法令用語としての「押印」とその周辺

2024-06-12 21:55:44 | 契約法・税法
[押印=捺印] ・現在の法制実務では、文書の作成者が印を押すことを「押印」と呼ぶ。口語体以前の法令は「捺印」と呼んでいた。つまり、巷に溢れる俗説にかかわらず、法文上は「押印=捺印」である。□辞典26-7、有斐閣用語78、有斐閣小辞典62 ・e-Govの全文検索で各用語の登場数を調べると、次のとおりヒットする(2024年6月12日時点)。 「押印」・・・436件 民法第520条の10:指図証 . . . 本文を読む
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契約不適合責任の実務

2024-05-01 13:30:31 | 契約法・税法
【例題】Xは事業縮小に伴い、Yに、所有する中古工作機械を500万円で売却し、これを引き渡した。この中古工作機械は年代物であり、しばしば動作に難が見られる。 →《商事売買の納品・検査・検収》   [売主の債務不履行責任の規律] ・売買契約が締結されると、売主は、買主に対して次の義務を負う:□中田299-300 [1]契約の内容に適合した権利を移転する義務(民法565条参 . . . 本文を読む
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【債権法改正】時効障害制度

2024-03-24 13:50:50 | 契約法・税法
【例題】Gは、Sに対する金銭債権100万円を有しているが、履行期から相当期間が経過しているため、その管理方法を検討している。   [新法旧法の適用関係] ・消滅時効の期間:[1]2020年3月31日まで発生した債権には、原則して旧法が適用される(平成29年法律第44号附則10条4項)。ただし、その重要な例外として、施行日前の不法行為(生命身体損害)であっても施行時点で時効が完成して . . . 本文を読む
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閏年と平年

2024-02-29 23:51:09 | 契約法・税法
【例題】2024年の次の閏年は何年か。   ・「閏年」の根拠法令は「明治31年勅令第90号(閏年に関する件)」である。条項は1つのみであり、本文とただし書からなる。同勅令の内容は日本国憲法の価値体系と矛盾抵触せず、現にこれを廃止する法律が制定されていないから効力を有する、という整理か(たぶん)。→《占領体制下の国制》、《法律の構造》 ・閏年と平年を決めるルールは2つのみか . . . 本文を読む
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〈多数当事者〉連帯債務者の一部との示談後の処理

2023-10-12 22:23:18 | 契約法・税法
【例題】Xは、Y1の運転する車両に追突されて傷害を負った。Y1はY2に雇用されており、事故当時は、Y2に命じられて業務として車両を運転していた。この度、Xは、Y2との間で事故の賠償についての示談契約を締結した。この示談契約の中でY1には触れられていない。 (case1)Y1は、Xに対して「Y2との示談によって、自分(Y1)の債務も免除された」と主張している。 (case2)Y2は、Y1に対して . . . 本文を読む
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不当利得返還請求訴訟の実務

2023-09-15 00:23:24 | 契約法・税法
【例題】 (case1)Xは、Yに対して、「X所有の土地にYのトラックが駐車されているので、占有料相当額として1か月あたり3万円を支払え」と主張している。□潮見黄313 (case2)Xは、Yに対して、「YがXのキャッシュカードを持ち出し、B銀行のATMから100万円を無断で引き出したから、100万円を返せ」と主張している。□潮見黄313 (case3)Xは、Yに対して、「XはYから1000 . . . 本文を読む
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附帯請求の始期と利率

2023-06-12 20:25:54 | 契約法・税法
【例題】 (case1)貸主X1は、借主Y1に対し、貸金の返還を求めている。 (case2)買主X2は、売主Y2に対し、債務不履行を理由として売買契約を解除して支払った売買代金の返還を求めている。 (case3)交通事故の被害者X3は、加害者Y3に対し、損害の賠償を求めている。 ※平成29年法律第44号・第45号による改正前後の民商法を「改正前/後民法、改正前/後商法」などと称する。 & . . . 本文を読む
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印鑑等の証明

2023-06-09 22:10:37 | 契約法・税法
【例題】 (case1)Aが死亡し、その相続人X、Y、Zは、遺産分割協議書を作成しようとしている。 (case2)P社(代表者W)は、所有する普通自動車甲を廃車しようとしている。 (case3)弁護士Lは、破産管財人として管財物件である不動産を売却しようとしている。   [個人:市町村長による印鑑証明] ・各市町村はいわゆる印鑑条例(岡崎市の例)を定めており、同条例に基づいて . . . 本文を読む
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商事売買の納品・検査・検収

2022-12-01 18:26:51 | 契約法・税法
2024-07-05追記。 【例題】自動車部品製造業を営むX社は、自動車メーカーであるY社に、部品αを納めている。   [納品] ・引渡しの場所:企業間取引では、通常の商品であれば「買主工場(倉庫、営業所)渡し」とする例が多い。これ以外にも、取引基本契約や個別契約において、買主指定場所据付け渡し、売主工場渡し、発駅貨車積渡し、着駅オンレール渡し等の具体的な納品方法を約 . . . 本文を読む
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著作物の「盗用」への対応

2021-09-25 23:00:36 | 契約法・税法
【例題】Aは、イラスト作成を趣味としており、自分が作成したイラストをpixivにアップロードしていた。ある日、Aは、自分が作成したイラストαを、Bがブログにアップロードしているのを見つけた。   [侵害①-1:著作権者の複製権] ・「著作者は、その著作物を複製する権利を専有する。」(著作権法21条)。ここでいう「著作者」とは「著作権のうち複製権に係る著作権者」を意味する . . . 本文を読む
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会議体における議案の決議

2020-07-11 12:57:55 | 契約法・税法
【例題】P株式会社の経営陣は、新たにDを取締役に選任したいと考えている。   [議題の意義] ・一般に、ある会議の目的事項を「議題」と称する。会社法は、これを「目的である事項」と表現している(創立総会につき67条1項2号、株主総会につき298条1項2号、取締役会につき366条2項、清算人会につき490条2項、債権者集会につき548条1項2号、社債権者集会につき719条2号)。例とし . . . 本文を読む
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ファイナンス・リースの法的意義

2020-05-04 10:38:22 | 契約法・税法
【例題】Xは、Y社製の複合機の導入を検討している。できるだけ初期投資を抑えたいし、税務面でも有利な方法を選択したい。   [ファイナンス・リースの形式と実質] ・リース取引の当事者は、ユーザー(レッシー)、リース業者(レッサー)、販売業者(サプライヤー)の3名となる。すなわち、ユーザーと販売業者との間で「リース物件の選定、搬入、保守契約の締結」、ユーザーとリース業者との間で「リース . . . 本文を読む
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損害賠償請求と所得課税

2020-04-24 19:53:16 | 契約法・税法
【例題1】Yが運転する自動車に横断歩道を横断中のXがはねられ、Xには、積極損害、消極損害、慰謝料、物損が生じた。 (1-1)Xは、本件事故の損害の填補として、Yから損害賠償金の支払を受けた。 (1-2)Xは、本件事故を保険事故として、加入する損保会社から人身傷害保険金の支払を受けた。 (1-3)Xは、(1-1)の請求をする際、弁護士に委任した。 (1-4)事故によってXが死亡し、X2が相続 . . . 本文を読む
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「所得」の概念〔全訂〕

2020-04-20 19:20:03 | 契約法・税法
2017-07-11の記事を全面改訂。租税法の学習には会計学の基礎知識が必須であることを痛感した。   [理念としての包括的所得概念(純資産増加説)] ・所得税は、ある期間を設定し、その間に個人Xがどれだけ「もうけ」たかを捕捉しようと試みる。「もうけ」の使途は「消費」か「蓄積」のいずれかしかないから、この点を押さえれば漏れなく「もうけ」を把握できる。すなわち、【個人の所得(inco . . . 本文を読む
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非公開会社における取締役の辞任・解任

2020-03-30 13:32:29 | 契約法・税法
【例題】株式会社であるP社には、取締役Bがいる。 (1)BからP社へ辞任の申入れがあった場合。 (2)P社がBを解任する場合。   [取締役の辞任] ・会社と役員との法律関係は「委任に関する規定」が適用される(会社法330条)。したがって、役員は、会社に辞任の意思表示をすることをもって、いつでも辞任することができる(民法651条1項)。□神田238,221、江頭398 ・取締 . . . 本文を読む
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