Brian H. Bix, A DICTIONARY OF LEGAL THEORY, Oxford University Press, 2004, pp81-2
難しい事案(hard cases)
司法判断(judicial decision-making)や、これに関連する"法的問題にはいつも(大抵、時々、ほとんどない)正しい答えが存在するか否か"という議題を議論する際、多くの研究者は「難 . . . 本文を読む
Brian H. Bix, A DICTIONARY OF LEGAL THEORY, Oxford University Press, 2004, p139
道徳の法的強制(legal enforcement of morality)
このフレーズは、通常、ある種類の道徳的義務の強制に言及する。法は道徳体系の下で禁止された活動を正当とすべきではない、などと本気で主張する者はいない。大抵の刑法 . . . 本文を読む
Brian H. Bix, A DICTIONARY OF LEGAL THEORY, Oxford University Press, 2004, p123
包含的実証主義/排除的実証主義(inclusive v. exclusive positivism)
「包含的法実証主義(inclusive legal positivism)」(時に「ソフトな法実証主義(soft legal posi . . . 本文を読む
Brian H. Bix, A DICTIONARY OF LEGAL THEORY, Oxford University Press, 2004, p126
法的妥当性(legal validity)
法(law)の中で・法(law)について議論する際、「妥当な(valid)」という用語は、複数の明確な意味を持つ。もっとも、これらの意味は、しばしば関連するか、重なっている。「妥当な(vali . . . 本文を読む
[釣り合った天秤としての「正義」]
・アリストテレスは、独創的な「正義」観念を提唱するのではなく、当時のギリシヤにおいて多様に語られていた「正義」を実証的に分析して体系化した。これにより、「正義」とは一個人の内面の問題ではなく、複数当事者間の公平(平等)な関係性の問題であると把握されることになった。□松島141,147-8
・もっとも、アリストテレスの正義論は「国家による個人の平等的取扱い . . . 本文を読む
【例題】心臓に疾患のある天才科学者甲、腎臓に疾患のある天才科学者乙、健康な凶悪犯罪者丙がいる。甲と乙はこのままであれば間も無く死亡するが、丙の心臓と腎臓をそれぞれに移植すれば生存できる。
→関連記事;義務論的倫理学、平等ーアリエルと白雪姫
[功利主義の特徴]
・最大幸福の原理(功利の原理);ベンサムは『道徳および立法の諸原理序説』[1789]において、すべての人々の . . . 本文を読む
[ボアソナードによる旧民法の編纂]
1873(明治6)年、明治政府は、「お雇い外国人法学者」の一人としてフランス人法学者ボアソナードを招いた。当時のボアソナードはフランスで正教授への昇任を待つ身分であったが、政府は、当時の彼が得ていた6倍の報酬という破格の待遇を与えた。来日したボアソナードは、司法省法学校の教師、政府の法律顧問として重要な役割を果たした。□内田149-51
明治政府は不平等条約 . . . 本文を読む
[古代ローマの客観的ius概念]
・ヨーロッパ各国のright(英)、Recht(独)、droit(仏)、diritto(伊)といった語は、いずれもラテン語ius(jus)の訳語である。
・古代ローマにおけるiusは、客観的な「法」という意味のみもっていた。この客観的ius概念は、『二コマコス倫理学』で提示された「dikaion(正しいこと;ここでは特に、各人のものを彼に配分するという配分的正 . . . 本文を読む
[法段階説と根本規範論]
・「府省令<政令<法律<日本国憲法」という階層のとおり、あるルールの規範的効力(法的妥当性legal validity)は、それより上位のルールを基準として確認される。また、立法されたルールの妥当性のみならず、裁判や行政処分の妥当性も上位ルールからの授権で説明できる。この法段階説自体は、近代国家の法体系を説得的に記述している。■森村pp92-5、「妥当性validity . . . 本文を読む
[目的論的と義務論的]
・目的論的倫理学は、実現を目指すべき「最高目的」を設定する。その最高目的の実現促進に貢献するものを、倫理的拘束力をもつ義務と捉える。この代表が功利主義。
・他方の義務論的倫理学では、倫理的義務は他の目的のために相対化できず、無条件的性格をもつと説く。その主要論者がカント。
[仮言命法]
・sollenは通常、「もし人に信用されたければ、正直であるべし . . . 本文を読む
法律家も非法律家も「権利」「義務」について語るが、「法律家の語る(べき)権利/義務」を考えるには、ウェスリー・ホーフェルド(1879−1918)の分析を原型とする図式が今でも意味をもつ。法哲学の教科書でははっきり書かれていないが、実務的な用語とつなげてみたい。
以下では「Xの権利=Yの義務」というように、二当事者間での関係図(相関語)について書く。通常は、「Xの権利≠Xの無権利 . . . 本文を読む
かつての記事以降に読んだ教科書の暫定的まとめ。ただし後半はさらに要勉強。
[実定法一元論]
自然法(natural law)に対比される実定法(positive law)は、人為によって成立する法(制定法、慣習法、判決法、条理)を指す。
田中成明の整理では、法実証主義(legal positivism;自然法論natural law theoryとの対比では「実定法主義」と訳 . . . 本文を読む
父親、長女、二女の3人からなる社会。いま、長女はアリエル(プリンセスの中で一番好き)のぬいぐるみを取得した。さて、父親は二女にも白雪姫のぬいぐるみを与えるべきか?
目的論的平等主義の父親。長女と二女の状態が同じであること自体がよいことだ。したがって、父親は二女に白雪姫を与えるべきである。もっとも、長女の涙を無視すれば、父親は長女からアリエルを奪うことでも平等を達成できてしまう(水準低 . . . 本文を読む
備忘録。草野耕一・論究ジュリスト10-20~。めちゃくちゃ面白い。
とある刑事裁判。無実を訴える被告人は真犯人か否か。検察官は、「被告人の体液は●●という特徴を持つ」「現場に残された真犯人のものと思われる体液にも、●●という特徴があった」と証明した。
そこで裁判官は「真犯人が体液●●との特徴をもつ場合、(同じ●●である)被告人が真犯人である確率(=事後確率)P(A|E)」が知り . . . 本文を読む
井上達夫『法という企て』。法哲業界の門外漢だけど、たぶんすさまじい一冊なんだろう。途中で断念した『現代の貧困』よりも読みやすい(ホント?)。まずは第1章を熟読玩味したい。
銀行強盗が「金を出せ」と脅迫する時、理由reasonは要らない。彼が正しさを気取る必要はない。他方、法が名宛人の財産権を制約しようとする際、法は、その要求が「正しい」ことを説明しなければならない。もちろん、法が語る「○○」とい . . . 本文を読む