

[破産債権の届出(1):基本]

・破産債権者は、破産債権届出書に証拠書類の写し(破産規則32条4項1号)などを添付して、裁判所へ提出する(破産法111条1項)。□講義218-9、研究82

・破産債権届出は、債権調査手続における異議権の行使などの前提となる。実体法上の効果としては、届け出た破産債権につき消滅時効の完成猶予効が生じる(破産法111条1項、民法147条1項4号)。□研究76

・届出の原則的期限は一般調査期日の終了時になるが(破産法112条1項)、換価業務が終了するまで債権調査が続行される運用だから、実務的な期限は「換価終了直後の財産状況報告集会(=最後の一般調査期日)」時となろう。□講義219,223,225

 

[破産債権の届出(2):変更・承継・取下げ]

・届出事項の変更も可能だが、既述の届出自体の期限までに行う必要がある(破産法112条4項→1項)。□講義220

・届出名義の変更は、届出破産債権者と承継債権者の連名で「承継届出」を提出する運用とされている(破産法113条参照、破産規則35条)。他の破産債権者を害しないので一般調査期日終了後も承継届出をすることは許されており(破産法113条1項)、簡易配当の場合の承継届出期限は「簡易配当に関する除斥期間満了まで(=簡易配当の通知が通常到達すべき水曜日から1週間以内)」となろう(たぶん)。さらに、除斥期間後に連名で振込依頼書(+承継届出)が出されれば、管財人は直接に新債権者へ配当金を支払う運用もある(←簡易配当でも可??)。□講義220-1,250(注18)参照、条解814、研究116-7

・届出の取下げがあると、届出の効果は遡及的に消滅する。その期限は破産債権の確定までと解されるが、確定後の「取下げ」も「後の配当請求権などの放棄」として処理される。□講義221

 

[破産管財人による債権調査と認否]

・裁判所は、破産債権届出書や証拠書類の写しを整理して債権者番号を付し、債権届出期間が経過した後にまとめて管財人へ交付する。□講義222

・管財人は、証拠書類の写しを確認したり、破産債権者から事情を聴取するなどをして認否の方針を決める。その上で、一般調査期日に先立って「認否予定書」(破産規則42条1項)を作成して提出する。認否予定書には、債権届出書の記載(誤記を含む)をそのまま転記する。□講義224-5、認否手引き3(102)

・一般調査期日において、管財人は、「破産債権の額」「優先的破産債権であること」「劣後的破産債権又は約定劣後破産債権であること」「別除権付については不足見込債権額」について認否をする(破産法121条1項、117条1項各号)。□講義224-5

・一度なされた「認める認否」を、「認めない認否(異議)」へ変更することはできない(逆は可)。そのため、調査不十分の債権については認否を留保すべきである。□講義225-6,224

・調査結果(=認否の別)は破産債権者表に記載される(破産法124条2項)。実務の破産債権者表の書式は、債権届出書・認否予定書・配当表を引用する形式となっている。□講義226、研究85

 

[破産債権の確定]

・届出破産債権の調査事項のうち、管財人が認め、かつ、他の届出破産債権者が一般調査期日において異議の申述をしない事項は、確定する(破産法124条1項)。記載すべき調査事項が破産債権者表に記載されることで、破産債権者全員に対して確定判決と同一の効力を有する(破産法124条3項)。□講義226-7、研究109-10

・管財人が特定の破産債権について認めない旨の認否をした場合、当該破産債権者に通知をする必要がある(破産規則43条4項)。この異議通知により、その破産債権者が、当該認否がなされた一般調査期日から1か月の間に破産債権査定申立てをする機会が担保される(破産法125条1項2項)。この期間に配慮すれば、管財人は、債権調査が終了しても3週間は、簡易配当許可の申立てを控えるべきである。□研究91、講義228、配当マ4(150)

 

[破産管財人による簡易配当の実施]

・債権調査が終わった場合、管財人は、簡易配当の準備に入る。具体的には、「換価未了財産がないかを確認する」「債権調査終了後に破産債権が変動していないか確認する」「財団債権の弁済を済ませておく」。なお、換価完了までは債権調査を続行させる運用なので、「債権調査が終わったけど換価未了財産がある」との事態は本来あり得ない。□講義246,225、配当マ4-5(150-1)

・理論的には、債権調査が終了した時点で直ちに簡易配当許可の申立てへと移ることができるが(たぶん)、上記のとおり、認めない債権がある場合は3週間を空けた後に許可申立てをする必要がある。□研究266

・配当のスケジュールは次のとおりになるので(下線部が管財人の業務)、簡易配当許可申立てから概ね6週間をみておけば十分か。□講義248-52、配当マ6-9(152-5)、研究266,[書類90-1]

◯簡易配当許可の申立て □講義248

※簡易配当許可申請書【112】×2通(正副)、配当表案【116】×1通、配当実施のご通知案【113】×1通、収支計算報告書【113】×2通、財産目録【114】×1通、預金通帳写し

  ↓↓↓

◯簡易配当の許可 □講義248

  ↓↓↓ [3日以内]

◯配当表の提出(←配当見込額の定め) □講義248-9

※配当表【116】×3通

  ↓↓↓

◯裁判所のチェックもらう □研究269

  ↓↓↓ [遅滞なく※日曜日までに]

◯簡易配当の通知 □講義249-50

  ↓↓↓ [次の水曜日までに]

◯通知が到達した旨の届出 □講義250、研究273

  ↓↓↓ [簡易配当に関する除斥期間=1週間]→→→配当表の更正 □研究274-5

最後配当に参加できる破産債権の確定(=異議のある無名義債権等の除斥) □講義250

  ↓↓↓ [配当表の異議期間=1週間]→→→異議の申立て→更正決定→配当表の更正

配当表の確定(=配当請求権の発生) □講義251

  ↓↓↓ [通知済みの「配当の日時」を待つ]

◯配当の実施(←配当額の定め) □講義251-2、研究276-7

※「破産債権者が受け取らない場合」(破産法205条、202条3号)などは、配当額を供託する。供託ねっと(供託かんたん申請)の利用が便利。申請から納付可能まで数時間程度を要するか。□配当マ16-7(162-3)

  ↓↓↓ [遅滞なく]

◯配当実施報告書の提出 □講義252

 

名古屋地方裁判所民事第2部(破産管財係)「N方式マニュアル〔Ver.2〕補訂」『破産管財事務マニュアル(名古屋地方裁判所本庁版)二訂』[2010]

名古屋地方裁判所民事第2部(破産管財係)「債権調査における認否の手引き〔第3版〕」『破産管財事務マニュアル(名古屋地方裁判所本庁版)二訂』[2010]

名古屋地方裁判所民事第2部(破産管財係)「新法対応版配当マニュアル〔Ver.1〕補訂」『破産管財事務マニュアル(名古屋地方裁判所本庁版)二訂』[2010]

愛知県弁護士会倒産実務委員会編『破産管財人のための破産法講義』[2012]

裁判所職員総合研修所監修『破産事件における書記官事務の研究ー法人管財事件を中心としてー』[2013]

伊藤眞ほか『条解破産法〔第2版〕』[2014]]

愛知県弁護士会倒産実務委員会編『破産管財書式集三訂』[2016]

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