【例題】Aは、路上で警察官の職務質問を受け、白色の粉末が封入されたパケと注射器を所持していることを現認された。
[覚醒剤≒メタンフェミンorそれを含有したもの]
・「覚醒剤」は、覚醒剤取締法2条1項が定義する。
[1]フエニルメチルプロパンとその塩類(1号):メタンフェタミンのこと。1941年には大日本製薬が「ヒロポン」として販売していた。日本で密売される「覚醒剤」は、もっぱ . . . 本文を読む
【例題】Aは、氏名不詳者の指示により、いわゆる「特殊詐欺」の実行犯として行動した。
(case1-1)Aは、「Vの子の会社の人間」を装ってVの自宅を訪れ、「Vの子が会社の金を横領したので、今日中に穴埋めが必要だ」と述べて、Vから現金100万円を受け取った。
(case1-2)Aは、警察官を装ってVの自宅を訪れ、「キャッシュカードが不正に利用されているので、交換が必要である」などと言ってVからキ . . . 本文を読む
【例題】Aは、金品を盗もうと考えて、Vの居住する住居の窓から居室内に侵入した。
(case1)Aが居室内に侵入した直後、室内に居合わせたVに現認されたため、Aは窓から室外へと逃亡した。
(case2)Aが居室内の備え付けてあったタンスの引き出しを開けてその中を探索していたところ、Vに現認された。
(case3)Aが居室内の備え付けてあったタンスの引き出しを開けてその中にあったサイフを懐中にし . . . 本文を読む
【例題】Aは、スーパーマーケットで万引きをした疑いで現行犯逮捕された。Aには複数の同種前科がある。
→《2度目の有罪判決を受けるとき》
昭和五年法律第九号(盗犯等ノ防止及処分ニ関スル法律)第二条 常習として、左の各号の方法により、刑法第二百三十五条、第二百三十六条、第二百三十八条若しくは第二百三十九条の罪又はその未遂罪を犯したる者に対し、窃盗をもって論ずべきときは三年以上、強盗をもっ . . . 本文を読む
旧記事の全訂版。
[単純一罪]
・現在の通説は構成要件標準説を採り、「1つの構成要件によって一回的に評価されるものが一罪/数回の評価を要するものが数罪」と区分する。構成要件が1つだけ充足されている場合を、講学上、「単純一罪」と呼ぶ。□井田580
・この評価は「法益侵害の数」を基礎に据えつつ、構成要件に規定された態様も踏まえて決する。例えば、AがVの所持するカバンを窃取した場合 . . . 本文を読む
【例題】行政書士であるAは、真正な供託金受領証原本に細工をして虚偽の供託事実に付け替えた上でコピーを作成し、それを「真正な供託金受領証のコピー」として建設指導課等に提出した。後にこの事実が発覚し、Aは、有印公文書偽造罪・同行使罪の罪名にて訴追された。
[最高裁による「文書」の拡張]
・準理論的に詰めれば、【例題】のコピーの作成者はAであり、認証文言がない以上、その作成名義人はわ . . . 本文を読む
2019-05-16:文献を追記した。
2023-10-17:文献を追記した。
【例題】A男とV女が性交をした。A男が罪責を負う可能性があるか。
(case1)V女が12歳の場合。
(case2)V女が16歳の場合。
(case3)V女が18歳の場合。
(case4)A男がV女が通う学校の教員である場合。
(case5)A男がV女の同居する養父である場合。
(cas . . . 本文を読む
刑法95条1項:公務員が職務を執行するに当たり、これに対して暴行又は脅迫を加えた者は、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。
刑法233条:虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
刑法234条:威力を用いて人の業務を妨害した者も、前条の例による。
[被害結果発生の不 . . . 本文を読む
2020-06-19追記。
【例題】衆議院議員Xは、Yから100万円の寄附を受けた。この寄附は適法か。
[政治資金規正法による寄附制限]※「政治資金規正法」との表記に注意。
(1)用語
・「公職の候補者」(政治資金規正法3条4項);衆議院議員(候補者)、参議院議員(候補者)、地方公共団体議会議員(候補者)、首長(候補者)
(2)候補者個人への寄附は厳しい
・寄附者が個人 . . . 本文を読む
性犯罪に関する規定を改めた改正刑法が平成29年6月23日に公布され、早速7月13日に施行される。非親告罪化が被害者救済に与える影響について、ローカス先生こと三浦義隆氏がコメントをしている(同業として氏の鋭い考察には毎度感心する)。
それでは、非親告罪化により、捜査公判の各場面における被害者の負担は軽減するのか。次のように予想する。
(1)性犯罪の性格上、捜査の端緒は、被害者(側 . . . 本文を読む
島田聡一郎・小林憲太郎『事例から刑法を考える〔第2版〕』[2011]pp451-77。
[甲銀行代表Xの罪責(1);問題融資の実行]
背任罪;刑法247条 他人のためにその事務を処理する者が、自己若しくは第三者の利益を図り又は本人に損害を加える目的で、その任務に背く行為をし、本人に財産上の損害を加えたときは、五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
取締役等の特別背任罪 . . . 本文を読む
特殊詐欺事件を摘発する警察の「だまされたふり作戦」失敗に終わる裁判官「犯人検挙のために発送したものを受け取るのは詐欺の実行行為に該当しない」https://t.co/WsFi5gpsyk
— 岡口基一 (@okaguchik) 2016年9月12日
岡口さんのツイートにある朝日新聞の記事を読むと次のとおり(一部推測)。
・平成27年2~3月、ヤマシタを名乗る氏名不詳者がV宅に . . . 本文を読む
「小泉政権のブレーンが置引き」とは誰のことかと思ったら,何とあの高橋洋一氏だった。報道によると本人も自認しているとのことだが,論壇の超売れっ子がこんなセコイ犯罪をするなんて驚きだ。佐藤優氏のように,外交がらみの身柄拘束・訴追ならば「国策捜査の犠牲者」と主張して箔が付くかもしれないが,置引きではなあ・・・。朝日新聞の記事によると,被疑事実は,「スーパー銭湯の脱衣所の鍵のかかっていないロッカー内の財布 . . . 本文を読む
ドア,窓ガラス,ふすま,屋根瓦といった(他人の)建物の一部分を損壊したとき,その行為が,建造物損壊罪/器物損壊罪のいずれに該当するのかが問題となる。刑法は,毀棄罪につき,建造物を単なる物(=器物)より手厚く保護し,具体的には,①前者のみ致死傷罪がある,②前者は非親告罪である,③法定刑につき,前者のほうが懲役の上限が重く,かつ罰金がない,という点で違いを設けている。実際上は,③に関連し,建造物損壊罪 . . . 本文を読む
いわゆるイージス艦情報流出事件の判決が出た。横浜地裁は、被告人である海上自衛隊三等海佐の行為が秘密保護法違反(特別防衛秘密漏洩)に該当すると認定した。「漏洩」の意義を広く理解する検察側と、スパイ防止を法の目的と捉え、その趣旨に照らせば今回の被告人の行為は「漏洩」にはあたらないとする弁護人側の主張がぶつかったが、どちらもありうる解釈だろう。被告人が控訴しなければ、この判決が秘密保護法の貴重な先例とな . . . 本文を読む