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破産手続における非免責債権の取扱い

2023-09-28 16:57:10 | 債権管理・倒産・執行

【例題】Sについて破産手続が開始され、異時廃止によって終了して免責許可が出た。債権者の中には、市長(市民税)、交通事故被害者(損害賠償請求権)がいる。

 

[非免責債権の法定]

・法文上、免責許可決定(確定)の効力が及ぶ対象は「破産債権」のみとされる(破産法253条1項本文)。したがって、免責許可があっても、財団債権、別除権、取戻権は有効に存続する。□条解1676-7、220問473

・さらに破産債権のうちでも、破産法253条1項ただし書各号が列挙する次の債権には、免責許可決定の効力が及ばない。

[1]租税等の請求権:そもそも財団債権には免責の効力が及ばないので(前述)、ここで非免責債権とされるのは「租税債権中の優先的破産債権、劣後的破産債権」である。□条解1680

[2]破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権:ここでは「悪意=他人を害する積極的な害意」と解される。□条解1680-1

[3]破産者が故意重過失により加えた人の生命身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権:例として「無謀運転による人身事故」が挙げられる。□条解1681

[4]親族関係の請求権として列挙されるもの:[イ]夫婦の扶助義務(民法752条)、[ロ]婚姻費用分担義務(民法760条)、[ハ]養育費分担義務(民法766条)、[ニ]親族間の扶養義務(民法877条~880条)、[ホ]以上に類する義務で契約に基づくもの。

[5]賃金請求権等:

[6]破産者が知りながら債権者名簿に記載しなかった請求権(破産手続開始決定を知っていた債権者の請求権を除く):その趣旨は、免責についての意見申述期間の通知(破産法251条2項)を受けていない債権者を保護する点にあると説かれる。この立法趣旨を貫徹すれば破産者の主観は不問にしても良さそうだが、実際には「善意無過失で債権者名簿に記載しなかった破産者」の保護が優先されている(債権者名簿への不記載について過失のある破産者は救済されないと解されている)。要するに、「不記載につき破産者の悪意or有過失」かつ「債権者が破産手続きを知っていた」場合に限って非免責となる。□条解1684

[7]罰金等の請求権:

 

[免責調査≠非免責債権の該当性]

・裁判所は職権調査の権限を持ち(破産法8条2項)、免責手続に関しては、免責不許可事由(破産法252条1項各号)の有無、裁量免責の有無を決めるための考慮事情を調査するため、破産者に必要な資料の提出を請求できる(破産規則75条1項)。さらに裁判所は、破産管財人に必要な調査をさせることができ(破産法250条1項)、実務上、破産管財人は、免責調査報告書(破産法250条1項)の中で意見も述べる(破産法251条1項)。□講義277

・この免責調査や意見申述の対象に「非免責債権の存否」は含まれない(※)。この裏返しとして、非免責債権の債権者(破産法251条1項かっこ書)や別除権者等には意見申述権が認められない。□条解1644,1643、220問474

※事実上、非免責該当性にも関係しうるもの:[1]不許可事由である「不利益債務負担(2号)」「詐術の信用取引(4号)」「虚偽債権者名簿の提出(7号)」(たぶん)。[2]裁量免責の考慮事情の「破産原因の破産者の帰責性」「債権者の意見」。□講義282-3

・免責判断を別にしても、破産裁判所が非免責債権該当性について判断する場面はない。□220問474

 

[免責許可決定確定後の非免責債権の処理]

・当該債権が非免責債権に該当するか否かは、免責確定後の請求時に初めて決着される。

・債権調査が未了の場合:債権者は、債務名義を有していなければ、当該債権を行使する給付訴訟を提起することになる。請求を受けた破産者は「抗弁=免責許可決定の確定」を主張し、対する債権者は「再抗弁=非免責債権該当性」を主張することになろう。□220問474

・債権調査が行われた場合:破産債権者表が債務名義となるから(※1)、債権者は、書記官から執行文を付与を得た上で(※2)、直ちに強制執行ができる(破産法221条1項)。これに対抗する破産者は、請求異議訴訟を提起して免責許可決定の確定を主張し、被告とされた債権者が抗弁として「当該債権=非免責債権該当性」を主張することになろう。□条解1678,1677、220問474

※1破産債権者表には非免責債権に該当するか否かにかかわらず免責許可決定が確定した旨が記載されるものの(破産法253条3項)、債務名義としての効力には影響しない。□条解1687,1678

※2かつては「執行文付与の訴えを要する」との見解があったものの、最一判平成26年4月24日民集第68巻4号380頁は次のように述べてこれを否定した:「[1]民事執行法33条1項は…執行文付与の訴えにおける審理の対象を、請求が債権者の証明すべき事実の到来に係る場合におけるその事実の到来の有無又は債務名義に表示された当事者以外の者に対し、若しくはその者のために強制執行をすることの可否に限っており、破産債権者表に記載された確定した破産債権が非免責債権に該当するか否かを審理することを予定していないものと解される…。[2]このように解しても、破産事件の記録の存する裁判所の裁判所書記官は、破産債権者表に免責許可の決定が確定した旨の記載がされている場合であっても、破産債権者表に記載された確定した破産債権がその記載内容等から非免責債権に該当すると認められるときには、民事執行法26条の規定により執行文を付与することができるのであるから、上記破産債権を有する債権者には殊更支障が生ずることはないといえる。[3]そうすると、免責許可の決定が確定した債務者に対し確定した破産債権を有する債権者が、当該破産債権が非免責債権に該当することを理由として、当該破産債権が記載された破産債権者表について執行文付与の訴えを提起することは許されないと解するのが相当である。」。□条解1678

 

愛知県弁護士会倒産実務委員会編『破産管財人のための破産法講義』[2012]

伊藤眞・岡正昌・田原睦夫・林道晴・松下淳一・森宏司『条解破産法〔第2版〕』[2014]

木内道祥監修・全国倒産処理弁護士ネットワーク編『破産実務Q&A220問』[2019]


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